完璧な僕の嘘を、嫌われ者の君だけが「正論」で壊した   作:テレサ二号

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お久しぶりです、テレサ2号です!

仕事が過渡期に入り、執筆が滞っておりましたm(_ _)m
あと、今回の話の文字量が多くなりそうだったので2話に分けます!
まずは前編からどうぞ!!




第十三話:四条眞妃は救われたい

 

「会長、二点相談させていただきたい案件があるのですが?」

 

奉心祭が迫るとある日、耀は生徒会室にて白銀に相談事を持ち込んでいた。

その場には部活で不在の藤原千花を除く5人が揃っていて、各々が自身の業務を淡々とこなしている。

 

「杉原から俺に相談とは珍しいな。普段なら、方策までのフローを決めた上での承認依頼が多いではないか」

 

「今回も承認依頼のようなものです。相談させていただきたい内容ですが、生徒会準備室をオンライン会議室として使わせていただけないでしょうか?」

 

耀は生徒会の横にある、歴代の生徒会が荷物置き場として使用していた生徒会準備室の会議スペース化を提案する。

 

「最近準備室の整理をしていると思っていたが、そういう意図があったのか。使用については特に問題ない。逆に準備室の整理と有効活用案を掲示して貰ったことに礼を言いたいくらいだ。...しかし、急にどうしてオンライン会議室などを設けようと思ったんだ?」

 

「ほら、会長...杉原くんはアレだから...」

 

アレとはつまり、方向音痴の事である。

 

「あぁ、なるほどアレか...。だったらやむを得ないな、準備室は自由に使っていいぞ」

 

「ゴホン、ゴホン!」

 

耀は少しだけ顔を赤らめてから、石上と白銀への抗議を込めた咳払いをして話を切り替えた。

 

「それで2件目はなんだ?」

 

「奉心祭における生徒会業務の対応についてご相談が...。来期以降の奉心祭の生徒会業務の効率化の推進として、書類関係の作成時間や承認までのリードタイムの短縮、そしてペーパーレスの推進による奉心祭経費の削減を目的としてDXの推進をしたくて」

 

耀は自身のPCの画面を見せる。

そこには真っ暗な画面に英語や数字などが細かく羅列されていて、不規則に動いている。

 

「これはなんだ?」

 

「これはPythonというもので、いわば人間の言葉に限りなく近い、万能な事務代行プログラムです。手作業で何時間もかけている作業を一言『やっておいて』とコードに書くだけで、一瞬で、しかもミスなく完遂してくれる代物です」

 

アナログ派の白銀には到底理解できない代物であったが、耀が言う効率化やペーパーレスが推進できれば、他の事に集中できるのも事実であり、耀からの提案を承諾する。

 

「お前のやりたい事は理解した。それで?俺に何を承認させたいんだ?」

 

耀は自身のPCを閉じてから、改めて白銀に提案をする。

 

「奉心祭における生徒会の業務全てを自分に一任していただけませんか?」

 

「奉心祭における業務だと?それはさすがに負担が大きすぎないか?」

 

白銀の心配を耀が客観的事実を基に、説き伏せていく。

 

「奉心祭は実行委員が主体となって動いていますよね?つまり、生徒会としての実務は通常時より限定的……いわば『システムの運用テスト』には絶好の負荷状況なんです」

 

「なるほど、そういう事か...」

 

「それと、これは個人的な要望になるのですが...」

 

耀の視線が白銀からかぐやに移る。

 

「前期の奉心祭における生徒会の業務はかなり多忙で、会長や四宮先輩、藤原先輩は奉心祭のクラスの出し物に全く関われなかったとお伺いしました。ですので、今年は事前準備からクラスの出し物に加わっていただきたいと思っています」

 

「それだと杉原への負担が大きくなり過ぎないか?」

 

「先程も申し上げた通り、奉心祭における生徒会業務は限定的になっているので大丈夫です。それに...」

 

耀は視線をかぐやや白銀から、石上とミコへ移した。

 

「困った時は、頼りになる仲間がいてくれるので大丈夫です」

 

耀は2人に『困った時は頼むね』といったアイコンタクトを送り、受け取った2人は恥ずかしくなって自身の業務に目線を戻した。

 

「分かった、では承認しよう。ただし、あまり無理はするなよ?」

 

「はい、もちろんです」

 

