完璧な僕の嘘を、嫌われ者の君だけが「正論」で壊した   作:テレサ二号

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皆さん、お久しぶりです!
テレサ2号です!!

忙しかったのとスランプや新作の構想などなどで執筆が進まず、前回から2ヶ月もお待たせして申し訳ありません(*・ω・)*_ _)ペコリ

では、早速本編です!!




第十六話:杉原耀は整えたい

 

「僕と伊井野で文化祭実行委員のヘルプですか?」

 

文化祭準備期間のとある日、ミコと石上は白銀から文化祭実行委員のヘルプの要請を受けていた。

 

「あぁ、明日から入って欲しいそうだ」

 

「いいですけど、文実てなにをするんですか?」

 

「企画の精査、広報や装飾、式典の計画と会場の割り振り、器材管理にパンフ作成。他にも生徒との折衝、見回り雑用など...言い出したらキリがない」

 

「なんだか大変そうですね...」

 

少しだけ石上が難色を示す。

 

「本当は杉原に来た依頼なんだがな」

 

「あー、確かに業者との調整とかも含めて、この学園で彼以上の適任はいないでしょうねぇ...」

 

「あぁ、そうだな。しかしry...」

 

「ちょっと待ってください!!」

 

ミコが白銀の言葉を遮り、異を唱える。

 

「杉原くんの業務量は既にいっぱいいっぱいです!!」

 

ミコの脳裏に生徒会準備室で寝落ちしていた耀の寝顔が過ぎる。

それと同時に耀への気持ちも思い出して、顔を赤らめる。

 

「えっと...その...だからっ...」

 

「大丈夫だ」

 

白銀は少しだけ間を置いてミコを落ち着かせ、遮った話の続きを口にする。

 

「杉原へのヘルプの依頼は俺が断った。どうやら杉原をヘッドハンティングする事で、実行委員内での立場を高めようと画策したやつがいるらしい。実際はヘルプしてくれるなら誰でもいいようだ」

 

「別に僕たちじゃなくても...」

 

「嫌でしたら構いませんよ?」

 

難色を続ける石上にかぐやが口を挟む。

 

「ただ、文実の委員長は子安先輩ですけど」

 

「行きますっ!!」

 

「......」

 

石上の同意を以て、ミコも半ば強引に文実へのヘルプが決まった。

 

しかしミコにとっても、耀に無理をされるよりはいいと判断しヘルプに向かうことを承諾した。

 

 

 

 

「そんな事があったんですか」

 

文実に向かった2人の話を、放課後に生徒会室で作業をしながらかぐやから報告を受けていた。

 

耀はPCで作業をし、かぐやは裁縫をしている。

傍らにはかぐやが淹れた紅茶がある。

 

「文実のヘルプくらいなら僕が行っても良かったですよ?」

 

「ダメです。杉原くんは最近頑張りすぎです。また少し痩せたのではありませんか?」

 

「大丈夫ですよ、まだまだ余力はありますから」

 

「ハァ...」

 

かぐやが少しだけ耀を諭すようにため息をつく。

耀は首を傾げてかぐやの言葉を待った。

 

「余力があると言うのは手を抜いている訳ではありません。なにか不都合が発生した際に備えること、そして気持ちに余裕を持たせることやディティールを整えることが大事なんです。今の杉原くんは、なにか不都合が発生しても睡眠時間などを削って解決するのが目に見えています。そんな人にはこれ以上、仕事は任せられません」

 

「ですが、せっかくなら皆さんにも事前準備から奉心祭を楽しんで欲しいですしry...」

 

耀の鼻先にかぐやの指が触れる。

 

「杉原くんは良くも悪くも、あなた自身を特別扱いし過ぎです。私たちにとって、あなたも大切にされるべき人物である事を忘れないでください」

 

かぐやは再び裁縫を続ける。

耀は『やっぱり親族なんだなぁ』と、とあるお節介な先輩を思い浮かべてから、再び作業に戻る。

 

そこに白銀が合流する。

更にしばらくしてから文実の打ち合わせが終わった石上が合流した。

 

「おかえり、石上くん」

 

「ただいま、杉原くん」

 

耀と石上が挨拶を交わす。

 

