【完結】渋谷の中心でマハムドバリオンを唱えた馬鹿者 作:双子座流星群
休憩を終え、呼吸も整った。気力も回復した。いざ、中ボス戦だ。
俺は広場の中央に立ち、意気込んで杖を構え——そして、ピタリと動きを止めた。
「……なぁ、相田」
「はい、何でしょう?」
「『
俺の問いに、相田も「あ」という顔をしてタブレットを操作し始めた。
「えーと、確か宿儺が伏黒恵の体を使って鵺と合体させた『
相田の指が止まる。
「ないですね。原作でも、単体で召喚された描写は一度もありません」
「だよな!? 俺も思い出せなくて焦ったんだよ! というか影絵はどうするんだ? 当然、作り方も載ってないよな?」
「はい。公式ファンブックにも記載はありません」
「くそっ、芥見先生ェ……!」
俺は頭を抱えた。
『
だが、『虎葬』は完全にブラックボックスだ。名前からして虎型の式神だろうという推測はできるが、どんな技を使ってくるのか、そもそもどんな姿形をしているのかすら不明確の未知の式神。
未知。その言葉の響きに、少しだけ心臓が早鐘を打つ。
『認識漏洩』は俺のイメージを現実に上書きする力だが、イメージの元ネタが存在しない場合、一体何が出力されるのか? 俺の勝手な想像で補完されるのか?
それとも、この世界の「虎葬」という概念が勝手に形を取るのか?
「……これ、呼べるのか? 『認識漏洩』は俺のイメージが鍵なんだぞ? そもそものイメージが曖昧なものを具現化できるのか?」
「……まあ、名前からして虎っぽい奴でしょう。十種影法術のラインナップ的も基本獣系ですし。なんなら堀田さんの『虎といえばこうだろ』というイメージがそのまま反映される可能性もありますね。原作の正解がない分、自由度が高いとも言えますよ!」
「適当だなあ……。もしなんか変なの出てきたらどうするんだ」
「無意識的に他の式神と統一感が出るように想像する心理が働くでしょうし、手足が八本あるとか、ビームを撃ってくるとか、そういう逸脱したモノにはならないはずです。……たぶん」
「たぶんって言うな」
相田はそれだけ言うと、そそくさとカメラを持って岩場のさらに奥へと後退していった。
ヘッヘッヘと息を弾ませながら玉犬たちもそれについていく。
「おいコラ、薄情者! 見届けろよ!」
「記録係の安全確保は最優先事項です! 頑張ってください、我が君!」
そんな相田に俺は悪態をつきながら、バフを重ねていく。
そして準備が終わると、自分の両手を見た。影絵どうしよう。
「……猫でいいか」
虎はネコ科だ。俺が知っている影絵の中で、一番それっぽいのは「猫」の手遊びくらいしかない。
俺は腹を括って両手を組み、指を立てて耳のような形を作った。
タイガーマスクの覆面レスラーが出てきたら笑ってやる。
沈み行く夕日に照らされ、地面に猫の影が落ちてゆく。
「……
気合を入れて叫ぶ。
その瞬間、地面の影が沸騰するように揺らめき、漆黒の闇が膨れ上がった。
ズズズ……という重低音と共に、影の中から巨大な何かがせり上がってくる。
デカい。玉犬より一回り、いや二回りデカい。
体長は軽く3メートルを超えているだろうか。
闇が形を成し、鮮やかな色彩を帯びていく。
黄色と黒の縞模様。鋼のような筋肉。そして、凶悪な牙。
——現れたのは、紛れもない「虎」だった。
ただし、普通の虎ではない。
全身から蒼白いオーラを放ち、その四肢には鋭利な刃物のような爪が生えている。
そして何より、その瞳。
知性を感じさせるほどに冷たく、そして飢えた獣の眼光が、俺を射抜いていた。
「……グルルルルッ」
腹の底に響くような唸り声。
やはり、猫影絵で正解だったらしい。
あるいは単に俺の「虎であってくれ」という願いが通じたのか。
俺が変な事を考えていたら、変なものが出てきたかもしれない。
「……上等だ。来いよ、にゃんこ」
俺は杖を構え、挑発するように手招きした。
瞬間、虎葬の姿が掻き消えた。
「——ッ!?」
速い! 鵺の比ではない。目視できない速度だ。
俺の「知覚」が、右側からの殺気を感じ取る。
——ガキンッ!!
