現代パロな多重クロス世界だと思ったらゴジュウジャーな仮面ライダーの世界でもあった件 作:名無しのモンスター
シンジケートのアジトとして使われている、とある組織の薄暗い地下の一室。
否。地下の一室である事は確かだが、首魁がよく座っている場所では深緑色の蛍光灯で照らされており、様々な巨大カプセルやフラスコなどがある。シンジケート用の科学室である事だろう。
その場所にて、1人の男性がフラスコや三角フラスコを持ちながら、何かしら実験をしている様子が見られた。
その男性の姿は、肥満体の巨体を灰色のラボコートで包みんでおり、厚いレンズの眼鏡が鼻梁にずり落ちていた。
寝癖で跳ねていたらしい白髪を下ろし、三角フラスコをテーブルに置いた左手で口髭を撫でながら、歪んだ笑顔でフラスコに入っていた藍色が混じった銀色の液体を、リング状の型にゆっくりと流し込んだ。
するとそれが囲んでいる丸い型に入っている、青い液体と共に、2つの液体が淡く光り輝き始めた。
「ウムッフッフッフッフ……今回も成功しそうであるな。さてさて、今回の
歪んだ笑顔のまま不気味な笑い声を静かに出しながら、科学者らしきその男性はフラスコを置いた右手で横長い長方形の巨大な型を手に取り、液体の入っている型と重なるように覆い被せた。
するとその型の隙間から、何やら黒い光が漏れ出し、それが科学室を包み込んだ。
それが治ったところで、男性が口髭を撫でながらゆっくりと覆い被さっていた型を取る。
そしてリング状の型にて、何故かそこに入っていた液体が一滴もなく、なんと代わりにデシアディスクが嵌め込まれていた。
どうやら完成されたと思われるそれを手に取り、またもや歪んだ笑顔を浮かべた。
「ウム、いつ見ても見た目の出来は素晴らしいものである。後は性能面がどうなのかだが……上手くいかずとも、次の実験に活かせれば良いため後回しである」
ゆっくりかつ繊細に、生まれたての子猫を愛でるように撫でながら、男性はそう呟く。それはまるで、新しいおもちゃや新しい家電・新しいスマホの性能を使いたくて堪らない様子の、好奇心旺盛な大人を見ているようだった。
科学者が乾いた笑い声を出している中、化学室の自動開閉式のドアの開く音が聞こえてきた。振り向けば、そこにいたのは黒いフードの長身の男性──シンジケートの首魁だった。
「デイリー実験とかいうヤツは、今日も成功したようだな…… ウィリンネスよ」
「おぉ、これはこれは首魁殿。本日もお疲れ様でありますぞ」
自身の上司が来た事に嬉々としているのか、科学者──ウィリンネスはデシアディスクをゆっくりと置き、即座に右膝をついて敬意を示しながらの挨拶をする。
そんな彼を手で制しながら、首魁が再び口を開く。
「それは別に構わぬ。して、今回のデシアディスクはどうなのだ」
「ハッ、こちらでございます。改善点があれば、後々お教えいただければ幸いであります」
即座に指示に従ったウィリンネスは、完成させたそのデシアディスクを首魁に差し出す。それをゆっくりと眺めた首魁は、フードの奥でフッと微笑みを浮かべた。
「うむ、今回もなかなかの良い出来であるな。早速後日使わせてもらおうぞ」
「ハッ‼︎ ありがたきお言葉であります‼︎」
ウィリンネスが不気味ながらも嬉々とした笑顔を再び笑顔を浮かべる中、首魁は隅にあったケースに入っている、ウィッシュディスクらしきものに視線を向ける。それに何か思うところがあるらしく、ウィリンネスに問いかける。
「ウィリンネスよ、このブランクとも断定しきれていないウィッシュディスクの解明は進めているのか?」
その言葉を聞いた途端、ウィリンネスは一瞬肩を振るわせ、申し訳なさそうな表情を浮かべた。
「それが……性質・機能などを色々と調べておりましたが、なかなか上手くいっていないものでありまして……」
「未だ分析できていない……そういう事か?」
「ハッ、申し訳ございません……」
「……我が組織の科学者でも未だ解析不可能な程の、謎のウィッシュディスク……か」
罰の悪そうな表情を浮かべるウィリンネスを横目に、首魁はウィッシュディスクらしきものの1つを手に取り、それを眺めた。
突如として出現したものの、それが如何なる能力を持っているのか。そもそもどのようにして使用するのか。使用しても何の影響もないのか……
様々な疑念を解消しない限り、謎のウィッシュディスクを手中に収めるのは困難だろう。首魁はスイッチの部分を指で軽く弾きながらそう解釈した。
