アサシンクリード 実績「示す役目」獲得   作:Calく

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記憶の奔流②

一見すれば、ホリス・モーガンは疑いようのない才人だった。未来を垣間見る力、常人を凌駕する身体能力、判断の速さと冷静さ。

だがその才は、同時に傲慢さを育てた。未来を知っているという慢心が、決定的な一瞬の遅れを生み、父を死地へ追いやった。

そして、息絶える間際に語られた愛――それは、ホリスが生きてきた中で一度も実感したことのないものだった。

理解できなかったからこそ、その言葉は胸に深く刺さり、抜け落ちることはなかった。

 

それ以降、ホリスは選択を迫られ続けた。

未来予知に映る破滅を回避するためか、あるいは父から叩き込まれた「アサシンとして生きる」という在り方に縋るためか。

理由は曖昧なまま、彼は鍛錬に身を投じた。

感情を削ぎ落とし、遊びを捨て、刃と教義だけを信じる日々。

結果として、彼は二十代前半という異例の若さで教団のマスターアサシンとなる。

理想的、模範的、非の打ち所がない――周囲はそう評した。

 

だが、その評価が彼自身を救うことはなかった。

理想のアサシンと呼ばれる仮面の下で、ホリスは今も問い続けている。

見えた未来に従って生きているのか、それとも抗っているのか。

父が命と引き換えに示した「生きろ」という言葉に、応えられているのか。

その答えを知る者は、他ならぬホリス自身だけだった。

 

父の死は、ホリスにとって今もなお、言葉に置き換えられない感情を呼び起こす。

悲しみとも、怒りとも、後悔とも違う。

名付けようとすれば零れ落ち、無視しようとすれば胸の奥で疼く。

過去として整理するには、あまりにも生々しく、近すぎた。

 

だが、決めたことはひとつだけだ。

――父を。

――教団の人々を。

――同胞を傷つけ、混乱へと突き落とした元凶を。

 

ダニエル・クロス。

その名は、もはや標的以上の意味を持っていた。

復讐でも、正義でもない。

ホリスにとってそれは、必ず遂行されるべき結果だ。

ダニエル・クロスは、必ず俺が殺す。

 

その誓いは声に出されることなく、静かに胸の奥に沈んだ。

怒りを燃やすでもなく、感情に溺れるでもない。

ただ冷え切った確信として、刃と共に在り続ける。

ホリス・モーガンは、そうやって今日も立ち上がる。

過去を背負い、未来を選び取るために。

 

 

 

 

アニムスとの同期が終了し、記憶の奔流から意識が引き戻される。

耳鳴りのような残響が薄れ、現代の光が視界に滲んだ。

ホリスはゆっくりと上体を起こし、深く息を整える。

過去の感情がまだ皮膚の裏に張り付いている感覚があった。

 

彼は無言のまま、指先を動かす。

一本ずつ、確かめるように屈伸させ、感覚の遅延や痺れがないかを確認する。アニムス同期後の僅かな違和感――それは、アサシンにとって致命的になり得る。

刃を抜く瞬間に狂いが生じれば、それだけで命取りだ。

 

異常はない。判断を下すと、ホリスは立ち上がった。

過去は過去だ。だが、そこから持ち帰ったものは、確かに今も彼の内側にある。

アニムスとの同期は、現実の身体と意識の剥離を齎す。

感覚は引き裂かれ、時間軸は曖昧になり、時に自分がどこに立っているのかさえ見失いかける。

だがその代償として、ホリスは戦うことを学んだ。

刃を交え、死線を越え、勝ち残った記憶――それを、何十年分も一気に積み上げることができる。

過去の達人たちが重ねてきた判断と失敗、そのすべてが、今の彼の血肉となる。

 

剥離は危険だ。人を壊す。

だが、ホリスはそれを恐れない。

失うものはすでに失った。

残ったのは、刃を振るう理由と、必ず果たすべき復讐だけだ。

アニムスの残響が消えた後、彼の目に宿るのは迷いではない。

長い記憶の果てに研ぎ澄まされた、静かな殺意だった。

父の死も、誓いも、すべてが刃の重さとなって、静かに身体に馴染んでいた。

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