謎の一般通過強者面したい転生者と特異点幼女の勘違い戦線   作:蓋然性生存戦略

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新作です。
どうぞ良しなにお願いします。


1:Q・謎の一般通過強者面をするのに必要な要素は A・運

「お、来たね。ボクは神様代行、元人間さ」

 

「ま、こういうプロローグは、ぱぱっとやっちゃうほうがウケがいい」

 

「まず最初に、キミの住んでいた地球は2025年に滅んだ。文字通り人類全滅だ」

 

「次に、その原因はボクです。色々とあって地球が巻き添えになりました、ごめんね」

 

「最後に、輪廻転生の輪から弾かれちゃった地球の魂がいくつかいて、そのうちの一人がキミ」

 

「まあ色々なお詫びも含めて、キミが望むなら強くてニューゲームができるけど、どうする?」

 

「美少女に生まれ変わって悪の組織と勘違いされる一般通過強者枠がやりたいって?」

 

「良いよ、それができるだけの素質を付けよう。あとはキミの努力次第だけど」

 

「好きに生きると良い。何ならヴィランだって構わない。ボクは管理者代行であって調停者じゃないからね」

 

「ボクの愛した世界を彩ってくれるというのなら、大歓迎さ」

 

「まあ尤も、あまり大暴れしないでくれると、嬉しいけどね」

 

 

 


 

 

 

ということが産まれる前にあったのが、この私、黒燈(コクトウ)ヤヨイ、アセリア・ニューオート産まれ、15歳です。

月日というものはあっという間で、15年もの時間が簡単に過ぎてしまいました。

勉学と鍛錬とゲームに勤しむ毎日。

我ながら充実していましたね。

 

さて、そんな私ですが、無事に中学を卒業しまして。

晴れて高校生ということになるのですが。

特にヒーローを目指したいわけでもないのでそういった方面の高校には入りません。

ただ『悪の組織の一員だと勘違いされる一般通過強者枠』になりたいだけですので、私にはそういった育成環境は必要ありません。

なので高校は通信です。

課題を提出して時折学校に顔を出して、そのほかは趣味に費やす。

それだけでいいのです。

 

必要なのはそう、天運。

 

街の暗闇で起きる暗闘に遭遇するだけの天運。

必要なものはそれだけですが、たったそれだけが手に入らない。

 

この国は平和でした。

ヒーローたちの尽力により、平穏が保たれているのです。

まあ平和な分には結構なんですが。

私の本懐が果たせないというか。

 

しかし、そんな私にも、とうとうツキが回って来たようで。

日課の裏路地徘徊をしていたところ、どうにも喧騒が奥から聞こえてきました。

そろりと様子を伺えば、ギャングとヒーローが交戦中でした。

しかもヒーローは背中に誰かを庇っていますね。

5歳くらいの女の子のようです。

ふぅむ。

どちらに加勢しましょうか。

なんて。

 

私は一般通過強者枠なので。

そう、一般人なのです。

であればヒーローに協力するのが筋というものでしょう。

そもそもヒーロー一人に対してギャングが十数人とは。

アンフェアですよ。

 

「《黒き猟犬(オルトロス)》、行きなさい」

 

影から双頭の猟犬を複数召喚して、ギャングに襲い掛からせます。

私はフィジカル自体はクソ雑魚ナメクジですが、異能だけはやたらと強いのです。

所詮ギャング程度の戦力など、猟犬を数体出すだけで鎮圧できます。

 

「さて……多勢に無勢とみて介入しましたが」

「いや、助かったよ。俺一人じゃこの子を連れて逃げ切れなかったからな」

「その子は?」

「救出対象だ。麻薬カルテルの違法実験の被害者でな」

「であればこの場は任せていただいても?人命救助が優先でしょう」

「すぐに応援が来るはずなんだ、一緒に……」

「あの程度に後れは取りませんが……まあ良いでしょう。猟犬たち、くれぐれも殺さないように。半殺しですよ」

『『『バゥ!!』』』

 

ただのギャングかと思っていましたが、麻薬カルテルでしたか。

路地裏徘徊の時は顔を隠すよう徹底していてよかったです。

眼を付けられては困りますし。

体型をある程度隠す黒尽くめの服に、黒い仮面。

これらは私の武器であると同時に防具でもありますから。

 

「天運はどこまで巡るのか、楽しみですね」

 

 

 


 

 

 

麻薬カルテルの違法実験場の摘発。

制圧班と救出班に分かれて決行されたそれに、俺は救出班で参加していた。

というのも、俺はまだヒーロー育成校の見習いだからだ。

本来なら、俺に仕事が回ってくることはないはずだったんだが、どうにも今連れている子供は特別なようで、死ぬ気で取り戻そうとしている。

どうにか戦線からは離脱したが、守るので手一杯で逃げることもままならない状況に陥ってしまった。

幸いにも、俺の異能は対多数向け、それも防衛向きだったので耐えられたが、このままではジリ貧だというのも自覚していた。

即座に応援要請はしたが、果たしてそれまで保つか。

 

そんな時に、その漆黒は現れた。

黒のセーラー服に、膝丈まであるダボっとした黒いコート。

顔を隠す仮面まで真っ黒で、黒くない部分は肌と銀色の長髪だけだった。

 

「オルトロス、行きなさい」

 

初めは、敵の増援かと思った。

声からして女性であろう漆黒は、自らの影から双頭の怪物を生み出し、襲わせた。

だが、その矛先は俺ではなく、カルテルの構成員だった。

彼女は混沌に陥った戦場を悠々と横切り、俺の前までやってきて、こう言った。

 

「さて……多勢に無勢とみて介入しましたが」

 