耀が頭を下げてソファーの自らの定位置に戻る。

そんな耀に石上が声を掛けた。

 

「Pythonコードって最近少しずつ触り始めたんですけど、どんなコード書いてるんですか?ちょっと見せて欲しいです」

 

「まだ試作の段階だから、石上くんには完成してテストまで終わった状態になってから見せるよ。それまでは秘密笑」

 

耀は自身の業務を再開する。

 

「そうだ、杉原。生徒会準備室の利用の申請書については俺から校長に提出しておくが、申請書には個人のプロフィールを確認する必要がある。生徒手帳を見せて貰えるか?」

 

「すみません、申請書をお渡しするのを失念してました。必要事項を記載した申請書は既に準備済みです。会長はコチラの書類を確認いただき、確認印だけいただければ」

 

白銀は申請書に書かれている内容と耀のプロフィールを確認する。

 

その中に記入されている『生年月日:20XX年11月11日』という欄で目が止まった。

 

白銀は自身のスマホで今日の日時を確認する。

『11月09日16時32分』と表示された。

 

「杉原......お前、明後日誕生日なのか?」

 

「まぁ、そうですね」

 

その瞬間、自身の作業をしていたミコと石上は作業を中断して耀と白銀に視線を向ける。

 

「どうしてそんな大事な事を黙っていたんだ?」

 

「特に報告する必要性は無いと判断したので」

 

「そんな事無いだろう」

 

白銀は自身が愛用している、誕生日に耀から貰った通学カバンをデスクの上に置く。

 

「杉原から誕生日に貰ったこのリュックサック。完全防水な上にめちゃくちゃ多機能で使いやすくて、ファッションにうるさいうちの妹が珍しく手放しで絶賛してたくらいだからな。このリュックサックのお礼くらい俺にもさせてくれよ」

 

「いえ、僕からのプレゼントを愛用いただけているだけで十分なので」

 

耀は自身へのお礼を断る。

 

「何故断る?」

 

「僕の誕生日なんて誰かに祝ってもらうほどの事じゃないので」

 

「???」

 

耀の言い分は白銀は少しだけ理解できる。

白銀家でも実際に誕生日はお金の無駄だからという理由でプレゼントはお互いに渡さない決まりになっている。

 

しかし耀の実家は政治家の家系である杉原家。

 

一度参考までに耀の実家の所在地を聞いた際に『千代田区、番町の最深部』と聞いていたので、耀の家庭が裕福なのは間違いないと認識している。

 

そんな裕福な家庭で育った耀からこの発言が出た事に、白銀は違和感を覚えた。

 

「杉原家では普段、誰かの誕生日を迎えた日はどうやって過ごすんだ?」

 

「父と母の誕生日は関係者を招いて誕生日を祝います。僕の誕生日は特に何もありません」

 

「父や母からは誕生日のお祝いとかは無いのか?」

 

「無いですよ?我が家の教育方針では、誕生日は産み・育ててくれた両親に感謝する日。杉原家の嫡男が誰かに祝ってもらいたいなどと思う事は、とても愚かで醜く、厚かましい行為だと教わりました」

 

「では何故、俺の誕生日を祝ってくれたんだ?」

 

「誕生日のお祝いというものの、形式や概念は理解していますから、日頃からお世話になっている会長に少しでも恩返しをしたいという気持ちから来ただけですよ」

 

耀は『この話はこれでおしまい』と言わんばかりに荷物を纏めると、「申請書の校長への提出についてはお願いします」と添えてから、耀は生徒会室を後にした。

 

 

 

 

 

「ふぇぇ……ひっ、ふぐっ……。なんで私だけこんな目にっ……グズッ」

 

生徒会室がある建物から出て、しばらく歩いていた耀が木陰で涙を流している四条眞妃を視線に捉えた。

 

「こんな所でどうなさったんですか?四条先輩?」

 

「...あなた誰だっけ?いま、私が絶望の淵にいるの見えないのかしら……グズッ」

 

耀と四条眞妃の接点はあくまで生徒会室で一度だけゲーム(乙女ゲー)をした事があるくらいの面識である。

耀は女装した姿で眞妃と関わった事があるが、眞妃にとってはその記憶は別人としての記憶。

 

その上で精神的にいっぱいいっぱいで、それどころでは無い様子。

 

故に眞妃が耀の事を思い出せなくても仕方がなあ状況ではある。

 

