現代パロな多重クロス世界だと思ったらゴジュウジャーな仮面ライダーの世界でもあった件 作:名無しのモンスター
爆発音が発生した場所へと向かったところ……俺は思わず目を疑った。
昨日ショッピングモールで出会った、死神の鎌のような武器を持った男が正体となっているであろう、怪人らしき奴が、アギトを他のライダー達と共に呼び出したからだ。
アギトのレガシーディスクは本来、往歳教授が所持しているはずのものだ。それを、あの死神らしき奴が持っているという事は、教授は最悪の場合……
俺は思わず、怒りのままに両手を強く握りしめた。今にもあの死神の顔をぶん殴りたくなる程に、強く。
今にも早く奴をぶっ飛ばすためにも、ウィックスのディスクを取り出そうとしたところ、優一が手で制してきた。
「今は抑えろ」
「優一⁉︎ お前、目の前の状況が分からないのか⁉︎ 死神の奴、アギトのディスクを……」
「お前こそ、奴以外をちゃんと見ているのか? 死神みたいな奴とアギトだけじゃなく、他にも召喚ライダーが2体。そしてそいつらと対峙しているあの黒いレガシーライダーバックルのライダーが5人に、その味方であるあのウィザードラゴンにそっくりなロボットもいるんだ。闇雲に突撃すれば、あいつらに板挟みされてやられるぞ」
「そ、それは……そうだけど……」
「袋叩きにされて、ディスクを全て奪われて、教授の期待を裏切る事になってもいいのか?」
「……‼︎」
優一の説教で頭が冷えたのか、昇っていた血がゆっくりと引いていった気がした。
そうだ。あんな状況の中を、何も考えずに衝動に任せて突っ込んでしまったら、返り討ちにされてしまうのがオチだ。
それに優一の言う通り、もし呆気なくやられたら、期待してくれている教授や他のライダー達に顔向けできない。冷静になるんだ、立向居 浩司‼︎
深く深呼吸をし、俺は落ち着きと冷静さを取り戻していく。
「すまん優一。俺とした事が感情的になってしまった」
「教授のディスクが取られたとなったら、そうなってしまうのも無理もない。状況が落ち着くまで機会を窺い、どうにかしてアギトのディスクを取り返すぞ」
「おう‼︎」
教授、待っててください。どうにかして、貴方のディスクを取り返してみせますから‼︎
……ところでだけど、教授、ディスクを奪われた後は死んだりとかしてないよね? 死んでないと言ってくれ(切実)
♢
ゾロアが3人のライダーを召喚した事により、状況は一変した。ホワイトがギンギラウィザスターに乗って加勢してきたのが、あっさりと嘘になったかのように。
ドライブが、護拳のように車の赤と黒で配色されたハンドルが取り付けられた形状をした、水色の刃の剣──ハンドル剣を振るい、アバドンBとアバドンPが振るってきたスラッシュアバドライザーを弾く。
そして2人のアバドンの懐へと掻い潜り、横一線に2人の腹部を斬りつけ火花を散らさせる。
「チィッ……‼︎ ただの雑魚兵かと思ったけど、こいつもこいつで強いとかムカつくな……‼︎」
「だが所詮はAIが実体化したようなもの……とっとと倒させてもらう‼︎」
先程までドライブの強さに翻弄されていたのか、苛立ちを見せ始めているアバドンBとアバドンP。2人して左手にショットアバドライザーを手に取り、光の弾丸を連射。ドライブはそれを斬り伏せ霧散させていく。
『スピード!!』
銃撃が治った途端、ドライブが左腕に付けているレバーを押したかと思えば、駆け上がった瞬間、目で捉えられない速さで移動を開始。
「速くなるライダーだと⁉︎」
「う、上手く狙えへん……‼︎ セコい手使いやがって……‼︎」
2人のアバドンがショットアバドライザーを構えるも、高速移動しているドライブに狙いを定められず、苦戦を強いられる。
その隙を狙ってか、ドライブはその高速移動をしたままアバドンBに突撃し、彼を吹っ飛ばす。そして続けざまにアバドンPにも振るったハンドル剣で強く斬りつける。
