アリス「パンパカパーン!八握剣異戒神将魔虚羅が仲間になりました!」   作:太平洋クラゲ

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なんか光った!

「……先生?」

 

「はい」

 

「この、白いこの……人?怪獣?は……何ですか?」

 

「八握剣異戒神将魔虚羅です」

 

「なんて?」

 

 ビナーを分からせた次の日、先生とゲーム開発部一同、魔虚羅は冷酷な算術使い(?)こと早瀬ユウカに呼び出されていた。

 理由としては、『アリスが呼び出した魔虚羅についての推測や噂がミレニアム内に蔓延し、少々看過できない騒ぎになってきたため事実確認をしたい』ということらしい。

 

「……まあ良いでしょう。それで、その〜……マコラ、でしたっけ?まずどういう存在なんです?」

 

 アリスの背後に静かに佇む魔虚羅を指差しながら、ユウカは先生たちに質問を投げかけた。

 

「十種影法術における最強の式神!」

 

「ほんとになんて?」

 

「まあユウカに分かりやすく言ってあげると、多分キヴォトスで一番強いって事!」

 

「その通りです!マコラはlv99のシークレットキャラです!」

 

「……もう頭痛いんだけど……百歩譲ってこれが最強だとして、じゃあなんでそんなのがここにいるのよ」

 

「まあそれはかくかくしかじかなんだけど」

 

「省略せずにちゃんと教えて!」

 

 どうやらユウカは事情を一から十まで知りたいらしい。しょうがないので、モモイはしっかり説明することにした。

 

 呪術廻戦という漫画を読んでハマったこと、アリスがどこか伏黒恵っぽかったので試しに布瑠部由良由良させてみたら何故か魔虚羅が出て来たことなどをなるべく分かりやすくユウカに話してみた。その結果───

 

「ゴメン、ぜっんぜん意味分かんない」

 

「えー!?」

 

「……まあ、だろうね」

 

 何故か全く伝わらなかった。

 

「もう最初っから意味分かんない。さっきから何を言ってるの?」

 

「なんで分かんないのー!?それでも会計!?」

 

「あのねぇ、私はセミナーの会計担当であって怪獣担当じゃないの!!」

 

「ユウカ、それは違います!マコラは怪獣ではなくて戦士です!」

 

「どのみち私の担当じゃないのよ!!」

 

「えっ、ってことはセミナーの怪獣担当も戦士担当もいるってこと?」

 

「ややこしくなるから先生は口閉じててください!!」

 

 何度も深呼吸しながら、内なる怒りを抑え込もうとするユウカ。そんな彼女に同情しまのかどうかは分からないが、モモイ達も魔虚羅をどうするかを本格的に考え始めた。

 

「先生、結局魔虚羅どうする?」

 

「うーん……魔虚羅に聞こうと思っても、アリスの命令聞くだけだしなぁ……あ、方陣がヘイローに似てるし、生徒ってことに出来ないかな?」

 

「方陣以外何も似てないでしょ」

 

「でもほら、獣人とかロボットとかいるしさ。なんかそんな感じで」

 

「先生普段からその人達のことどういう目で見てるの?」

 

「……そ、それなら……試作中のロボットってことにするのは、どう?」

 

「あ、それいいじゃん!ユズナイスアイディア!……あーでも、なんのために試作してるってことにしよっか」

 

「……まあこの大きさなら、「重いものを運ぶためのロボットです!」とか言ったら通用しそうな気するけど」

 

「確かに。実際ビナーも殴り飛ばせる訳だし、運搬くらいなら出来そうだよね」

 

「……えぇ?アレ殴り飛ばせるって何?」

 

 さっきまでの少し重めの空気はどこへやら、和気藹々とした空気が部屋に広がり始める。内心ユウカの説教を少し恐れていた先生も、このノリならば多分大丈夫だろうと、肩の力を緩めはじめ───

 

「運搬……あ!思いつきました!」

 

「はいそこのアリス!」

 

「マコラが皆さんを運んだら、とっても速く移動できると思います!」

 

「あー、タクシー!それ良いね!じゃあちょうど良いし、ユウカちょっと乗ってみて!」

 

「え、なんでよ?」

 

「いやだって、この場で一番重……」

 

「───何ですって?」

 

「あっ」

 

 そして、強張らせた。

 

「モモイ、今まさか……」

 

「い、いやいやいやいやいや違うって!ほら、この中でユウカって背高めじゃん!だからその分、ね!」

 

「先生の方が高いけど」

 

「あーでもほら!先生ガリガリだから!」

 

「え?」

 

「……まあ、それはそうね」

 

「え?」

 

「でしょ!?それにさ!やっぱ魔虚羅からしても太い方が安定感が───」

 

「……太い?」

 

「………………………………あっ」

 

 その瞬間、モモイは選択を間違えたことを瞬時に理解し。同時に、悟った。この先、自分に何が起きるのかを。

 

「マヌケは見つかったみたいだね、お姉ちゃん」

 

