完璧な僕の嘘を、嫌われ者の君だけが「正論」で壊した   作:テレサ二号

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どうも、こんばんは!テレサ二号です!
直近数日のUAとお気に入り登録の伸びにビビってます笑
でもこれも、いつも読んでくださっている皆さんのおかげです。
これからも宜しくお願い致します(*・ω・)*_ _)ペコリ

さて改めまして、年明けから仕事がめちゃくちゃ忙しくなって、更新頻度遅くなってすみません!

加えて、今回の話に力を注ぎすぎて文字数が過去最高を更新しました笑

その分、読み応えはあると思いますので、温かい飲み物片手にゆっくり読んでください!( *´꒳`* )

では本編です!



第八話:秀知院の夜明け・最強の布陣

 

ミコが耀に宣戦布告した翌日、耀は白銀のクラスで藤原を含めて3人で作戦会議をしていた。

 

「みゆき君は外部入学の混院、小等部からの純院たちは再選を快く思わないでしょう」

 

「だな...そういう生徒がいるのは前回の選挙からの課題だ。その現状を打破する案が何かあるか?」

 

白銀は耀に発言を求める。

 

「これは僕独自の調査結果ではありますが、有権者の6割は白銀先輩を支持しています。なので奇策は必要無いと思います。多数派は正攻法で行くのがベストかと」

 

「となるとやはり.....応援演説を誰に任せるかが大きなポイントとなりますね」

 

「確かに、純院・混院共に顔が効き、そして1年の票も稼げる人材が必要になりますね」

 

耀は藤原に同意する。

 

「純院の生徒を取り込めるほどの人気があり、異議を封殺できるカリスマ性の持ち主が....幸運にも身近にいますよね?」

 

「つまり_____このわた.....」

「やはり四宮しかいないか」

 

「わたしもうみゆき君に票入れませんから....」

 

「今のマジな自己評価だったの?だとしたらごめん.....」

 

2人のやり取りに耀は思わず笑みを零す。

 

(しかし....)

 

白銀は改めて藤原と耀の真剣な顔を見る。

 

(総理大臣を輩出している家系の息女と外務大臣を輩出している家系の子息。やはりこの手の仕事の適任はこの2人しかいないな)

 

白銀は2人の仕事っぷりには関心している。

そしてこの場を終わらせる為に耀は纏めだす。

 

「役割分担として、白銀先輩は四宮先輩に応援演説の依頼を、藤原先輩はマニフェストの立案を、僕は石上くんに壇上での会長および四宮先輩の応援演説用のパワポの作成と、可能であればイメージアップに繋がりそうな動画の作成を依頼しておきます」

 

「えっ?マニフェストの立案は杉原がしてくれないのか?」

 

「どーいう意味ですか?」

 

藤原はジト目で白銀に抗議する。

しかし耀は冷静な分析結果を共有する。

 

「マニフェストというのは、この人に投票したいと判断させる材料の1つです。この学園の生徒は割とユーモアのあるマニフェストに惹かれる傾向にあります。藤原先輩の創造性と独創的な発想力があれば、僕より人心掌握できるマニフェストが完成しそうです。僕の場合、やはり校則や風紀をベースにした堅いマニフェストになりそうなので。しかし、白銀先輩が僕のような堅いマニフェストがお好みでしたら僕が担当しますが?」

 

「いや、杉原がそう判断したのならそれが正解だろう。藤原、頼めるか?」

 

「もちろんっ!任せてください!」

 

藤原は了承しながらずっと耀の頭を撫でている。

よっぽど耀からの高い評価が嬉しかったようだ。

 

「他に活動としてやるべき事はあるか?」

 

「そうですねぇ....。やるべき事は沢山ありますが、まずは各組織の長への訴えかけと浮動票の獲得でしょうか。あとは秀知院学園という閉鎖空間においてはオールドメディアの掌握も必要となりますから、マスメディア部については僕からアプローチを掛けておきます」

 

この段取り力。

そして成果を充分に出す為の適材適所の人員配置とそれに至るまでの判断の早さ。

白銀は耀が自分の陣営で良かったと改めて思わされたのであった。

 

「では、皆さん行動を起こしましょう。不明点や不安な箇所が浮上したら都度都度打ち合わせという事で。....白銀先輩、四宮先輩の応援演説はマストなのでちゃんと頼みますよ!」

 

「あ、あぁ...任せろ」

 

