終末世界の転生傭兵は、かつての愛機と再会して無双する。 作:Yura0628
深緑の人型…イーグルを全力で蹴り飛ばした俺は、冷や汗を掻きながらオーケアノスの艦橋を眺めていた。
「間に合ったか」
『ハル…お前…』
「詳しい説明は後だ。今は奴をぶっ潰す」
それだけ言い放ち、俺はこちらを睨むイーグルへ視線を向けた。突然のことに惚けることなく臨戦体制に入っているのは流石ネームドと言ったところだな。
『貴様、何故戻って来れた』
「掻い摘んで説明するなら、偶々俺の落ちた先に偶々太古のTFがあって、偶々稼働可能だっただけだ。簡単だろ?」
『巫山戯るな。そんな理由で納得するわけがないだろう』
「まぁだろうね」
俺も信じる気しないし。ただ別に嘘は言ってない上、作り話するとしてもどう言えと。あれか?俺には前世があって、前世の愛機が墜落した島に眠ってましたとでも言えば良いのか?
絶対そっちの方が納得しないだろうけど。
《マスター、今はそのような些事に意識を割くべきではありません》
「ッ、確かにそうだな」
センチネルに言われ、俺は改めてイーグルに向き直る。
『答える気はない…と』
「答えれないってのが正しいけどな」
『そうか。ならば戦ってその化けの皮を剥いでやる』
剣が閃めいた。
奴のビームセイバーは上下から俺を挟み込むように振るわれる、それこそ大鷹が大きな足で獲物を掴み取る様に。
だが、俺は焦る事なく機体を捻って攻撃を躱し、お返しにその胴体へ殴打を叩き込んだ。
『グッ…!?』
呻き声を上げるイーグル。やはり機動性が高い故、耐衝撃性は低いようだな…!
《ビームブレード展開》
「ハァァッ!」
『このッ…!』
ヨロけたイーグルへ、俺は腰にマウントしていたビームブレードを抜刀し切り掛かる。
…交差、そして閃光。
蒼い刃と薄緑の刃がお互いの粒子を喰らい合い、周囲を明るく照らし出す。同時に白い火花が飛び散って、お互いの装甲に熱を持ったまま付着。僅かに表面を融解させた。
そして…イーグルの剣が徐々に押し込まれていく。
『ッ…!』
《機体パワーではこちらが上の様です》
「らしいな!」
センチネルに言われるまでもなく、俺は機体を押し込んでいく。奴の腕は既に直角に曲がり、今にも自分の刃で自分を傷つけんとしていた。しかし、イーグルはこの様な状況でも的確にこちらの隙を突いてくる。
『んのッ!』
「チッ!」
俺が機体を前のめりにさせ過ぎたせいで、イーグルは下方へブーストし離脱に成功。ビームライフルでの射撃戦に移行した。機動性ではほぼ互角。だが俺の方が被弾面積が大きく余計な機動をする必要がある分、やや不利か。
…答えは否だ。機体名にある007BW…
《スターウイングシステム起動。ノヴァ粒子放出開始》
瞬間、背部ウイングバインダーがさらに細かく分割され、その隙間から蒼白い粒子が放出される。
あくまでこの粒子は特殊推進装置〈スターウイング〉が稼働する時に生まれる副産物だが…見た目の威圧感には大きく寄与するらしい。
『なんだ、その姿は…』
「俺も原理はよく知らん。ただ、こうなった俺達は
言い放つと同時に、俺はペダルを踏み込み全速力でイーグルに突撃。
先程とは比べ物にならない加速で、一気に懐に潜り込んだ。
『なんッ…』
「遅ぇ」
一閃。
…大鷲の爪と守護者の刃が、咆哮る。
◇
「ハァ…ハァ…」
今俺は、これまで相対してきた中で最強の敵と戦っている。
一度は墜とした筈の奴は、どういう訳か新たな翼を得て戦場に舞い戻って来た。
『やるッ…』
「クソッ」
振り下ろされる刃を左手に持たせたビームセイバーで逸らし、俺はバックブーストで距離を取る。しかし奴は、音速を軽く超えた動きにもピタリと追従して来て再び切り掛かって来た。
これだけの加速性能…ユニークフレームであるこの〈ファルコン〉に匹敵、或いは上回っているだろう。それに機体パワーも機動性も奴が上。一体この機体は…
『洒落くせぇ…!』
「ハァッ!」
撃ち放った光条はその尽くが躱され、逆に飛来する蒼白いビーム粒子は一切のブレ無くこちらを捉えてくる
受け止めるシールドも、何時までもつか…
(まさか立場が逆転するとはな)
数時間前、俺が奴に対して言い放った機体性能による差を、俺は今容赦なく叩き付けられている。
そしてあの時言ったからこそ、俺は自論が正しかったと思考する。
…機体の性能はパイロットを閉じ込める檻の様なものだ。檻が小さければ小さいほど、パイロットの
要はそのパイロットの力量に合った檻、機体で無ければ、やはりパイロットの実力を余す事なく引き出す事は出来ない。
そして、目の前で切り掛かってくる敵機は奴に完璧に対応している機体と言えるだろう。
ここまでパイロットと適応する機体など、如何に柔軟性の高いTFと言えどそう多くはない筈だ、おまけに、ユニークフレームを超え得る程の高い性能で。
一体何処が開発して、奴に渡したのか。
……同時に、蒼穹の番兵。貴様もだ。
才覚や経験だけでは説明が付かない。まるで奴が機体そのものになっているかの様な感覚。少なくとも俺の記憶に、今目の前に居る敵機を蒼穹の番兵が動かしていたという情報は無い。
だがシミュレーター訓練だけでここまで動けるはずもない。
ならば貴様は何処で訓練し、ここまで高い練度を獲得した。
何故貴様は、アンタレスなどと言う不釣り合いな機体に乗っていた。
「———貴様らは一体何者だ」
『…何?』
沈黙。別に構わない。元より答えなど求めていない。
ただ、疑問を投げ掛けずにはいられなかった。
『俺達が何者だ、ね』
しかし奴は俺の問いに動きを止め、蒼い双眸を真っ直ぐ向けてくる。
『そうだな…俺、いや俺達は、〈
これで俺の正体が分かったら大したもんだけどな。言いながら奴は笑い声をあげ、蒼の剣閃が俺を断たんと迫り来る。
それを受け止めながら俺は奴が言った言葉を脳内で反芻し、自身の記憶に該当するモノを探し始め……掬い上げた。
数年前、俺が出向いた先で見つけた太古の戦艦、その中の文献に十連の導星の名前があった筈だ。
詳細は分からなかったが、かつて存在した10人のエースパイロットと、10機のカスタムフレームがこの様に呼ばれていた事、それだけは憶えている。
だが、これが本当なら何故大昔の人間と機体が、今ここに在る。
コールドスリープと言えど、数千、数万年の時を経て人体を保存する事は困難だ。幾度も滅びを経験しているこの星ならば、尚更。
(…いや、今はこの問いの答え合わせをしている場合じゃない)
兎も角、俺は目の前の敵機を斃しタイタン艦隊に打撃を与える必要がある。
例え本当に太古のエースが相手だとしても————
『〈ジェネラル〉よりイーグル。司令部から帰還命令が出た。直ちに現空域より離脱して帰還せよ』
「…何だと」