現代パロな多重クロス世界だと思ったらゴジュウジャーな仮面ライダーの世界でもあった件 作:名無しのモンスター
この俺・ウィックスに変身している浩司は、ストロンガーに変身しているシャロットとシノビに変身している飛鳥と共に、STARRYを襲ってきたデシアゴーレムを討伐するために闘っている。
しかし、俺達の内の誰か1人が、急いで一度STARRYに戻らなければならなくなった。だがそれを、デシアゴーレムと奴が呼び出した3体の特殊なトルーパーが許さず、攻撃したり一時的な拘束をしたりして阻害してくる。
何故急いでSTARRYに戻る必要があるのか、だって? そうしないと取り返しのつかない事が起きるからだ。どんな取り返しのつかない事が起きるのかって? それは……
「頼む……‼︎ アイツが誰か殺していたりとかしてないでくれよ……‼︎」
デシアゴーレムが召喚したもう1体の特殊なトルーパーが、俺達の目を盗んでSTARRYへと入っていったからだ。
そいつがこの後やりそうな行動の可能性を考えるにしては、俺達を倒しディスクを手に入れるための人質の確保か、皆殺しかのどちらかなのだろう。
俺はどっちかというと、後者を行うという最悪な可能性を視野に入れている。ディスクに身体を乗っ取られ、自我を失った一般人が変貌したデシアゴーレムによって召喚された存在だ。思考力が欠けたりしていそうなため、殺戮も容易く行いそうで……怖い。
そして何より、あそこには俺達の知り合いもたくさんいる。友人達も、そして俺の恋人のひとりもいる。もしあいつらが……と想像すると、どうしても悪寒が走ってしまう。
だからこそ、何としてもでもこの場から一時的に撤退し、STARRYに行ってあのトルーパーを追い出すか撃退する必要があるのだ。知り合いが殺される……特に俺達の知らない間にそうなってしまうってのは、絶対に嫌だ。
『ウァァァッ……ワタシノウタヲ、キケェェェ……』
だが、やっぱりデシアゴーレム達がそれを阻害してくる。
デシアゴーレムが鳴らしたギターの騒音が、俺達に思わず耳を塞がせる。それに加えて伸ばしてきたボディのワイヤーで攻撃してくるから、二重の意味で厄介だ。
そしてその隙にトルーパーの1体が、何故か刃の出し入れができる電子ピアノの刃で突進しながら俺達の胴体を斬りつける。
そこに続けてギターとベースギターをそれぞれ持った2体のトルーパーが、演奏による能力のバフの相互で俺達に突進し、発生させた衝撃波で吹っ飛ばす。
「くぅぅぅ……‼︎ こいつら、どうしても俺達にSTARRYへと戻らせたくないのかよ……‼︎」
「人質を手に入れたいのなら、あそこまで執着になるのも分からなくないけどよぉ……」
「とにかく、早くなんとかしないとSTARRYにいる人達が……‼︎」
なんとかしたいのは山々なんだが、全員の能力が強い上に、悔しいけど連携も上手くて、3vs4と数も向こうが有利。この状況、一体どうしろと言うんだよ……
いや、こんな時に弱音を吐いている場合じゃない。こうしている間にも、ひとり達が危険に晒されているんだ。早くこの状況から抜け出して、彼女達を助け出さないと───
と思っていたら、もう1体のトルーパー──STARRYへと向かっていったであろう例のトルーパーが、何故か吹っ飛ばされてきたかのように飛んできて、電子ピアニストのトルーパーを巻き込んで横転していた。
「「「………………えっ?」」」
突然の出来事に、俺達どころかデシアゴーレム達も唖然としてしまった。
ここは本来『これでもうSTARRYへの被害はなくなった』事への喜びを覚えるべきだと俺は思うが……それは『何故STARRYを襲いに行ったはずのトルーパーが吹っ飛ばされたのか』という疑問を感じない理由にはならない。
俺達がデシアゴーレム達の相手に苦戦している間に、一体何があったというのか……そんな疑問を持っていると。
「こ、浩司君達‼︎ 大丈夫でしたか⁉︎」
聞き覚えある……というか馴染みすぎている声に反応し、3人同時に思わず振り向けば……
「「「……えっ?」」」
そこで目にした光景に、またもや呆けた声を漏らした。
