街がスペースゴジラシティと化したけど今日もわたしは学校に行く   作:よよよーよ・だーだだ

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5、メカゴジラ機龍のこと

4月29日(日)晴れ

 

 ニュースを見ていたら、お父さんが変な声を出した。

「おい、見ろ」

 テレビには、大きな船が映ってた。

 アナウンサーが興奮した声で言ってた。いつもの落ち着いたトーンじゃない。少し上ずってる。

 

〈国連G対策センター、Gフォースの特殊部隊が、本日未明、日本近海に到着しました!〉

 

 Gフォース。

 聞いたことある。海外で怪獣と戦ってる組織。アメリカとか、ロシアとか、色々な国が協力してるって。ニュースで見たことある。でも、それは遠い国の話だった。画面の向こうの、現実感のない話。

 まさかここに来るとは思わなかった。

 

〈Gフォースは、対スペースゴジラ戦用に改修された最終兵器:メカゴジラ機龍を投入。スペースゴジラの討伐作戦を開始すると発表しました〉

 

 画面が切り替わった。

 巨大なロボットが映った。ゴジラみたいな形してるロボット。背中には武器らしきものがいくつも装備されてる。

 かっこいい。

 

 お母さんが「本当に?」って言った。声が小さい。震えてる。

 お父さんは黙ってた。テレビを見つめてた。お父さんの手が、膝の上で握りしめられてる。

 ケンジが「やった! メカゴジラがスペースゴジラやっつけてくれるの?」って言った。ケンジの声だけが、明るい。

 誰も答えなかった。

 テレビの音だけが、居間に響いていた。

 

 

4月30日(月)晴れ

 

 学校に行く途中、いつもより自転車が多かった。みんな急いでる。ペダルを漕ぐ音が、いつもより速い。

 空は晴れてる。雲一つない。でも、なんか、空気が重い気がした。

 

 学校に着いたら、もう校門のところで生徒たちが集まってた。

 みんな興奮してた。

「Gフォース来るんだって!」

「マジで!?」

「メカゴジラだって! 本物の!」

「スペースゴジラ、いなくなるの?」

「やっと普通の生活に戻れる!」

 教室に入っても、ざわざわしてる。いつもより声が大きい。笑い声も多い。でも、どこか上ずってる。不自然に明るい。

 ユイが席に座りながら、わたしに聞いてきた。

「……どう思う?」

 わたしは鞄を机の横にかけて、答えた。

「わかんない」

「わたしは……嬉しいけど、なんか変な感じ」

 ユイの顔を見た。笑ってるけど、目が笑ってない。

「うん」

 リンは、もう席についてた。窓の外を見てた。

 窓の向こう、遠くに立入禁止区域のフェンスが見える。その向こうにはスペースゴジラのシルエット。じっと座ってる。今日も動かない。

 あれが、いなくなる。

 本当に?

 

 一時間目、長谷川先生が教室に入ってきた時、先生の顔はいつもより赤かった。

 授業が始まっても、教科書を開かなかった。

「Gフォースが来たからといって、何が変わるというんだ」

 誰も聞いてないのに、先生は喋り続けた。黒板に何も書かない。教卓の前を、行ったり来たりしてる。

「彼らは真実を知らない。スペースゴジラの意味を理解していない」

「これは陰謀だ。政府とGフォースが結託して、何かを隠蔽しようとしているんだ……」

 クラスの半分は、もう聞いてなかった。内職してる子もいる。寝てる子もいる。

 でも、何人かは真剣に聞いてた。メモを取ってる子もいた。

 わたしは、窓の外を見てた。空が青い。青すぎる。

 

 昼休み、アオイが泣いてた。

 教室の隅で、一人で。机に突っ伏して、肩が震えてる。

「大丈夫?」ってユイが声をかけた。そっと、肩に手を置いた。

 アオイが顔を上げた。目が真っ赤だった。涙で顔がぐちゃぐちゃになってる。

「……スペースゴジラが、いなくなっちゃう」

 アオイの声は震えてた。

「それって、いいことじゃない?」

「違う! スペースゴジラは、わたしたちに何かを伝えようとしてたのに!……」

 アオイの手が、机の端を掴んでる。爪が白くなるくらい、強く。

「…………」

 ユイは、わたしを見た。助けを求めるような目。

 わたしも、何も言えなかった。何を言えばいいのか、わからない。

 アオイは、また泣き出した。小さく、でもずっと。

 教室の窓から、風が入ってくる。カーテンが揺れる。外から、誰かの笑い声が聞こえる。

 

