現代パロな多重クロス世界だと思ったらゴジュウジャーな仮面ライダーの世界でもあった件 作:名無しのモンスター
それと、前回の実技の特訓の時間を4時間に伸ばしました。短くないかと言われて、『確かに』と思ったので。
クラウスさんの指導の元、俺達はバイクの運転に慣れるための特訓を行う事にした。
まずは軽く、普通にバイクを操縦する方法──中型二輪の教習を受けさせてもらった。アクセルの踏み方、スピードの調整方法、ブレーキの仕方……基本を全て分かりやすく教えてくれた。
その次に、公道で運転する際に気をつけておく事についても教えてもらった。左右に行く事を後方に伝える方法や、看板などの道路標識の種類やそこでの注意事項など……これらも分かりやすかった。
さすがは警察の人、と言うべきかな。初心者でも分かりやすいレクチャーだったよ。
そして、次に実技。実際にバイクを運転する事になった。
運転するバイクについてだが、ウィックスとミスレアには、変身しなくとも専用のバイクを呼び出す事ができる能力があるらしい。ってなわけで、それらをそれぞれで呼び出し、運転する事にした。
「おっおぉ……‼︎」
「カッ、カッコイイ……‼︎」
まず俺とウィックス専用のバイクは、炎のように鮮やかな赤で染められた『ウィックスライドブレイズ』。
そのフロントカウルは、ライダーの頭部と呼応するかのように、不死鳥の嘴を模した形状をしている。LEDのヘッドライトは、猛禽類の瞳のように鋭く、黄金色に輝いていた。
左右に大きく広がるフェアリングには、ウィックスの胸部と同じフェニックスの翼が刻まれており、その上を走るオレンジと黄色のラインは、まるで生きている炎が脈動しているかのようだ。
シートの後ろには、ウィックスの肩のような鋭い突起が、まるで翼の破片のように天に向かって伸びていた。
エンジンルームから覗くメカニズムは、ウィックスオリジンドライバーのコアと同じ形状をした複雑な歯車と、赤・青・黄色に脈動する3色の光を宿している。
排気口は単なるマフラーではなく、アフターバーナーを模した青い炎の光を放ち、その強力な出力を物語っていた。
ひとりとミスレアの専用バイクは、ピンク色を基調としながらも、どこか異質な、そして圧倒的な存在感を放つ大型バイク『ミスレアロックチェイサー』。
その車体は、通常の二輪車の概念を覆すほど低く、そして横に広かった。
フロントカウルはの扁平な頭部をそのまま具現化したようなデザイン。
低い位置に配された2つの青白いヘッドライトは、ミスレアの複眼のように不気味に、しかし鋭く闇を見つめている。
カウルの両脇、そして燃料タンクの側面には、ミスレアの胸部アーマーと共通する、金色の鱗に埋め込まれた2頭のピンク色の蛇頭が、牙を剥くように配置されていた。
ボディ全体は、ピンクと金色の鱗状の装飾で覆われ、フューエルタンクからシートにかけての一体化した太い胴体は、毒を溜め込んだ生物の腹部を思わせる。
シート後方、ツチノコの尾にあたる部分は先細り、マフラーは2本出しで、まるで蛇の毒牙のように上を向いている。
テールランプは、ミスレアオオリジンドライバーにある装飾と同じ形状をしたピンク色デザインで、妖しく明滅していた。
正直に言って、ミスレアのバイクは意外だった。細身な彼女の身体が運転するには中々の大型だったから。
「ふぉっ……ふぉおおおぉぉぉっ……‼︎ わっ私が、こんな大きくてハイカラに乗っていいのかな……⁉︎」
あぁ、やっぱり派手=陽キャが乗るべきものと解釈してしまっているのか。確かに派手さはあるよねそのバイク。いやウィックスライドブレイズもそうだけど。
というか、ほとんどのライダーのバイクはどれも派手なのばっかりなんだけど。他にも滅茶苦茶カッコイイバイクあるんだけど。多分それらのバイクも俺達は乗る事になるんだけど。少しずつ慣れていこうよ。
「それでは早速、レクチャーを開始する」
クラウスさんはそう言って、俺達にバイクの指導を始める事を伝えてきた。いけないいけない。今後の事のためにも、話はきちんと聞いておかないと。
「いいか新人達。民間人の君達が、ライダーのナノスーツの力でどれほど超人的な運動能力を得ようと、専用マシン……つまり『ライダーマシン』の操縦している時は、闘っている時や普通に運転する時よりも全く別物となるぞ」
