完璧な僕の嘘を、嫌われ者の君だけが「正論」で壊した   作:テレサ二号

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皆さんこんばんは!
テレサ二号です!

おそらく今回が年内最後の更新になるかもです!
今年はお世話になりました!
来年もよろしくお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ


では、本編です!!


第四話:花火を見せたい人がいる

 

一学期の総決算である生徒総会を終え、大多数の学生が楽しみにしている夏休みを迎えようとしていた。

 

そんな終業式当日に1年B組にて耀を要注意人物として観察する視線あり。

 

「ムムム...」

『……伊井野さん?』

 

先日の生徒会での出来事を思い出し、ミコは時折頬を赤らめている。

 

一方の耀は相変わらず、クラスメイトの前では聖人君子の仮面を被っている。

 

「ねぇ杉原くん?今度みんなで海に行こうって話してるんだけど、杉原くんもどうかな?」

 

「海かぁ。凄く行きたいんだけど夏は両親の仕事の都合で東京にいない事が多いから、また誘ってよ。みんなで素敵な思い出作ってLINEグループに載せてくれたら嬉しいな」

 

耀は襟を触る。

実際に海なんか1ミリも羨ましいとは思わない。

 

しかしクラスメイトの楽しげな雰囲気を壊さず、友好関係を維持しながら断るのはこの断り方が1番だと耀自身は理解している。

 

(早く生徒会に行きたいなぁ....っっ!?)

 

耀は自身でも驚いた。

ずっとこの学園に自分の本当の居場所など無いと思っていた。

かりそめの学園生活を送ることが自分に与えられた責務だと入学してからずっと思えていた。

 

耀は自殺未遂の日から変わって来ていた。

 

両親からの扱いや家でのイベント事、習い事なとは変わらないが、生徒会メンバーといる時は自身を飾る事が極めて少なくなっていた。

そしてそう思える事を心地よく思っていた。

 

終礼の挨拶を終え、耀は同じクラスの石上の席に向かう。

 

「石上くん、一緒に生徒会室まで行こうよ」

 

「おっ、クラスの王子様からデートのお誘いですか?いや、この場合は生徒会室までのエスコートになるから杉原くんはお姫様ポジションかな?手を引いてエスコートすると好感度が上がったりします?」

 

「もう!冗談言うのは止めてよ笑」

 

「杉原くんなら女装しても可愛いと思いますけどね」

 

耀と石上はそんな他愛の無い話をしながらクラスから出ていく。

 

(杉原くん、あんな顔して笑うんだ)

 

クラスから出ていく耀を無意識で目線で置いながら、ミコは耀の事を考えていた。

 

(って!なんで私、杉原くんの事考えてるんだ!!)

「切り替えて、風紀委員の仕事しなきゃ!!」

 

風紀委員のトレードマークである黄色の腕章を着け、ミコは耀達とは真逆の方向へ歩き出した。

 

 

 

 

放課後の生徒会室。

 

「明日から夏休みー!!」

「いぇーーーい!!」

 

子どものようにはしゃぐ藤原と石上を耀は自分の子どもを見守るような慈しみの目で見ている。

 

「「せっかくの夏休み、なにかしたいよなぁ(ですねー)、ねぇ藤原書記(さん)」」

 

なにか言いたげに藤原に話を振る白銀のかぐやに、耀だけはしっかりと意図を理解してクスクスと2人に見えないように笑う。

 

 

夏休み最終日!!

それは数少ない夏休みの共通イベントのフラグを立てる貴重な1日である!!

この日を逃すと夏休みは結局一度も遊ばなかったなどと言う結果になる事も多々あるのである。

 

 

(四宮先輩をなにかに誘いたいなら思い切って誘えばいいのに、会長ってば可愛い所あるよなぁ)

 

会長の恋心を知る耀は中々素直になれない白銀を見て心の中で微笑んだ。

 

「旅行いいですよねぇ!でも私、明日から1週間、ハワイなんですよ〜」

 

藤原という渡りに船を無くし、かぐやと夏休みに遊ぶというプランを無くし掛けた時、白銀に助け舟が出る。

 

「一度くらいは何か思い出作りしたいですよね。会長とゆっくり遊べるのは今年だけかもですから...」

 

寂しげに話す石上を見て耀まで少し寂しくなってしまった。

すると耀から自分でも思わない言葉が滑り落ちた。

 

「ぼ、僕も、一度で良いから皆さんと遊びたいです」

 

耀は少し顔を赤らめて手を上げる。

人生で初めて、耀から他人をお出かけに誘ったのだ。

 

「フッ、行こうぜ石上、杉原。夏の終わりには大きな夏祭りがある。たこ焼きくらいなら奢ってやる」

 