『
火花が散る。虎葬は空中で身を捻り、音もなく着地する。
反射ダメージを受けているはずなのに、怯む様子がない。タフだ。
「速さだけじゃない、重さも桁違いか……!」
バリア越しでも衝撃が伝わってきた。
もし生身で受けていたら、首が胴体とおさらばしていただろう。
こいつは今までの雑魚とは違う、魔虚羅の前座にふさわしい強敵だ。
「……
俺は杖を振り、雷撃を放つ。
だが、虎葬はそれを読んでいたかのようにバックステップで回避し、即座にジグザグ軌道で肉薄してくる。直線的な魔法では当たらない!
「なら、範囲で……
爆炎で周囲ごと焼き払おうとするが、虎葬は炎の壁を垂直に駆け上がり、頭上から襲いかかってきた。
空中を蹴って三次元機動だと!?
「くっ……!」
俺は反射的に「黒い霧」となってその場を離脱する。
爪が俺の残像を切り裂き、地面を抉った。
空中に退避した俺を、虎葬は見上げ、低く唸る。
そして——。
——カッッ!!!
虎葬の口から、衝撃波のような咆哮が放たれた。
物理攻撃だけじゃないのか!?
俺は空中で『
「いい度胸だ……!」
俺は空中で体勢を立て直し、杖を握り直した。
恐怖はない。アドレナリンが猛烈に分泌されているのだろう。
むしろ、このヒリつくような命のやり取りに、俺の中の何かが高揚しているのを感じる。
これが「戦う」ということか。
一方的な虐殺ではなく、互いの技と力をぶつけ合う闘争。
「面白い。……実験は終わりだ。本気で行くぞ」
俺は杖を高く掲げた。
単発の魔法じゃ当たらないなら、避けられない数と威力で押し潰すまでだ。
俺のMPは無限。弾幕勝負なら、負ける要素はない。
「
「
多種属性の範囲攻撃による回避不可能な飽和攻撃。
雷が、凍気が、炎が、衝撃が、暴風が、水撃が。
文字通り雨あられとなって虎葬へと降り注ぐ。
ズドオオオオンッ……!!
台地が揺れ、土煙が舞い上がる。
爆発が収まった後、そこには黒焦げになりながらも四肢を踏ん張って立っている虎葬の姿があった。
……まだ倒れないか。恐るべき耐久力だが、限界は近い。膝が震えている。
「終わりだ」
俺は着地し、とどめの一撃を放つために杖を向けた。
その時、虎葬が、ふっと力を抜いた。戦意喪失? いや違う。
その瞳が、俺を認め、静かに頭を垂れたのだ。
主として認める、という服従のポーズ。
次の瞬間、虎葬の体が溶けるように崩れ、俺の影の中へと吸い込まれていった。
脳内に、新たなパスが繋がる感覚。
「調伏完了」のシグナルだ。
「……はぁ」
俺は大きく息を吐き、膝に手を突いた。
勝った。正体不明の強敵を、力と技でねじ伏せた。
「お見事です、堀田さん! めちゃくちゃ派手でしたね!!! もうっ、最高に魔法使いって感じでしたよ!!!」
岩陰から相田が飛び出してくる。
その後を追って玉犬たちが楽しげに駆けてくる。
「いやあ、手に汗握る攻防でした! まさかあんなアクロバティックな動きをするとは……。でも最後は力技で押し切るところが、さすが我が君です!」
「うるせえ。……でも、リハーサルとしては悪くない相手だった」
俺は汗を拭い、充実感を噛み締めた。これで九体の式神が揃った。
戦いの感覚も、恐怖の克服も、最低限はこなせたはずだ。
俺は台地の中央、月の光が降り注ぐ場所に視線を移す。
最後の試練。最強の式神。
※※※
南米のジャングル、岩盤地帯。
夜の帳が下りた世界は、月光だけが照らす静寂のコロシアムと化していた。
俺は深く息を吸い込み、肺を満たす湿った空気の味を確かめた。
震えは止まっている。ここまでの九体との戦い——それは単なる通過儀礼だった。
ここまでの経験は、今、この瞬間のためにあったのだ。
「……準備はいいか、相田」