そして2人が怯んだ隙に、ドライブはドライバーの右側についているメーターらしきものを捻り、左腕のレバーのボタンを押した。
『ヒッサーツ!! フルスロットル!!』
タイヤの形状を模した漆黒と真紅のエネルギーリングが、疾風の如き速度で連続して射出された。
1発、2発、3発、そして4発。空間を切り裂きながら敵へと迫る4つの重厚な輪は、四方から一点に集中するように配置されると、猛烈な勢いで逆回転を開始する。
狂おしい程の回転速度が生み出す強大な力場と圧力が、ターゲット──2人のアバドンの四方を完全に封じ込め、その身動きを寸分の隙もなく抑え込んだ。
「な、なんだこれは⁉︎」
「さらに速くなって……ってか、なんかおる⁉︎」
アバドンBとアバドンPの動作が完全に停止したその瞬間、眩い光と共にドライブを彷彿とさせる赤い自動車──トライドロンが解き放たれていた。
トライドロンは囚われた2人のアバドンを中心に捉えると、重力を無視した超スピードで円を描くように疾走を始めた。その過激なまでの旋回スピードは残像の壁となり、まるで目にも留まらぬ回転木馬のように、敵の周囲を囲い込んで空間ごと高速循環させていく。
解き放たれたドライブは、猛スピードで走り続けるトライドロンの側面へと跳躍した。流動する車体を蹴り台とし、そこから中心点へと鋭く跳ね返る。
「ガハッ⁉︎ うあっ⁉︎」
「アガッ⁉︎ ぐえっ⁉︎」
1撃。2撃。10、20――。
疾走するトライドロンの壁面を次々と踏み台にし、全角度から弾丸と化した蹴りを、中心にいる2人のアバドンへと幾重にも叩き込んでいく。加速領域で放たれる高密度のキックは、ターゲットの全身を休む間もなく穿ち、逃げ場のない超連撃となって襲いかかった。
連続打撃の衝撃波が空間を激しく揺らし、あらゆる耐久を超えた絶大な破壊力が敵の内部から溢れ出し……
「ま、まずい───」
「耐えられね───」
何10発もの蹴りを全身に浴びせられた敵は、逃れられぬ爆炎の渦の中へと沈み撃破された。
急降下を終え、ドライブの足先が地面へと力強く接地する。ズガガガガッ、と凄まじい制動音が響き渡ると同時に、地面との猛烈な摩擦によって足の裏から激しい炎と濃密な煙が噴き出した。
着地点の地面を焼き焦がすその熱量と衝撃――それが、この技に秘められた恐るべき威力の一端を静かに物語っていた。
♢
アバドンBとアバドンPのペアがドライブと闘っていた場所から、少し離れた場所にて。アバドンRとアバドンYのペアが、キバにスラッシュアバドライザーを振るっていた。
双方とも、豪快ながらも隙も無駄もない動きで、スラッシュアバドライザーを振るっている。しかし、それらをキバは武道家のように軽くいなしていた。
そして懐が空いた隙を突かれ、アバドンRが腹部に何発ものストレートパンチを浴びせられ、アバドンYが足元を引っ掛けられ転倒し、首元より下辺りの装甲に蹴りを入れられた。
「クゥゥゥッ……‼︎ 中々にキレのある動きだっぺ……‼︎」
「もし誰かが変身していたのなら、きっとスポーツが得意なイケメンがなっていたのでしょうね……‼︎」
キバの動きを賞賛しながらも、そんな彼を倒すべく、アバドンRもアバドンYもショットアバドライザーを取り出し、二丁拳銃の状態となる。そして2人してショットアバドライザーから、キバに向けて光の弾丸を数発も放った。
迫り来る無数の光の弾丸。だがキバはそれらを、しゃがんだり跳躍したりするなどして、次々と回避していく。装甲にスレスレで当たりそうだったものもあったが、それでも全く被弾せずに全て回避したのはかなりのものだ。
さらには回避していく間に迫って来た2人のアバドンの、振り下ろされたスラッシュアバドライザーの刃を両方とも受け止めた。それどころか両方とも力強く引っ張り、引き寄せられた2人の腹部に肘を強く打ちつけた。
