現代パロな多重クロス世界だと思ったらゴジュウジャーな仮面ライダーの世界でもあった件   作:名無しのモンスター

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このサブタイトルが何を意味するか、お分かりかな?

後、後書きにて大事なお知らせがあるので、よろしければご確認ください


少しずつ変わっている孤独少女、さらに変わる

 

 ウィックスこと浩司達が、突如STARRYに出現したデシアゴーレム・ビートと交戦している中、STARRY内は恐怖と緊迫感に包まれていた。

 

 それもそうだ。特撮番組などの撮影で出てきそうな怪人が突然出現したかと思えば、それはコスプレイヤーではなく本物の怪人で、突如として人々に襲い掛かったのだから。

 非常識な現象を、あの実際に非現実な姿をした怪人が引き起こしたという事実。それが人々にどのように『現状を理解』させようとしているのかを、即座に判断させた。否、せざるを得ないようにしてしまったのだ。

 その証拠として、外から激しく響き渡っている騒音──仮面ライダー達とデシアゴーレム達の戦闘によって発生している音に、少なからずとも不安を感じおり、その方向だけ誰も近寄らずスペースが空いているのが見える。

 それ故に、STARRYの中で避難している者の負の思想は消えない。少なくとも、騒音がしばらく鳴らなくなるまでは。

 

「しかし、まさか特撮番組と同じ出来事が実際に起きるとは思わなかったな」

「なんかヒーローみたいなのも出てきたけど、あんなのが目の前で起きたら、嬉しさよりも怖さが勝っちゃうなぁ……」

「うん。あまりにも只事じゃなかったよね……」

「あまりにもリアルすぎるしね……」

 

 何気ない雰囲気で会話しているトシキ・心愛・時雨・清光であったが、心の底ではそうはいかない模様。

 デシアゴーレムは仮面ライダー達が相手してくれているため、自分達の方に被害が遭う事はない……そう思えるのも時間の問題だ。

 仮面ライダーの実力もデシアゴーレムの実力も、それどころか非現実な存在の実際の力云々を、普通に考えて誰も計れるわけがない。それ故に、この騒動が収まってくれるとは、皆が皆そう思えないようだ。

 

「みんな、不安な気持ちでいっぱいいっぱいみたいですね……」

「うん、まぁあんな事を起こされたらね……ってリョウ? 何しようとしてるの? 後どこから数台のカメラを?」

「バズったりしていいお金の話が出ると思ってね。このカメラ達を投げたりして危ない目に遭わないようにして、外で何が起きているのかを撮ろうと───」

「こんな時に限って金儲けを狙っているの⁉︎」

 

 結束バンドのメンバーも、不安に駆られているかのような反応をしていたり、いつも通りの調子でいたりと、様々な様子が見て窺える。

 

「浩司君……大丈夫かな……」

 

 そんなメンバー達を横目に見ながら、ひとりは影を落とした顔で不安に満ちたような表情を浮かべ、徐に呟いた。

 デシアゴーレムと闘っている仮面ライダーの中には、ひとりの恋人である浩司がいる。そのためか、ひとりは彼の身の安全を思い、不安に駆られているのだ。

 

「(……この闘いの事をある程度知っているのは私だけ。でも、私は浩司君達と違って仮面ライダーになれるわけでもないし、なったら願いを叶えようとする他の参加者とのディスクを賭けた奪い合いをする必要がある……私は、一体どうしたらいいんだろう……)」

 

 同じくして、ひとりには先程心の中で述べているように、2つの悩みを抱えていた。

 

 1つは、デセオ・ウォーズの事を知った者の中で、自分には仮面ライダーになるためのウィッシュディスク……それどころか闘う力すら持ってすらいない事に関して。

 裏方にて、浩司や彼と協力関係にある他の参加者のサポートができる分、自分はまだ役に立てるという自覚は持っている。

 だがもし、ディスクを狙う敵が浩司達を追い詰めている中、その場にいる自分が闘えないとなれば、きっと無力な自分を責めるだろう……そんな恐怖が彼女を悩ませる。

 