耀はかぐやの事となるとヘタレを見せる事がある白銀に念の為釘を刺した。

 

 

 

 

 

自身の教室に戻った耀は早速石上のもとへ行き、先程の打ち合わせ内容を共有する。

 

「と、言うことで会長選当日の壇上用の資料作成頼めるかな?」

 

「了解です。ただ以外でした。杉原くんなら自分でやるとか言い出すと思ってましたから」

 

「そうかな?勿論僕も手伝うけど、僕より石上くんの方が人に見せる資料を作れるじゃないか。僕が作るとどうしても報告書みたいになっちゃうし。それに動画編集なら僕より石上くんの方が遥かに技術は上だしね」

 

石上は嬉しくなって耀の頭を撫でた。

耀は「コレ流行りなの?」と的を得ない確認をした。

 

 

 

 

 

 

翌日、生徒会選挙の予想速報が掲示されていた。

 

現在では、白銀派が全体の58%を占めており優勢である。

耀が事前に言っていた、有権者の支持率6割はかなり的を得た発言であったと判断できる。

 

「会長ぶっちぎりじゃないですか」

 

「これはもう勝ったも同然ですよ」

 

「いや、油断は禁物だ」

(いや、もうこれ勝っただろっ!?強すぎてビビるわ俺っ!人望厚くてビビるわ!)

 

白銀の内心は穏やかでは無く、誰よりも油断していた。

 

「次点に来てる子...1年生なんですね?石上くん、知ってる人?」

 

「クラスメイトの名前も覚えてない僕に聞きます?」

 

「伊井野ミコちゃん」

 

「伊井野!?....この名前はさすがに知ってます」

 

「有名人なのか?」

 

「まぁ、1年の間では.....学年1位ですし」

 

「あの杉原より上なのか!?」

 

「まぁ、杉原くんは本気出して無い感じするんで何とも言えないですが...百聞は一見にしかず。僕が話すより直接見た方が話が早いと思います」

 

廊下から見ると校庭でビラ配りをしているミコを見つけ、白銀達を案内する。

 

 

 

「......ちょっといい?」

 

「....石上。なんの用?見ての通り私は忙しいの。不良に構ってる時間は無いの」

 

「不良.....まぁ僕はただの顔繋ぎ。用事があるのは....」

 

「君が伊井野ミコか?」

 

「はい」

 

ミコは白銀と正対する。

ミコの顔を見た瞬間、白銀と藤原は大声を出した。

 

「「あーっ!!!」」

 

「なんですか急に大声出して。はしたないですよ」

 

「「杉原(くん)に告白してた女の子っ!!」」

 

「ハァ!?」

 

ミコは一瞬で顔を真っ赤に染め上げた。

 

「なっ、なんで私が杉原くんに告白してる事になってるんですか!?」

 

「えっ!?伊井野が杉原くんに告白!?なんでそんな面白い話を僕に黙っていたんですか!?」

 

「だから、告白なんてしてないって!!」

 

否定し続けるミコを置いて、白銀・藤原・石上のボルテージが高まっていく。

 

「あれは間違いなく告白でしたよっ!?『……私、杉原くんじゃないとダメなの。他の誰に何を言われても、杉原くんだけは隣にいてほしくて....』みたいな事を今とは全然違う、乙女の表情で言ってたんですから!?」

 

「だから誤解ですっ.....ってゆうかあの話、聞いてたんですかっ!?」

 

藤原がその時のミコの表情や声を軽いモノマネをしながら説明をする。

ミコの心拍数がドンドン高まっていく。

それに比例して耳まで赤くなってきた。

 

「それでそれで?杉原くんはなんて返事したんですか?」

 

「『君の真っ直ぐな想いに嘘や妥協で答えたくない。……少しだけ、僕に時間をくれないか? 僕自身の本当の気持ちを確認してから、答えを出したいんだ』って言って保留にされてたぞ」

 

「うわぁー、伊井野ちょっと期待しちゃうやつじゃん!甘酢っぺぇ!!」

 

「だから違うってばっ!!」

 

校庭に響き渡ったミコの叫び。

肩を震わせ、必死に呼吸を整えると白銀たちの目を真っ直ぐに見据えた。

 

「いいですか皆さん!? 落ち着いて聞いてください!……あれはっ、そのっ....確かに紛らわしい言い方だったかもしれませんけど……単なる人材の引き抜き、つまりはスカウトです!」

 

「スカウト……?」

 