そこにいたのは、桃色の蛇……というよりはツチノコのような姿をした女性の仮面ライダーだった。
ピンクの甲冑に包まれツチノコをモチーフにしていると思われるその姿は、まるで古代の神話から抜け出してきた蛇の女神のようだった。
頭部を覆うヘルメットは鱗模様のピンクに輝き、黒い角のような突起が後ろへ優雅に曲がっている。
そしてその仮面にある巨大な青い複眼が、冷徹な光を湛えて周囲を睥睨し、虫のような不気味さと妖艶さを併せ持っていた。
肩には蛇の体が巻きついており、ピンクの鎧を強調するように渦を巻いている。
胸元は金色と緑の鱗で飾られ、2つの可愛らしいピンクの蛇の頭が突き出し、睨みを利かせて守護者の如く配置されていた。
その下の胴体は、網目状の蛇皮パターンが施されたピンクの装甲で覆われ、動きに合わせてしなやかに流れていた。
両腕は黒いアンダースーツの上にピンクのガントレットを纏い、金の縁取りが力強さを添えていた。
下半身へ目を移せば、腿から膝にかけて蛇の鱗が連なるようなデザインのレッグアーマーが続き、足元は頑丈なブーツで締めくくられ、地面を確実に捉えるための爪のような突起を覗かせていた。
シャロットや飛鳥どころか、この俺ですら知らない仮面ライダーが、俺達の元に現れたのだ。
そして、その仮面ライダーから発されただろう声を、俺は知っている。
「お、お前………………………………ひとり、なのか……?」
思わず警戒しながらも、俺はその仮面ライダーに問いかけてみる。もしあの仮面ライダーが彼女じゃなかったとしたら、一体誰が変身したのかとさらに警戒しなければならなくなるが……
するとその仮面ライダーは再び言葉を出してきた。今度は自分自身の正体が俺にも分かるように、目の前ではっきりと。
「はい、後藤 ひとりです。驚かせてすみません、浩司君」
「マジで?」
思わず唖然とした事を表す反応をしてしまった。
いや、だってさ? 今日まで仮面ライダーとしてではなく、デセオ・ウォーズの事を俺と一緒に知った一般人として、変わらず結束バンドのメンバーの1人かつ俺の恋人として過ごしてきたんだよこの子?
なのにさ? 俺達の気づかない内に、いつの間にか仮面ライダーに変身したんだよ? これを驚かずして何だってんだよ?
「な、なんで急に仮面ライダーに……」
『それはアタシと出会ったからだよ‼︎』
「「「ベルトが喋った⁉︎」」」
『これは……まさか、私と同じ意志を持ったウィッシュディスク──オリジンディスクなのか⁉︎』
『ピンポーン‼︎ 大正かーい‼︎ あ、ちなみにアタシの名前はミスレアだよ‼︎ よろしくね‼︎』
しかもだ。見た事のない仮面ライダーの姿をしているからして察してはいたけど……まさかのひとりが変身するのに使ったのが、参加者全員が持っている類──レガシーディスクではなく、オリジナルライダーになれるオリジンディスクという。
ドライバーからひとりとは違う声質の、聞き覚えのない声が聞こえてきたのがその証拠だろう。ひとりも運が良い……のだろうか? よく分からんけど……
「というか、まさかピンチだからなんとか言って、騙すように変身を誘ったんじゃないのかこいつ?」
「確かに……大抵の争奪戦の参加者は私利私欲のために動いているし」
「そう考えると、こいつもこいつで怪しくねェか? 後藤の事を騙してたりとか?」
『ちょっさすがに疑り深いんじゃない⁉︎ そんな事してないから‼︎
「アハハ……そういう事なので……」
「「「………………推し?」」」
えっ何? もうミスレアって奴とひとりと仲が良くなってんの? もしかしてひとりの演奏を既に聴いていて、それに惹かれていたのか? しかももう既にぼっちちゃん呼びしているし……
『とにかくだ。ひとり君が仮面ライダーになったという事は、私達の味方として、覚悟を持って闘う事を誓ってくれた……そういう認識でいいか?』
「は、はい‼︎ 覚悟は決めてますし、皆さんも後押しをしてくれましたから‼︎」
『嘘だと確定したらアタシを桜の木の下に埋めていいからね‼︎』
「どっかで聞いた事ある発言だなそれ」
というかその発言をした後って、大体そうなるフラグしかピンピンに立たないと思うのだけど?