 もう1つは、仮に闘えるようになったとして、他の仮面ライダー達と闘えるかどうかについて。

 運動神経はそこまで低いわけではない。体力が意外と多いためそれがカバーしてくれるからだ。だが、注視すべき事はそれではない。

 ディスクを所持し仮面ライダーになる事は、願いを叶えようとする他の仮面ライダーと、ディスクの取り合いとして闘う必要があるのと同じ事。つまり争わなければならない。

 ひとりは非常な内気なだけであって、人同士の争いを好まない。それ故に、浩司達を直に手助けしながらみんなを守るために、争奪戦に参加する覚悟を持てるのか……そんな自分が不安で仕方がないようだ。

 

 だがそう考えている内に、徐々に本当の意味で冷静になったのか、顔に落とされていた影がなくなり、ひとりは溜息をついた。

 

「(いや……そんな事を考えておいてすぐに『ディスクが落ちていたのを見つけてラッキー‼︎』〜……なんていうご都合展開が起きるわけないし、そもそもみんな不安がっているのに、そんな事を考えている場合じゃないよね……)」

 

 ひとりは悟った。今起きている現実と向き合う事が、自分が今すべき事なのだと。なのに先程まで起きるはずのない絵空事を期待していた……そんな自分を恥ずかしく、虚しく感じたようだ。

 そんな自分に嫌気が差し溜息をついていると……ふと、隣にいる人物が視界に入り、その様子に思わず視線がそちらへと集中するようになった。

 何故なら。

 

「マシュ……震えているよ? 大丈夫? もしかして、あの怪物が怖かったんじゃ……」

「……ありがとうございます、先輩。私の方は(・・・・)大丈夫です。でも……」

 

 その人物──マシュが、自分よりも不安な感情を持っている事を表すかのように、顔に落としている影の奥で目尻に涙を溜めていた。その隣にいる立香の言う通り、その感情をさらに表しているかのように身体を震わせながら。

 

「私……怖くなったんです。私が『ライブハウスに行きたい』と言ったせいで、先輩や皆さんが取り返しのつかないような怪我を受けないかと……あのヒーローみたいなのに変身した人達だって……」

 

 マシュは恐れていた。自分の我儘から友人達をこの騒動に巻き込ませてしまった事が原因で、彼等の命が脅かされている事に。

 誘わずとも行かずとも、結束バンドとSTARRYでバイトしている浩司がこの騒動に巻き込まれる事に変わりない。だがそれはそれとして、彼女はこの騒動で友人達が殺されないかと恐怖する事だろう。

 デシアゴーレムの襲撃により、マシュは自分を責めてしまっている。あの時の自分はどう判断・行動すればよかったのだろうか、緊急事態にどう対処すればいいのか……非現実な現象が起きたのに関わらず、そんな自責自責の混じった葛藤によって。

 

「(あっそっか。普通じゃあり得ない事態によって、余計な不安を抱えてしまっているのは、私だけじゃなかったんだった)」

 

 この時、ひとりは察したのだ。自分と似た心情を持ち、負の感情を背負ってしまっている人はたくさんいる。自分だけが『あぁすればよかった』『あぁだったらいいのに』と考えてしまっているわけではない、と。

 

 そう考えていたひとりは、いつの間にか動いていた。

 

 

 

「後藤ひとり‼︎ モノボケやります‼︎ 武田信玄の軍配‼︎ 風林火山陰雷‼︎」

 

 

 

『???????????????』

 

 まさかの突然のモノボケ。しかも黄色い縁の星型をした黒いサングラスをかけ、武田信玄が被っていたのに似た将軍の兜と軍配代わりである自前のギターを使って。

 突然すぎる出来事に、この場にいる全員、目を点にしながら呆気に取られたような表情となった。

 というかどっから持ってきたその兜。

 

「(………………あ、どうしよう……これ、もしかしなくてもスベッた……⁉︎)」

 

 何とも思わない反応により、周りの空気が騒がしくなくなったものの、盛り上がったりしたという空気にもならなかった。

 それに気づいたひとり、冷静になった途端に察したのだ。自分、やらかしたのではないか……と。

 

「………………プッ。クスッアハハッ、アハハハハッ‼︎」

 

 だが少なくとも、マシュの反応はそうでもなかった。

 愛想笑いではなく、奥底から声を出している腹を押さえながらの笑い声。目尻から流れてきた涙も、悲しみからではなくその笑いからによるもので流れていた。

 先程まで暗く負の感情を出していた彼女からのその反応に、立香達は思わず呆気に取られていた。無論、発端者となっていたひとりも。特に彼女は反応が宜しくないと思い込んでいたからこそ、マシュが笑ってくれたとは思っていなかったようだ。