「……………」

 

「……………ユウカ」

 

「何?」

 

「ごめんなさ───い!!!」

 

「許す訳ないでしょうがァ─────!!」

 

 ユウカは強く握りしめた拳を掲げ、モモイ目掛けて振り下ろした。

 

 この時、早瀬ユウカには異変が起きていた。

 普段ならば、ただ脳に熱を加えるだけの怒り。しかし、意味不明な噂や陰謀論を唱え出す生徒、正体不明の言葉や怪獣……これらの事象を2日間立て続けに受けたことにより、彼女の怒りは急速に増幅され全身から溢れ出していた。現在の彼女はその溢れ出した怒りという負のエネルギー……『呪力』を無意識の内に、それも術師に匹敵する精度で操作し、拳を強化していた。

 早瀬ユウカ、齢十六にして無意識の呪力操作に成功した瞬間である。

 

(……あれ、なんか、すごい嫌な予感が……)

 

 また、呪力を用いた戦闘においてはごく稀にとある"現象"が発生する事がある。その現象は、打撃との誤差0.000001秒以内に呪力が衝突する事で発生する()()()()()。あらゆる要因が複雑に絡み合う現象故、それを狙って出せる者は"例外"を除いて存在しない。だが……それは逆に言えば、()()()()()()()()()()()()()()()()()。そして……この日、早瀬ユウカは()()()()()()

 

「モモイッ─────!!」

 

「ちょっ、待っ───」

 

 早瀬ユウカの拳骨が才羽モモイの脳天に突き刺さると、同時に───キヴォトスにて初の()()()()()()()()

 

「ぐへぇあ!!??」

 

 結果として、モモイはおおよそ少女とは思えぬ断末魔をあげながらその場に倒れ伏せたのだった。

 

「………"黒閃"……!?いや、そんなことよりモモイ、大丈夫!?」

 

「……爆発で大怪我した時より痛い……」

 

 その場にいる皆(魔虚羅を除く)は呆気に取られていたが、状況を把握すると慌ててモモイに駆け寄った。

 

「お姉ちゃん大丈夫!?凄い音鳴ってたけど!?」

 

「……それに今、なんか黒く光ってた……」

 

「ユウカ、今のは何ですか!?」

 

「え、ええ?いや、私もよくわかんないわよ……ね、ねぇモモイ。大丈夫??」

 

「……うーん……多分……?」

 

「……あーもー……どうして……?私そんなに力入れてなかったのに……」

 

 いくら怒っていたとは言え、それほど強烈な一撃を与えようとした訳ではない。せいぜいちょっと赤くなる(キヴォトス人基準)程度で済まそうとしていた彼女にとって、この状況は予想外であると同時に強い罪悪感を覚えてしまう物だった。

 

「……まあユウカ、自分を責めないで。これは……また、うん、事故だから」

 

「……先生……」

 

 先生はユウカの肩に手を置きながら、そう呟いた。

 

 この後モモイは魔虚羅onアリスによって爆速で近くの病院に運ばれた───その際何やかんやあって不良が失神したり犯罪グループが壊滅したり黒服が轢かれたりしたが、どれも些細なことである───。そして検査の結果、どうやら軽い怪我で済んでいたらしく、さほどしない内に保冷剤を頭に乗せて帰ってきたが……それからユウカのゲーム開発部への態度は少し甘くなったという。

 

 

 

 だがモモイが調子に乗ってしまったため、3日としない内に元に戻ってしまったのだとか。




登場人物
・先生
 シャーレの顧問。この後ユウカのメンタルケアをした。魔虚羅とか黒閃とか呪力とかキヴォトスに存在するはずがないと思ってはいるが、なんかもうそういう物だとして受け入れようと思っている。

・才羽モモイ
 ゲーム開発部1年生。キヴォトスにおいて初めて黒閃を喰らった人。めちゃくちゃ痛がってはいたが、案外余裕があったし、たんこぶが出来たくらいで済んだらしい。

・才羽ミドリ
 ゲーム開発部1年生。昨日から何が起きてるのかいまいち分かっていない。モモイのことは自業自得だとは思っているが、それはそれとして心配していた。

・花岡ユズ
 ゲーム開発部1年生。魔虚羅には少し慣れたが、全然怖い。まだまだ口数が少なくなりそう。

・天童アリス
 ゲーム開発部1年生。魔虚羅タクシーの考案者。モモイ搬送時はとても速くてとても楽しかったらしい。

・八握剣異戒神将魔虚羅
 歴代十種影法術師の中で1人たりとも調伏出来たものはいない最強の式神。今回はほぼ何もしていない、2話目でこれはいいのか?あと最近戦歴に宇宙人が加わった。

・早瀬ユウカ
 なんか呪力操作出来たし、なんか黒閃も出た。モモイに思った以上のダメージを与えてしまったことをすごく申し訳なく思っている。後日しっかり謝った。

・黒い火花
 微笑む相手を選ばない。
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