「夏祭り!?行きましょう!行きましょう!」

 

食い気味に提案に乗る藤原の裏で、かぐやの瞳が期待で輝いたのを耀は見逃さなかった。

 

「祭りは8月20日だったな。その日はみんな空けておいてくれ」

 

「杉原くんは大丈夫そう?」

 

「うん、僕も来週から2週間、母上の仕事の手伝いでフランスに行くけど、その週には帰国してるから大丈夫だと思う」

 

「さすがはファッションブランドの社長子息!」

 

「石上くん、射的でどっちが多く点取るか勝負しようよ?」

 

「おっ、これでも玩具メーカーの子どもにそんな挑戦状叩きつけちゃいます?いいですよ?罰ゲームありでやります?」

 

耀と石上が楽しそうに話している所を見た会長は嬉しそうに2人を見つめていた。

 

そんな2人の楽しみを引き裂く人物が一人。

 

「あっ、ダメです。そのあたりトマト祭りでスペインでした...。まさか行っちゃうんですか?私だけ除け者にして、みんなで夏祭りに行っちゃうんですか?」

 

楽しみにしていた耀を始め、皆シュンとした顔つきになる。

そんな皆の空気を察してか、石上がその空気を切り裂く。

 

「え?普通に行きますけど?藤原先輩もトマト祭りじゃないですか。そっちは楽しんでくるのにこっちは楽しむななんてあんまりでしょ」

 

「うわぁぁぁぁぁん!!石上くんひどぉぉぉい!!」

 

石上のエッジの効いた正論が藤原の心に突き刺さり、泣き出してしまった。

 

「バカっ!冷血人間!前髪長すぎ!根暗自称インテリっ!石上くんなんてたこ焼きでヤケドしちゃえばいいんだぁ〜」

 

藤原は泣きながら生徒会室から走り去ってしまった。

 

「またやってしまった...。僕も帰ります」

 

言いすぎた事を反省して帰ろうとする石上に白銀とかぐやは肩に手を置く。

 

「いや、石上」

「今日は正しいです」

 

耀も石上を擁護するように数度頷いてから少しおかしくなって笑ってしまった。

 

 

 

 

 

来る8月20日。

 

いよいよ耀は楽しみにしていた夏休みのメインイベントである夏祭りに訪れていた。

かぐや以外のメンバーは既に集合して今か今かとかぐやを待っていた。

 

しかし、その期待を打ち消したのはかぐやからの悲痛なメールだった。

 

 

 

ごめんなさい。

今日は行けなくなってしまいました。

本当にごめんなさい。

 

 

短い端的な文章ではあったが、それがどれだけこの日を楽しみにしていたか、今どれだけ打ちひしがれているか、それを察するにはあまりにも容易であった。

 

 

 

 

その数分後、白銀はスマホを見つめると覚悟を決めたように一人言を呟いた。

 

「了解」

 

 

 

 

 

皆の気持ちを理解できないのか、ただただ冷淡に花火は打ち上がって行く。

 

白銀のスマホに連絡が入る。

かぐやはどうやら、四宮邸を脱出しこちらに向かっていると連絡が入った。

 

皆が思い思いにかぐやを探す。

しかし非情なアナウンスが会場にこだました。

 

『本日の花火大会は終了しました』

 

違う角度からバラバラで花火を見ていた全員の心にアナウンスが重くのしかかった。

 

そんな中、白銀だけは希望の光を見失って無かった。

 

「杉原!タクシーを手配していてくれ!!」

 

会長は端的な指示を出す。

その瞬間、耀は白銀の意図を理解し、スマートフォンを出し3箇所に連絡を入れた。

 

耀はタクシーを呼ぶと、石上と藤原に集合場所を伝え、いつでも会長が戻ってきても良いように備えた。

 

 

 

それから数分後、白銀がかぐやの腕を引っ張りながら戻ってきた。

耀は会長ならきっと見つけられると信じていたので、その期待に応えてくれた白銀を見て、シンプルに嬉しくなった。

 

白銀はタクシーに飛び乗ると運転手に目的地を叫んだ。

 

「運転手さん!このまま首都高に乗ってアクアラインで海ほたる方面へ!」

 

「ちょっと待ってくたさい!」

 

かぐやに花火を見せようと勢いづく車内に意外にも藤原が待ったをかけた。

 

「タクシーに乗れるのは4人までです!!」

 

1(かぐや)

2(会長)

3(石上)

4(耀)

5(藤原)

 

順番に数えていく。

確かに一人多い。

 

「どっ、どうしましょう!?いっそ石上くんがトランクに入りますか!?」

 

「なんで僕なんですか!?体が小さい藤原先輩が入ればいいでしょう!?」

 