「杉原と申します。一度だけ四条先輩とは面識があります」

 

「杉原?...あぁ思い出したわ!あの四宮家に尻尾を振ってるだけの腰巾着の政治家の血筋ね!そんなヤツに用は無いのっ!放っておいてよっ!!」

 

耀は少しだけため息をついてから、眞妃を諭すように話し始める。

 

「涙を流している女性を放って一人にしてしまうという行為は僕の騎士道に反しますし、一人の男としての価値を下げる愚かな行為です。僕を助けると思って、お話しを聞かせていただけませんか?」

 

「……な、なによ。自分勝手な理屈ね……。騎士道だなんて、化石みたいなこと言っちゃって……。良いわ...そのワガママに免じて話してあげる」

 

耀は自らのハンカチを芝生に広げ、その上に座るように眞妃を誘い、そして耀が携帯している水筒から紅茶を注いで眞妃に渡した。

 

「良かったらどうぞ。僕が常備している水筒のコップで申し訳ありませんが」

 

水筒から注がれたその液体は、まるで夜を閉じ込めたような濃密で透き通った『ディープ・ルビー』の色をしていた。

光を透過させるとカップの底でゆらりと深紅の輝きが躍り、それはまるで磨き抜かれた最高級の宝石のようだった。

 

眞妃は紅茶を口に運ぶ。

 

「……っつ、なにこれ?」

 

舌に触れた瞬間、液体とは思えないほどの厚みが広がった。

 

刺激的な渋みが心地よく舌を刺激したかと思えば、直後に熟した果実のような深い甘みが波のように押し寄せてくる。

それはまるで、シルクの絨毯の上を裸足で歩いているかのような重厚で滑らかな舌触り。

 

「美味しい……ストレートなのに全然苦くない……。いえ、苦いんだけどその奥に信じられないくらいの甘みが隠れてる……」

 

眞妃はズズズと飲み干すと耀にコップを渡し、おかわりを催促する。

 

「お気に召したようで良かったです」

 

耀はおかわりを眞妃に渡して微笑んだ。

 

「そうだ!これはどうですか?」

 

耀はカバンの中からキットカットを取り出す。

 

「本当は生クリームとかのケーキの方が相性はいいらしいのですが、すみません僕があまり食べられる物が少ないので、これでご容赦ください」

 

眞妃はキットカットを口に運ぶ。

キットカットを咀嚼してから紅茶を流し込む。

 

熱い紅茶がチョコレートを優しく溶かしたかと思えば、アッサムの持つ強烈なコクがチョコの乳脂肪分を抱き込んで一気に膨れ上がった。

 

ウエハースの層の隙間に、最高級の茶葉のエッセンスが染み込み、噛むたびに甘い香りとベルベットのような渋みが交互に鼻へ抜けていく。

 

「……ちょっと、あんた。これ、本当にキットカットなの? 嘘みたいに高級な味がするんだけど……」

 

眞妃は震える手で二本目のキットカットに手を伸ばした。

 

口の中のチョコレートによる甘みが、アッサムの持つモルティーな香りと完璧に融け合い、先ほどまで彼女の胸を焼いていた『渚と翼くんへの嫉妬』という毒が、一時的にではあるがチョコレートと共に溶けていく感覚に包まれる。

 

恋愛感情による情緒不安定が落ち着き、本来の品位のある四条眞妃に戻ってくる。

 

それと同時に先程言った『四宮家の腰巾着』という言葉に罪悪感が芽生えてきた。

 

「その...さっきはごめん。あなたとあなたの家族にとって失礼な発言だったわ」

 

眞妃が耀に頭を下げる。

しかし耀から帰ってきた言葉は眞妃の予想外の言葉であった。

 

「いえ、謝る必要はありませんよ。むしろ的を得てるなと関心するくらいでしたから」

 

「どういうこと?」

 

自らの家族や血筋を貶された事を納得している耀に眞妃は違和感を覚えた。

 

「政治家とは本来、国民の生活を豊かにする施策を考え実現させ、国民の想いに寄り添い、国を発展させるために心血を注ぐのが求められる矜恃です。ですが今の父は権力者にゴマをすり、顔色を伺うことに腐心し、守るべき国民を数字のようにしか見ていない。僕が父を軽蔑しているところです」

 

秀知院学園のような家柄が優れた集う場所では、比較的自らの家系に批判的な生徒は少ない。

 

