現代パロな多重クロス世界だと思ったらゴジュウジャーな仮面ライダーの世界でもあった件   作:名無しのモンスター

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オリ主、3話目でついに……?


こうして俺は知らんライダーに初変身した

 

 先程までキッチンカーによる食事店の経営を行っていた、とある何の変哲もない公園。その場所にて、普通の人間の姿ではない2体の何かが相見えていた。

 1人は仮面ライダーガッチャード。向き合った矢印状の複眼を光らせ、バッタのような装甲から蒸気を放出させていた。本家と異なる点は、変身者が大和 綺羅である事、そして変身するのに使用したアイテムがディスク系のものである事だ。

 もう1体は彼の前で明かしてはいないが、デシアゴーレムの1体であるデシアゴーレム・ロックと呼ばれる存在。全身のほとんどが岩石で覆われており、デシアゴーレム・トルーパーと呼ばれる甲冑の怪人を多く連れていた。

 彼等が相見える理由はただ1つ。綺羅の持つディスクを賭け、これから戦いに転じるからだ。

 

「それじゃあ、いくよ」

「やれ、トルーパーども‼︎ 奴からディスクを奪い取れ‼︎」

 

 双方の合図を皮切りに、綺羅──ガッチャードと、デシアゴーレム・トルーパーの集団が駆け上がった。前者は自身や人々の脅威を撃破するべく、後者は如何なる手段を使ってでも目的のものを奪い取るべく。

 先に仕掛けてきたのは、トルーパーの集団の内の3人だった。その内の1体が、鋼鉄によってできているその拳をガッチャードに振るおうとした。

 

「ふっ‼︎ せいっ‼︎」

 

 が、それをガッチャードは躱し、手首を掴んで背負い投げして横転させる。

 そしてすぐさま、ガッチャードを蹴り飛ばそうとしている別のトルーパーをアッパーで顎を中心に殴り飛ばし、右足で左方にいる別のトルーパーを回し蹴りして吹っ飛ばした。

 次に攻めてきたのは、刺々しく歪な槍を持った2体のトルーパー。その2体がガッチャードの胸部を刺し貫こうと駆け出し、その槍を突き出すが……

 

「遅いよ」

ガッチャートルネード!!

 

 突如としてガッチャードの右手に現れた、黒と概ね橙のツートンカラーで上下に引き伸ばした矢印の形をしている弓──ガッチャートルネード。その矢印の部分で2つの槍を防ぎ、ガッチャードはそれを押し返した。

 

「ハッ‼︎」

 

 後部のレバーを引き抜けば、大きな矢印を彷彿とした形状の正面部から、光の矢が放たれる。

 その2発目を続け様に放てば、2つの光の矢は先程の槍を持った2体のトルーパーの鎧に被弾。激しい火花が発生しその衝撃と熱で押し倒した。

 地面に仰向けで倒れ込んだその2体を飛び越え、何の模様も施されていない灰色の剣を構えたもう2体のトルーパーが駆け上がる。

 その剣を交互に振り下ろしたり薙ぐように振るったりするが、ガッチャードはそれにすぐさま気づき、後退したりしゃがみながら移動したりして回避する。

 

「振り方に無駄があるね‼︎」

 

 そして立ち上がったのと同時に、ガッチャートルネードを横薙ぎに振るうガッチャード。

 すると引き伸ばされている矢印の部分に当たった鎧から、光の矢を受けたトルーパーと同じように火花が発生。そのトルーパーもその衝撃で吹っ飛ばされてしまう。

 実はこの弓、剣としても扱われている。謂わば剣弓型錬成武器だ。

 

「次はこれ‼︎」

ガッチャージガン!!

 

 いつの間にかガッチャートルネードを何処かに仕舞ったかと思えば、今度は銃を取り出したガッチャード。それは太い矢印をそのまま銃にしたような形状をした、オレンジ色の武器だった。

 

「それっ‼︎」

 

 それのトリガーを数回引けば、先端の指向性錬金銃口からエネルギーを錬成して作られた光弾が数発も放たれる。それらが新しく攻めようとしてきたトルーパーの数体に直撃し、火花を発生させながら押し飛ばしていった。

 

「今の内に一気に……‼︎」

 

 ガッチャードが今こそ好奇だと呟けば、唐突に何処からか出現した、顔と鎌部分に矢印の模様が描かれ4本の腕に鎌を持つ1枚のカードを手に取った。そして上部のスロットに向けて差し込み……

 

ガッチャージツインバスター!!