いやまぁ、あいつら優しいから後押ししてくれているだろうし、ひとりもいざと決めた時はきちんとやり遂げるって感じの子だから、嘘偽りは無さそうだがな。
それに、ひとりはいつもの内気から一瞬の発言に対しての躊躇いがあっただけで、2人とも向こうであった真実のみをはっきりとした声で伝えている。その意志だけでも、嘘か真かを判断させてくれる。
「……ミスレア、と言ったな。1つ確認させてくれ。STARRYにいる人達は……みんなは、無事なのか?」
『もちろん‼︎ アイツが攻撃する前にアタシが止めたから‼︎ 嘘だと確定したらアタシを桜の木の下に───』
「それはもういい。自信を持ってそう言ってくれるだけでも充分だ」
っていうか言った時点で、実際には無事だろうけど藤丸じゃなくなったフラグが起きそうだから、もうそんなセリフは二度と言わないでほしい。心臓に悪いから、ホントに。
しかし、ひとりも『守られる立場』ではなく『守る立場』に立つ事になるなんてな……しかも自分の意志でそうなると決めて……やはり人生、どうなるのか分からないもんだ。
とにかくだ。STARRYのみんなも無事。ひとりも覚悟を決めて仮面ライダーになった。それが分かったら、後はすべき事はただ1つ……だな。
「だったら……いこうぜ、ひとり。俺達であいつらを倒し、みんなを救うぞ」
「……‼︎ はい‼︎」
協力して目の前の敵を倒す、これに尽きる。……にしても、先程までシャロットと飛鳥達の3人でそういうのをしてたけど、恋人とやるだなんて初めてでなんだか新鮮だな……仮面ライダーシリーズでも恋人同士で闘うってのは滅多にないんじゃね?
「……ったく。ひとりが本気で闘う事を決めて、俺達と一緒にやるってんなら、俺達も腹を括るしかねェか……」
「そうだね。ぼっちちゃんの覚悟を無駄にするわけにもいかないし、全力でサポートするとしよっか‼︎」
「サダラ君……飛鳥ちゃん……」
そしてひとりの強い想いに共鳴したのか、シャロットも飛鳥もひとりが一緒に闘ってくれる事に賛成のようだ。
彼女の身の安全を確保できるわけじゃない事が分かっていても、彼女の意思を尊重したいというその姿勢……良き。
「……この場で俺だけ名字呼ばわりは虚しいな。名前で呼んでくれよ」
「えっあっはい。シャロット……君」
「……お前でも細かい事を気にする時ってあるんだな」
「俺がいつも大雑把な奴だとでも思ってたのかお前⁉︎」
そこまでは思ってないけど、無視しとこ。
「いくぞみんな‼︎ まずはトルーパーを1体ずつ倒す‼︎」
「はい‼︎」
「うん、そうしよう‼︎」
「あっ俺の質問をスルーしやがった⁉︎ ……まぁいいや、それよりも大事な事だしな」
無理矢理な感じ戦闘開始とし、俺・ひとり・飛鳥が同時に駆け出し、シャロットも同時に駆け上がった。
そして同時に攻撃を仕掛け……俺が電子ピアニスト、ひとりがドラマー、シャロットがベーシスト、飛鳥がギタリストの……それぞれのトルーパーの相手をする事になった。
さすがにデュエットとして闘ってきたギタリストとベーシストのトルーパーでも、相方を分散されたら真価を発揮できないだろ。その隙に片方を真っ先にシャロットか飛鳥に倒してもらおう。
デシアゴーレムの方は……まだ動く気配がないな。けどどのタイミングでまた仕掛けてくるのか分からないし、用心に越した事はない。あっちにも注意しながら闘う他ないな‼︎
そしてひとり……絶対勝ってくれよ。お前にはいなくなってほしくないからな。
♢
決意を持ってして仮面ライダーになった、後藤ひとりこと仮面ライダーミスレア。
彼女は今、先程STARRYを襲撃しようとした黄色い眼光の──ドラマーなトルーパーと再び対決する事になり、多少腰が引いているものの構えをとっていた。