それは自らの家系を批判する事は、自分自身の生きてきた道を否定することに等しいからだ。

 

しかし耀は自身の父親の事を軽蔑するという言葉を使って否定した。

眞妃にはそれが自分が正しいと思った事を信じ、貫き通せる強さに思えて、少しだけ羨ましくなった。

 

「……ふん。自分の親をそこまで冷静に、かつ辛辣に評価するなんて。あなた、可愛げがないわね」

 

眞妃は空になったコップを見つめ、自嘲気味に鼻を鳴らした。

 

「でも、そうね。権力に媚びを売るだけの政治家なんて四条の人間から見ても鼻持ちならないわ。……けれど杉原、あなたは違うみたいじゃない。その『騎士道』だとかいう古臭い美学を、わざわざこんな場所で、泣いている女一人のために振りかざすんですもの。それとも私が四条家の令嬢だから、声を掛けたのかしら?」

 

「それは四条先輩の買いかぶりですよ。僕が先輩に声を掛けたのは、ただ僕が抱いている理想を厚かましくも自分で実現しないと気がすまなくなっただけです...言うならば偽善ですよ」

 

「その理想って?」

 

「この学園の生徒の何人が理解しているかは分かりかねますが、四条先輩...あなたは優しい方だ。そんな人が悲しんで涙を流しているんです、誰かがそばにいて暖かい言葉を投げて貰ってもいいじゃないですか。...今回はたまたまその役割が僕だったってだけです」

 

眞妃は普段、四条家の令嬢という看板を背負っている以上、比較的に強い言葉を使って上から目線で話してしまう事がある。

変にプライドが邪魔して、相手に自分の想いを正しく伝えられない事も多々ある。

 

そしていつも、1人になるとその罪悪感に押しつぶされそうになる事もある。

 

そんな自分を耀は優しいと言った。

その言葉の意図が理解できず、眞妃は耀に真意を尋ねる。

 

「私が...優しい?どこがよ...私なんて好きな人が親友と付き合っただけで、感情がぐちゃぐちゃになっちゃうようなダメな女よ?」

 

耀はチラッと眞妃を見て、それから空を眺めて眞妃の優しさについて説明を始める。

 

「四条先輩の恋路については、普段からの先輩の言動をお見かけしてなんとなく察していました」

(ホントは石上君から聞いたんだけど、それは流石に言えない...)

 

「そんな辛い恋路なら、田沼先輩を諦めたり、柏木先輩を貶めたり、逆に柏木先輩と距離を置いたりするのが最も簡単です。それに四条家の力を使えば、田沼先輩を奪うことだって可能かもしれません。でも四条先輩はそれをしていない。自分自身が涙を流すくらい辛くても、おふたりの関係性を壊すことはせず、友人としての立場でいる事を最優先している。そんなお人好しは優しいと言えませんか?」

 

耀が少しだけ眞妃に微笑んだ。

 

「……っつ。なによそれ!?やっぱり可愛くないわね、あんた」

 

「すみません、少し偉そうでしたね」

 

耀が少し照れた面持ちではにかむ。

眞妃は顔を真っ赤にして、視線を泳がせた。

 

自分の情けない執着や醜いと思っていた足掻きを、この男は『高潔な選択』であるかのように定義してみせた。

 

「……そんなの、ただの意気地なしなだけよ。奪う勇気も捨てる覚悟もない……ただの、臆病な女よ」

 

「いいえ。奪わないという選択を毎日繰り返すのは、奪うことよりもずっと勇気がいることだと僕は思いますよ」

 

耀の迷いのない言葉に、眞妃の心臓が跳ねた。

誰も見ていないところで、一人で耐えてきた時間を、この年下の後輩がすべて拾い上げてくれた。

 

「耀......」

 

「???」

 

「これから私は、あなたを『耀』って呼ぶ」

 

「……急ですね。理由は伺っても?」

 

「あなたのような高潔な男を、あの父親と同じ名前で呼ぶのが癪なだけよ」

 

耀は眞妃のこの言葉を父への批判ではなく、自身への称賛として受け取った。

 

「承知しました。四条先輩」

 

「眞妃でいいわ。その方がフェアってもんでしょ?」

 

「......で、では...っ。ま、眞妃さんで...」

 

「なんで照れてるのよっ!こっちまで恥ずかしくなるでしょ!?」

 