 

 するとトリガーを引いたのと同時に、銃口から緑色の鎌状の光弾が連射される。それが次々とトルーパーに着弾していき、緑色の火花が飛び散っていき、それが着火点となって次々と爆発を発生させていった。

 それによって発生した爆煙を、ロックが岩石の巨腕で振り払い消していった。視界の妨げとなるものが目障りであるがための対処するための行動であった。

 

「チッ……何の苦戦もせず、俺の部下どもを次々とぶっ飛ばしやがってよォ……」

「悪いけど、僕と君とじゃあ潜ってきた場数が違う。そして、闘いに挑むための覚悟もね」

「クソが……覚悟はともかく場数の少なさに関しては反論できねェじゃねェか……」

 

 煽っているわけではない。だがガッチャードは、遊び半分で暴れているロックを許せなかった。だからこそ、ガッチャード自身が思う正論をロックにぶつけたようだ。

 実際、彼の予想は当たっている。デシアゴーレム・ロックは、シンジケートの作られたディスクによって生み出されてから、まだ丸一日も経っていない。それ故に、戦闘に対する認識がガッチャードよりも甘いのだ。

 しかし、何もかもロックの方が乏しいわけではない。

 

「(……へっ。そうやって気を取られてろ。こちらは貴様のディスクを確実に手に入れるための手段を、裏から整えていくだけなのだからなぁ……)」

 

 この時、ガッチャードはまだ知らなかった。デシアゴーレム達が、彼の知らないところで姑息な手段を取っている事に……

 

 

 

 

 

 

 流されるがまま、楽澄さんに案内されている俺達。

 特撮でありそうな爆発が起こって、その近くにいた綺羅さんが1人残ってという……何処ぞのヒーローものな展開みたいな感じになったけど、綺羅さん本当に大丈夫なのか? というか、何故1人だけあそこに残ったんだ……?

 そんな事を考えている中、俺が握っているひとりの手が、俺の手を強く握り返した事に気づいた。

 

「こ、浩司君……あの人、本当に大丈夫なんでしょうか……?」

「ひとり……」

 

 ひとりも綺羅さんの事が心配で、不安になって体の震えが止まらなくなってきたようだ。……こんな彼女に何もしてあげないのは、さすがに彼氏失格だよな。

 少しでも落ち着かせ、安心してあげよう。そう思いながら、俺はひとりと握っていた手の指を絡めた。

 

「えっ? あっあの……」

「楽澄さんが大丈夫だと言ってくれたんだ。綺羅さんも死ぬ気がない事を態度で示してくれている。だから……今は2人を信じようぜ」

「あっ……フフッ、そうですね。私達が疑ったり、不安になったりしたらいけませんもんね」

 

 ……よし、ひとりが無理してない感じの笑顔を見せてくれた。お前が安心して笑ってくれたら、俺も安心できるってもんだ───

 

「うおおおっ⁉︎」

「えっちょっぶええええええっ⁉︎」

 

 刹那。何故か俺はひとりの手から無理矢理引き剥がされるかのように……と思ったが、強く手を握っていたせいでひとりを巻き込みながら、宙へと何故か浮き始めてしまった。

 というか、浮くスピードが速い……⁉︎ 無理矢理飛ばされているのか⁉︎ 何故⁉︎ ってかどういう原理⁉︎

 

「なっ⁉︎ し、しまった……‼︎」

 

「な、なんだなんだ⁉︎」

「誰かが宙に浮いてるぞ⁉︎」

「えっちょっと待って⁉︎ 浮いているというか……」

「あれって……引っ張られている(・・・・・・・・)⁉︎」

 

 楽澄さんが俺達の今受けている事態に気づき焦りを見せ、同じく彼女に避難誘導してもらっている人達も、次々と動揺の言葉を漏らす。

 ふと上を見上げれば、そこに見えているのは……俺の左腕を引っ張っている細くも丈夫な白い糸。そして……

 

「ゲヘヘヘヘヘェッ‼︎ 人質ゲットォッ‼︎」

 

 その糸に引っ張られている俺達を嘲笑う、直立しそうな人型のフォルムで腹部辺りに付いている脚以外──というか腕と脚が人間のと似たものとなっていた、黄色を中心に黒のツートンカラーとなっており、8個の単眼を紅く光らせている蜘蛛だった。

 ………………って。

 

「ギャアァアアアアアアッ⁉︎ デッケェ蜘蛛ォォォッ⁉︎ しかも人みたいだし、喋ってるゥゥゥゥゥゥッ⁉︎」

「ヒヤァァァァァァァァァッ⁉︎ ほ、ほしょっほしょっほしょしょ、捕食されるゥゥゥゥゥゥッ‼︎」

「うるせェ喧しい静かにしろ‼︎」

「「ハイすみません‼︎」」

 