「それで?文実の打ち合わせはどうだったんだ?」

 

白銀は石上に文実の進捗状況を確認する。

耀もパソコンを閉じて石上の話に耳を傾ける。

 

「文実の打ち合わせ自体は特に問題なく終わりました。ただ伊井野が...」

 

「伊井野がどうかしたのか?」

 

「いえ、キャンプファイヤーがやりたいと言い出しまして」

 

「どうなったんだ?」

 

「大変でしたよ...伊井野は一人でもやってみせるとか言い始めて...」

 

石上は思い出すように言葉を選びながら、説明を続ける。

 

「キャンプファイヤーをやるには自治会の理解や承認が必要じゃないですか?だから、町内会に直談判するって聞かなくて。しょうがないから何人かついて行くじゃないですか。まぁ長年の風紀活動は無駄じゃなかって感じですね。町内会長の奥さん等が普段から伊井野の活動に関心してたとか」

 

皆改めてミコの日々の行いに関心する。

 

「そこからは話が早いですよ。町内会から消防団に文化祭最終日に防災訓練の申請をしてもらえて。消防車の出動も決まったので、校長の許可も貰いやすかったです」

 

「やるじゃないか」

 

石上は校長印が押下された書類を見せる。

その手際の良さに白銀は賞賛を贈る。

 

「消防車が来るのであれば、自治体の子供たちも集まるかもね。学園単位の防災訓練というより、自治体も含めた防災訓練という位置づけの方が良さそうだ。あとは消防車や消防団の配置を来客を促しやすく、それでいて出入りがしやすく人目につきやすいようにレイアウトと動線は僕が考えるよ」

 

「さすがです。頼んでもいいんですか?」

 

「うん、元々出店の配置等を考えるのは僕の仕事だったからね。色んな人に意見は聞いてみるよ」

 

「それで伊井野本人は?」

 

「同じクラスの小野寺さんと一緒に今は地域住民に周知して回ってる所です」

 

「凄いな…2人とも良く頑張ったな」

 

「ホント、頑張るやつですよ」

 

話を終え、皆が自身の作業や持ち場に戻る。

白銀もクラス委員に呼ばれて、クラスに戻って行った。

 

石上も作業に戻ろうとすると下唇に指を添え、考え込む耀が視界に入った。

 

「どうかしました?」

 

「いや、少し気になることがあって」

 

「気になること?」

 

「うん、そもそもなんで伊井野さんはキャンプファイヤーをやりたいって言い出したの?」

 

「あぁ、それは伊井野が発端じゃないです」

 

「違うの?」

 

「うん、生徒からの質問を文実で検討したんだけどその中に『キャンプファイヤーの実施を望む』って意見がありまして、その意見に伊井野が乗っかった感じです」

 

「ふーん、なるほどね」

 

耀の口角が少しだけ上がる。

 

「それがどうかしたんですか?」

 

「いや、なんでも無いんだ。実行委員の方でもなにか進展や困り事があったら、また教えてよ。特に外部との交渉が必要なら役に立てると思うから」

 

耀は作業の続きをするために生徒会準備室に戻った。

 

 

 

 

『グラン・ウルトラロマンティシズム大賞?』

 

完全に奉心祭準備期間に入り、授業が無くなった耀はクラスの出し物をクラス委員長やクラスメイトに任せ、自身の作業に専念するようになった。

そんな耀に石上はクラスで発表があった、奉心祭における本年度の初の試みを耀に説明していた。

 

「そうです。奉心祭を最も盛り上げ、ロマンティックに貢献した生徒に贈られるいわゆる奉心祭MVPみたいなやつですね」

 

「なるほどね。まぁお祭り大好きな校長先生が考えそうな試みではあるね」

 

「興味あります?」

 

「いや、全くないね。大賞受賞してなにかメリットがあるとは思えないし」

 

「実はそうでも無いんです!」

 

石上がテーブルを叩いて立ち上がる。

その瞳には炎が宿っていた。

 

「石上くん?」

 

「この賞を受賞した生徒には記念品のクラウン(王冠)と校長からとある特権が需要されます!」

 

「とある特権?」

 

「そうっ!その特権とはっ!!」

 

石上が再びテーブルを強く叩き、この特権の重要性をアピールする。

 