「いつでもどうぞ。この距離なら巻き込まれませんし、撮影アングルも完璧です」
数百メートル離れた岩山の頂上から、相田の声がインカム越しに届く。
彼も分かっているのだ。次に出てくる相手が、これまでの「猛獣」とは次元が違うことを。
万が一暴走すれば、このジャングル一帯が消し飛ぶかもしれない。
だからこそ、彼は最大限の距離を取った。
俺は杖を握りしめ、自身の強化魔法の状態を確認する。
『
さらに、『
完璧だ。これ以上の準備はないはず。
勝負は一瞬で決まる。
相手は適応能力を持つ怪物だ。長引けば長引くほど、俺の手札は解析され、無効化されていく。
最初の一撃。最大火力の一撃で、消し炭にするしかない。
俺は足を肩幅に開き、重心を落とした。
右腕を前に出し、その内側に左の拳を当てる。
原作で伏黒恵が見せた、あの死出の旅路への構え。
俺の『認識漏洩』が、そのポーズをトリガーとして、世界に新たな法則を書き込んでいく。
「……
祝詞が紡がれた瞬間、世界の色が変わった。
物理的な明度が落ちたのではない。世界を構成する彩度が、根こそぎ奪われたような感覚。
俺の足元から、インクをぶちまけたように漆黒の影が溢れ出した。
ジャングルの大地を侵食し、岩肌を塗り潰していくその影は、単なる光学現象ではない。
底知れぬ深淵への入り口だ。
影は生き物のように波打ち、その表面から、これまでに調伏した式神たちの幻影が次々と姿を現した。
玉犬の牙、鵺の翼、大蛇の鱗、満象の鼻。
彼らは実体を持たず、しかし確かな圧を持って主である俺の周囲に整列し、これから現れる「王」を迎え入れるかのように頭を垂れた。
そして。
影の中心、最も濃い闇の底から、何かが浮上してくる。
ギチチチチ……ッ!
空間がきしむ音がする。
現れたのは、白い布で幾重にも巻かれた、繭とも神宝ともつかぬ異様な塊だった。
周囲には結界のような糸が張り巡らされ、その存在を世界から隔絶している。
まだ、生まれていない。まだ、眠っている。
だが、その塊から漏れ出るプレッシャーだけで、周囲の木々が枯れ、小動物たちが息絶える気配がした。
俺は喉の渇きを覚えながら、最後にして最強の名前を呼んだ。
「——
言霊が解き放たれた瞬間、塊がドクンと脈動した。
張り詰めた空気が悲鳴を上げる。
バヂィン!! という破裂音と共に、巻きついていた布が弾け飛んだ。
内部から、圧倒的な質量を持った「絶望」が顕現する。
巨躯。身の丈三メートルはあるだろうか。
筋肉の鎧を纏ったかのような白い肌は、月光を浴びて陶磁器のような光沢を放っている。
背中から伸びる突起。眼窩から生えた奇妙な翼。
そして何より目を引くのが、頭上に浮かび、ゆっくりと回転する黄金の法陣だ。
禍々しくも神々しいその姿は、式神という枠を超えていた。
正しく「神将」。荒ぶる神の具現化。
魔虚羅が、ゆっくりと顔を上げた。
その瞳のない顔が、正確に俺を捉える。
「■■■■■■■■■——ッ!!!」
咆哮。言葉にならない、音ですらない衝撃波。
ただそれだけで大気が震え、俺の張っていた二重の反射結界がガラスのようにビリビリと共振した。
「ぐっ……!」
俺は恐怖に顔を歪ませた。
対峙した瞬間に理解させられる、圧倒的な死の予感。
生物としての格が違う。
虎葬の時のような「なんとかなるかも」という甘えは、一瞬で蒸発した。
こいつは、殺しに来る。
全力で、容赦なく、俺という存在を世界から消し去ろうとしてくる。
魔虚羅が右腕を振り上げた。
その前腕には、巨大な刃——『退魔の剣』が装着されている。
対呪霊に特化した正のエネルギーを纏った剣だが、俺は肉体的に人間だ。正のエネルギーだろうが何だろうが、物理的な斬撃として食らえば両断される!