「い、いえっ...そのっ...人を名前で呼ぶのは初めてだったので...」

 

先程まで騎士道云々と語っていた男とは思えぬくらいにしおらしくなった耀に眞妃は思わず笑ってしまった。

 

耀はふと先程まで自身が抱えていたわだかまりを、眞妃にぶつけてみることにした。

 

「僕からも一点、相談させていただいてもいいですか?」

 

「なんでもいいわよ!この眞妃先輩に任せなさい!」

 

「実は明後日が僕の誕生日なのですが、会長からの誕生日のお祝いをしたいという提案を断ってしまって...」

 

「あら、めでたいことじゃない?何がそんなに不満なの?」

 

「我が家では僕の誕生日を祝わないのが当たり前ですし、僕の誕生日なんかを祝う事に時間を割くくらいだったら、もっと皆さん自身のために時間を割いて欲しいなと思いまして。時間もお金も有限な訳ですから」

 

「ふーん、なるほどねー」

 

眞妃は耀を値踏みするように見る。

 

「それで?あなたは私に何を聞きたいの?」

 

「僕からは、どう答えるのが正解だったのかなと思いまして」

 

「そーねぇ...」

 

眞妃は下唇に人差し指を添え、考える素振りをする。

 

「一応聞くけど、誕生日を祝って貰うのが嫌なの?」

 

「いえ、そうではありません。ただ勿体ないなというのが本音です」

 

「なるほどねー。......それじゃあ、別の人の立場に置き換えて考えるわよ?誰でもいいからあなたの大切な友人を思い浮かべて?耀はその人の誕生日をお祝いしたいと思う?」

 

「そうですね...。日頃からお世話になってますし、お祝いしたいと思います」

 

「まずはその考え方から直さなきゃね。じゃあ耀がその人にお祝いをするのはただのお礼なの?それとも喜んで欲しいって気持ちからなの?」

 

「多分、両方含まれてると思います」

 

「じゃあ、耀はお祝いできたら満足なの?あなたが用意したパーティやプレゼントをそのお祝いした誰かが喜んでくれたら嬉しくない?」

 

「嬉しいと思います...」

 

「そうよね?つまりは耀が今回はその大切な友人の立場にいるだけよ。あなたを祝いたいって言ってくれてる人もあなたと同じことを考えているだけ」

 

「......」

 

眞妃の誠意ある言葉が耀の心に刺さっていく。

 

「それにね?耀は良くも悪くも自分を特別扱いし過ぎよ。せっかくの誕生日なんだから、誰かに祝って欲しいって思うのは厚かましい事なんかじゃないわ。あなたが日頃から誰かのために一生懸命なら、その誰かもあなたに笑顔になって欲しいって思うのは当然な事でしょ?耀は杉原家の子息である前に、1人の人間なんだから」

 

その言葉は冷え切っていた耀の心根に、魔法のように熱を宿らせた。

物心ついた時から自身を『機能』や『役割』としてしか見てこなかった彼にとって、それは何よりも欲しかった免罪符だったのかもしれない。

 

「僕はどうしたらいいのでしょうか?」

 

眞妃はその場に立ち上がり、耀が敷いてくれていたハンカチに付いた芝生を振って落とし、耀へとハンカチを返した。

 

「簡単よ。祝って貰えたらありがとう、嬉しかったら嬉しいって伝えればいいのよ。申し訳ないとか勿体ないなんて考えは捨てなさい?あなたの大切な人があなたに笑顔になってもらいたいだけなんだから」

 

眞妃は耀に笑顔で向き合う。

耀は眞妃の事を改めて『素敵な人だな』と感じた。

 

「分かりました。相談に乗っていただきありがとうございました」

 

「いいのよ、美味しい紅茶のお礼だし」

 

「また困ったことがあれば相談しても良いですか?」

 

「もちろんよ!ただし...」

 

眞妃は人差し指を立ててウインクをする。

 

「美味しい紅茶をまた飲ませてよね?」

 

「もちろんです!」

 

耀と眞妃はお互い笑顔になった事を確認してから別れを告げ、その場を後にした。

 




いかがでしょうか?

いよいよ次回から耀の誕生日当日になります!!
なるべく早めに続きはあげようと思ってますので、楽しみに待っていていただけると幸いです(*^^*)

引き続き高評価、お気に入り登録、感想などなどお待ちしております!

では、また次回!!
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