 皆が唖然とする中、マシュが涙を指で拭いながら口を開く。

 

「アハハハ……ハァッ。すみません、突然の事でビックリしちゃいましたけど、モノボケの内容とファッションの独特さでつい……」

「(あ、ウケてたんだ)」

 

 少なからずとも、自分の先程のモノボケは、マシュの笑いのツボに響いたようだ。それを知ったひとりは、自分の咄嗟の行いが無駄ではなかった事に安堵し、ホッと胸を撫で下ろした。

 そしてマシュに共感してか、周囲の悪い空気がガラリと変わっていった。

 先程まで恐怖で震えていたりしていたのに心から笑えるようになった者達、事態の収束を信じながら互いを支えようとしている者達……良き方向へと、彼等の心情が傾いてくれたようだ。

 その様子を見てひとりがまた胸を撫で下ろしていると、マシュが問いかける。

 

「ところで……どうしてわざわざ、皆さんの前に立って、あんな事をしてくださったんですか?」

「えっ? あっ……」

 

 行動に発展した理由を問いかけられ、一瞬どのように判断すべきかと戸惑うひとり。だが、その答えは既に決めていた模様。1つ軽く深呼吸をし、微笑みながら口を開く。

 

「どうにか、みんなを笑わせたくて……」

「えっ?」

「マ、マシュ……さん、じゃなくてマシュちゃんが、『自分のせいでこうなったのかもしれない』と自分を責めているのを見て、『なんとかしなくちゃ』と思っていたら、気がついたら行動に移していて……」

 

 そしてひとりは、無意識にマシュの手を優しく握った。本人も気づかない程度に、小さく震えていた、その手を。

 

「私……自分がしたい事・してきた事を後悔したり、それで笑わなくなったりしてほしくないんです。自分の良くない事ばっかりを考えて、自分をダメにするなんて事、いくら私でも耐えられませんし」

 

 そう語るひとりの脳内に流れてくるのは、過去の自分の記憶だった。

 

 中学時代にて、ギターを抱えて部屋に閉じこもり、指が痛くなるまで練習を繰り返していたあの頃。

 学校ではいつも一人ぼっちで、クラスメイトたちの笑い声が遠くに聞こえる中、机に突っ伏して時間をやり過ごしてきたあの日々。

 やりたい事をやりたいようにやっていきたいはずなのに、何故かいつも行動に移せず、後悔の影が付き纏っていたように感じていた。

 もっとうまく話せたら。もっと友達ができたら。——そんな『もしも』が、心を蝕む毒のように広がっていた。

 それでも、ギターを弾く瞬間だけは違った。弦を弾けば、世界が少しだけ優しくなる。笑顔になれる。夢中で弾き続けてきたが故に、そうなっていた自分に気づけなかったようだが。

 

 そして高校生となっている今では、結束バンドのメンバー達——喜多、虹夏、リョウ——彼女達と出会ってから、改めて「自分らしさ」が輝き始めた事を、彼女は実感していた。

 それだけではない。彼女達と出会った事がきっかけで、友達もそこそこできた。大人を含め、自分に寄り添ってくれる人達もできた。そして何より……自分の事を肯定的に受け止め、心から自分の事を愛してくれる、優しい恋人もできた。

 自分の事を見てくれている人達が、認めてくれた人達がいたからこそ、ひとりはこれまでを含め自分自身を好きになれたのだ。

 だからこそひとりは、誰かが自身を否定するような事をしないで、失敗してもいいから自分のすべき事をするべきだ……そう伝えようとしているのだ。

 それをはっきりと伝えようと、マシュと顔を合わせ───

 

「だから、マシュさんも自分のした事で自分自身を責めないでくだギャアアアアアアアアアッ⁉︎」

「えええっ⁉︎ ど、どうしたんですか急に驚くように叫んで⁉︎」

 

 た、その瞬間に何故か、実際に受け入れ難く信じ難い場面でも目撃したかのように、一瞬で青ざめ発狂した。表情も発狂しているのが見ると丸分かりな変顔となる程。……文字では表現できないが。

 