 ひとりと一緒に叫んでたら、怒鳴られてつい謝罪しちゃったよ……いやでも確かにうるさかったから、叱られるのも仕方ないか……叱ってきたのがこんな得体の知れない蜘蛛だけど。

 

「っつーかテメェらリア充か? いいよなリア充は、喜びも悲しみも2人で共有できるんだからよォ……あーもうなんかむしゃくしゃしてきたぜこのやろー‼︎ むしゃくしゃにしてやるー‼︎」

 

 なんか私怨を呟いてきたんだが。そしてなんだか不穏な事してきそうなんだが……

 とか思っていたら、蜘蛛が口からさらに糸を長く吐き出してきた。するとそれで俺達の身体を巻き始め……1つの繭のように、俺達をぐるぐる巻きの拘束状態にしやがった。

 

「くぁせdrftgyふじこlp!?」

「ざqwsxcでrfvbgtyhんじゅいkmぉp!?」

「女の方は何言ってんだ?」

 

 ぐるぐる巻きにされ始めた時の俺らの叫声、こんな感じ。特にひとりの悲鳴は、マジもんの声にならない悲鳴になってしまったようだ。

 いやそんな事よりも、これはヤバいかもしれない……いや、明らかにマジでヤバいってこれ……さっき俺達の事を人質と言っていた。もしかして、綺羅さんの事で何か良からぬ事を企んで……⁉︎

 

「早速人質にして連れてって……いいや、ただの人質にするにはもったいねェな」

 

 えっ? 今度は何をする気なんだ……?

 と思っていたら、その蜘蛛の怪人は胴体にぶら下げている脚から、そこから隠していたらしい何かを取り出した。それは、中心に青い丸状のスイッチのある小さなCDかDVDのディスクだった。それも2枚。

 ま、まさか……な、なんかすごく嫌な予感がする……

 

「このディスクを使って、お前達をデシアゴーレムへと変え、この俺様デシアゴーレム・スパイダーとシンジケートの手下にしてやる‼︎ もしやられても、お前らの命が消えるだけだろうしな‼︎ 知らんけど‼︎」

 

 ゲェェェッ⁉︎ や、やっぱりィィィィィィッ⁉︎ デ、デシアゴーレムとかいう怪人として……こ、こんなわけの分からん奴らの仲間になるだって⁉︎

 ……冗談じゃねェぞ。そんな事、許されるわけねェだろ……‼︎

 

「俺達に触るな‼︎ 特にひとりには手を出すんじゃねェ‼︎ 俺達は怪人になるなんてごめんだからな‼︎」

「浩司、君……」

「ヘェ……威勢だけはなかなかいいじゃねェか。超人になれば、その威勢が武器になるだろうな……ますます気に入った‼︎」

 

 やっぱりこれでも俺達……というか俺を怪人にさせる気満々じゃねェかよこんちくしょーが……‼︎ いや、絶対そうだろうとは思ってたけどさぁ……‼︎

 

「まずい……‼︎ おふたりを離して───キャアッ⁉︎」

「テメェは引っ込んでろ‼︎人質にはするが、テメェの場合はデシアゴーレムにするかどうか、見極めた方が良さそうだからな‼︎」

 

 楽澄さんが俺達をなんとか助けようとするが、蜘蛛の怪人──デシアゴーレム・スパイダーと名乗った奴が左腕から発射し、彼女の両手両脚を拘束してしまった。

 他の人達は……やはり俺達と同じ一般人だからなのか、その場から一歩も動けない状態だった。得体の知れない存在に目をつけられたら、そりゃあ腰を抜かすよな……同情せざるを得ない。

 そんな中、スパイダーが俺達……いや、俺のところへと近づき、右手に持つディスクをくっ付けようとする。

 

「さぁ、まずはテメェからだ。生まれ変われ、己自身と俺様達の首魁……両者の願いを叶えるために、な」

「ッ‼︎」

「こ、浩司君……‼︎」

 

 ヤバいヤバいヤバいヤバい、強気になっておいてアレだけどマジでヤバい‼︎ 動けないしホントどうしよ───

 

 

 

『させん‼︎』

 

 

 

 突然の暑苦しさの感じそうな声が、俺の鼓膜に大きく響いてきた。すると何かがスパイダーに突進──タックルをかまし、近くのビルの壁へと吹っ飛ばした。

 

「グォッ⁉︎ クッ、何なんだ……って、なっ⁉︎」

 

 すぐさま起き上がったスパイダーだが、その時に目の当たりにした光景を見て仰天していた。

 奴が俺達に付けようとしていたディスクを、2枚とも何者かの足によって踏み潰されてしまっていたからだ。

 