「『校長が叶えられる範囲の願いをなんでも1つ叶えてくれる』という権利です!!つまり〇龍ですよ!!」

 

「ごめん石上くん。最後の龍は良く分からないよ」

 

「D〇見てください。セル〇ーム編が特に最高なので」

 

話が脱線してしまったので石上は再び、特権についての説明に戻る。

 

「つまりですね?この特権を行使すれば!この学園であんな事やこんな事ができちゃう訳ですよ!!」

 

「なるほど、だからそんなに目の色変えて本気になっているという訳だね?」

 

「そうです!女子生徒のスカートをミニスカにするという男の夢だって叶えられるわけです!!」

 

「......伊井野さん、石上くんがこんなこと言っているけど風紀委員としてはいいの?」

 

「!!?」

 

耀が出入口の方を見ながらミコに問いかける。

石上は瞬時にそちらに視線を向ける。

しかしそこにはミコの姿は無い。

再び耀に視線を向けると『クスクス』と声を出して笑っている。

 

「ごめんごめん笑。あまりにも風紀や校則を逸脱したことを言うから意地悪したくなっちゃって」

 

耀がコロコロ笑う。

その表情に石上は完全に毒牙を抜かれてしまい、矛先を収めた。

 

「まぁ僕が本気を出したところで、奉心祭MVPなんかを取れるわけないんですよ。ただこの賞は受賞者を輩出クラス全員にも恩恵があるんですっ!」

 

「恩恵?」

 

「はい、その恩恵とはっ!『有給休暇ならぬ有単休暇が3日付与』されます!!」

※学校を休んでも出席扱いとなる

 

「なるほど、それはかなり魅力的だね」

 

「しかもこの有単休暇を使用した日の授業のレジュメを先生からいただけるらしく、休んでも授業が分からないなんて事にもならないそうです」

 

「なるほど、それはみんな目の色を変えるわけだ」

 

「クラスみんな、絶対受賞者を輩出するんだってやる気になってました。今回、1日目夜の部のメインステージにて各クラスの代表者がパフォーマンスを披露する『秀知院キングダム』が開催されるそうです。そのステージで一番輝いた生徒が最もMVPに近づくらしくて」

 

「校長先生が1日目のメインステージの時間を確保して欲しいと依頼して来ていたのはこの為だったのか」

 

耀は奉心祭のメインステージのタイムスケジュールを確認する。

 

「それで明日、クラスみんなでオーディションをすることになったんですが、杉原くんも出ます?」

 

耀は思考を巡らせる。

この後の事務作業や奉心祭業務への負荷とメリットを天秤にかけて精査する。

 

「まぁ杉原くんは忙しいですし、無理してオーディションに出なくry...」

 

「出るよ」

 

「え?」

 

「僕もオーディションに出るよ」

 

耀が真剣な面持ちで石上に正対する。

 

「ちょっと真剣に大賞を狙いに行くよ。それにもし藤原先輩が対抗馬として現れたら、太刀打ちできる在校生は限られるでしょ?」

 

『それができるのは僕しかいない』と言わんばかりに耀が石上に不敵に微笑む。

 

「負けませんよ!」

 

石上が笑顔で耀に応える。

 

「ちなみにクラスの出し物の進捗はどうなんだい?」

 

「......」

 

石上は言葉を失った。

 

 

 

 

翌日のクラスでのオーディション、クラスの文化祭実行委員である小野寺麗が進行を務める。

 

「それじゃあ秀知院キングダムのクラス代表を決めるオーディションを始めまーす。我こそはと言う人はいますか?」

 

やはりこういうオーディションのトップバッターというのはハードルが高いのか、皆が各々の顔色を伺う。

その中で耀だけが迷わずに手を挙げた。

 

「僕からいいかな?」

 

「んじゃ、耀くんからよろしくー」

 

「「!!?」」

 

麗の『耀くん』呼びに石上とミコが過敏に反応する。

2人は知らないが、耀はクラスの数人から『耀くん』呼びをされている。

耀はクラスカーストトップのためミコや石上と違い、名前で呼ばれるような親しみやすさや好感を抱かれている場面も多い。

 

そんな2人のことなど気にも止めずに耀は持参したバイオリンケースを開ける。

 