白銀が首を傾げる。

 

「そうです! 杉原くんの能力は風紀委員の活動を通しても知っていました。だから、私の理想とする学園を作るために、彼を私の陣営に誘ったんです。……特別な存在っていうのは、えっと……その......事務局長とか、そういうポジションのことです!」

 

「……事務局長を『あなたじゃないとダメ』なんて顔で誘うか?」

 

白銀がボソッとツッコミを入れる。

 

「誘います!!それくらい彼が優秀だって言っているんです! あなた達は分かっていないのです、彼の有能さと誠実さ、そして高潔さをっ!」

 

「はぁ!?」

 

ミコの主張にまさかのストップを掛けたのは意外にも石上だった。

 

「杉原くんのいい所は伊井野より、俺たち前生徒会メンバーの方が知ってるから?」

 

まるで小学生の掛け合いである。

どちらが耀のいい所を知っているかでマウントを取り合っている。

 

「伊井野は知らないだろう?杉原くんはあー見えて、甘いものが好きな所があるんだせ?」

 

「知ってますけど?意外と可愛らしいギャップの持ち主だって事知らないでしょ?」

 

「それくらい知ってるっつの!」

 

「どーどーどー。全く、僕のいない所でどんな喧嘩してるんだい?」

 

小学生の様な会話をしていた2人のもとに耀が割って入る。

 

「すっ!杉原くん!?いつからそこにっ!?」

 

「たった今だよ。遠くに白銀先輩達が見えると思ったら、一触即発の空気を出していたから」

 

耀はやっと静まった空気を更に落ち着かせながら、ミコに説明する。

 

「.....挨拶が遅くなり、申し訳ありません。初めまして藤原先輩。伊井野ミコと申します」

 

ミコは石上や白銀には一瞥もくれず、藤原のみに挨拶をした。

 

「私の事、知ってくれてるんだ〜」

 

「勿論です!....あのっ、それで....もしよろしければなのですが、私が生徒会長になった暁には藤原先輩が副会長になって頂けませんか!?」

 

「えぇー!?私っ!?」

 

「「「えぇっーーー!!??」」」

 

副会長に指名された当の本人である藤原以上に、白銀・石上・耀の3人は驚きの声を上げた。

 

「ちょっと待て!なんでよりにもよって藤原なんだ!?」

 

「そうですよっ!?この人を知ってたら絶対出てこないセリフですから、それ!」

 

「失礼って言葉を知ってますか2人とも!?」

 

白銀と石上のめちゃくちゃ失礼な言葉に藤原が鋭くツッコミを入れる。

 

「ちょっとそこのマトモそうな人!これは止めた方が良いんじゃないかっ!?」

 

白銀はミコの近くに立っていた、大仏こばちに同意を求めた。

しかし彼女から返ってきた言葉は、想像を遥かに超えるものだった。

 

「いえ....論理的に考えて藤原さんは副会長に相応しいでしょう」

 

その大仏の発言に1番衝撃を受けたのは意外にも耀であった。

 

「白銀先輩....僕は彼女に興味が湧きました....。どんな理論を酷使すれば、藤原先輩が副会長に相応しいなんて結論に至るのか....。この理論はアンドリュー・ワイルズにだって解けやしませんよ」

 

「よし、そこに並らんで歯を食いしばりなさい男子ども」

 

※ワイルズはフェルマーの最終定理を証明した偉人です。

 

「あなたたちこそ!藤原先輩のなにを知ってるんですか!藤原先輩ほど立派な方が他にいますか!?」

 

「いや居っ....」

 

「人の話は最後まで聞きましょうっ!?」

 

珍しく褒められるチャンスを得た藤原は、その機会に食いついた。

 

「藤原先輩はあのピティナ・ピアノコンペで全国大会金賞を取ってるんですよ!」

 

「小4の時ですけどね....」

 

「しかも5ヶ国語を操るマルチリンガル!」

 

「親が外交官で....」

 

「そんなっ...バカなっ....」

 

耀は膝から崩れ落ちた。

 

「僕は4ヶ国語しか話せないのに、藤原先輩は5ヶ国語?.....まさか藤原先輩に敗北感を覚える日が来ようとは.....」

 

「今日の杉原くん、誰より失礼ですよね?」

 

藤原の頭に怒りマークが浮いて来た。

 

「分かりましたか!?藤原先輩は凄いんです!」

 

「引退して以来、過去の人扱いされてたから嬉しいよ〜」

 