 

4月30日(火)曇り

 

 朝、空を見上げたら、雲が低く垂れ込めてた。灰色の雲。重たそう。

 でも雨は降りそうにない。ただ曇ってるだけ。

 

 街に、Gフォースの車が入ってきた。

 大きなトラック。何十台も。一台、また一台と、ゆっくり進んでくる。エンジン音が重低音で響く。地面が振動してる気がする。

 装甲車みたいなのもある。迷彩柄。タイヤじゃなくてキャタピラ。アスファルトを削る音がする。

 立入禁止区域の周りに、フェンスが増設されてる。前より頑丈なやつ。金属製で、背が高い。3メートルくらい? もっとあるかも。

 作業してるのは、Gフォースの隊員たち。制服を着てる。紺色の制服。肩に「G-FORCE」って書いてある。かっこいい。

 外国人もいる。金髪の人、黒人の人、アジア系の人。色んな人種が混ざってる。

 みんな、てきぱき動いてる。無駄がない。訓練されてる感じ。

 その中に、日本人の女の人がいた。30代くらい? 背はあんまり高くないけど、きりっとした顔で立ち姿が凛としてる。

 制服の肩にはドラゴンのマークがついてる。皆に指示してるからこの人が隊長なんだろうか。

 

 夕方5時過ぎ。

 学校から家に帰ったあと、サイレンが鳴った。

 でも、スペゴジアラートじゃない。違う種類のサイレン。

 防災無線から、アナウンスが流れた。

 

〈住民の皆様にお知らせします。まもなく、Gフォースの輸送機が上空を通過します。驚かれるかもしれませんが、ご安心ください……〉

 

 輸送機?

 ケンジが「見に行こう」って言うから、一緒に外に出た。

 もう近所の人たちが外に出てた。

 みんな、空を見上げてる。

 音が聞こえた。

 ゴオオオオオって音。

 飛行機のエンジン音。でも、普通の飛行機じゃない。もっと大きい音。もっと重たい音。

 空気が震えてる。

 

 雲の向こうから、巨大な銀の影が現れた。

 

 大きな輸送機が5機。

 その下にメカゴジラ機龍が吊るされていた。

 

 ワイヤーで吊るされた機龍は、まるで空を飛んでるみたいだった。

 銀色の装甲が、曇り空の下でも鈍く光ってる。

 でかい。

 本当に、でかい。

 ビルくらいある。いや、もっと大きいかも。うちの学校の校舎より、絶対大きい。

 

 輸送機が、ゆっくりと街の上空を通過していく。

 低空飛行。ビルより少し高いくらい。

 エンジン音がすごい。耳を塞ぎたくなるくらい。

 風が吹いてくる。ジェットが起こす風で髪が乱れる。

「すごいなあ」と誰かが言った。

 わたしは、立ち止まって見てた。

 首を上げて、ずっと見てた。

 すごい。怖い。かっこいい。不気味。

 色んな感情が混ざって、何も言葉にならない。

 輸送機とメカゴジラ機龍は、立入禁止区域の方へ向かっていった。

 ゆっくりと高度を下げながら、音が、少しずつ遠ざかっていく。

 しばらくして、地響きがした。機龍が、着地したんだ。

 

 ケンジと一緒に、自転車で立入禁止区域の近くまで行った。

 もう人だかりができてた。100人くらい? もっといるかも。

 みんな、見物してる。スマホで写真撮ってる。動画撮ってる。

 シャッター音が、あちこちから聞こえる。

 観光客も混ざってる。リュックサック背負って、カメラぶら下げて。

「すごいな」ってケンジが言った。声が少し上ずってる。興奮してる。

「うん」

 わたしは短く答えた。

 

 フェンスの向こうに、機龍が立ってた。

 さっきまで空を飛んでた機龍が、今は地面に立ってる。

 周りに、Gフォースの隊員たちが何十人もいる。

 ケーブルを繋いでる。点検してる。

 輸送機は、もうどこかへ飛んでいった。

 