耀は静かにあご当てにあごを乗せ、ケースから出した弓を構えた。

 

「え、バイオリン……? 耀くん何弾くの?」

 

小野寺の問いに、耀はフッと柔らかく目を細めて微笑んだ。

 

「パガニーニ『ラ・カンパネラ』」

 

耀が曲名を言った瞬間、クラスメイトは耀の手元から鐘が鳴り響いたような感覚に襲われる。

 

繊細で美しい高音が、可憐な鈴の音のように教室に鳴り響く。

誰もがその高貴な音色にうっとりと息を呑んだ。

 

しかし主旋律に入った途端、曲の表情が狂気へと変貌する。

 

「っ……!!?」

 

石上とミコを含むクラス全員が、思わず息を詰まらせて身を引いた。

 

目にも止まらぬ速さで駆け巡る左指。

指板の上を激しく躍動する弓。

 

ピアノの鍵盤で演奏することすら困難な跳躍旋律を、耀はたった4本の弦の上で、悪魔的なまでの正確さで奏でていく。

 

防音設備もない狭い教室。

 

至近距離で放たれるその音は、もはや優雅な演奏などと呼べるものでは無い。

 

圧倒的な技術、凄まじい音圧、そして他者を一切寄せ付けない絶大なカリスマ性。

これはただの演奏というより音による暴力という方が適切であろう。

 

誰一人として声を出させない。

動くことすら許さない。

 

圧倒的な音による支配。

クラス全員が体を強張らせて耀の手元とその音に釘付けになっている。

 

曲のクライマックスに向かい、ますます激しさと華やかさを増していく高音の連打。

 

汗ひとつかかず、冷徹なまでに音の刃の連なりを紡ぎ出す耀の美しい側顔。

 

最後の一音、雷鳴のような重厚な和音が教室の壁を震わせ、余韻を残しながら耀は静かに弓を収めた。

 

静寂。

 

あまりの衝撃と力でねじ伏せられたかのような余韻に、拍手すら起きない。

 

耀が穏やかな笑みを浮かべると、バイオリンをケースに収めながら小野寺に視線を向けた。

 

「……僕の演奏は以上だよ。次は誰かな?」

 

その言葉で、ようやくクラス全体が金縛りから解けたように息を吹き返した。

 

しかし、手を挙げようとする者など誰一人としていなかった。

 

それもそのはずだ。

 

今のような凄まじい暴力ともいえるパフォーマンスを見せつけられた後に、パフォーマンスができる猛者など、この才能が集まる秀知院学園全体を探しても片手の指の数もいないだろう。

 

「……いや、無理でしょ」

 

男子生徒の1人がポツリと漏らした本音が、静かな教室に虚しく響く。

 

「耀くん……これ、もうオーディション終わりで良くない?」

 

小野寺が呆然とした表情のまま、引きつった笑みを浮かべて言った。

 

「満場一致で、うちのクラスの代表は杉原耀くんに決定ーー!!」

 

教室が一気に爆発的な歓声と拍手に包まれる。

 

石上は『化け物め……』と呆れ果てた表情で腰を抜かしそうになり、ミコは真っ赤な顔をしてあまりの衝撃と胸の激しい鼓動を抑えつけるように、自身の制服の胸元を強く握りしめていた。

 

小野寺はそんなミコの様子をジッと見ていた。

 

「じゃあ今年の1年B組の代表は僕ということで...」

 

「当日もバイオリン演奏をするつもり?」

 

「うん、そうだよ?」

 

「だったら伴奏がいるんじゃない?」

 

「だったら私立候補しようかなっ!!」

 

「いや、私がっ!!」

 

耀の伴奏のパートナーに次々と女子がリクエストしている。

 

『私も、できるなら隣で弾いてみたい...』

 

ミコの中で耀の誕生日の翌日に千花と耀がセッションをした際、隣で見ていることしかできなかった自分が抱えた嫉妬のような気持ちを思い出していた。

今度こそ自分がそのポジションに立ちたいと思う反面、自分が立候補したところで選ばれないし、耀に迷惑をかけるだけだと思う気持ちが腕を重くした。

 