「テ、テメェ……‼︎ 俺様の大事なディスクをぶっ壊しやがって……‼︎ 何モンだ‼︎ ブッ殺すぞゴルァッ‼︎」

 

 俺達を自分の部下の怪人にする事ができず、怒りを露わにしたスパイダー。ディスクを破壊した犯人を見据えていたため、俺もその方向へと向けば……そこにいたのは、仮面を付けたヒーローらしき戦士だった。

 それは半透明の姿をしており、まるで写真にぼかしがついているかのように、どのような姿をしているのかが不明となっていた。だけど、色合いは赤が中心となっている。それだけははっきりと伝わっていた。

 その戦士はスパイダーの怒声によって呼びかけられた事に気づいたのか、自分自身に親指を差しながら声を出してきた。

 

『名前などない‼︎ 思いつかなかったからだ‼︎』

「「「「………………は(はい)?」」」」

 

 名前が、ない? しかも記憶喪失だとか訳あって名前を奪われたからとかじゃなくて、思いつかなかった? いやそれどういう事だよ、訳分からん。

 

『だがそんな事はどうでもいい‼︎』

 

 と。そんな事を考えていたら、戦士は今度はスパイダーの方を指差し、宣言するように腹から声を出してきた。

 

『そこの怪人よ‼︎ 一般人を怪人に変え、無理矢理手下にしようとするその卑劣さ……見過ごせぬ‼︎ 今の私は微力しか持ってないが、必ず成敗してくれよう‼︎』

「うるせェ‼︎ 引っ込んでろ半透明コスプレイヤーが‼︎」

 

 どうやら戦士がスパイダーを倒し、俺達を助けてくれるそうだ……って、なんだその悪口。半透明コスプレイヤーってなんだよ、聞いた事ねェぞそんな呼び名されてる奴。独特な悪口だなオイ。

 

『コスプレイヤーではない‼︎ 今はこの姿にしかなれないだけだ‼︎』

「どうでもいいから死ね‼︎」

 

 とうとうイライラが限界に達したのか、スパイダーが駆け上がり右腕で戦士に殴りかかる。戦士はそれを必死に払い受け流すように叩き、殴り返そうとするも、左腕でその拳を受け止められてしまう。

 

「あん? どうやら半透明に見えるってだけで、攻撃はてんで通らないってわけじゃないみてェだなァ? ハッ。一瞬だけとはいえ、透かされて攻撃が当たらないかどうかで不安になって損したぜ」

『攻撃を透かす能力か……贅沢を言うつもりはないが、そんな能力があれば苦労しないな‼︎ ハァッ‼︎』

 

 拳を掴まれた腕を振り払い、片方の拳で再び殴ろうとするも躱され、そのままの勢いで回し蹴りをするも、スパイダーが右腕を盾にした事で受け止められる。

 その隙を見逃してくれるわけもなく、スパイダーに左足で胴体を蹴り上げられ、そこを左腹部の脚で突き刺され、火花を散らしながら吹っ飛ばされてしまう。

 

『うおあぁっ⁉︎ クッ……‼︎ うおおおおおおっ‼︎』

 

 戦士はどうにか態勢を立て直し、脚で地面を削りながらも踏ん張った。そしてすぐに駆け出し、両腕を交互に振るいながら再び殴りかかる。

 しかしどれも、反対の掌で受け止められては受け流されていき、お返しだと言わんばかりに殴り返されていってしまった。

 挙げ句の果てには足元を蹴られ仰向けに倒れてしまい、スパイダーの左腕から発射された蜘蛛の糸で右足を取られ、そのまま投げ飛ばされ壁に背中を激突させてしまう。

 

『ッアァッ‼︎ ウッグッ……』

「……ハァァァッ。弱ェ、弱すぎるなテメェ」

 

 あまりにも優勢なのが嫌になってきたのか、スパイダーは頭を掻き溜息をつきながら、倒れている戦士の元へと歩を進めていった。

 

「成敗するとかなんとか言っておいて、たくさんの人間がいる中で、無様にやられているその様を見せびらかしてるだけじゃねェか。俺様、弱ェ奴なんて大嫌いなんだよなァ」

 

 スパイダーの言う通り、戦士はあいつにボコボコにされてしまっている。しかもたくさんの人の目の前──公衆の場でだ。

 あんな様子を見られてしまえば、誰もが戦士が怪人に勝てる希望は見出せないと思う。他にあの怪人と闘える見込みのある人がいない……というのも事実だが。

 しかし。非難的発言を言われながらも、それでも戦士は立ち上がろうとする。内面がボロボロな状態になっているはずなのに。

 