「(ア、アレ? 私てっきり、4人一斉に1体ずつ攻撃して倒しにいくものかと思ってた……)」
内心、浩司ことウィックス達と合流できたと思いきや結局1人で闘う事になった事に、思わずガッカリとした感じになっていたが。
『この盤面でそれだと、体力を温存する匙加減が分からなくなって、本丸を倒しづらくなると思うよ?』
「心の中を読まれた⁉︎」
「いや小声でブツブツ言っていたの聞こえたから」
というか心の声を表に出してしまっていた。今の彼女を見れば、浩司を中心に彼女の事をうっかりさんのような可愛さを感じるのだろうが、今の状況ではそう感じている場合ではない。
ドラマーのトルーパーが激しくドラムを叩けば、そのドラムからボール並みの大きさとなる黄色い光の弾丸が放たれた。その数、なんと6発。
「(こ、ここで気弾みたいなのが出た……‼︎ 被害が出ちゃうのはアレだけど、ここは避け───)」
刹那。ひとりことミスレアはどうにか避けようとしている思考とは裏腹に……何故か両腕をクロスさせ、防御の態勢を取っていた。
そこに弾丸が全て着弾し、ミスレアのいた位置に膨大な爆発が発生。周囲は爆破による被害を受けなかったものの、それを直に受けたミスレアはかなりのダメージを負ってしまった事だろう───
「………………ん? えっ? ア、アレ?」
と、爆煙が晴れていたかと思えば……そこそこ大きめの光の弾丸を受けてしまったにらもかかわらず、ミスレアは膝をつくどころかその場で佇んでおり、内部へのダメージを受けずに平然としていた。
初めての変身だからなのか、ミスレアは何故自分が無事なのか疑問に思い戸惑っている様子だったが。そもそも華美なフォルムながら、何故強い攻撃を受けても仁王立ちができる程に平然と耐えれたのかのかすら疑問だが。
と、そこにディスクの方のミスレア──ミスレアディスクが声を出す。
『ツチノコとは、胴が太い蛇と形容されている
ツチノコ。それは自分自身、そしてひとりが変身している仮面ライダーのモチーフの事を指しているのだろうか。
突然その生命体に関する生態を説明してきたかと思いきや……
『硬い皮膚と毒……これらを上手く調和したアタシの防御力は、並程度のパワーなら内部へのダメージを防げる‼︎ これぞ正しく、ツチノコパワー‼︎ ヤー‼︎』
何やら自信満々に語っているかのように声を張り上げ、何処ぞの筋肉を武器にしたお笑い芸能人のモノマネをしながら、自分自身のスペックを自慢してきた。
「ツ、ツチノコパワー……?」
そして謎のワードを使ってきたディスクのミスレアに、ミスレアことひとりは思わず困惑するのだった。
だがそれと同時に、ひとりにある考えが脳裏に浮かび上がる。
「で、でも……これなら無理矢理突撃してもなんとかなりそうだし、そのまま私の方に攻撃が向けば、他の人や町への被害も少なくて済みそう……‼︎」
驚異的とも思える防御力を活かし、他に対する被害を防ぐ手立てとしたいらしい。その防御力で敵のヘイトがこちらへと向けば……と考えているようだが。
『後者は良いアイデアだけど、アタシのスペックを過信しないでよね? スーツの防御力を超える攻撃が来たら厄介だよ?』
「あっはい……(すごい陽キャっぽいのに、しっかりとアドバイスしてくるなぁ……仮面ライダーのアイテムだからかな?)」
ミスレアディスクに過信は禁物だと指摘されてしまう。それと同時に、自分の事を気遣っているのだろうかという考えが過ぎるのだった。ミスレア……良い陽キャだ。
『あっぼっちちゃん‼︎ また仕掛けてきたから気をつけて‼︎』
「はっはい‼︎ ってヒィッ⁉︎」
ミスレアディスクに呼ばれてか、ドラマーのトルーパーが再び光の弾丸を放ってきた事に気づくミスレア。だが短い間隔で連発されているため、連続で回避するのは困難だろう。