喜びのあまり、藤原はミコに感激のハグをする。

 

「いいですか前会長....。確かに今は票数で劣勢かもしれません。ですが理念では絶対に引けをとりません。そしてそれらは必ず時間と共に理解が得られるものだと確信しています」

 

ミコは自身の公約が載ったビラを白銀に押し付けた。

 

「藤原先輩を引き入れるためにもこの選挙は勝たせて頂きます!」

 

「絶対に負けませんよっ!!」

 

「なんでナチュラルに寝返ってるんだよ」

 

自然に鞍替えをする藤原に思わず白銀は突っ込んだ。

 

 

 

そんなミコと藤原、大仏を残し、耀たちは校庭を後にする。

 

「伊井野ミコ....なかなか手強いやつのようだ。これは対策を講じる必要が...」

 

「どうでしょうかね?その心配は無いと思いますけど?」

 

「何?」

 

「そのビラ、良く読んでみてください」

 

白銀がビラを見る、耀も横から顔を出し白銀のビラを一緒に見た。

 

公約

①男子は坊主頭、女子はおさげか三つ編み

 

②携帯電話の持ち込みを禁止します

週に一度持ち物検査をします

 

③男女は50cm以上の接近を禁止します

 

「ナチュラルにコレなんですよ、伊井野は融通が利かないクソ真面目というか.....。こんなビラ配ったら逆効果って、なんで分かんないですかね....」

 

(応援演説の依頼、受けなくて良かったかも...)

 

白銀陣営、なおも優勢!!

 

 

 

 

 

選挙日当日。

白銀を筆頭に校内掲示板の前で最後の確認をしていた。

 

「しかし杉原には驚かされたな」

 

選挙期間中に張り出された校内新聞の記事を読んで改めて白銀は関心する。

 

『秀知院学園に彗星の如く現れた超新星、杉原耀に迫る!』

 

『秀知院の『あるべき姿』を再定義する。――白銀御行という選択以外、僕の視界には入らない』

 

などという見出して、耀の独占インタビューとなっている。

 

兼ねてからマスメディア部からの独占インタビューを打診されていたが、その機会をことごとく断り続けていた耀が、自らの身を切る形でオールドメディアを掌握していた。

 

この記事を見た、耀を高く信頼している各部活や委員会も白銀派へ一気に引きづりこんだのだった。

 

耀の活躍も光り、既に白銀陣営の支持率は95%に迫ろうとしていた。

 

そんな少し、油断を含んでもおかしくない空気を引き締めたのは石上の意外な提案だった。

 

「皆さんにお願いがあります。......今日の選挙、伊井野ミコに徹底的に勝ちたいんです」

 

「どうした?神妙な面持ちで」

 

「向こうに何か隠し球でもあるのかしら?」

 

「いえ、何も無いです。今日の選挙は確実に僕らが勝つでしょう」

 

真剣に語る石上の視線を受け、耀を含む4人が再び緊張の縄を引き締める。

 

「皆さんならそれ以上の勝ち方ができるはずです」

 

「何かあるのか?伊井野ミコに?」

 

「それは...」

 

石上から自身の思いが語られる。

それを聞いた4人の表情が戦う者の面構えに切り替わる。

 

「おっと、その前に」

 

耀は石上のもとに歩み寄るといつも開けている、学ランのボタンを全て閉め、身だしなみを整えた。

 

「本気以上に勝ちたいと言うのなら、常に見られているという意識を忘れないように。僕らは王者だ、その気高い誇りを胸に掲げて入場しよう」

 

耀の言葉に白銀陣営の油断は1ミリも無くなっていた。

 

『1票足りとも落とさずに勝つ』

 

そのくらいの気持ちを持って体育ホールに入場する。

 

 

 

ホールの重厚な扉が開かれた瞬間、それまでの喧騒は霧が晴れるように消え失せ、会場は真空に近い静寂に包まれた。

 

白銀陣営は一列の完璧な隊列を成し、寸分の狂いもない歩調で空気を踏みしめる。

 

先頭を行く白銀が放つ『豪傑の覇気』を核として、左右を固めるかぐやと藤原の『息を呑むような高貴さ』が、その歩みを神聖な儀式へと昇華させていた。

 

さらに、背後を固める石上と耀。

影のように音もなく付き従う二人の従者による『冷徹な知性』と『揺るぎない品格』が、この陣営から一切の隙を排除し、難攻不落の城塞のような圧力を生み出している。

 