「えっちょ、ちょっとひとりちゃん⁉︎ いきなり向こう見て叫んでどうか、した……の………………?」

 

 ひとりの発狂を抑えようとした喜多も、不意にひとりが向けている視線の方向へと目を向けた途端……

 目を疑う程の絶望的光景を目の当たりにしてしまったかのように、思わず言葉を失ってしまった。ひとりの叫び声を通じて、同じ方向を確認した者達も同様に。

 彼女達の視線に映った……映ってしまった光景。それは……

 

「な、なんで……悪い騎士みたいな怪人が、ここに……⁉︎」

 

 悪い騎士みたいな怪人──デシアゴーレム・トルーパーの1体が、黄色い眼光を光らせながら、自身の腹部より斜め上辺りにて宙に浮かせているドラムとドラムスティックを構えながら。

 

「ん? みんなどうかしたの(`0言0́*)<ヴェアアアアアアアア⁉︎」

「(0M0) ウワアアアアアアアアア⁉︎」

「くぁせdrftgyふじこlp!?」

「アイエエエエ⁉︎ カイブツノナカマ⁉︎ カイブツノナカマナンデ⁉︎」

 

 遅れてその方向を目視した心愛が発狂したのに合わせ、周囲は再び混乱・騒然とした。

 たった1体とはいえ、自分達が相手ではどうにもならない存在(てき)が、仮面ライダー達の目を盗んでこの避難場所に侵入してきたのだ。命の危機に対してパニックにならない方がおかしいはずだ。

 

「ッ、まさかこんなところにまで……‼︎」

「ぼ、僕達も何か護身用に武器を持つべきかな⁉︎ あっでも普通、銃とか刃物とかないよね……」

「こうなったら椅子を……‼︎ いやでも店の物だし、後の弁償の事もあるし、どうしよ……」

「き、喜多ちゃん⁉︎ どうしよう、あんなのがまた出てきちゃったから気絶しちゃってる……‼︎」

「いや、郁代はさっきまで握り拳作ってちょっと震えてただけだっただけど、心愛の発狂で……」

「えっ気絶の理由がそれなの⁉︎ あっいやそれよりもこの状況……‼︎」

 

 無論、浩司との仲が良い者達も混乱に陥っている。特に一番危険な状態なのが心愛と喜多だ。前者は発狂したまま、後者はその発狂で思わず、両者ともその場で固まり気絶してしまっている。この場から逃げようにも動けない状態だ。

 

「(そ、そんな……⁉︎ ま、まさか浩司君達が……⁉︎ で、でも1体だけなら最悪な事態になったわけじゃなさそうだけど、こっちはこっちで一体どうしよう……⁉︎)」

 

 何か打開策がないかと慌てふためいている間にも、トルーパーが行動に移そうとドラムスティックを優雅に振り回し、ドラムを叩いてそれによる攻撃を仕掛けようと───

 

 

 

『喰らえー‼︎ 青春キャンセルをキャンセルする突進ー‼︎』

 

 

 

 した途端、何か桃色の小さな光の球体が飛び出し、それを顔面にぶつけられたトルーパーは軽く吹っ飛ばされ横転した。

 

「えっ………………えっ?」

 

「な、なんだ今の?」

「怪物がすごい勢いで……?」

「ここにあんな強いボールあったの……?」

「うおっまぶしっ」

 

 突然の未知なる助っ人の登場に、ひとりを中心に周囲が困惑した状態となる。

 実際助かったとはいえ、それは一時。そんな事よりもあの球体は何なのか、という疑念の方が強かったのだろう。それでもまだ希望はある、と感じた者は少なくないのも事実だが。

 未だ困惑を隠せずにいる中、その光の球体が、瞬きさせる間もなくひとりの元へと素早く──瞬間移動レベル並みに顔近くまで接近していた。

 

「ふふぇっ⁉︎ えっな、何っ⁉︎」

『大丈夫だった? お友達も怪我してなかったのかな、()()()()()()?』

「しゃ、喋っ……⁉︎ ………………ん? えっ? ア、アタシの……推し? だ、誰を推しと……?」

『君の事だよ、君。君がアタシの推し』

「えっあっ、私……?」

 