「(こうなったら、耐える事を信じて踏ん張りながら走るしかない……‼︎ミスレアさんごめんなさい、過信しないけど無茶します‼︎)」
『(あっやむを得ずって感じに走り出した。まぁ状況が状況か)』
心の中でミスレアディスクに謝罪しながら、ミスレアは意を決しながら駆け出した。当の本人は既に彼女の心情を察していたが。
次々とミスレアへと迫っていき、次々と爆発しながら着弾していく光の弾丸。だがミスレアの皮膚とも言えるスーツが、熱と衝撃を次々と吸収・ミスレアの内部へのダメージを防いでいった。
「ていっ‼︎ やあっ‼︎」
そして間合いを詰めたのと同時に、ドラマーのトルーパーの顎を蹴り上げて怯ませ、胴体に向けて右拳を突きつけた。
普段は運動神経が高くない者とは思えない機動力によるパンチによって、ドラマーのトルーパーは思いっきり吹っ飛ばされ横転した。
『今の内だよぼっちちゃん‼︎ 自分が使いたいと思っている武器を想像して‼︎』
「ぶ、武器を想像⁉︎ えっ、えっと……」
突然のフリに動揺するも、ミスレアは頭の中でどんな武器を使いたいのかと考察し始めた。
「(やっぱり、私と言ったら……でも見た目が同じなだけとはいえ、あんな使い方は……だったら‼︎)」
しかも自然と、どのような構成で使いたいのか、どのような形状や性能でいきたいのか……それらが次々とミスレアの脳内に思い浮かんでいっていた。
そして、ミスレアの両手に、様々な音符の形状をした光の球体と共に謎の発光が発生した。その発光している光には、まるで蛇の模様が描かれているかのようなものが浮かび上がっているかのように見えた。
まるで抱えられているかのように発生したその光は、音符のようなものと混ざり合いながら、とある1つの物体へと変化していった。
『ミスレアティックギター!! レッツ・パフォーマンス!!』
それは、ピンク色の迷彩柄をした、何処かツチノコを彷彿とさせる形状の
ギターなんかでどうやって闘うんだと思う輩もいるだろうが、今彼女達が相手をしているデシアゴーレム・ビートや2体のトルーパーもギターで闘っており(内1体はベースギター)、残りの2体も電子ピアノやドラムを武器にしているのだ。仮面ライダー側が使用してもおかしくないだろう。
『おー‼︎ やっぱりぼっちちゃんと言えばギターだね‼︎ でもどうやって闘うの?』
「あっこう使うんです」
そう言ってミスレアはギターヘッドの部分に取り付けられている、水色と黄色の二分に配色されたピックを手に取り、それで弦を弾いた。
するとそこから高い弦の響く音と同時に、ピンク色の衝撃波が放たれ、スティックを振るって押し返そうとしたドラマーのトルーパーを軽々しく押し飛ばした。
『おおっ‼︎ ウェーブみたいなのを放出する系だね‼︎ ギターを弾いている感が出て良いかも‼︎』
「そ、そうですか? えへへっ……喜んでくれたなら嬉しいです……」
喜ばれ褒められた事で舞い上がりながらも、ミスレアは続け様にミスレアティックギターの弦を弾き、衝撃波を3発連続で放出させる。
それをドラマーのトルーパーは今度こそとスティックを横薙ぎに振るい押し返そうとするが、先程あっさりと自分を押し飛ばした衝撃波3発に敵うわけもなく。
なんとか踏み止まろうとするもスティックは2発目で粉砕され、3発目でようやくといった感じに再び押し飛ばされた。
それでもだと言わんばかりにトルーパーはすぐさま立ち上がり、今度は両腕をスティック代わりにしてドラムを叩く。
先程までのよりも一回り大きな光の弾丸が3つ生成され、それが同時にミスレアに向けて発射された。
『あっ来たよ‼︎』
「こういう時は……‼︎」
するとミスレアがミスレアティックギターの側面のボディに手を掛けたかと思えば、それは一気に箱のように開き、折り紙かつギターの表面に覆い被さるように折り畳まれた。