壇上付近の定位置に到達した五人が、音もなく同時に観客席へと向き直る。

 

その瞬間、ホールの空気は物理的な重さを伴って固定された。

 

彼らがそこに立っている。

 

ただそれだけの事実が、この選挙の結末を、そしてこれからの学園の運命を雄弁に物語っていた。

 

5人が纏ういつもとは明らかに違う空気に、ミコと大仏は飲み込まれていた。

 

「それでは、第68代生徒会選挙を開始します。伊井野さんの応援演説の大仏さん、よろしくお願いします」

 

開会宣言と共にトップバッターの大仏が壇上に上がり演説を開始する。

 

「伊井野ミコはとても真っ直ぐな女の子です」

 

大仏は緊張しながらも淡々とミコがいかに会長に相応しいかの根拠を羅列していく。

 

その主張に淀みはなく、今日に向けて彼女がどれ程練習を積んできたかを感じさせた。

 

「.....ご静聴、ありがとうございました」

 

大仏の言葉とは裏腹に、会場の意識は散漫で全体の半分は真面目に話さえ聞いていなかった。

 

誠意を込めた彼女の思いを嘲笑う様な空気に、耀の不快な気持ちが積み重なっていく。

 

「続きまして、白銀さんの応援演説の四宮さん。お願いします」

 

煌びやかなオーラを纏い、かぐやが壇上に登る。

 

しかし依然としてホールの空気は散漫している。

 

かぐやは故意にマイクのヘッドを指でなぞり、ハウリングによる不快音を起こす事でその視線と散漫している集中を全て自分に向けさせた。

 

(四宮先輩、賢いな。僕なら余談や話術を使い自身への注目を誘うだろうけど、最小限の時間で最大限の効果を出した。やり方はともかく、結果を重視する四宮先輩らしい方法だ)

 

耀はかぐやの手腕に脱帽すると共に、自身とは違う結果最優先のアプローチに恐怖すら覚えた。

 

「白銀御行会長候補の応援演説を務める、四宮かぐやです。こんにちわ」

 

先程の行動など気にも留ないといった凛とした佇まいで、かぐやは挨拶をし、応援演説を開始する。

 

「我が校の生徒会はOB会の管理の元、寄付金によって運営されており、動かす金額は子どもの遊びで片付けられるものではありません。皆様のご両親が朝早くから夜遅くまで働き、皆様を想って贈られたお金です」

 

先程までの空気とは打って変わって、皆の視線がかぐやの主張に向けられる。

 

「それ故に、堅実に確かな運用が出来る者を選ばなければなりません。この資料が示す通り、我々前生徒会は白銀御行会長のもと、それらを実現できていたと自負しております」

 

一流財閥専任の公認会計士の作る、会計報告書と比較しても遜色無いレベルの活動報告書を耀は作り上げていた。

その完成度のあまりの高さに教師から感嘆の声が上がる。

 

「最後に今後の活動方針を映像でご説明いたします」

 

活動方針を示したPVに記載されていた内容は、今後の修学旅行についてやカリスマ講師を招集した特別授業の実施など、未来の話が多く生徒達の心を鷲掴みにした。

 

このPVを作成した石上の高い動画編集能力と演出により、ホール内の熱気は高まっていく。

 

教師と生徒の掌握。

耀と石上の活躍により、投票先についてはほぼ確定したような空気が会場を埋め尽くす。

 

「盛り上がってるじゃないか」

 

「これは杉原くんの完璧なまでの合理性と、僕の魅せる ・伝える力の融合によって生まれた最高傑作です。きっとこの学園の他の誰が逆立ちしたって真似できませんよ」

 

耀は石上の言葉に同意の意を込め、一度だけ小さく頭を下げた。

 

「意外だったな。杉原はともかく、石上がここまで本腰を入れるとは」

 

「僕が言い出した事ですし、伊井野に徹底的に勝つって」

 

石上は自身の登壇を控えたミコに視線を送る。

そんな石上の意志を耀は自身の胸の内に落とし込んだ。

 

「ご清聴ありがとうございました。前生徒会役員を代表しまして、白銀御行に清き一票を」

 

かぐやの終わりの挨拶に合わせ、前生徒会の役員である、藤原・石上・耀が頭を下げる。

 

その瞬間、先程の大仏の応援演説では無かった拍手が会場を包んだ。

 