そして手に取っていた謎のウィッシュディスクを元に戻し、ウィリンネスに告げた。
「まぁよい。お前は今後、引き続きレガシーディスク回収のためにデシアディスクの開発を続ける傍ら、そのウィッシュディスク達の解析を試みるのだ。戦力を増やせる事に越した事はないのだからな……良いな?」
「ハッ‼︎ 無論そのつもりであります‼︎」
了承の言葉をウィリンネスの口から聞いた首魁は、フンッと掠れた声を出しながら科学室を後にした。部下に様々な役割を命じた今、自分が今すべき事をやるだけ……何処かそう言っているかのように、フードの奥に隠れている瞳が、そう語っているように感じさせていた。
「解明し、我等が使える時がくるのが楽しみだな……」
フードの奥底にて、期待に胸を昂らせているかのように不気味な微笑みを静かに浮かべながら……
♢
優一との特訓が終わった翌日の放課後の事。今日はバイトがあるとの事で……
「あ、ひとりちゃん‼︎
「あっはい……‼︎」
「おう、ちょうど良いところで集まったしな」
実は俺、STARRY……つまりは『ぼっち・ざ・ろっく!』の結束バンドのメンバーがいるライブハウスでバイトしているんだよね。バンドの経験は無いけど働けるかなって呟いてたら、喜多さんが『先輩達も店長さん達も優しいから相談するね』って薦めてたんだよな。
それからはぼざろの原作知識を用いて、分かんないフリをしながらも素人なりに意見を出してたら、なかなかの評価を貰っちゃって……
今では新たにバンドの知識を覚えるのにも力を入れております。原作知識が通用しなくなる場面が起きたら、結束バンドの役に立たなくなるからな。
「それじゃあそうと決まれば行くか───」
「あ、3人とも。ちょうど良いところにいた」
「「「んっ?」」」
早速向かおうかとしたところで、聞き馴染みのある声が聞こえてきたため、俺達は3人揃って振り返った。
「お疲れ様、3人とも。ごめんね、急に呼び止めて」
「お疲れ様です」
「なんだ、立香にマシュじゃねェか」
そこにいたのは、俺のクラスメイトでルームメイトの立香(♂)。そして彼の隣には1人の少女が。
その少女は、紫色の目の上に、黒い細身のステンレスフレーム眼鏡をかけている、薄紫色のミディアムボブの髪を持っていた。
彼女こそ、同級生なのに立香の事を『先輩』と呼んで愛を彼に向けている後輩系同級生、マシュ・キリエライトである。
「2人とも、俺達に一体何の用だ?」
「浩司達、これからライブハウスに行くんだよね? 俺達も一緒について行ってもいいかな?」
「俺は別に構わないんだが……どうした急に?」
俺がそう問いかければ、マシュがちょっとした苦笑を浮かべていた。という事は、彼女が関係する事なのか?
「すみません。私、喜多さん達がライブハウスでバイトしているとお聞きしまして、ライブハウスがどのようなものなのか気になっていましたので……」
「それで、俺も一緒に行こうかって事になってさ。もしよかったら、ついて行ってもいいかな? そこでの話も聞きたいし」
なるほど、そういう事か。
確かマシュは、本家ではカルデアにいた時の娯楽がなく読書しかできなかったって感じだったっけ。だからなのか、コミュニケーションの経験不足があり、常識にも疎いんだっけ。
それ故なのか、こっちの世界では知らない事に興味津々である事がはっきりとしている感じなのかな? それなら、ライブハウスが気になるとか言ってもおかしくないな。
「……との事だが、2人はどうなんだ? 特に断る理由は無さそうだけど」
「私は大歓迎よ‼︎ これを機に、キリエライトさんが私達のバンドやライブハウスの事に興味を持ってくれたら嬉しいわ‼︎」
「わ、私も……私達でバンドとかを気に入ってくれる人が増えたら、嬉しいです……‼︎」
うん。人の良い喜多さんはともかく、ひとりも賛成してくれたな。なんかファンが増えるかもしれないと思っているのか、ニマニマとした感じにくねくねしながらなんか呟いているんだけど、まぁ幸せの最高潮かなって思えば……
「ってなわけだ。一緒に行こうぜ。あ、これを機に今から時間のある奴でも誘うか?」
「ありがとう‼︎ あ、でもそれやっててバイトの時間には間に合うかな?」
『私にはバイクを呼び出す能力があるから、いざって時はそれに乗せて……あ、乗り手の浩司君ともう1人しか乗せられないのだったな……』
オリジンディスク状態のウィックスが、公にバレないようにと小声で案を出してきたのだが、仮にそんな事したらヒソヒソもあまり意味ないぞ?