あっ、バイク……というか専用バイクの事をライダーマシンと呼んでいるんですね。
確かにマシンディケイダーとかマシンゴーストライカーとか、『マシン』とある名前のバイクって意外と多いもんな。そりゃこの世界でもライダーマシンと呼ぶだけあるわ。
「このマシンは、変身時の君達のバイタルデータと同期して出力を跳ね上げる事ができる。だが、ただアクセルを捻ればいいわけではない」
この後のクラウスさんの説明によると、バイクもといライダーマシンには操縦における極意というものが存在するらしい。
1つ。意識をライダーマシンと
ただハンドルを握るのではなく、適合したナノ粒子を握り手からグリップへ流し込み、マシンを『巨大な自分の手足』として認識させる必要がある。
襲撃現場に向かったり、敵を追いかけたりする時も、『自分はこれに乗って間に合わなければならない。つまり自分の力で向かうのと同じ事』だと意識しなければいけない……って事になるのだろうな。
2つ。高速度戦闘における体重移動には気をつける事。
時速300kmを超えた状態でのドリフトターンは、人間の反射神経では不可能とされている。いや想像するだけでも普通無理だと思うが。
変身時の複眼で捉えた動体視力と、体幹のナノ粒子による重心制御を同時に行わなければ、マシンごと大破しまう恐れがある。
素早く走行するにしても、闇雲に走らせればいいってわけじゃない……そう考えさせられるな、それ。
3つ。
敵を追い詰める際、マシンは単なる移動手段ではなく武器となる。フロントのカウルで衝撃を吸収しながら敵の体勢を崩す『
確かに他のライダーも、ただ走らせての突進や回避をするばかりではなく、バイクに乗りながら戦闘する事が結構ある。だから攻撃と走行……両方を同時に行う事も慣らすべきって事だな。
最後が一番大変そうだが、ライダーマシンに乗る以上、それらを脳内に叩きつけて覚え、身につけるしかないよな。ただ
「特にドリフトからの急停止……通称『ライダーブレーキ』が一番に覚えておくべきものだな。後輪をロックさせながら車体を横滑りさせ、発生した衝撃波で敵の牽制を行う。後藤、君からやってみろ」
「はっはい……‼︎」
『ぼっちちゃん初めてのバイク……あっじゃなかった、ライダーマシンの運転だね‼︎ 頑張れー‼︎ ファイトー‼︎』
ミスレアに促されながら、ひとりはぎこちなくもミスレアロックチェイサーに跨る。ちなみに生足のままは危ないと言われたため、下にジャージを着ているようだ。……スカートを着けたまま、だけど。
そして基礎を教わった時に話をきちんと聞いていたのか、車体や自身の体の位置などの確認を難なくやってのけ、何事もなくエンジンを起動させた。ここまでは良い……のだが。
アクセルを回し、ミスレアロックチェイサーを動かした途端、レスポンスがあまりにも速すぎたのか、車体ごと引き摺られそうな感じになってしまった。
「あわわわわわわっ⁉︎ 凄いスピードが出てる⁉︎ それに何故か脳内に直接エンジンの回転数が流れてくる⁉︎ 何これ怖い⁉︎」
えっ何それ。『脳内に直接エンジンの回転数が流れてくる』? どういう事よそれ? もしかしてそれが、免許を持ってないライダーでもバイクを巧みに乗りこなせている事の謎なのか? 怖っ……
「それが
「はっはいィィィッ‼︎」
『ぼっちちゃん深呼吸ー‼︎』
突然の急スピードに、動揺したりビビったりしていたひとり。だけどクラウスさんが叫んだアドバイスによってか、じゃじゃ馬な感じになっていたミスレアロックチェイサーに徐々に慣れ始めていった。
ひとりの奴、初めての事も短時間で慣れやすい性分だったっけ。だからミスレアロックチェイサーの扱いに慣れ始めていっているのか? 何というか、後天性が高くてすごいな……
「……よし、短時間でいい感じになってきているな。次は立向居君、君が運転するんだ」
「はい、分かりました」
『浩司君、気をつけて運転するのだぞ』
友人達をSTARRYに連れて行く事になった時に『いざという時はマシンを呼び出そうか?』と言った奴とは同一人物とは思えねェ声掛けだな。あの時は俺が免許を持ってないの知らなかったろ? まぁそれはもうどうでもいいとして。
早速ウィックスライドブレイズに跨り、安全確認の云々を行……おうとしたが、跨った途端に、俺の何かが大きく変わった気がした。