まさに四宮の名を継ぐ氷の女王。

かぐやは100点をつけても過大評価とはならない程の会心な出来の応援演説をこなし降壇する。

 

「続きまして、伊井野ミコさんの立候補演説です」

 

ミコの名前が呼ばれ、緊張の面持ちで登壇する。

 

 

 

 

「……私の名前は.....伊井野ミコです」

 

マイクトラブルかと思わせるくらいの、消え入りそうな声で演説が始まった。

 

「えっ?緊張してるの?」

「またかよw」

「おい、聞こえねーぞっ!w」

「あはははは」

 

会場を嘲笑が埋めつくしていく。

 

その光景を見ていた石上が生徒会メンバーにだけ聞こえる程度の声で真相を語り出した。

 

「いつものパターンですよ。これが伊井野が勝てない理由です。もともと人前が苦手なやつでしたけど、選挙に負ける度に酷くなってる」

 

ミコの事を嘲笑し続ける多数の生徒に石上は失望の視線を向ける。

 

「そりゃ笑えますよ。......学年1位の融通が利かないクソ真面目ちゃん。普段は偉そうに指図してくるやつが、こうも見事に生き恥さらしてくれるんですから。普段からムカついてるやつらからしたら笑うなってのは無理な話でしょ?......でも、イラつくんですよ。頑張ってるやつが笑われんのは」

 

珍しく石上が怒りの感情をあらわにした。

 

耀は石上の言葉を全て受け止めてから、その歩みを壇上に向けた。

 

「おいっ!杉原っ!?」

 

耀の後ろで小さく白銀が耀を呼び止める声がした。

しかし今の耀にはその言葉はただの雑音でしか無かった。

 

 

 

 

 

壇上のミコの心理は極限のパニック状態であった。

 

逃げ場の無い壇上で害意や敵意、そして嘲るような言葉の矢面に立っている。

 

普段から風紀委員として自らを律し、強くあろうとするミコでもその本質は正しくありたいだけの女の子。

害意や敵意の視線に晒されれば、誰だって等しく怖いものである。

 

(もうダメっ......誰か......助けて.....)

 

ミコは周囲からの目線から逃れるために俯いた。

そしてその視界の端に、足元が見えそちらに視線を奪われた。

 

杉原耀が登壇している。

そして一歩一歩、歩みを自らに寄せている。

 

しかし彼の瞳はいつもの様な宝石の様な暖かい物では無かった。

怒りや悲しみが混ざり、深淵の蒼に変わっていた。

 

ミコへの敵意や害意、嘲笑などは一斉に止んだ。

 

突如として登壇した耀の一挙手一投足に視線の全てが集まった。

 

本来、耀はこの壇上に上がる資格は無い。

 

校則でも、会長選で登壇できるのは立候補者と応援演説者のみと定められている。

 

そしてこのままミコが自滅すれば、白銀陣営の勝利は火を見るより明らかである。

 

つまりミコの自滅を助けようとする行為は、この選挙期間中、白銀御行を生徒会長にしたいと願う前生徒会メンバーの努力を、願いを、好意を踏みにじる行為に等しい。

 

耀はそれら全て覚悟の上で、校則や風紀、そして想いも纏めて踏みにじった。

 

耀はミコの前にあったマイクを取ると、その重い口を開いた。

 

「なぜ、彼女を笑うんですか?」

 

耀は先程まで嘲笑していた生徒達を睨むように、問いかける。

 

耀は会長選が始まってからの空気がとても嫌だった。

 

耀は各陣営の想いも理解している。

それぞれがそれぞれの想いを持ってこの会長選に臨んでいる。

 

その想いや言葉を軽んじた生徒が、軽い言葉で蔑んだ事が許せなかった。

 

そして耀はミコが自滅していくのも見てられなかった。

 

それはミコへの同情などでは無い。

 

この会長選の前に石上が言った。

 

『伊井野ミコに徹底的に勝ちたいんです』

 

耀はこの言葉の真意を正しく汲んでいる。

 

こんな状態のミコに白銀が勝っても意味が無い。

 

双方100%の力を出し切った上で勝つ。

でなければ、ただの勝利という結果に耀は満足できないし、心は満たされないと思えた。

 

そして、抱えた心の燻りを全て言の葉に変えて耀は話し出す。

 

「彼女は今、この場の空気を和ませる事に尽力を注いでいますか?」

 