「みんなが立候補してくれるのはとても嬉しいんだけど、元々伴奏をお願いしようと決めてた人がいるから」

 

耀は伴奏の立候補を丁重に断った。

 

そして1歩1歩ミコに向けて歩みを寄せる。

そしてミコの前に立ち止まると耀はミコに手を差し出した。

 

「伊井野さん、伴奏相手務めてくれないかな?」

 

「えっ!?」

 

「伊井野さん?伊井野さんは人前で演奏なんてできないでしょ?緊張しいだし」

 

『そうだ、人前での演奏なんてきっと私には無理だ』

 

ミコは耀の瞳から視線を逸らす。

そんなミコの様子を見た耀が口を開く。

 

「僕はできるかできないかなんて聞いていない。伴奏を務めてくれるかどうかを聞いている」

 

耀は再びミコと視線を合わせる。

 

「できるできないは気にしない。周りの声も聞かなくていい。ただ舞台に立つには君の覚悟が必要だ」

 

「......でも私、緊張しいのあがり症だし...」

 

「緊張しいなのは気にしなくていい。緊張なんて忘れるような舞台を僕が用意する」

 

世の中には一定数人前に立ちたくない人がいる。

 

その中にはそもそも人前に立つのが嫌いな者と、人前に立つのが苦手な者。

そして苦手な中でもそれを諦めている者と変わりたいと願う者がいる。

 

そしてミコがどちらも後者であることを耀は理解している。

だからこそ耀はこの舞台にミコを引きづりだそうとしている。

 

ミコは普段人前には立たないようにしているが、耀からの誘いが凄く魅力的に見えた。

そして自分が変わるキッカケになりそうな気がして、耀の差し出す手を掴んだ。

 

「......よろしくお願いします...」

 

「決まりだね」

 

耀が笑顔でミコを見つめる。

その瞬間、1年B組のドアが勢いよく開かれた。

 

「ではお2人の衣装は我々裁縫部がっ!!」

 

「どこから聞いていたんですかっ!?あと奉心祭期間中とはいえ授業扱いですよっ!?」

 

突如現れた裁縫部の部長にミコは冷静につっこんだ。

その横で耀が状況を楽しんでいるのか、クスクスと笑っている。

 

「何か希望される衣装のテーマはありますか?」

 

「ではテーマは...」

 

耀から裁縫部部長に衣装のテーマが告げられた。

 

「じゃあ僕は作業に戻るから」

 

「ちょっと待ってよ」

 

「???」

 

作業に戻ろうとする耀を呼び止めたのは意外にも小野寺だった。

 

「小野寺さん?どうかした?」

 

「耀くんばっかり要望を叶えるのはフェアじゃないと思わない?」

 

「確かにそうかもしれないね」

 

耀が小野寺とミコに正対する。

 

「僕はどうしたらいい?」

 

「...奉心祭当日、いつでもいいから一緒に回る時間が欲しい」

 

クラスがざわつき始める。

 

それはそうである。

奉心祭を異性と見て回るなんて、傍から見れば青春の1ページである。

 

「僕が小野寺さんと回ればいいの?」

 

「そんな訳ないじゃん」

 

小野寺がミコの方を向く。

 

「伊井野と二人で回ってよ」

 

「伊井野さんと?」

 

「それでこそフェアってもんでしょ?伊井野も伴奏練習に時間を割くんだから、耀くんも伊井野に時間を割いてよ」

 

耀はタブレットを開いて奉心祭での自身のスケジュールを確認する。

 

「2日目の15時から16時の間なら」

 

「決まりだね。伊井野もいいでしょ?」

 

「えっ!?っえっ!?あっ...はい...」

 

「決まりだね」

 

「それじゃあ僕はこれで...。伊井野さん、楽しみにしてるね」

 

『クラスの出し物よろしくね』と小野寺に告げてから耀はクラスを後にする。

 

耀はスマホを開くとLINEにて一通のメッセージを送る。

 

『会長、そろそろ理想の出店マップは決まりましたか?』

 

いよいよ奉心祭が始まろうとしていた。

 

 

 





いかがでしょうか?

いよいよ次回から奉心祭に突入です!
交錯する様々な想いに乞うご期待です!!

では、また次回!(。・ω・)ノ゙
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