『プット・ザ・ケース!!』
変形した後のその姿は、まさかの黒いギターケースそのものだった。普通のとは違い、可愛らしいデフォルメのデザインとなったピンク模様のツチノコのイラストが描かれている事から、独自性と可愛さを両立しているのだろう。
「フンヌゥッ‼︎」
その持ち手をミスレアが強く握りしめたかと思えば、ギターケースとなっているそのミスレアティックギターを横一回転で振り回せば……光の弾丸を全て打ち返し、トルーパーに被弾させた。
それを受けたトルーパーは弾丸の爆発を受け、所持していたドラムを半壊させられてしまった。
『おぉ‼︎ なんて豪快‼︎ ギターに合わせて大剣かハンマーみたいな感じに使うんだ‼︎ しかもギターケースに見える形態にする事によって《ギターで殴ってしまっている》という罪悪感を和らげ、接近戦でも闘えやすくしたんだね‼︎ 頭良いー‼︎』
「そ、そこまで解釈しますか……?」
まぁ概ね合っているけど。と思いながらも、ミスレアはいつの間にか迫ってきていたトルーパーのパンチをギターケース状態──クラッシュケースモードのミスレアティックギターで防ぐ。
そして軽く押し退ければ、向きをそのままにしながらトルーパーの胴体に突きつけ、ヘッド部分でさらに突きつけ、すぐさま横薙ぎに斬りつけ火花を散らさせた。
『よし、ぼっちちゃん‼︎ ドライバーのレバーにある左側のボタンを押して、ドライバーからディスク……というかアタシを取り出して‼︎ んで、ディスクと同じ形状をした武器のスロットに入れて‼︎』
「えっ。あっはい」
ミスレアディスクに促されるまま、ミスレアは指示通りドライバーのレバーにある左側のボタンを押し、ドライバーからミスレアディスクを抜き取った。
そしてそのディスクをミスレアティックギターのギターにあるネックとなる部分の、ディスクの差し込み口に挿入した。
『エクストラアタック、オーケー!!』
『ライダークラッシュ・ミスレア!!』
ミスレアティックギターが即座にディスクを読み込んだのと同時に、それが淡いピンク色の激しい光に覆われ始めた。しかも周囲には様々な音符が光の立体として浮遊し、ミスレアの周囲を動き回る。
「スゥッ……フゥッ………………ハァッ‼︎」
そして大きく深呼吸してから、それを地面に強く突きつければ……そこから大地を奔る淡いピンク色の巨大な衝撃波が発生した。
地を高速で這っているかのようなその衝撃波は、発動してから僅か2秒でトルーパーのいる地点に届き、一瞬にして柱でも立ったかのような爆発を巻き起こした。
爆風が発生し、それがやがて爆煙と共に晴れてきたかと思えば……先程まで立っていたトルーパーの姿は見当たらず、残っていたのは爆発によって発生したクレーターのみ。
つまりミスレアは、あの特殊なトルーパーを倒したという事になるのだ。
『やったー‼︎ まずは1体だねぼっちちゃん‼︎』
「………………」
「……ぼっちちゃん?」
しかし、ミスレアの仮面の内に秘めていた表情は晴れていなかった。一体何が気に入らなく、何を思ってクレーターの位置を見ているのだろうか。
まだ敵が残っているから、喜ぶのはその者達を全員倒したら…という事なのだろうか。ミスレアディスクはそう心の中で解釈を───
「クレーターができてしまった所、弁償しないといけないのかな……」
『あっ………………そ、それはデシアゴーレムに責任転嫁しよっ‼︎ 元はと言えばあいつらが襲い掛かってきたんだし、アタシ達はみんなを守るための正当防衛してるんだし‼︎』
「えっ。ええっ……?」
触れるべきではない点に触れている気がするなこの子。ミスレアは焦りながらそう思ったのだった……
轟鬼・斬鬼・ナーゴ「あぁいうタイプのギター型の武器は初めて見た……」(遠距離攻撃もできるのを見て)