と時間が迫っているのに一悶着始まろうとしていた。

 

燿はピン型の超小型カメラを白銀の胸元に付けてタクシーに押し込み、続いて藤原を、そして助手席に石上を押し込んだ。

 

「杉原っ(くん)!?」

 

「会長、自分はその小型カメラを使って見てるのでそれだけは外さないでくださいね?....運転手さん!急いでっ!!」

 

耀の言葉に、他のメンバーに代替案を出す暇を与えずにタクシーは走り出す。

耀は踵を返して別の目的地に歩み出す。

 

「行ってらっしゃいませ。僕にも早めに返しておきたい恩があるのでね」

 

耀は不敵に微笑むと計画を実行に移した。

 

 

 

 

「ハァ、私だって誰かと花火見に行きたかったなぁ」

 

自身がかぐやの身代わりになる事で、かぐやを脱走させることに成功した早坂は一人、かぐやのベットに横たわっていた。

 

かぐや様が幸せであるなら問題ない。

自身の思い出など二の次だと思い込み、その感情を自らの胸の中にしまい込んだ。

 

「おやおや、四宮家のセキュリティというのも案外ガバガバなようですね」

 

声がした方に驚き振り向くと、そこには真っ白な燕尾服、シルクハット、マントにモノクルを付けた怪盗(杉原 耀)が立っていた。

 

「怪盗さん?」

(杉原様だ。なにをしているだろう?)

 

「そうです。今宵、あなたの大切な物をいただきに参りました」

(さすがは怪盗テッドのコスチューム!どうやら僕だと気づかれていないようだ!)

 

耀は大好きな怪盗のコスチュームに身を包み、テンションが上がりきってしまっている。

 

「それで怪盗さんがこんな所になんの用です?主ならただいま留守ですが?」

(まぁさっきまで一緒にいたから知っていると思いますが)

 

「そうですか。しかし今宵、私が用があるのは四宮かぐや様では無くあなたです、早坂愛さん」

 

耀は持参していたたこ焼きと焼きそば、クレープにラムネを広げる。

 

「この部屋は主の部屋かもしれませんが、一時だけご容赦を」

 

耀は更にタブレットを開く。

画面共有のボタンを押すと、タクシーの窓ガラス越しに映る大きな花火が映し出された。

 

画面越しに映る花火が早坂の顔を染めて行く。

 

「綺麗ですねぇ」

 

耀は怪盗になりきっている設定を忘れて花火に夢中になっている。

 

そんな耀の横顔を見て、早坂は少しだけ頬を朱色に染めた。

 

早坂は同世代の異性と2人きりで接する機会があまりにも少ない。

それ故に、今更になってこれはデートみたいな物なのでは?と気づいて恥ずかしくなったのだ。

 

一方の耀は早坂にお礼がしたかったのだ。

 

先日の政財界のレセプションの際に体調で倒れた自分に看病をしてくれていたのが早坂である事を耀は知っていた。

 

そして今日はかぐやに思い出を作らせるために骨身を削ってくれている。

 

耀は会長ならきっとかぐやに花火を見せるだろうと信じていた。

 

だったら早坂の頑張りでみんながこんな素敵な景色を見ることができたのだと、耀は早坂と共有したくなったのだ。

 

タブレット越しに映る花火を子供のようにその瞳に刻み込む耀を横目に、早坂は耀から目を離せなくなっていた。

 

隣で微笑む男の横顔がとてもまぶしく感じられ、早坂の瞳には花火の光などとうに届かなくなっていた。

 

 

 

 

「かぐやさま....っ!!何者だっ!?」

 

かぐやを訪ねて部屋に来た執事に怪盗は気づかれ、2人のもとに執事が駆け寄ろうとした。

 

「おっと、シンデレラの魔法の時間にもタイムリミットが来てしまったようだ。今宵、私が欲しかった、あなたの孤独な時間は確かに私がいただいた。では、今宵のショーはここまでです!」

 

怪盗はバルコニーへ走り出すとそのまま外に飛び出した。

 

耀が飛び降りたのかと思い、心配になった早坂だったが、その心配は無駄に終わる。

 

怪盗は事前に用意していたヘリのタラップに掴まるとそのまま漆黒の夜空に飛び去った。

 

 

 

 

 

「おやすみなさい。素敵な時間をありがとうございました、杉原様」

 

怪盗が飛び去った空をしばらく見つめていた早坂はボソリと呟いた。

その瞳には満天の星空が写っていた。

 

 

 

 

 

翌日から早坂の通学カバンにお気に入りのパンダのぬいぐるみとは別に、怪盗テッドのぬいぐるみが仲間入りするようになった。

 





いかがでしょうか?

タイトルからかぐや中心回と見せかけての早坂回でした笑

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