 この時、ひとりは唖然とした。なんで自分、突然現れた未知の存在に推しと言われているのだろう……と。

 いくら承認欲求が強い自分でも、少なくとも人間ではない存在に、いきなり推し認識されるのは果たしてどうなのだろうか……そんな困惑が喜びを勝っているようだ。

 

『アタシね? 君がここにたくさんの友達と一緒に入る少し前から、休憩のためにここに来ていたんだけどね? 君のキャラという面白さやギターを弾いている時の腕の良さ、そしてさっきの友達に寄り添っている健気さ……それにアタシの脳天がやられたの‼︎ それで確信したの‼︎ アタシは君のファンに、君はアタシの推しになるべき神様だって‼︎』

「えっ……? えええっ………………?」

 

 承認欲求が強いひとりでも、自分の事を神様のような扱いされる事に対しては抵抗心がある模様。内気な性格があるのも理由となるが、いくらなんでも神様として認識されるのは厨二病並みにキツいものがあるのだろう。

 

『あっごめん。神様と呼ぶなら『君』となんか呼ばず、もっと礼儀正しさのある呼び方の方が良かったかな? 後、喋り方も変えるべきかな?』

「えっあっいえっ、それは別に、いいんですが……あっ⁉︎」

 

 そう返答している中、ひとりはふと視界に入っている何かに気づく。

 先程吹っ飛ばされていたトルーパーが起き上がり、またもやドラムスティックを構えて何かするつもりのようだ。

 

『あっ‼︎ ごめんちょっと今は動かないで‼︎ アタシ、周りにまで被害を与える奴は嫌いだから‼︎』

 

 が。トルーパーが起こそうとした行動は、球体の2度目の突進で胴体を押し飛ばされ横転した事により、強制的にキャンセルされる羽目となった。

 

「えぇ……」

 

 この一連の流れに対し、ひとりは思わず引き気味となった。状況や謎の球体の姿からして、逆に謎の球体がピンチな状態になってもおかしくないと感じたからだろう。

 トルーパーが倒れ込んだのを確認している様子の謎の球体は、ひとりの元へと戻り、問いかける。

 

『ねェ君。友達を守るために、もし色々と覚悟があるってんなら、アタシと契約しない?』

「け、契約……?(も、もしかして……⁉︎)」

 

 契約。その言葉から光の球体が何を持ちかけてきたのか、それを理解したひとりは目を見開いた。

 恋人が似た経緯で仮面ライダーになったのだ(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)。その可能性を視野に入れなければならなかったようだ。

 そう悟るひとりを余所に、謎の球体は言葉を続ける。

 

『アタシと契約すれば、ある方法で超人並みの力を手にする事ができ、闘いの中でのデメリットもない……と、思う。契約して一緒に闘うなんて事、アタシやった事ないから、本当に闘いの中でのデメリットがないかどうかなんて分からないんだけど』

「ざ、雑……」

『うん、自分でもそう思っているよ。ごめんね?』

 

 デメリットがあるのかないのか、その点をはっきりしてほしい……そう考えながらも、ひとりはジャージの胸元辺りをぎゅっと握りしめる。

 

「(でも、やっぱりそうかも……そっか……私も、なるのかな。仮面ライダーに)」

 

 先程まで頭の中で過ぎっていた、自分が仮面ライダーになるべきか否か。その選択をすべき時が来たのかと、ひとりはジャージを握りしめている手を強め、息を飲む。

 

『そっち方面のデメリットがなくても、他にもデメリットがあるよ。アタシみたいなアイテム──ウィッシュディスク(・・・・・・・・・)はね、たくさん集めると願いを1つだけ叶える事ができるの。だから今後、それを狙って襲ってくる輩とも闘わなくちゃならない……それが、確定しているデメリットなんだ』

「(や、やっぱり……‼︎ もしかするととは思っていたけど、この人(?)……ウィックスさんと同じ、自我を持ったディスクだったんだ……‼︎)」

 

 ひとりは察していた。謎の球体が今の姿でトルーパーに攻撃を仕掛けたのを見て、それがウィックスと同じ存在──オリジンディスクではないのだろうか……と。

 ウィックスも浩司と契約・彼に変身する力を与える前は、半透明の上にぼかしが入った戦士のような姿になれ、それで自分達を助けようとしたのだ。

 そして、目の前にいる光の球体も、そのままの姿でトルーパーを押し飛ばした。普通に考えて、自我を持った上に喋れる光の球体など聞いた事もない。だからこそ、ひとりはウィックスと同類の可能性を頭に入れていたのだ。