それはつまり俺が変身する必要があるってわけで、俺が仮面ライダーになれるってのがデセオ・ウォーズ参加者じゃない人達にもバレるって。既に初変身で学校関係者じゃない人達にバレていると思うけど……
つーか俺、バイク免許なんて持ってねェぞ。高校生ライダーも免許持ってないだろうけど。なのにバイクなんて乗ったら警察に捕まった時とかどうしろと?
ま、そんな事はどうでもいいさ。
「大丈夫大丈夫。まだバイトまで1時間前後くらい時間あるし、距離も徒歩15分だしな。それに遅刻する前に事前に店長に『友人達を何人か連れてくる』って伝えるから」
「すみません、わざわざそこまでしていただく事になって……」
「いいっていいって。ホントに余裕で間に合う条件だし、これを機に結束バンドの事を好きになってくれたらひとり達も喜ぶし」
ぼざろ本家との結束バンドの人気度の高さ? んなもん上にいけばいく方が、結束バンドのみんなが喜ぶに決まってるだろ。ま、この学校の何人かがファンになるだけで上昇するかは分からんが……
「とりあえず、いろんな奴らに聞きまくって、一緒に来てくれる奴の名前をLINEで報告ってのは───」
どうだろうかって言おうとした途端、誰かがこっちに向かって横滑りしながら来た。それも2人同時にだ。お前ら急に出てくんな。しかも移動の仕方が歩美スライディングじゃねェか。
「行くぜ行くぜ‼︎ この俺シャロット、ライブハウスっての面白そうだから一緒に行くぜ‼︎」
「エントリーナンバー2番・飛鳥‼︎ 部活が休みだから一緒に行ってもいい⁉︎」
「………………もう既に2人が事前に申し込んで来たんだが」
「ア、アハハ……」
最近のいつもの登校メンバー、集結。いやまぁ、元から一緒に行く奴を探していたから別にいいんだけどさ……
♢
街の喧騒から少し離れた小さなアパートで、少女・美咲は毎日のようにギターを抱えていた。
高校3年生、18歳。彼女の夢は、バンドを組んでステージに立つ事。
しかし、彼女はいつまでもその夢を叶えるための勇気を出せずにいた。
友達に声をかけるのも怖く感じており、オーディションに応募するのも躊躇っている。鏡の前で弾くだけの練習が、彼女の日常だった。
「ハァ……本当はみんなの目の前で、私の音楽を聴かせたいのに……」
少女は呟きながら、SNSに表示されたとあるミュージシャンのライブ動画を視聴する。
その動画に映っていたバンドは、全員が自分より歳下だという、4人の少女達。それもこの動画きら、バンドを結成して半年近くしか経っていないらしい。
だがそれでも、少女の目には動画の中の彼女達は輝いているように見えていた。特にボーカルギターとギター担当のソロ演奏を聴く度に、少女の心は疼いていっていた。
しかし、現実は厳しい。学校では目立たない存在で、人見知りである模様。それ故なのか、友達も家族も、自分の夢を本気で応援してくれないのではないか……そう思い込んでいるようだ。
「こんな私には、バンドをやる資格なんてないのかな……」
そんか事を悲しげに呟き、思わず涙ぐんでいる帰り道……そこで少女が顔を見上げた途端、昇り始めようとしている夕日を隠しているかのような、不思議な男に出会った。
「この者はちょうど良い」
黒いコートを着た、影のような男。夕日に照らされ始めている街灯の下で、その男は徐に何かを小声で呟いてから、不敵に微笑みながら語りかけてきた。
「お前のその願い、そしてその欲望……我には聞こえてきたぞ、お前の奏でる音と共に。それ故に響きがあり、それ故に美しい……だがしかし、その主張が弱い。もっと盛大に、お前の持つ音を奏でたいと思わないか?」
不審者の雰囲気を漂わせるその男性を、少女は警戒した。
突然見知らぬ男に声を掛けられ、まるでナンパにでも誘ってきているかのような状況に遭っているのだ。これで『この男は心を許しても良さそう』なんて思えるわけがない。
警察にでも通報すべきか……そう考えながらそれを行動に移そうとすれば、男は再び口を開いた。
「バンドをしたいのに勇気が出ない……それは何故か? お前の心が弱いからではない。世界がお前を抑えつけているからだ。己自身が『あぁしたい』『こうしたい』……それを周りの空気がそうさせまいとし、そこに無理矢理合わせようとするか、否定しようとしている。汝もそう悟っているのだろう?」
「ッ……」
少女は何も言い返せず、ただ男性の意見を黙って聞くしかなかった。徐に小声で呟いただけだというのに、それだけで自分の思想を見透かされているが故に、抵抗の余地が得られなかったのだ。