 さっきの女隊長が部下と話してた。距離があるけど、声が聞こえる。

「……電磁波の影響、想定以上ですね」

「ええ。モナークからの報告にもあったけど、まさかここまでとはね」

 タブレット端末を見ながらつぶやく隊員に、女隊長は苦笑いで答えた。

「市街地全域が汚染されている……まさに、スペースゴジラシティだわ」

 別の隊員が、小走りで近づいてきた。敬礼して報告する。

「ヤシロ少佐、機龍の最終チェックが完了しました」

 少佐は頷いた。

「ご苦労様。有線式への改修は?」

「問題ありません。対電磁波コーティングも全面に施工済みです」

「モナークからの最新データは?」

「はい、マキ博士から届いています。本体を破壊すれば、結晶のエネルギー反応も停止する可能性が高い、とのことです」

「そう……」

 そのときケンジが、わたしの服を引っ張った。

「帰ろう」

「……うん」

 

 帰り道、駄菓子屋のおばあちゃんの店に寄った。

 半分壊れたままの店。屋根にブルーシートがかかってる。風でパタパタ音がしてる。

 でも、おばあちゃんは、いつも通り店番してた。

 小さな椅子に座って、編み物してる。

「メカゴジラ、見た?」って聞いたら、おばあちゃんは編み物の手を止めて、「ええ」って頷いた。

「どう思う?」

「どうって言われてもねえ」

 おばあちゃんは、また編み物を再開した。カチカチって、編み棒の音。

「来るもんは来る。去るもんは去る。それだけさね」

「そうなんだ」

「あんたも、そう思うだろう?」

 おばあちゃんは、わたしを見た。目を細めて笑った。しわくちゃの顔で。

「うん」

 飴を買った。いちご味。20円。

 おばあちゃんが、袋に入れてくれる。

「気をつけてね」

「何を?」

「色々と」

 おばあちゃんは、それ以上何も言わなかった。

 なんか、おばあちゃんと話すと落ち着く。

 

 

5月5日(日)晴れ

 

 朝から、ヘリコプターの音がする。

 ドドドドドって音。低くて、重たい音。

 何機も飛んでる。Gフォースのヘリ。それと、報道のヘリ。

 窓を開けたら、音がもっと大きくなった。空気が振動してる。

 空が、うるさい。

 空を見上げたら、ヘリが3機見えた。黒い影が、青空の中を移動してる。

 

 お父さんの仕事は休みになった。「作戦の間は立入禁止区域に近づくな」って通達があったらしい。

 お父さんは居間でテレビを見てた。ずっと。

 朝ごはんの後も、昼ごはんの後も。

 テレビの前に座って、動かない。背中が丸い。

 ニュースはGフォースのことばかり。どのチャンネルも同じ。

 

〈スペースゴジラ討伐作戦、いよいよ明日決行!〉

〈使用される兵器は、メカゴジラ機龍。Gフォースの対怪獣最終兵器です〉

〈作戦名は『オペレーション=スペースゴジラシティ』〉

 テレビに、Gフォースの広報官が映ってた。記者会見してる。

 たくさんのカメラ。フラッシュの光。マイクが何本も向けられてる。

 でも広報官は、動じてない。まっすぐ前を見て、落ち着いて話してる。

「スペースゴジラの発する電磁波により、当初予定していた無線操縦システムが使用不可能と判明しました」

 広報官の声は、はっきりしてる。一言一言が明瞭だ。

「そこで機龍を有線式に改修し、さらに対電磁波コーティングを全面に施しました。これにより、作戦遂行が可能となりました」

 記者が質問した。男の声。

「なぜ対応にこれほど時間がかかったのですか?」

 少し、非難めいたトーン。

 広報官は、一瞬だけ目を細めた。でもすぐに答えた。

「スペースゴジラの電磁波は極めて特殊です。通常の対策では不十分でした」

 間を置いて、広報官は続けた。

「しかし今、万全の準備が整っています」 

 テレビを見ながらケンジが「かっこいい」って言った。

 

 午後、テレビのニュースが切り替わった。

 『会』が緊急集会を開いてるって。

 駅前の、あの建物の前。人が集まってる。でも、前より少ない。50人くらい? みんな、白い服を着てる。『会』の制服らしい。

「スペースゴジラを守れ」なんてプラカードを掲げてる人もいる。

 佐上さんが演説してる映像が流れた。

 マイクを握って、叫んでる。顔が赤い。汗が光ってる。

「これは暴挙です! スペースゴジラは攻撃すべき対象ではない!」

 声が上ずってる。必死だ。

「彼らは、真実を理解していない! スペースゴジラは、わたしたちの――」

 

 でも、集まってる人は、前より少なかった。

 明らかに、少ない。

 カメラが引いて、全体を映した。

 ぽつんぽつんと、人がいる。まばら。

 駅前の広場が、広く見える。

 