「……来るッ!」
俺は杖を構えた。
恐怖で震える足を、地面に縫い付けるように踏ん張る。
逃げるな。目を逸らすな。
ここで逃げれば、俺は一生、何かに怯えて生きることになる気がする。
魔虚羅が踏み込んだ。
巨体に見合わぬ神速。岩盤を砕きながら、一瞬で間合いを詰めてくる。
振り下ろされた退魔の剣が、俺の鼻先数センチで、見えない壁に激突した。
——ガギィィィィィンッ!!!
耳をつんざくような金属音と、閃光。
俺の鼻先数センチの虚空で、止まっていた魔虚羅の剣。
見えない壁——『
退魔の剣は物理的な刃でありながら、
もし片方しか張っていなかったら、貫通されて俺は真っ二つだったかもしれない。
二重の守りがあったからこそ、この絶望的な一撃を凌げたのだ。
「……あ、あぶねぇ……ッ!」
——躱せなかった。
脳が警鐘を鳴らすよりも早く、俺の体は硬直していた。
『
だが、俺の心は動けなかった。魔虚羅が放つ圧倒的な殺気、神話的恐怖。それに呑まれ、金縛りのように足が縫い付けられていたのだ。
ズドオオオオォォ——!
反射された衝撃は凄まじかった。
魔虚羅自身の怪力とエネルギーがそのまま倍返しとなって襲いかかる。
巨体が一瞬浮き上がり、後方へと弾き飛ばされた。
——ガコンッ!
その瞬間、不吉な音が響いた。
魔虚羅の頭上で回転する法陣が、一つ回った音だ。
——適応。今の反射で、あいつは学習した。
「攻撃を反射する結界」という事象への適応。
次の一撃は、おそらく結界をすり抜けるか、あるいは中和してくる。もう守りは通用しない。
「……やるしかない!」
魔虚羅は空中に弾き飛ばされている。姿勢を崩している今が最大の好機だ。
だが、距離が近すぎる。ここで最大火力の魔法を放てば、爆風で俺自身も消し飛んでしまう。
まずは距離を取らなければ!
「
俺は杖を振り上げ、ハリー・ポッター系の「退け」の呪文を最大出力で放った。風圧でも衝撃波でもない、純粋な「吹き飛ぶ」という物理現象の書き換え。
不可視の巨大なハンマーで殴られたように、魔虚羅の巨体が弾丸のような速度で彼方へと射出された。
放物線を描き、数キロは飛んでいくであろう——はずだった。
——ガコンッ!
また、音がした。
空中で法陣が回り、魔虚羅の身体にかかっていた加速ベクトルが急激に減衰した。
「吹き飛ばし」への適応か、あるいは単純な耐久力か。
魔虚羅は空中で身をひねり、猫のように体勢を立て直すと、物理法則を無視して急ブレーキをかけたかのように200メートルほど先の岩盤に着地しようとしている。
「……化け物め!」
着地した瞬間、あいつはまた神速で距離を詰めてくるだろう。
適応された剣で、今度こそ俺を殺しに来る。
だが。200メートル。この距離なら——撃てる。
俺の最大火力、最大範囲の、あの魔法を。
俺の脳裏に、かつて河川敷で相田がふざけて提案した時の光景がよぎる。
『メギドラオンで更地にしてみますか?』
『何させる気だ、この馬鹿!』と一蹴した、あの会話。
……だが。
心のどこかでは、ずっと思っていたのだ。
ゲームの中で幾度となく敵を葬ってきた、あの神々しい光。
全てを無に帰す、万能の輝き。
もし、自分がそれを撃てるとしたら。
一度くらい、全力で撃ち放ってみたいと。
今ならできる。ここは無人のジャングル。巻き込む人間はいない。
そして俺の体には、『
条件は整った。俺は杖を両手で握りしめ、天に向けた。
全ての魔力を、杖の先端に収束させる。
「……食らいやがれッ!!」
俺は杖を両手で握りしめ、切っ先を着地寸前の魔虚羅に向けた。
認識のスイッチを全開にする。
ホグワーツの生徒としての枷を外し、破壊神としての回路を焼き切れるほどに回す。
異界から無尽蔵のエネルギーが流れ込み、杖がミシミシと悲鳴を上げる。
俺は、もはや恐怖など感じていなかった。
あるのは、男のロマンと、生存本能の爆発だけ。
魔虚羅がこちらを向いた。白い巨体が、地面を蹴ろうと沈み込む。
遅い。もう遅いぞ、最強の式神。
俺は、震える唇で、その名を呼んだ。
それは恐怖の叫びではなく、一種の歓喜の歌のように響いた。
口から自然と言葉が溢れ出すのは、あの有名な女性キャラクターの、恭しくも破壊的な台詞。
「メギドラオンでございますッ!!」
——カッッッ!!!!