中型二輪の教習で習った『ニーグリップ』や『スムーズなクラッチワーク』といった常識は、この異様なマシンに触れた瞬間に吹き飛んでいった感じがした。
キーを回すまでもなく、蓮の身体に適合した滾ってくる何かが、グリップを通じて車体へと流れ込み、ガソリンと高濃度エネルギーの混合音が重低音となって鼓膜を揺らしていく。
「身体の力を抜け。脳内の数値に振り回されるな」
クラウスさんのその言葉に、俺はハッと我に返った。
「マシンに『走らせてもらう』んじゃない。『そこへ行け』と意識で命じるんだ。ナノ粒子の同調率が50パーセントを超えたら、アクセルを一気に全開にしろ」
ナノ粒子……つまり俺の身体の中に流れ込んできている不思議なエネルギーみたいなものか。
感じる……確かに感じてきた。身体の中のエネルギーが、俺と一体化しているような感覚が。
深呼吸をし、視線を前方へ向けた。
訓練場のストレートコース。その先に置かれている巨大なダミー標的。それがある前の位置へと狙いを定める。
「(………………今だッ‼︎ 行けッ‼︎)」
アクセルを捻った瞬間、ウィックスライドブレイズの車体が弾かれたような速度で加速した。
けど、不思議と置いていかれるような感じはなかった。寧ろ俺の身体が、反射的に小波数云々を受け入れていっていた。
そして、視界の両端が流れるような超高速世界の中で、複眼状に知覚が高まった視界が、ダミー標的までの距離と最適な制圧ラインを正確に弾き出した。
「今だ、ブレーキを踏めッ‼︎」
クラウスさんの叫びに合わせ、俺は後輪をロックさせ、車体を力任せに真横へと倒し込んだ。
キュギャギャギャギャッ-‼︎
猛烈な摩擦音と焦げたゴムの臭いが立ち込め、車体が横滑りしながら爆風のような衝撃波を巻き起こした。
完璧な角度で滑り込んだウィックスライドブレイズは、ダミー標的の数センチ手前でぴたりと停止し、巻き上がった煙だけが標的を粉砕した。
「……ハァ、ハァ……」
ヘルメットの中で荒い息をついていると、クラウスさんがゆっくりと歩み寄り、パチパチと静かに手を叩いた。
「初乗りにしては君もかなり上出来だ。民間人にしておくには惜しいセンスだな。これで仲間達や上に良い報告ができる」
「……ぶっちゃけ、本当にこれでできたと言えるのかって感じで、疑心暗鬼中ですけどね」
クラウスさんが俺の肩をポンと叩き、コースの反対側に視線を向けて顎をしゃくった。俺も釣られてその方向を見る。
そこで見えたのは、スピードを想像以上に出しすぎたのか、吹っ飛んでしまったかのように転がっているひとりの姿だった。
……あいつ、どんだけスピードを出してしまったってんだ? まるでギャグ漫画みたいなバイクの転倒を想像しちまったぞオイ。
「私ら警察の装備は、市民を守るための『組織の盾』だ。だが、君達のその無茶苦茶なパワーと、そのマシンが合わさった時……君達は誰にも縛られない、悪を討つ『風』になる。それが、あの教授達の言う『仮面ライダー』の走りというものだ」
「……風、か」
俺が感じた風が、本当に悪を討つ力をさらに身につける事ができたのか、それはまだはっきりとした確信には繋がっていない。それでも、だんだんと『理想の仮面ライダー』に少しでも近づけた……そう自覚していっている気がした。
そんな事を考えながらも、俺は煙を吐き出すウィックスライドブレイズのハンドルを握り直し、少しだけ満足そうに口元を綻ばせた。
♢
それから俺達は、2時間に渡ってライダーマシンの操縦に慣れる特訓を行った。
思ったよりも実技……どころかこれまでの戦闘以上に疲れたのか、免許を受け取る準備云々をした後、20分程の休憩を取り、もうすぐそれが終わるなと思っていたら……
「お疲れさん‼︎ 座学に変身前の戦闘訓練、そしてマシンの操縦……3つの特訓を終えたようやな‼︎ この1日でよう頑張った‼︎」
「えっあっありがとうございます……」
「ありがとうございます教授。これで少しはいつもより自信がついた気がします」
往歳教授が、俺っての元へとやって来てくれた。俺達の特訓、みんなとは少し離れたところから見ていたのだろうか。近くにはいなかったし、仮面ライダーについての研究と同時併用していたのか?
「さてと……こいつが最後の特訓内容となる。といっても、特訓っちゅーよりは『課題』なんやけどな。とにかく、耳の穴をかっぽじってよーく聞くんやで」
次が最後の特訓か。一体何で俺達を強くしてくれるというんだ……?