 夜、外に出た。

 空気が冷たい。でももう5月だから、そんなに寒くない。

 上着を羽織って、家の前の道路に立った。

 

 結晶が、いつもより明るく光ってた。

 気のせいじゃない。

 絶対、いつもより明るい。

 

 白い光。でも、いつもの静かな光じゃない。

 なんか、脈打ってる気がする。

 ゆっくりと、明るくなって、暗くなって、また明るくなって。

 呼吸してるみたいに。

 

 遠くを見たら、立入禁止区域の方も光ってる。

 スペースゴジラのシルエットが、うっすら見える。

 背中の結晶が、光ってる。

 いつもより、強く。

 スペースゴジラも、何か感じてるのかな。

 明日、自分が攻撃されるって、わかってるのかな。

 

 どこかで、犬が吠えてる。

 わたしは、しばらくそこに立ってた。

 結晶の光を、見てた。

 きれい。

 今日は、特にきれい。

 

 でも、明日には、消えるんだ。

 

 

5月6日(月)晴れ

 

 学校は休校になった。「作戦中は自宅待機」って連絡が来た。

 朝8時。

 サイレンが鳴った。

 これまで聞いたことない種類のサイレン。長くて、低い音。ウォーーーーーンって、ずっと鳴り続ける。

 胸に響く。不安になる音。

 防災無線から、アナウンスが流れた。機械的な女性の声。

 

〈これより、Gフォースによるスペースゴジラ討伐作戦を開始します。住民の皆様は、屋内に退避し、窓から離れてください。繰り返します――〉

 わたしたちは、居間に集まった。

 お父さん、お母さん、ケンジ、わたし。

 4人で、テレビの前に座った。

 

 テレビをつけた。

 どのチャンネルも、生中継してる。

 ヘリからの映像。

 スペースゴジラが映ってる。

 市役所跡地に座ってる。いつも通り。

 でも、今日は違う。

 周りに、Gフォースの部隊がいる。

 

 その前に、メカゴジラ機龍が立ってる。銀色の装甲が、朝日を反射してまぶしいくらいに光ってる。

 背中にケーブルが繋がってる。黒い太いケーブルが、地面を這っている。

 そういえば有線式に改造したってどっかで聞いた気がする。じゃあ、あれは電源ケーブルか何かなんだろうか。なんだかエヴァンゲリオンみたいだと思った。

 

 画面の下に、テロップが流れてる。

【作戦開始まであと5分】

 

 アナウンサーが言った。声が震えてる。

〈機龍隊、配置につきました……!〉

〈間もなく、攻撃が開始されます……!〉

 

 お母さんが、わたしとケンジの手を握った。

 お母さんの手は、冷たい。汗ばんでる。

 ケンジの手は、温かい。でも震えてる。

 お父さんは、じっとテレビを見てた。

 お父さんの顎に、無精髭が生えてる。

 呼吸の音が聞こえる。深く、ゆっくり。

 

【作戦開始まであと1分】

 

 時計を見た。8時14分。

 秒針が、カチカチカチカチって音を立てて動いてる。

 やけに大きく聞こえる。

 

【作戦開始】

 

 画面の中で、メカゴジラ機龍が動いた。

 腕を上げた。ゆっくりと。関節部分からシューって音がする。

 肩のミサイルランチャー部分が開いた。

 

 一瞬の静止。そして、光った。

 

 ミサイルが発射された。

 何発も。何十発も。

 白い煙を引いて、スペースゴジラに向かって飛んでいく。

 弧を描いて。美しい軌跡。

 

 当たった。

 

 爆発。

 白い光。オレンジの炎。黒い煙。

 

 その瞬間、家が揺れた。

 ガタガタガタって。

 窓ガラスが、ガタガタ鳴った。

 テレビが揺れた。

 

 遠くで爆発音が聞こえた。

 ドォンって。

 耳が痛くなる。

 空気が振動してる。

 

「きゃっ」ってお母さんが小さく叫んだ。

 ケンジが、わたしにしがみついてきた。小さい体が震えてる。

 

 テレビの中で、煙が晴れた。

 スペースゴジラが、動いた。

 立ち上がった。ゆっくりと。巨大な体が起き上がる。

 背中の結晶が光り始めた。白く。

 

 スペースゴジラが、吠えた。

 咆哮が聞こえた。

 テレビからじゃない。外から、本物の。

 

 グオオオオオオオオォォォォ――――――……!!