世界が白く染まった。音すら置き去りにする閃光。
杖の先から放たれたのは、火でも雷でもない。純粋な魔力の塊、万能の輝きだ。
それは巨大な光の柱となって魔虚羅を飲み込み、岩盤を溶かし、夜空を昼間のように照らし出した。
遅れてやってきたのは、大地の悲鳴のような重低音と、全てをなぎ倒す衝撃波。
ズズズズズズズンッ……!!
万能属性。防御不能、回避不能、耐性無視。
あらゆる理屈をねじ伏せ、存在そのものを削り取る、究極の暴力。
属性相性など関係ない。耐性など意味をなさない。
全てを無に帰す、絶対的な破壊の奔流。
ズドォォォォォォォォォンッ……!!!
遅れて届いた轟音と衝撃波が、俺の体を揺さぶる。
『ラクカジャ』で強化していなければ、余波だけで吹き飛んでいたかもしれない。
光の中で、魔虚羅が何か行動しようとした影が見えた気がした。
法陣を回し、この攻撃にすら適応しようとしたのかもしれない。
だが、その適応が完了するよりも早く、圧倒的な熱量がその白い巨体を分子レベルで分解していった。
光が収束していく。
後に残ったのは、綺麗にえぐり取られた巨大なクレーターと、そこから立ち上る硝煙だけ。
魔虚羅の姿は、跡形もなく消滅していた。
そして、俺の足元の影が、満足げに揺らいだ。
調伏完了の合図だ。
「……よっしゃあぁぁぁぁぁ!!!」
俺は両手を突き上げ、星空に向かって吼えた。
勝った。最強の式神を、魔法の力でねじ伏せたのだ。
岩陰から相田がカメラを回しながら転がるように走ってくる。
玉犬たちもヘッヘッヘと楽しげに駆けてくる。
「見ましたよ! 撮りましたよ! メギドラオン! 本物のメギドラオンだ! あんな、あんな美しい破壊を……うおおぉぉぉん!」
「はっはっは! 見たか相田! これがメギドラオンだ!」
相田は俺に抱きつき、子供のように泣きじゃくった。
「貴方は最高だ! 魔王だ! 神だ! 僕の目は間違ってなかった!」
「ワンッワンッ!!」
「……いや重いっ、離れろ! 暑苦しいって!! あははははは!」
「一生ついていきます! いや、生まれ変わってもついていきます!」
「ワオーン!」
興奮のままに手を取り合い、ジャングルの真ん中で子供のようにはしゃぎ回った。その周り玉犬たちがくるくる回る。これで俺の手札に最強のジョーカーが加わった。
……まあ、ぶっちゃけた話。
こんな理不尽な適応能力と破壊力を持った化け物を使役して、現代社会のどこで、何と戦うつもりなのかと聞かれれば、返答に困るのが正直なところだろう。
街中で出せばパニック必至だし、重武装したテロリスト相手でもオーバーキルすぎる。
「まあ、ヒト型で怪力だし、サイズも調整できるみたいだから災害現場での瓦礫撤去とかには役立つだろ」
自分に言い聞かせるように呟いた。
魔虚羅に瓦礫撤去をさせる。なんとも罰当たりで贅沢な使い方だが、背中の法陣で「重さ」や「硬さ」に適応してくれれば、どんな重量物でも軽々と運んでくれるに違いない。
それに何より、影の中に「最強」が控えているという事実は、小心者のと俺にとって何物にも代えがたい精神安定剤となる。
「……結局のところ、『思いついて出来そうだから、やりたかったからやった』……それが一番の理由なんだよな」
「男の子ですからねえ。ロマンには勝てませんよ」