そんな少女を他所に、男性はゆっくりと両腕を広げながら言葉を連ねる。
「ならばどうすれば良いか? そうさせないように、己自身が生まれ変わればいい。新しい自分を手に入れ、盛大に己の音を奏でればいいのだ」
「あ、新しい自分を、手に入れる……?」
それは一体どういう意味なのだろうか。そう問いかけようとする前に、男性は言葉を続ける。
「想像せよ、ステージに立つお前自身を。想像せよ、お前が街全体に響かせ魅了させる楽器の音を。お前を見る目がなかった周りの印象が、ガラリと変わってくる事だろう」
そう語りながら、男性は懐から何かを取り出した。
それは、銀色の星の模様と共に藍色に縁取られた、中心に少し小さめの青く丸いスイッチらしきものが出来ている、円盤状の物体だった。
「まずは生まれ変わるための準備だ。このディスクのスイッチを押し、心臓のある場所に埋め込め。そうすれば、お前は新しい自分を手に入れられる」
警戒はしていた。とあるアイテム1つを使い、ただ一定の動作を行うだけ……それだけで、新しい自分に生まれ変われるとは到底思えないようだ。普通に考えて、それは当たり前の事だが。
それでも、少女は感じていた。これは偽りではないと。男性の言っている事は、何故だか真実に聞こえる……と。
気がついた時には、少女は男性が持つそのディスクを受け取っていた。
「ちょ……ちょっとだけなら……」
そう呟き、恐る恐ると中心部にあるスイッチを押した。
『デシア・ビート・ディスク』
低い電子音声が流れ終わったのに合わせて、少女はゆっくりと深呼吸をしてから、ゆっくりとその物体──ディスクと呼ばれるそれを心臓部に当てた。
ドクンッ
一瞬、心臓が酷く鼓動したように感じた少女。この違和感は何なのかと考えようとした……その瞬間、さらなる違和感が彼女の身体に直接襲い掛かる。
ドクンッ
ドクンッ
ドクンッ
ドクンッ
「ッ、ガッ……⁉︎ なに、これッ……⁉︎」
まるで得体の知れないナニカに、身体を蝕まれ、臓器を抉られてでもいるかのような感覚が、少女に襲い掛かっていく。彼女は未知となる感覚に身体を自由をだんだんと奪われていったのか、もがき苦しんでもいっていく。
ふとディスクを当てた位置を見れば、そのディスクは心臓部に、機械の嵌め込み口にピッタリと嵌め込まれたかのように丁寧に貼り付けられていた。
「あっがっ……一回、待って───」
この状況から早く逃れようと必死に懇願しようとした少女だったが、時すでに遅し。ディスクが麦色に輝きその光を、周囲を照らすように放ち始めた。
『ローディング……オーケー、チェンジ』
するとそこから解き放たれた麦色の光が、少女の身体全体を包み込んでいってしまった。その光の中で、本人の意思など関係なく、彼女の身体を変貌させていく。
「ア、アァッ……アァアアアアアアアアアッ‼︎」
少女の悲痛の叫びが木霊すれば、光は広範囲へと爆ぜる。そしてそれと同時に発生し漂っていた煙の中から、先程まで少女がいたはずの位置にて、何かが姿を現したのと同時に、低く唸るような歪んだディストーションが響き渡った。
そこに立っていたのは、人間と寸分違わぬ背丈の女性だった。
否、正確には『女性の形をした何か』だ。
頭部は巨大なギターヘッドに似た黒い甲殻に覆われており、チューニングペグを思わせる6本の棘が突き出されていて、微かな振動で青白い静電気を散らしている。
甲殻の亀裂からは赤紫の光が漏れ、代わりに瞳のあった部分で橙色のピックアップが不規則に明滅する。
胴体は細く、レザーのような質感のボディに黒く覆われ、胸に白いフレットが浮かんでいた。
その上に黒とシルバーのエレキギターが掛けられており、鋭角のボディに銀色のワイヤーが震え、ネックの部分からは剣の如くピックガードから紫電が迸っている。
そのギターのネック部分を、黒い甲殻に覆われた鋭い爪を持つ左腕で支え、同じ形状の右腕の爪で弦を弾いた。
背中からはアンプ突起が展開し、腰のチェーンにはシンバル型のピックが揺れていた。
甲殻の裂け目から不気味な軋みが漏れ、怪人となってしまった少女──デシアゴーレム・ビートはギターを構える。
「さぁ行け、己の願いを叶えるために」
男性の指示に合わせるかのように、ビートは軽くギターの弦から音を弾ませながら、夕日を背に先程歩いてきていた路地へと引き返した。
その怪人の背中を見ながら、男性──シンジケートの首魁は不敵な笑みを浮かべた。
「
満足気にそう呟きながら、首魁はそのデシアゴーレムに背わ向けながら、その場から歩き去っていった。
ウィリンネス = 意欲の英語カナ