耀は視線が交わる生徒一人一人に自分の想いを届けようと身振り手振りを交えて語る。

 

「確かにこの会長選は、次期生徒会長を選出する大事な場です。ですが、問われるのは会長としての資質だけですか?......我々生徒が思い描く理想の学園生活を形成していく上で、誰が生徒会長に相応しいかを選出する場ではありませんか?......だったら投票する、我々の意思や姿勢も問われているのでは無いでしょうか?」

 

耀は自身の胸に手を当て、本心をさらけ出している。

 

「皆さんの今の行いは、この誇り高き秀知院学園の生徒としてあるべき姿でしょうか?今一度、真摯な気持ちで彼女の公約に耳を傾けてください!!よろしくお願いします!!」

 

耀は深々と頭を下げる。

 

真っ直ぐな想いや言葉は真っ直ぐに相手に突き刺さるものだ。

 

会場は先程までとは全く別の会場の様になってしまった。

 

「最後に、この神聖な会長選の壇上を穢してしまい。誠に申し訳ありませんでした」

 

耀は顔を上げる。

 

その瞳に写る生徒達は先程までの低俗な視線では無く、高貴な秀知院学園の一生徒としての矜恃を持った視線に変わっていた。

 

耀は心から安堵し、ミコにマイクを手渡す。

その瞳はいつもの様に宝石の様な輝きを取り戻していた。

 

生徒達に背中を向けていた耀の顔は今はミコにしか見えない。

耀は口パクで『が・ん・ば・っ・て!』と伝えると壇上を後にする。

 

耀とすれ違う形で登壇した白銀が耀の横に並ぶと2人は同時に足を止めた。

 

そして耀が先に口を開いた。

 

「すみません、勝手なことをしました」

 

「構わん、俺が許す。お前のおかげでこの選挙戦の価値が上がった。先程のままでは、空虚な玉座に座ることになっていた。.......周りが何と言おうと俺は今日のお前の行いを誇りに思うし、一人の男として尊敬する。......あとは任せろ」

 

「......はい、お願いします」

 

耀は白銀と目を合わせず降壇する。

 

その先にいた石上と目が合った。

石上は耀を誇らしい様な敬意を払った瞳で見ている。

 

「ごめん、石上くん。君との徹底的に勝つって約束を踏みにじってしまったかも」

 

「僕は構いませんよ?まぁ、藤原先輩や四宮先輩がどう思うかは分かりませんけど」

 

耀を茶化す様に石上は答える。

 

藤原は耀の言葉に深く感銘を受けて涙を流しており、かぐやは「本当にしょうがない後輩ね」と慈愛を含んだ言葉を耀に掛けた。

 

「まぁでも、僕たちが良くても教師が黙って無いですよ?」

 

「あぁ....全て覚悟の上だ。石上くん、あとの事は頼んだよ」

 

耀は石上の返事を待たずに、教員達のもとへ歩み寄る。

 

一度、校長に謝意を込めた礼をしてから、生徒指導担当に話しかける。

 

「この度は校則違反をしてしまい、誠に申し訳ありません。責任の全ては僕にあります」

 

「覚悟の上だな?」

 

「もちろんです。しかし、途中で止めず最後まで見守っていただきありがとうごさいました。その誠意に感謝し、どんな処罰でも受ける覚悟です」

 

「分かった。では着いてきなさい」

 

耀は生徒指導担当と共に、体育ホールを後にする。

 

ホールから出る瞬間、ミコの力の籠った抗議の声が聞こえて、耀はもう大丈夫だろうと安心して、背中を押される思いで、会場から立ち去った。

 

 

 

 

 

白銀とミコの白熱の討論会を予定の30分以上オーバーし、会長選は幕を閉じた。

 

結果としては319対280で白銀陣営が勝利し、第68代生徒会長には二期連続で白銀御行が選ばれた。

 

しかし当初では95%程度の支持率を持っていた事から考えると、ミコ陣営が大きく巻き返した事になる。

 

そして、その選挙結果の前でミコはその話題の中心人物として担ぎ上げられている。

 

沢山の暖かい言葉を掛けられ、彼女にも自然と笑みが零れていた。

 

人生で初めて、選挙に負けたのにどこか自分が誇らしく、そして充実感のある内容となっていた。

 

そんなミコ達を離れた所から、白銀陣営が見つめていた。

 

「.......そういや、会計監査と庶務も決めないとだったな」

 

「そうですね......ってちょっと待ってください。何考えてます?」

 