 

『そいつらと闘うのが苦手だってんなら、無理強いはしない。今だってアタシがこのままあいつと闘って、君達を逃すよ。倒せるかは全然分からないけど、全員をここから逃すまでの時間は稼げるからね』

 

 そして契約を促している本人は、無理矢理にでも契約させようとする意思はないらしい。寧ろ闘いを望まない者に闘わせるくらいなら、自分1人だけでも……そんな強い意思を持っているようだ。

 

「(確かに、あぁいうのだけが相手なら、時間稼ぎと自分自身の脱出は簡単なのかもしれない……)」

『あっ⁉︎ だから今は攻撃すんのやめてってば‼︎』

 

 トルーパーに3度目の突進をかます謎の球体を見ながら、ひとりはそれの言う通りに避難を促してもらうべきだろう……それが適切だと考え込む。

 

「(でも)」

 

 次に結束バンドの仲間達。その次に友人達。そして最後にマシュへと、次々と視線を向ける。

 戸惑い。不安。各々が抱えている感情を表に出しているのを見て……

 

「(ただ守られたり祈ったりするだけのままじゃ、絶対ダメだ……‼︎)」

 

 ひとりは、決心する。

 

「謎の光さん‼︎ 私、貴方と契約します‼︎ だから……みんなを守り助ける力を、私にください‼︎」

『うおっ⁉︎』

 

 大声で叫ぶように、自らが持った強い意志を、謎の球体に告げた。その強気な反応に、結束バンドやひとりの友人達は思わずビクリと驚いた反応を見せ、球体の方は一瞬引き気味となったが……後者は微笑んでいるのか、フフッと小声を漏らした。

 

『……すごく良い目。やっぱり君のファンになってよかった』

 

 そう語る謎の球体の中から、何やら円形状のものの影が見えてきた。それがひとりや謎の球体がいう、ウィッシュディスクなのだろう。

 そしてそれが見えているという事は、互いが互いを一定なりに信頼しているとでもいうのだろう。

 すると突然、謎の球体が『あっ』と呟いた。瘴気のような光がほんの一瞬だけ膨大化していたからして、何かを思い出したのだろう。

 

『そうそう。条件がもう1つあるの忘れてた。……本気で無茶だと思う事は勝手にしないで。君の事を想ってくれたり、心配してくれたりしている人が、今の君の周りにもいるのだから……ね?』

「えっあっ……」

 

 その言葉により、ひとりは思わず周りを改めて見渡した。彼女の周りには、自分と仲が良い人達がいる。もし自分の身に何かあれば、彼女達も悲しむのではないか……謎の球体はそれを指摘し、本当に仮面ライダーになるのかどうかを問いてきたようだ。

 

「えっと……ぼっちちゃん? その、あー……なんて言えばいいのかな……さすがに私も何を言った方がいいのか分からなくて……」

「───大丈夫です」

「えっ?」

 

 いつもと違って言い淀んでしまっている様子の虹夏の言葉を遮りながらも、ひとりは微笑みながら、虹夏達が伝えようとしている問いに、先んじて答えるように呟いた。

 

「私は、私自身がいなくなるような事はしません。私の何かが大きく変わったからといって、結束バンドを辞める気も、浩司君と距離を置く気もありません。必ず皆さんに無事な顔を見せれるようにします。あ、『必ず帰ってくる』と言った方がいいのかな……私も、皆さんの前からいなくなりたくないですから」

「ぼっちちゃん……」

「ひとりちゃん……」

 

 何を感じ取ったのか、嘘偽り・無理強いの無いひとりに、喜多と虹夏を始めとして、他の友人達も呆気に取られたかのような表情となった。

 その中でただ1人……結束バンドの中で唯一、リョウがいつも通りの冷静な表情をしながら、ひとりに近づき声を掛ける。

 

「……ぼっち。後悔する気はない?」

「な、ないです‼︎ 寧ろ、その……実質的に何もできない方が後悔するかもと言いますか……‼︎」

「そっか」

 

 多少の内気さがあれど意志はかなりの高さ。ひとりのそんな言葉を聞き、リョウはフッと微笑んだ。余計な心配はいらない、そう感じているかのように。

 