「うえっ? ちょっ───あらぁ⁉︎」
「な、何事だっぺ───だっぺぇ⁉︎」
怯んだ隙を作り、キバがアバドンYの右腕を掴んで背負い投げし、アバドンRを巻き込みながら投げ飛ばした。
2人のアバドンが転倒する中、キバはベルトの横側に入れている、吹き口の反対側がキバの双眸に似た赤い形状をしている笛を取り出し、それをキバットベルトの蝙蝠──キバットバットⅢ世に噛ませた。
『ウエイクアップ!!』
指笛に呼応して放たれた笛──ウェイクアップフエッスルが響き渡り、装甲の奥底から重い鎖の軋む音が鳴り響く。それと同時に、キバが腕を交差させながら身を屈めれば、この場が外でないにも関わらず、周囲が満月の浮かぶ夜に変わりだした。
勢い良く右脚を高く振り上げれば、右足首を縛り上げていた鎖──カテナを断ち切って、右足に宿るヘルズゲートと呼ばれるものの封印が解き放たれる。
重厚な錠が外れ、漆黒の装甲が左右に割れ開く。内部から眩い黄金の輝きと圧倒的な魔力が奔流となって溢れ出していき……やがて右足に、禍々しくも神々しい真の力を宿している赤い魔の翼が広げられ、剥き出しになった。
「なっ⁉︎ これはまずいっぺ……ってイエロー‼︎ 早くそこ退くっぺ‼︎」
「そう言われても〜……アタシの手がアンタの背中に〜……‼︎」
危険を察知したアバドンRが起き上がろうとするも、アバドンYの巨体が諸共せず、ましてや彼女の両腕がアバドンRの背中に挟まれており、互いに身動きが取れない状況に遭った。
一瞬の溜めの後、爆発的な脚力によって、キバの身体は真上へと凄まじい勢いで跳ね上がった。
空中での反転運動と共に全魔力と全体重が右足の一点へと極限まで集中され、足裏に強烈な光を放つ巨大な三日月の紋章が浮かび上がる。
「グハァァァァァァッ⁉︎」
「あげェェェェェェッ⁉︎」
重力を突き破るようにして放たれる、急降下の必殺蹴撃。
標的──アバドンRとアバドンYの直撃を受けた瞬間、炸裂する衝撃波と無数の拘束の鎖が対象を完全に捉えて穿つ。
内部から奔る破壊のエネルギーが限界を超え、圧倒的な光の渦の中で、アバドンRと後方に立っていたアバドンYはの装甲は粉々に砕け散っていき、コンマ1秒以内という時間で、爆炎の中へと沈んでいった。
♢
さらにそこから少し離れた場所にて。
アギトはホワイトが操作するギンギラウィザスターの噛みつきを、僅かに上半身を逸らすだけで何度も回避していっていた。
『おのれちょこまかと〜〜〜‼︎ ならば、これでどうじゃー‼︎』
そう苛立ち混じりに叫びながら、またもやギンギラウィザスターの噛みつきを行うホワイト。無論、それもまた僅かに上半身を逸らしたアギトに回避される。
勢いが良くなっただけでほぼ何も変わらない……かと思われたが、即座にアギトに顔を正面に向けたかと思えば、コンマ1秒もせずに口を開き、火炎放射を噴き出した。
『フハハハァッ‼︎ さすがに至近距離からの火炎放射は効くじゃろう‼︎ このまま焼き鳥にしてやるー‼︎』
高笑いしながら、ギンギラウィザスターから火炎放射を出し続けるホワイト。正しく汚物は消毒だと言いかねん程に長く放射させ、少なくともアギトの体力を削り続ける事を狙っているようだ。
『んで、これを喰らえーい‼︎』
やがて火炎放射を止め、即座に頭突きをかますべくギンギラウィザスターに突撃させるホワイト。苦痛となる炎の攻撃が治ったと思ったら別の攻撃が仕掛けられる……そういった恐怖を与えるべく、敢えて火炎放射を長く噴き出させたのだろう。
『……ありゃ? 奴は何処じゃ?』
しかし、アギトと衝突した感覚は全くなく、彼の姿が何処にも見当たらなくなっていた。火炎放射を至近距離で受けたはずなのに、だ。
アギトの行方を探るべく、ギンギラウィザスターの首を動かし周囲を見渡すホワイト。だがそこに、背中の部分となる箇所から、強い衝撃と振動が走ってきた。