白銀は一歩一歩、不敵な笑みを浮かべミコと大仏のもとに歩み寄った。

 

「少し話したいことがある、ついてきてくれないか?」

 

「は、はいっ!」

 

2人は人気の無い所に呼ばれ、白銀は口を開く。

 

「これも真剣勝負の結果だ。恨んでくれるなよ?」

 

「とんでもないです!......私にはまだまだ足りないものが多すぎると改めて実感しました。私が不甲斐ないばかりに沢山の人に迷惑をかけてしまって....」

 

ミコは壇上での耀の背中を思い出した。

 

「そういえば、杉原くんはどこにっ!?私、彼に1番お礼言いたくてっ!」

 

「アイツは今頃、生徒指導室だろう。今日、アイツに会うのは難しいだろうな。俺も本当は今すぐにでも、今日までの礼と生徒会広報の継続を要請しておきたかったのだが」

 

ミコは耀への罪悪感から少し俯く。

 

「まぁ、それはそれとして。...2人とも生徒会に入るつもりは無いか?まだ生徒会長を目指すつもりなら、実地で学んでいた方が都合がいいだろう」

 

「あ、私は結構です。正直、生徒会興味ないので....。私はあくまでミコちゃんを応援したいだけなので」

 

「もちろん無理にとは言わないが....」

 

大仏へのスカウトが失敗に終わった白銀は少しだけ動揺している。

 

「わ、わたしは.......私はいいですけど。私...生徒会に誘われるなんて今までなくて...少し考えさせてください」

 

「その気があれば明日、生徒会室に来てくれ。歓迎する」

 

ミコは頷いた。

それと同時に耀との賭けを思い出していた。

 

『白銀先輩が会長になった場合は、伊井野さん、あなたも生徒会に所属して貰います。あなたが一緒ならもっと僕が楽しくなりそうなので!』

 

耀の宝石の様な笑顔を思い出し、賭けは賭けなのでと自らに言い聞かせ、口にはまだ出さないが生徒会に入ることをミコは決めた。

 

「それより後ろの方々がソワソワしてますよ?」

 

石上と藤原はミコへのスカウトの成り行きを見守りつつ、自身の進退が気になりソワソワしていた。

 

「ん?どうかしたか?」

 

「いえっ、そのっ、......他の役職ってどうなるのかなーって言うか。生徒会のメンバーは会長が選ぶ訳で...。なんていうかその......」

 

「選ばれないかもって結構不安になるもんですね。性格に難がありますから僕ら」

 

「アグリー!!(そうそれ!)」

 

先程までの会長選での働きを見れば、この2人が選ばれない事はありえない。

 

しかし確約と言うものが無ければ、人は不安になるものである。

 

「何訳の分からん事を言っているんだ、藤原書記。石上会計も」

 

この三人の間に『再び力を貸してくれ』などの無粋な言葉は不要だった。

 

当たり前の様に白銀は石上と藤原を元のポストに引き入れた。

 

「新生徒会の初仕事だ。体育館の椅子を片しに行くぞ」

 

その瞬間、二人に安堵の笑みが零れる。

 

「片付けを手伝えない、かぐやさんと杉原くんにはどんな罰を与えましょうかー?」

 

「僕と藤原先輩が、2回ずつ生徒会室の窓拭き当番をパスできる権利くらいが手打ちと言った所ですかね」

 

そんな取り戻した当たり前の居場所を慈しみながら、すぐ目の前の掃除当番の話なんかをする。

 

そんな特別な特別じゃない出来事が今の二人にはとても心地よかった。

 

 

 

 

 

そして、翌日ミコは生徒会室の扉の前に立っていた。

 

生徒会役員として、自身がこの生徒会室の扉をくぐる事になるとは思ってもみなかった。

 

期待と不安を胸に彼女は生徒会会計監査として、その扉をノックした。

 

彼女の順風満帆な生徒会役員としての新生活がスタートする。

 

1つ彼女の思惑と異なる事象があるとするならば、生徒会広報に"杉原耀"の名が無かった事である。

 

 





いかがでしょうか?
最後まで読んでいただき、ありがとうごさいます!

会長選が終わっていよいよ第二期生徒会のスタートです!

これから耀や生徒会がどの様に進んで行くか乞うご期待です!

それでは、感想・お気に入り登録・高評価お待ちしてます!!

ではまた次回!(。・ω・)ノ゙

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