「なら私からは何も言わないよ。信じ合い助け合い、結束してこそが私達だからね。……結束バンドだけに」

「ア、アレ? 私達ってそういうバンドでしたっけ……?」

「半分即興で思いついた比喩だよ」

「えぇ……」

『何この人』

 

 良い事言ったのに、自分から上げて落とすような発言で自身のレートを下げてしまったリョウ。だがそれが彼女。マイペースなのが彼女のウリ……なのだろう。

 そんな彼女と引き気味なひとりのやりとりを見てか、喜多と虹夏が思わず腹を抱えながら笑いを堪えている様子を見せた。

 

『あっ、だからまだ起きるなっての‼︎ このやりとり何回目なのホント‼︎』

「もう、リョウったら結局こういう時にもいつも通りなんだから……だけど、リョウの言う通りだね。ぼっちちゃんを信じ、ぼっちちゃんが無事でいられるよう、私達も頑張らないといけないね」

「そうですね、先輩の言う通りです‼︎ 私、ひとりちゃんの事が心配で『そうすべきこそが友達や仲間だ』ってのを忘れてましたよ」

 

 謎の球体が4度目の突進でトルーパーを地面に叩きつけているのを余所に、喜多と虹夏もひとりに近づき声を掛ける。先程までの迷いが嘘であるかのように。

 

「ぼっちちゃん。いつも通り私達……結束バンドとの関係を続けてくれるのはいいけど、私達が安心できるような姿を見せてよね? それだけでも嬉しいからさ」

「うん‼︎ ひとりちゃんが元気な姿を見せてくれるなら、それだけで私達は嬉しいの‼︎ だから……絶対生きてね?」

「虹夏ちゃん……喜多さん……」

 

 そして、2人の信頼感のある言葉に続くように、友人達も次々とひとりに声を掛けていく。

 

「何かあれば俺達にも相談しろ。できる限り手助けする」

「そうそう‼︎ 私達だって見て見ぬフリなんて嫌だからね‼︎ 特にお姉ちゃんの私が‼︎」

「お姉、ちゃん……? 「時雨ちゃん引かないでー⁉︎」まぁとにかく、闘うのはぼっちちゃんだけじゃないってのを忘れないでね」

「色々と情報量が多いのはビックリしたけど、それとこれとは別。俺達が君を含めて支え合っているってのを忘れないでよ」

「この後がどうなるか分からないから、多くは言えないけど……俺達も君の味方だよ」

「私達がついています。だから……後藤さんは後藤さんが決めた道を行ってください」

「み、皆さん……」

 

 この時、ひとりは涙腺が熱くなってきた事を実感していた。

 これまで内気すぎて友達を作れなかった自分が、多くの友達から自分の事を想ってくれている事に、思わず感情が込み上げてきたようだ。

 それをよく思ったのか、謎の球体からクスッという愛嬌のある微笑みの声が聞こえてきた。

 

『……良い友達を持ったね。こりゃ君を死なせたくなくなってきた。全力で推し(きみ)を支えないとね‼︎』

「………………はい。改めて、みんなのために力を貸してください‼︎」

『オッケー‼︎ じゃあいこうか‼︎』

「はい‼︎」

 

 互いの意志が呼応したのか、謎の球体の光が弾け飛ぶ。そしてそこから何かが飛び出し、ひとりはそれを咄嗟にキャッチし……近くのマイクスタンドに額をぶつけてしまった。

 多少痛がるものの、ひとりは気を取り直して手に取ったそれを構えながら、先程謎の球体の突進で倒れていたトルーパーの方を向いた。

 ひとりが持っているそれは、桃色の戦士が描かれ、銀色の星の模様と共に桃色に縁取られた、中心に少し小さめの金色の丸いスイッチらしきものが出来ている、円盤状の物体──ウィッシュディスクの一種・オリジンディスクだった。

 そしてひとりは1つ大きく深呼吸をしてから……ディスクの中央にあるスイッチを押した。

 

オリジン・ミスレア・ディスク!!