『確かに、今の私は弱い……君の言う通り、我ながら手も足も出ないくらいに弱すぎる……だが‼︎』

 

 己の弱さは己自身が理解しているようだ。けど、それでも彼には闘おうとする理由はあるらしい。

 ……これは、まるで。

 

『だからといって‼︎ 危機に陥っている人達を魔の手から助けようとせず、目を逸らして逃げる理由にはならない‼︎ 私は勝てる勝てないではなく、立ち向かうために闘っているんだ‼︎』

 

 初期の仮面ライダーそのものだ。力に慣れていなく、同じく闘える味方がいない中でも、ひたむきに敵に立ち向かう……そんな印象を強く持たせていた。

 

「……弱い犬ほどよく吠える、そんなことわざがあるだろ? 俺様はそれを体現した奴が大嫌いなんだよ」

 

 それでも、スパイダーは怪人なのか響かなかった模様。両腕と口から糸を放ち、戦士の首と両手首を捕らえ……

 

「だから、戯言とか言わねェで黙ってやられてろ‼︎」

『ぬあああっ‼︎』

 

 思いっきり投げ飛ばした。それも、飛ばされる先が俺とひとりのところだ。

 

「うええええええっ⁉︎ な、なんかこっちに来てませんか⁉︎」

「えっちょっ待っ……⁉︎」

 

 待て待て待て待て待て待て待て待て⁉︎ まさか俺達を巻き込んで、3人一緒に葬らせるつもりじゃないだろうな⁉︎ ヤベェってそれは洒落になら───

 

 

 

 

 

 

「………………………………ん? ……アレ? ここは、一体……?」

 

 目が覚めると、俺は見知らぬ空間に立っていた。そこにはひとりやあの戦士どころか、楽澄さんやスパイダー、一般人1人すらいなかった。

 しかもよく見れば、俺の身体をぐるぐる巻きにした糸も無くなっている事に気づいた。

 刹那、俺の頭の中でとある可能性が出てきてしまった。

 

「俺、もしかして死んだ……⁉︎」

 

 いやいやいやいや、冗談じゃねェぞ⁉︎ せっかく二次元キャラがたくさんいる世界に来れて、ひとりと恋人同士になったってのに、特撮あるあるの突然の怪人に遭遇で巻き込まれての死亡って……洒落になんねェっての‼︎

 転生だって一度きりだろうし、このまま死んだ事になるなんて絶対認めねェぞ俺は‼︎ どうにかしてこんな世界から脱出を……

 

「……って、アレ? この場所、どこかで見たような……?」

 

 とある点に気づいた俺は、ふと周囲を見渡した。

 俺が今立っているところは、まるでチェス盤のような白黒の市松模様の床が広がっており、壁も天井も無いように見える薄暗い空間となっていた。

 これは……まるで。

 

「夢の中にいた時と、同じ場所だ」

 

 もしかして俺は、あの戦士にぶつかった事で気絶しただけなのか? ここは寝ていた時にいた景色だから、その可能性が高いのだろうけど……

 

 

 ───少年よ、本気で叶えたい願いはあるか?

 

 

 ふと、エコーのかかった低い声が、俺の耳に伝わってきた。

 ……これだ、この声だ。夢の中で聞いたのと全く同じだ。この声が、毎日俺の夢の中で聞こえてきたんだ。

 

「誰だ‼︎ ……あっ、今度は声が出た」

 

 気がついたら、俺は声の主に問いかけるように叫んでいた。そして、今日までとは違って声を出す事ができた事に気づいた。ついに声の主と話せるようになったようだ。

 

 

 ───名前などない(・・・・・・)。平和の為に闘う存在……とだけ言っておこう。

 

 

 あ、質問に答えてくれた。どうやら声を出せれば、問いかけを無視される事はないらしい。

 ……しかし……名前などない(・・・・・・)、か。それって、まるであの戦士が正体だと思わせているかのような感じだな。

 

 

 ───話を戻すが、叶えたい願いはあるか?