『ぬぎゃあっ⁉︎ な、なんじゃあ⁉︎ 何事じゃあっ⁉︎』
突然の予想だにしない箇所から発生した衝撃に、ホワイトは動揺を隠せず、急ぎでギンギラウィザスターの長い首を上げながら後ろに振り向く。
そこで見たのは……先程から姿が見えなかったアギトが、ギンギラウィザスターの背中に立っており、右腕を勢い良く振り下ろしているのが見えた。
『こっこいつ、いつの間に───ぐおおおっ⁉︎』
気づいた時にはもう遅かった。振り下ろされたアギトの拳がギンギラウィザスターの巨体を捉え、背中を中心に揺らす。
さらに交互に拳を背中に突き出して揺らし、計7発も与えたところで軽く跳躍し、跳び蹴りを頭部に与えた。
『ぬあああっ⁉︎ クッ、舐めるでない‼︎』
即座に反撃へと移るホワイト。ギンギラウィザスターから咆哮を上げさせば、巨大な翼を羽ばたかせ、それによって発生した突風でアギトを吹き飛ばす。
あっさりと突風に身体ごと飛ばされるアギトだったが、すかさず空中で態勢を立て直し、吹き飛ばされた先にあったコンクリートの柱を飛び台にし、蹴った。
突風に負けない跳躍力で再びギンギラウィザスターに突撃し、回し蹴りで巨大な顔に強い蹴りを入れた。
『ぐえええっ⁉︎』
操縦しているホワイト本人もいたためか、ギンギラウィザスターが強い衝撃で怯んだのと同時に、ギンギラウィザスターの翼は羽ばたきをやめてしまい、突風も治まっていった。
ギンギラウィザスターが激しく後退していく中、着地したアギトがすぐさま立ち上がったかと思えば、クロスホーンが3対6枚へと開いた。
アギトの全身を覆っていた『大地』を思わせる黄金のエネルギーが、彼の力となって脈動していく。そして足元にて、アギトの仮面を彷彿とさせる1つの紋章と化し、濁流のようにアギトの両足へと収束していく。
大地を強く蹴り上げ、天井に届く程の高さにまで跳躍する。そしてその場で反転し、大地のエネルギーを限界まで圧縮した右足を前方に突き出し、流星の如き速度で急降下した。
『んなっ⁉︎ まずい、逃げ───』
アギトの行動に気づいたホワイトが、この場から一旦離れようとするも、時既に遅し。大地の力を味方にしたエネルギーを纏う右足が、抉るかの如くギンギラウィザスターの重厚な胴体に強く突き刺さった。
右足に宿っていた大地の力の奔流が、ギンギラウィザスターの全身に流れ焼き尽くす。今にもその全身に、深く大きいヒビでも入るかのように、全身をコアから砕いていく。
『いかんいかんいかんいかん‼︎ 脱出‼︎ 脱出ー‼︎』
ホワイトが危険を確信して叫ぶ中、ギンギラウィザスターの巨体は強く蹴り飛ばし、しなやかに着地するアギト。そして左手を腰に当て、右手で軽く鷲掴みするような形を作り、上半身を捻るように背を向ければ……ギンギラウィザスターは爆発して消滅していった。
ちなみに脱出を試みたホワイトはというと、その爆心地より少し後ろに離れた位置にて、腰を抜かしながらもその場から立ち去ろうとしていた。
「わ、儂の自信作のギンギラウィザスターが破れるなんて……こ、こいつは只者ではなかったわい……て、撤退せねば───ハウッ‼︎」
その道中、ホワイトは突然その場で腰を抱え、悶え苦しみ出した。ギックリ腰だ。ホワイトはこの期に及んでギックリ腰を起こしてしまったのだ。
だが、丸腰かつ戦える術のない者を攻撃する程、アギトは厳格な者ではなかった。クロスホーンを閉じた後、アギトはホワイトに目もくれずその場から立ち去っていったのだった。
「こっ腰……腰がァァァァァァッ……」
すいません。ウィックスとゾロアはまだ発見した程度なだけで、邂逅とは言えないと思います。本格的に対峙するのはまだ待ってて……
余談ですが、アバドンのディスクは4枚とも破壊されました。ただでさえレガシーライダーに負けないくらい多すぎるシンジケートのライダーを減らさないというのも……ね?