 

 ディスクから嬉々とした音声が流れ込んできたのと同時に、ひとりの腰周りにVRらしき赤色の光が発生。そしてそれはどういう原理でか実体化する。

 銀色の鋼板の上に桃色の装甲を着けたような長方形をした、鋼鉄の装置となったそれは、変身ベルトのように……否、変身ベルトとして装着され、そこからも嬉々とした音声が発生する。

 

セッティング・オーケー!! ミスレアオリジンドライバー、アクティベート!!

「わ、わぁ……‼︎(浩司君達も、初めて変身した時はこんな感じに驚いているのかな……)」

 

 何やらしっくりとした感じになりながらも、ひとりはベルトの上部──横向きのそれにある凹凸部分に、ディスクを差し込んだ。

 

ローディング……オーケー!! トランス・プリパレーション!!

 

 刹那。ベルト──ミスレアオリジンドライバーから何かが投影され、周囲に落ちているものを吹き飛ばしながらひとりの周囲を旋回する。

 投影されたのは、1つの姿をした様々なポーズを取っている複数の戦士と、彼女が映っている複数もの映像。前者がひとりの前を、後者が背後を中心に映し出されていた。

 その状況の中で、ひとりはまるでギターをピックで弾き始めようとしているかのように、ミスレアオリジンドライバーの両端となる赤色のレバー状のパーツに手を当て……高らかに叫んだ。

 

 

 

「変身……‼︎」

 

 

 

 そしてピンク色のレバーを力強く押し込めば、それに反応してミスレアオリジンドライバーが本格的に起動した。

 

トランス・オーケー!! 仮面ライダーミスレア‼︎ レディ・ゴー!!

デセオ・ウォーズ、スタート!! レッツ・ファイト!!

 

 活気ある音声が、2回連続で発生する。それに合わせるかのように、投影された映像全てがひとりの身体と重なり合い、光を発しながらギターを激しく弾いたかのような音声が発生した。

 

 こうしてひとりは、1人の戦士へと姿を変えた。その姿はまるで蛇……否、ツチノコの姿に似たピンク色の戦士。

 

 ピンクの甲冑に包まれツチノコをモチーフにしていると思われるその姿は、まるで古代の神話から抜け出してきた蛇の女神のようだった。

 頭部を覆うヘルメットは鱗模様のピンクに輝き、黒い角のような突起が後ろへ優雅に曲がっている。

 そしてその仮面にある巨大な青い複眼が、冷徹な光を湛えて周囲を睥睨し、虫のような不気味さと妖艶さを併せ持っていた。

 肩には蛇の体が巻きついており、ピンクの鎧を強調するように渦を巻いている。

 胸元は金色と緑の鱗で飾られ、2つの可愛らしいピンクの蛇の頭が突き出し、睨みを利かせて守護者の如く配置されていた。

 その下の胴体は、網目状の蛇皮パターンが施されたピンクの装甲で覆われ、動きに合わせてしなやかに流れていた。

 両腕は黒いアンダースーツの上にピンクのガントレットを纏い、金の縁取りが力強さを添えていた。

 下半身へ目を移せば、腿から膝にかけて蛇の鱗が連なるようなデザインのレッグアーマーが続き、足元は頑丈なブーツで締めくくられ、地面を確実に捉えるための爪のような突起を覗かせていた。

 

『いくよぼっちちゃん‼︎ いや、後藤ちゃん? ひとりちゃん? どっちで言えばいいのかな?』

「あっえっと……どっちで呼んでも大丈夫ですよ?」

『じゃあぼっちちゃんで‼︎ 気を取り直して……いこうか、ぼっちちゃん‼︎』

「は、はい‼︎」

 

 スリムで流麗、戦士の威厳と神秘的な魅力を放ち、まるで毒々しい花のように周囲を魅了し、神秘に仇なす敵を脅かそうとしているかのような存在を思わせる戦士──仮面ライダーミスレア。

 内気ながらも自分を変えていっている少女──後藤ひとりが今、仮面ライダーミスレアと呼ばれる存在となった瞬間である。

 




ウィックスの初変身以来の長文になっちゃった……いやアレよりも長くね?

仮面ライダーミスレアのAI画像がこちら↓

【挿絵表示】


ちなみにミスレアの名前の由来はミステリオン(神秘的)+レア(珍しい)



お知らせ

活動報告にて、今後のストーリーのシチュを募集してます
リクエストキャラを採用するか否かをはらに左右しやすくできるため是非‼︎
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=337627&uid=379192
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