 

 

 叶えたい願い、か……友達はたくさんできているし、テストとかも一応良い点数を取っている。運動神経も悪くないはずだし、それに恋人もできている。

 お金だって結構稼いでいる。学校近くのカフェで働いていて、遊ぶ金も生活金も充分あるからな。寮生活のおかげで色々と緩和とかしてもらっているし。

 

「今は……ないんだ」

 

 

 ───無ければ見つけよ。そして叶えるために試練を乗り越えよ。

 

 

「何故叶えたい願いを見つける必要があるんだ?」

 

 声の主がこの後何を言うのか、あの夢を何度も見た俺だからその答えは分かっているはずだ。けど、それでも気になってしまって仕方なかった。

 それを聞いた声の主は、何を思ったのか、夢の中でのとは少し違った答えを出してくれた。

 

 

 ───私事ではある。しかし、願いを叶えようとする意志が、世界に平和を取り戻すのに必要となるのだ。

 

 

 いや私事かい。

 けど私事とはいえ、世界を平和にしたいって想いが、不思議と強く伝わってきている気がする。

 まるで、真っ直ぐな意志を持ってスパイダーと闘っていた、あの戦士と会話しているように感じたからだ。

 

 

 ───君は嫌か? 世界が平和じゃなくなるのは。

 

 

 そんな事を思っていたら、不思議とその問いかけに対してすぐに答えを出す事ができた。

 

「平和じゃないのは嫌いだ。けど、そのために何かを消したり命を奪ったりする事は……出来ればしたくないな」

 

 俺も正義の仮面ライダーも、手段を選ばないかはともかく、みんな殺人鬼じゃないからな。何かのために平気で人を殺してしまったら、倫理観をなくし、自分が自分じゃなくなってしまう……

 だから、平和のために人を殺すという矛盾な事をする必要があるのなら、声の主と同じ道は歩かん。俺は俺のやり方で平和を目指すさ。

 

 

 ───そうだ、その考えは正しい。

 

 

 すると俺の目の前に、大きな朱い光が灯された。その光を放っている者の正体は……巨大な赤い鳥獣。腹部辺りは黄色と朱色が混ざったかのような明るい色をしており、身体よりも一回り大きい翼の先端にある羽は虹のように様々な色を持っていた。

 

 

 ───世界の平和を願う気持ちは、誰しもが持つべき美しい理想だ。だがしかし、手段を選ばず、何かを奪ったり誰かを消したりする行為は、所詮新たな争いの種を蒔くだけのもの。真の平和というものは、他者の痛みを無視した力で築かれるものではないからだ。全ての人々が互いの存在を尊重し、共存できる世界こそが、本物の平和である。

 

 

 いや、あの……俺、そこまで深くは考えてないんですけど。確かに平気で人殺ししたら倫理観がどうのこうのとは思ってたけど、そこまで深くは……

 

 

 ───少年……君は、その本物を平和を、無自覚にも本気で願っている。だからこそ私は、そんな君を探していた。人質を助けに来た時に、偶然君と出会う事になったとは思わなかったけどね。

 

 

「……えっ? 探してた? 俺を?」

 

 ってかお前、やっぱり俺達を助けようとした戦士じゃねェかよ。異形の姿にもなれるってすごくね?

 

 

 ───正確に言えば、私が中に入っているディスクらしきものが起こした、共鳴反応によるものから、君を見つけた事が始まりだったんだけどね。

 

 

 あ、最初は何らかのシステムで俺を見つけたからなのか。なんか機械か人間の事を知らない生命体っぽい意見だなー。……にしては、スパイダーと闘っている時は、人間に負けない根性を見せてたけど。

 

 

 ───けど、君の意見を聞いて確信したよ。君なら、私と一緒に、平和のための苦難に立ち向かってくれるだろうってね。

 

 

 平和のために苦難に立ち向かってくれるだろう、か……なんか、なろう系とかでありそうな考え方だな。といっても、まさか俺がその役割をする事になるとは思わなかったけど。

 

 

 ───少年。君には今、護りたい者がいるはずだ。せめてこの時だけでいい。その者のために、私と共に、探す事にした願いを叶えるための闘いに赴いてくれないか?

 

 

「……今護りたい者、か」

 

 そうだな……俺の隣には、ひとりがいる。彼女も今、俺と同じように危機的状況に陥っている。恋人に何かあれば、彼女と親しみのある人達が悲しむし、何より俺が全くいい気になれない。

 いや、ひとりだけじゃない。もしもスパイダーみたいな奴が町の人達を襲ってきたとなれば、俺の友達もみんなが被害に遭うに決まっている。

 だとすれば、俺が彼に今すべき答えは……

 

「やってやるよ、平和のための闘いを‼︎ それも、お前がこの世界が平和になったと思うまでな‼︎」

 

 拳を作った右手を心臓部に当て、鳥獣となっている戦士を指差し、最後まで闘う事を誓った。

 あいつが闘っている敵を、全滅したり組織が崩壊したりして、もうあいつが闘わなくていいようにする……そうすれば、俺達が余計な心配する必要がなくて済むからな。

 後……もう1個本音を言えば、俺も本物の特撮ヒーローとして1回闘ってみたかったんだよなー‼︎ その意欲も我ながら強い‼︎

 

 

 ───それはありがたい‼︎ ならば闘おう、共に‼︎

 

 

「おう‼︎」

 

 何の大きな反応は見せてはいなかったが、声からして嬉々としているのが伝わってきている。行動に出せないだけであって、感情がないとかってわけではないようだ。

 

 

 ───では少年、君の名前を聞こう‼︎ 君の名前は?