相田もまた、満足げに頷いている。
だが、二人の視線が足元——広大な台地の中央に穿たれた、直径数十メートルの巨大クレーターに向けられた瞬間、俺達の表情はスッと真顔に戻った。
「……で、これどうします?」
「…………」
元々はゴツゴツとした岩場だった場所が、今は綺麗なお椀型にえぐれ、底にはガラス化した土砂がキラキラと月光を反射している。
誰がどう見ても「隕石が落ちた」か「ミサイルが着弾した」ような惨状だ。
ここが人里離れたジャングルとはいえ、衛星にはバッチリ写るだろうし、こんな不自然な地形変動があれば調査隊が来るかもしれない。
そうなれば、「謎の爆発現象」として騒ぎになり、魔法使いの仕業だと特定されかねない。
「……直すか」
「ですね。証拠隠滅は完璧にお願いします」
堀田はため息をつきながら杖を構えた。
本来なら土木工事レベルの大作業だが、今の彼には頼れる「味方」がいる。
「
堀田が命じると、影から再び白い巨人がヌッと現れた。
先ほど消し炭にしたばかりの相手をこき使うのは気が引けるが、背に腹は代えられない。
「いいか、これから俺が魔法で土を盛るからお前はそれを均して、元の地形っぽく整地しろ。……できるな?」
魔虚羅は無言で頷いた、ような気がした。
そして、法陣がガコンッ! と回り、彼は土木作業への適応を開始した。
使役開始から初の適応がこれである。
「……
堀田が杖を振ると、周囲の土砂や岩石が浮き上がり、クレーターの中へと雪崩れ込んでいく。
魔虚羅はその怪力と退魔の剣の腹部分を器用に使って、土を固め、岩を配置し、見る見るうちに穴を埋め戻していく。
その動きは、破壊の化身とは思えないほど繊細で、そして迅速だった。ガコンッ! ガコンッ! 方陣が回るたびにその動きは恐ろしい速さで洗練されていく。
身振り手振りで土砂の移動場所にまで注文を付けてくるようになった。適応能力、恐るべし。彼はあっという間に「ベテラン現場監督」へと適応してしまったのだ。
「おお、すごい……。これなら割とすぐに終わりますね」
「便利だな、こいつ……」
堀田は複雑な表情で、黙々と整地作業に従事する最強の式神を見つめた。
かくして、南米の秘境に刻まれた「メギドラオンの爪痕」は、魔法使いと式神の共同作業によって、何事もなかったかのように修復されたのだった。
これにて、まこーら調伏のお話は終了です!
堀田くんが魔虚羅倒せるとしたらメギドラオンで消し飛ばすのが唯一の方法だと思います
多分、アヴァダ・ケタブラも通る気がしますが、あれあんまり速くないのでそもそも命中させられる気がしません、なのでメギドラオンにより広範囲を、さらに浮いているという回避が困難な状況で確実に消し飛ばすしかないと思います
そして何手もかけるとどんどんとこちらの首が締まっていくので、速攻をかける必要がある
堀田くんも割とぎりぎりだったと思います
さて今後は十種影法術を利用した活動が始まる事となります
実際魔虚羅の利用シチュエーションを考えると夢が広がりますよね
芥見先生がモジュロの作画オファーするときに「魔虚羅出るんスよ!」で押し切れた理由がわかりました
魔虚羅ってだけでなんかワクワクします
まあこの作品で魔虚羅がバトるのは多分この話で終わりなんですが