 

 すごい音。地響き。

 家全体が震えた。

 食器棚から、カタカタって音がする。

 

「お父さん……」ってお母さんが言った。

 お父さんは何も答えなかった。ただ、じっとテレビを見てる。

 

 テレビの中で、スペースゴジラが反撃した。

 肩の結晶が、もっと強く光った。白い光が集まってる。収束してる。 

 ビームが出た。オレンジ色のコロナビームだ。

 太い光の筋が、空気を切り裂いて飛んでいく。

 

 メカゴジラ機龍に当たった。 

 バチバチバチって音。電気の音。

 機龍の装甲が光り、ビームが弾かれてる。四方に散ってる。

 機龍は耐えた。一歩も引かない。

 装甲が煙を上げてる。でも、壊れてない。あれが対電磁波コーティングとやらだろうか。

 

 機龍が前進した。

 ズシン、ズシンって。一歩ずつ。

 有線のケーブルが、引きずられていく。アスファルトを擦る音。

 

 機龍の口が開いた。

 中が光った。青い光。

 

 メーサー砲が発射された。

 青い光線が、スペースゴジラに直撃した。

 爆発。

 また家が揺れた。

 お父さんが「おい……」って言った。小さい声で。

 

 戦いは、それから2時間続いた。

 爆発と、光と、地響き。

 ずっと。

 機龍は何度も攻撃を受けたけど、止まらなかった。

 有線だから、電磁波の影響を受けない。

 ケーブルが切れても、すぐに繋ぎ直す。

 背後で、機龍隊の隊員たちが動いてる。必死に。

 

 スペースゴジラも、負けてない。

 コロナビームを何度も撃つ。尻尾を振る。街中の結晶が浮き上がって、ミサイルみたいに飛んで行く。

 でも、少しずつ、動きが鈍くなってる。

 

 テレビの映像は、何度も途切れた。電磁波の影響かもしれない。

 砂嵐になったり、また戻ったり。

 でも音は聞こえる。外から。本物の音が。

 

 わたしたちは、ずっと居間にいた。

 動けなかった。

 トイレにも行けなかった。

 

 時計を見た。10時過ぎ。

 もう2時間以上経ってる。

 

 画面の中で、機龍がスペースゴジラに組み付いた。

 抱きかかえるように。

 そして、何かを発射した。

 至近距離で。

 

 すごい光。

 画面が真っ白になった。

 

 家が、今までで一番大きく揺れた。

 お母さんが「きゃあ!」って叫んだ。

 ケンジが泣き出した。

 わたしは、テレビを見てた。

 

 光が消えた。

 煙が、ゆっくり晴れていく。

 

 スペースゴジラが、氷漬けになっていた。

 

 氷漬けになったスペースゴジラは、テレビの中でゆっくりと横に倒れた。

 巨大な体が傾いて、傾いて、そして地面に激突した。

 ドォォォォン。

 土煙が上がった。もうもうと。

 

 氷漬けのスペースゴジラは倒れた拍子に粉々に砕けて、動かなくなった。

 静寂。

 数秒間、誰も何も言わなかった。

 アナウンサーも黙ってた。

 そして……

 

〈……倒れました! スペースゴジラが倒れました!〉

 

 アナウンサーが叫んだ。声が裏返ってる。

 

〈Gフォース機龍隊、作戦成功です! 作戦成功です!〉

 

 お母さんが泣き出した。

 声を上げて泣いた。顔を両手で覆って。肩が震えてる。

 

 お父さんは、ぼそっと「終わったのか」って言った。

 お父さんの目も、濡れてた。

 

 ケンジは「やった!」って叫んだ。でも、泣いてた。泣きながら笑ってた。

 

 わたしは、窓の外を見た。

 立ち上がって、窓に近づいた。

 

 遠くに、煙が上がってた。黒い煙。もくもくと。空に向かって、高く高く。

 

 結晶は、まだ光ってた。

 でも、なんか、光り方が弱くなってる気がした。

 さっきまでの脈打つような光じゃない。

 弱々しく、点滅してる。

 消えかけてる。

 

 スペースゴジラが、いなくなった。

 

 2年9ヶ月。

 終わった。

 

 本当に、終わったんだ。




ヤシロ少佐についてはこちら
https://syosetu.org/novel/327003/
https://syosetu.org/novel/327373/

Q、機龍ミュージアムの話でスペースゴジラ出てこなかったじゃねえかどういうことだ
A、こまけえこたぁいいんだよ

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