 

 

「俺は浩司。立向居 浩司だ‼︎」

 

 

 ───浩司君か‼︎ 私の名は………………

 

 

 ここまで語ると、戦士は何故か黙り込んでしまった。何か悩んでいるかのような唸り声は聞こえてくるが……

 

 

 ───そういえば、私にはまだ名前がないんだった。うーむ、どうしたものか……困った。

 

 

 あ、そういえばそうだったな。俺達をスパイダーに怪人にされそうになったところを助けてくれた時も、そんな事を言っていたんだったっけか。

 確かに、名前がないと呼ぶ時に困るな……うーん、どうしよう……

 ……おっ、そうだ‼︎ いい事思いついた‼︎

 

「なら、お前が名前を思い出すまでは、この名前でいこうぜ‼︎」

 

 

 ───むっ? 一体どんな名前だ?

 

 

「今日からお前の名前は……」

 

 

 

 

 

 

「ぬおおおおおおっ⁉︎ な、なんだ⁉︎ いっ、一体何が起きてるというんだ⁉︎」

 

 気がついた時には、俺は現実世界へと戻っていた。しかも目を覚ました瞬間に、光の波動らしきものが突風として吹き荒れ、スパイダーを吹っ飛ばしていた。

 そして俺とひとりをぐるぐる巻きにしていた……さらには楽澄さんの手足を縛りつけていた糸が、両方とも無くなっていた。今の突風で、千切れたのか溶けたのかは分からない。けど、これで自由に動ける事は確かだ。

 

「今の、あの戦士の能力か……? って、アレ?」

 

 ふと、ズボンの右ポケットに違和感を覚えたため、咄嗟に手を突っ込んだ。

 そのポケットの中には……赤色の戦士が描かれ、銀色の星の模様と共に赤色に縁取られた、中心に少し小さめの金色の丸いスイッチらしきものが出来ている、円盤状の物体──ディスクらしきものが入っていた。

 

「そっそれは、ウィッシュディスク(・・・・・・・・・)……‼︎」

ウィッシュディスク(・・・・・・・・・)?」

「しかも色合いがレガシーディスク(・・・・・・・・)と違う……まさかそいつは、オリジンディスク(・・・・・・・・)か⁉︎ 何故テメェがそれを……⁉︎」

 

 よく分からんけど、オリジンディスクっていうのかこれ。なんかウィッシュディスクとかレガシーディスクとかも言ってたけど……

 

「……まぁ、細かい事は後で考えるか」

「そ、それを細かい事で済ませるだと……⁉︎」

「分かった事はただ1つ……これを使えばお前に対抗できるって可能性ができたって事だ」

 

 俺はそう呟き、スパイダーの方を強く睨みつけるように見た。するとちゃんと睨みつけれたのか、スパイダーは一瞬怯んで後退りしていた。ふと、ひとりがこちらを見ている事に気づいたため、今度はそちらの方を見た。

 

「こ、浩司……君?」

 

 戸惑いながらも心配そうに見つめている彼女に対し、俺は無自覚にもそっと頭を撫でた。どうか怖がらないでほしい。どうか不安に駆られないでほしい。その想いを持ったからなのか、俺は気付かぬ内にこの行動に出たようだ。

 そして、今の彼女になんて言うべきなのかも、不思議と出てきた。

 

「大丈夫だひとり、心配するな。お前も、みんなも俺が護ってみせる。無理しすぎないようにもする。だから……安心してなんて無責任な事は言わないけど、俺に任せてくれ」

 

 そう言って笑ってみせたら、ひとりは豆鉄砲を喰らったかのような表情を見せるも、何を思ってくれたのか、作り笑いのない笑顔を見せてくれた。

 

「……分かりました。貴方を、信じてますね」

 

 やっぱり、いい子だなひとりは。陰キャだとか言うけど、他人の事をよく考えてくれている……

 俺、この子の恋人になって本当によかったよ。

 

『準備はできたようだね』

「うおっ⁉︎ その声……急に姿が見えなくなったかと思えば、あいつの言う、オリジンディスクとやらになっていたのか」

『元から私はディスクをしていたんだけどね。ちなみにさっきまでの姿は、ディスクの力を使ってどうにか現像できたってヤツさ』

「えっ? それが本体なの?」

 

 それってつまり、ディスクのまま今まで自律して生きてきたって事? しかも半透明な人型になれるってマ? マジで言ってるのこいつ? だとしたらすごくね? 俺、今からそんな奴を使って……?

