終末世界の転生傭兵は、かつての愛機と再会して無双する。   作:Yura0628

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相棒と共に

《お久しぶりです、マスター》

 

 

言いながら双眸に蒼い光を灯したかつての愛機、センチネルを見上げて俺は息を吐く。そして—————

 

「ここ最近、俺の端末に妙なメッセージを送って来たのはお前だな?」

 

——尋問の様な言葉から入った。

 

もっと再会を喜ぶような言葉をかけろと言われるかもしれんが、これだけは言わせて欲しい。だって数週間に渡って5分おきに文字化けした文章と、多分ここの座標であろう数列が送られてくるんだぜ?

 

端末変えても送られてくるし、やられる側からしたらかなりホラーだった。

 

まぁ、文字化けした文章をどうにか直してみたら前世で使われてた軍事用語が大量に出て来て、薄々コイツの存在は感じてたってとこだ。

 

《そうですね。タイタン艦隊のデータベースに侵入した際、マスターの遺伝子と酷似する情報を発見しまして。マスター本人でなくとも何らかの関係性があると思い、接触を試みさせて頂きました》

 

「だからと言ってタイタン艦隊の司令部にいきなり通信ぶっ込むとか何やってんだ。司令室の連中腰抜かしてたぞ」

 

《それはこちらのセリフです。あくまでマスターの子孫等と思っていたらマスター本人の人格を宿す人間が来たのですから。古来より不思議な事象自体は存在していましたが…まさか実際に目にするとは》

 

「それは同意」

 

当事者である俺も思考停止でしか現実を呑み込めなかったんだし、外部から観測してたコイツが驚くのは無理もない。

 

「まぁとにかく…再びお前に会えて嬉しいよ」

 

言って、俺は掌をセンチネルの装甲に添えるとグローブを挟んで冷たい金属の感触が伝わってくる。かつての愛機…いや、かつてじゃないな。

 

永遠(とわ)の相棒に触れながら、俺は静かに前世の事を思い出す。

 

出会った当初はろくに動かせなかった事。初めての出撃の際敵に囲まれコイツの自動操縦に救われた事。慣れて来た時に油断して叱責された事。満身創痍になりながらも殿を務め切った事。督戦隊相手に共に大暴れした事。そして……

 

 

俺を看取ってくれた事。

 

 

他にもまだまだあるが、振り返るのは後にしよう。タイタン艦隊が、今の仲間達が、危機に陥っている。

 

《私も、マスターと再会できた事を嬉しく思います》

 

「ははっ、そりゃ良かった。さて、思い出話に浸りたい所だが…昔と同じように俺と翔んでくれるか?」

 

《勿論です》

 

 

 

 

《当機の主な機能の修復は既に終了しています。いつでも全力戦闘可能です》

 

「分かった。なら手加減はなしだ。最初から全開でいこう」

 

《了解》

 

コックピットシートに座り、俺はセンチネルの各システムを起動していく。ディスプレイには懐かしい画面が映し出され、ダイレクトリンクから様々な情報が頭に流れ込んでくる。

 

《サブシステム起動。コンディションチェック実行します……完了。動力炉、フレーム、各センサー、スラスター、装甲、武装、全て異常なし。動力炉起動可能》

 

「火を入れろ」

 

《了解》

 

センチネルの言葉が響くと同時に、機体の動力炉が甲高い音を立て起動。これによりフレームの隅々にエネルギーが行き渡り、俺は機体を立ち上がらせる。

 

そしてグリップを握り締め、目を閉じた。

 

(あぁ、手に馴染む。昔を思い出すぜ…)

 

《全起動シークエンス完了》

 

目を開く。

 

視界に映るのかつての同胞達に心の中で別れを告げ、俺は言う。

 

「さて…行こうか、相棒(メインシステム起動)

 

《了解、メインシステム起動します(お供させて頂きます)

 

爆音と衝撃。機体のスラスターに火が入り、動力炉の放つ音がさらに甲高くなっていく。さながら鋼の咆哮のように。

 

更に背面のウイングバインダーが展開され、機体に纏わりついていた蔦を引きちぎる。そして腕を動かして俺は周囲の足場を払うと、一歩踏み出して()()()()()()()を踏み砕き————