「課題とも言える、仮面ライダーとして強くなるための最後の特訓。それは………………カレーライス作りや‼︎」
「「………………………………はい?」」
今この人なんて言ってた? えっ? 仮面ライダーとして強くなるための最後の特訓が、カレーライス作り? どゆことやねん? なんで最後の特訓が料理になるの? 訳分からん……
「あっそっか。料理する時に何かしらのギブスを着けるとか───」
「重りとかは着けへんで。普通に料理すればえぇねん」
「えぇっ……」
じゃあ尚更なんでだよ。仮面ライダーとして強くなるための特訓で、なんでカレーライスを作れって言うねん。ホント、訳がわからないよ(某インキュベーター)。
「安心せェ。仮面ライダーの特訓でカレーライスを作れ言うたのには、ちゃんとした理由があんねん。それを考えながら作ればえぇ。そんな難しく考える必要はないで」
「そっそうですか……」
「ほっ本当にそれでいいのかな……?」
ま、まぁ今思い出した事だけど、この人は本家でもゴジュウジャーにオムライス作りを要求して、スーパー戦隊について教えてあげたんだし? きっとカレーライスにも、仮面ライダーに関する何かがあるんだろうな……
となれば、作ってみるしかないな。カレーライスに何の意味があるのか、それを考えながら……だけど。
「そうそう。俺を唸らすカレーライスを作れたならば、こいつらをくれてやってもえぇわ」
そう言って、往歳教授はとあるものを俺達に見せてきた。それが何かというと……
仮面ライダーカリバーと、仮面ライダーポッピー。2人の仮面ライダーへとなれるそれぞれのレガシーディスクだった。
この世界でも、センタイリングの代わりとして、ディスクを料理の戦利品にするってマ?
♢
真昼の強い日差しが、黒のアスファルトを熱波で歪ませていた。
路肩に停めた400ccのネイキッドバイクの脇で、1人の青年──カズキはヘルメットを脱ぎ、額の汗を拭った。
「はぁーっ……まだちょっとした冬なのにあっつい。けど、やっぱツーリングは最高だな……」
カズキの眼下に広がっていたのは、海へと一直線に伸びる広大な海岸道路だ。
幼い頃からテレビで観ていた特撮ヒーロー番組。赤いマフラーをたなびかせ、あるいは漆黒の専用マシンに跨がり、風を切って悪を追い詰めるあのヒーロー達。彼らが駆け抜けていく自由な世界に、カズキは強い憧れを抱いていた。
「俺もさぁ……あんな風に、どこまでもどこまでもバイクで走り回れたらなぁ」
ガードレールに肘を預け、水平線を眺めながらカズキは独言た。
現実は厳しかった。休日にこうして遠出してみれば、法定速度を守り、周囲の車に気を配り、信号待ちで排気熱に蒸される日々。自分が夢見ていた『どこまでも自由に風になる』感覚とは、どこか掛け離れていた。
もっと遠くへ、誰も届かないスピードで、何の制約もなく縦横無尽に走り回りたい。
そんな胸の奥に燻る青い熱量が、溜め息と一緒に口から漏れ出たその時だった。
「ほうほう、なるほど。貴方は自由に爆走したいのですか。貴方は心の底から、何にも縛られず、己の赴くままに走り回り、駆け抜ける自由を欲しているのですね?」
「そりゃもちろん‼︎ ………………ん? えっ?」
呼び掛けられた声に反応し、活気を持って返答した瞬間……カズキの頭に疑問が浮かんだ。
今、自分は一体誰に呼び掛けられた? この周辺には自分以外の人はいないはず。大声で呼び掛けられたような感じも一切ない。所持しているスマホにも、勝手に通話されるような機能などあるはずがない。
なのに何故、このような状況で、誰に声を掛けられたというのか? 自分の後ろに誰かいるとでもいうのだろうか? 様々な疑念が過ぎりながらも、カズキが後ろへと振り向こうと───
『デシア・サーキッカー・ディスク』
した途端、低い電子音声が彼の耳元へと響いてきた。同時に何かがカズキの胸部へと押し込まれ、機械の嵌め込み口にピッタリと嵌め込まれたかのように、丁寧に貼り付けられた。
その物体──ディスクらしきものが、カズキの胸部に嵌った瞬間、臓器を抉られてでもいるかのような感覚が、カズキに襲い掛かった。
「ウッ⁉︎ アッガッ……アァァァアアアァァァアギャアアアアアッ‼︎」
悲鳴を上げ、もがき苦しむカズキ。だがその声や言葉はやがて、爆音のような排気音──重低音のエンジンの咆哮へと変わっていった。
『ローディング……オーケー、チェンジ』
やがてそこから解き放たれた麦色の光が、カズキの身体全体を包み込んでいった。その光の中で、本人の意思など関係なく、彼の身体は強制的に変貌させられていった。
もがき苦しむ中で、人間とはかけ離れた姿にされそうになっているカズキ。そんな彼の目の前には……
「フッ……
中世ヨーロッパの貴族のような、顔を中心に全身を覆う白いロングコートを着た、1人の男性が立っていた。
隠れている顔から唯一覗かせる口には、不気味な微笑みが浮かんでいた。
物語時間調整って難しいね。
補足
ライダーマシンで直接脳内に操作の仕方が伝わる……みたいな件についてですが、他のレガシーライダーも同じです。じゃないと『じゃあなんで講習を受けてない我欲なレガシーライダーもライダーマシンを運転できるんだ』って話になるし……