 

『そんな事よりも変身だ‼︎ 敵は待ってくれないぞ‼︎ 真ん中にある丸いスイッチを押すんだ‼︎』

「えっあっ、そうだったな。真ん中のスイッチ……これか‼︎」

 

 はっきりとした声で指示されたので、我に返った俺はその指示に従う。

 そして俺は……彼の名前(・・・・)を呼び、ディスクの中央にあるスイッチを押した。

 

「さぁ一緒にいくぜ……

 

 

 

 願いを求める鳳凰……ウィックス‼︎」

 

 

 

オリジン・ウィックス・ディスク!!

 

 ディスクから嬉々とした音声が流れ込んできたのと同時に、俺の腰周りにVRらしき赤色の光が発生。そしてそれはどういう原理でか実体化する。

 銀色の鋼板の上に赤色の装甲を着けたような長方形をした、鋼鉄の装置となったそれは、変身ベルトのように……否、変身ベルトとして装着され、そこからも嬉々とした音声が発生する。

 

セッティング・オーケー!! ウィックスオリジンドライバー、アクティベート!!

 

 お、おぉ……変身ベルトがないからどうやって変身するんだって思ったけど、カブトやキバ・ウィザードなどのライダーみたいに、1つのアイテムを起動させる事で呼び出すタイプか。……どれも腰につける事でベルトを現像させてたけど。

 そんな事を考えながらも、俺はベルトの上部──横向きのそれにある凹凸部分に、ディスクを差し込んだ。

 

ローディング……オーケー!! トランス・プリパレーション!!

 

 刹那。ベルトから何かが投影され、周囲に落ちているものを吹き飛ばしながら俺の周囲を旋回する。

 投影されたのは、1つの姿をした様々なポーズを取っている複数の戦士と、彼が映っている複数もの映像。前者が俺の前を、後者が背後を中心に映し出されていた。

 その状況の中で、俺は掌を真っ直ぐに伸ばした両腕をクロスさせながら……高らかに叫んだ。

 

 

 

変身(・・)‼︎」

 

 

 

 それを合図に、装置の両端となる赤色のレバー状のパーツを力強く押し込んだ。

 

トランス・オーケー!! 仮面ライダーウィックス‼︎ レディ・ゴー!!

デセオ・ウォーズ、スタート!! レッツ・ファイト!!

 

 活気ある音声が、2回連続で発生する。それに合わせるかのように、投影された映像全てが俺の身体と重なり合い、光と何処からか秘められていた炎が弾け飛んだ。

 

 こうして俺は、1人の戦士へと姿を変えた。ふとビルのガラスに映ったその姿は、鳳凰……否、正に鳳凰を表す炎の化身のような戦士。

 

 銀色をベースに赤く輝く仮面は、頭部は鋭く伸びる角状のヘルメットが炎の翼のように広がっており、網目状の目元が鋭い視線を放ち、口元は獰猛な嘴を思わせていた。

 鎧となっている肩と背中のパーツは派手に広がり、炎の舌を模した赤と橙の棘が躍動的に突き出し、まるで本物の鳳凰が翼を広げて飛び立つ直前のように迫力満点だ。

 胸部には鳳凰の紋様が浮かび上がり、それが赤い装甲として光を反射して燃えるような輝きを放っている。

 黒いボディスーツの下に隠れた肢体は力強くしなやかで、腕と脚のプロテクターも赤い炎のモチーフで統一され、全体として不死鳥の復活を思わせる圧倒的な存在感を醸し出していた。

 

 この姿を見た俺は、自惚れた気を感じながらもこう思った。この仮面ライダーは、まるで姿を見せただけで敵を震え上がらせ、味方を勇気づける、正に伝説の英雄のようだ……と。

 

「な、何だその姿は……何なんだお前は⁉︎」

 

 実際に震え上がっている敵──スパイダーを見て、自身の初めて見る姿に驚いていた俺は我を取り戻し、そいつの方を見る。そして奴の質問に答えるように、俺は……否、()()は口を開いた。

 

()()は……ウィックス」

 

 

 

「『仮面ライダーウィックスだ‼︎」』

 

 

 

 こうして俺は、この世界で初めて誕生した仮面ライダー──ウィックスとなった。

 




ウィックスの姿を表しているAI画像はこちら↓

【挿絵表示】
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