 

 

「ハル・アマツキ、センチネル。行くぞッ!」

 

《スラスター全力噴射》

 

 

———————機動。

 

 

瞬間、俺はアンタレスを圧倒する推進力で残っていた格納庫の天井を吹き飛ばし、大空へと翔び出した。

 

 

 

《ではマスター。本日のオーダーを》

 

心なしか楽しそうな声音で言ってくるセンチネル。…それは俺も同じ。

 

「オーダーは、敵ネームドを撃破し味方艦隊を救う、だ。いけるよな?」

 

《えぇ、実に簡潔で…昂るオーダーです》

 

「よーし、じゃあ行くとしますか…!」

 

スラスター全開。殺人的な加速を以て、俺はタイタン艦隊を目指すのだった。

 

 

 

 

『こちらイオタリーダー!敵ネームドにより部隊壊滅!』

 

『クソ、早すぎる…!』

 

「デルタチームが向かうまで堪えろ!ッなんてことだ…」

 

通信機に向かって叫び、自身の席に座り込む。

 

この重航空母艦オーケアノス管制員〈スカイホルン〉を務める私「ブライアン・ロウ」は今、目の前で消えていく味方の反応を前に拳を握りしめていた。

 

(クソ、ハルをやられ、今なお味方が墜とされていくのを見てるしか出来ないのか…!)

 

タイタン艦隊の現状は、ハッキリ言って最悪に近いだろう。

 

撃沈された艦こそ居ないものの大半の艦が損傷し、イーグルにより航空隊に大きな損害が出ている。必死の防空戦闘で敵通常部隊の数は減って来てはいるが、イーグルが健在な今、そんな事実は気休めにもならない。

 

…ネームドは単機で一つの勢力を壊滅させ得るからこそ、ネームドと呼ばれているのだから。

 

そしてハルがいない今、我々に希望があるとしたら「彼ら」だけだ。

 

『こちらデルタリーダー。敵ネームドを捕捉した。これより交戦に入る』

 

『すまない…死ぬなよ!』

 

デルタチーム…死神部隊とも揶揄される精強な男達だ。部隊単位での戦力評価はアンリアルと同等。今は彼らに賭けるしか…

 

『おい待て、敵のレーダー反応が消失!奴が消えた!』

 

…何?

 

慌てて自身の広域レーダー画面を確認する。彼らの機載レーダーと違い、オーケアノスのレーダーは圧倒的な探知能力を誇るため、こちらでなら捕捉できると思ったからだ。

 

しかし、レーダー画面に映るのは味方の反応と、残存する敵通常部隊のみ。

 

敵部隊はナンバリングが完了しているためイーグルが敵に紛れ込むと言ったこともあり得ない。ならば、奴はどこに。

 

『ガンマリーダーより総員!敵機艦隊直上ッ!来るぞ!!』

 

瞬間、ガンマリーダーの怒号が艦隊通信に響き渡った。

 

また同じタイミングで隣を航行していた巡洋艦から炎が上がり、爆発の衝撃波が艦橋を揺らす。

 

『巡洋艦クレイオス大破!!』

 

『何て威力だ…』

 

『また消えたぞ!』

 

混沌と化す艦隊通信。各艦からバラバラに対空砲火が撃ち上がるが、イーグルを捉える事は出来ない。

 

-警告 敵機本艦直上より接近-

 

「敵機本艦直上!」

 

「撃ちまくれ!」

 

次にイーグルが狙いを定めたのは、この艦。

 

レーダーに映るイーグルは圧倒的な機動力で弾幕を掻い潜りみるみる内に接近してくる。ハルはこんな化け物を相手にしていたのか…

 

『この程度か。タイタン艦隊』

 

低い男の声がオープンチャンネルから響くが私は気にする余裕もなく、ただ艦橋の目の前でビームライフルを構える深緑の人型を眺める事しか出来ない。

 

(終わったか)

 

『去ね—————ガッ…!?』

 

 

 

しかし、奴の砲口が火を噴くことはなく代わりに私の視界に入ったのは、蒼と黒の人型がイーグルを蹴り飛ばす姿だった。

 

 

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