言外に『余計なお世話だったか?』と問うてくる彼女。

実際問題、やられるのは時間の問題だった。

俺は素直に礼を言うことにした。

 

「いや、助かったよ。俺一人じゃこの子を連れて逃げ切れなかったからな」

「その子は?」

「救出対象だ。麻薬カルテルの違法実験の被害者でな」

「であればこの場は任せていただいても?人命救助が優先でしょう」

 

彼女は、状況を把握すると、そう言い放った。

確かに、彼女なら可能だろう。

だが、現状彼女は推定ヴィランである。

そもそも資格なしの人間がここまで異能を操れるのは基本的に無い。

なぜなら捕まるから。

故に、彼女は隠れて異能を鍛えていた可能性が高く、そんなことをするのはたいていヴィランである。

手を貸してもらったとはいえ、そう簡単に任せるわけにはいかない。

 

「すぐに応援が来るはずなんだ、一緒に……」

「あの程度に後れは取りませんが……まあ良いでしょう。猟犬たち、くれぐれも殺さないように。半殺しですよ」

『『『バゥ!!』』』

 

だが、彼女は渋る俺を横目にカルテルへと向き直った。

誰が来ようが問題ないと判断している様子だ。

俺は自分と女の子を守ることを優先し、応援を待ち……。

 

「天運はどこまで巡るのか、楽しみですね」

 

カルテルの構成員を一掃した後、彼女は確かにそう、呟いていた。

俺はなぜか確信した。

これは、何かの始まりでしかないことを。

 

「さて、私はこれで」

「待ってくれ。なんと呼べばいいか聞いていない」

「名、ですか。そうですね。『ノクトレス』とでも名乗っておきましょうか」

 

くすくすと笑って彼女は、ノクトレスは消えていった。

自らの影に飲まれるように、漆黒がぐにゃりと歪んで彼女を飲み込み、その跡には何も残らなかった。

 

 

 


 

 

 

ああ、楽しかったですね。

初めての実戦で緊張しましたが、案外なんとかなるものですね。

そもそもの前提として、私の異能は強いという話なのですが。

私の異能は《黒の裁定者(ブラック・ルーラー)》。

黒っぽいものの性質とかを書き換えることができる能力です。

ちょっと言ってる意味がわからないですよね。

まあ私も最初はよく分かりませんでした。

ただ、これの真価に気付いた時、私は最高にテンションが上がりました。

色の分類が『黒』の物体、及び現象に対して、全く別の性質や属性、ルールを付与及び変更することができます。

これによって、私は自分の影から、言うことを聞いてくれるモンスターを呼び出したり、影をワープゲートに見立てて瞬間移動することができます。

これは影に限らず、黒っぽいものであれば私は干渉できます。

 

そしてここからが本題なのですが。

元々の物体、及び現象が強大なものであればあるほど、できることのキャパシティが増えます。

そう、より強力なことができます。

ちなみに今のところ一番強いのは夜空ですね。

アレはヤバいです。

夜の私は無敵と言っても過言ではありません。

 

まあともかく。

元々の異能が強いので、そうそう負けることはありません。

その代わり、運動神経は並程度しかありませんが。

力の代償ですね。

 

さて、ネットニュースでも見ましょうか。

 

『本日行われた《ガーディアンズ》による違法実験施設の摘発ですが―――――』

 

おや、ちょうどニュースになっていますね。

 

『件の実験施設では異能を一時的に引き上げるブーストドラッグの違法実験が行われていたもよう。被害者は全員救助されており、順次送還される予定です』

 

ブーストドラッグですか。

私には無用の長物ですね。

なにせ元から強いので。

そういえば、あの女の子はどうなったのでしょうか。

まあ、私の管轄ではないのでどうでも良いと言えばどうでも良いのですが……。

 

『また、ヴィランと思われる強力な異能を持った人物も確認されており、これに対し《ガーディアンズ》は声明を発表。《ノクトレス》と名乗ったその人物の目撃情報を求めているとのことです』

 

おや。

実質指名手配ですか。

構いませんよ。

《ノクトレス》として活動しているときと普段では、姿が異なりますからね。

そもそも私、本来は黒髪ですからね。

裏面を黒くして私の意思以外では絶対に外れないカツラを被ってるだけなんですよね。

 

余談ですがカツラはお手製です。

実は色も弄れるんですよね。

黒から変えた瞬間異能の対象外になりますけど。

 

というわけで、普段の姿で捕まるわけもなく。

仮面をしているので顔バレしているわけもなく。

移動の痕跡もワープなので残っているはずもなく。

私は産まれた瞬間から異能を隠して生きているのでバレるはずもなく。

控えめに言って完璧な隠蔽工作です。

 

「ふふふふ……さぁて、ここからですよ」

 

と、思っていたのですが。

 

「みつけた。たすけて、ノクトレスおねーちゃん」

 

数日後。

街中を普段の姿で歩いていたのですが。

先日ヒーローが守っていた少女に見つかりました。

銀髪碧眼の端正な顔立ち。

忘れるはずもありません。

面倒だな、と思って誤魔化そうと思ったのですが、どうにも私が《ノクトレス》だと確信しているようなので諦めました。

ひとまず、私は急いで人気のない場所に移り、少女を連れてワープで家に戻りました。

 

「さて、ノリと勢いで連れ帰ってしまいましたが……何故私が《ノクトレス》だと?」

「ノクトレスおねーちゃんのいろ、おぼえた。まっくろだけど、きれいであたたかい」

「参りましたね、常人とは異なる理屈で動く子でしたか」

 

とりあえず何故私だと分かったのかは理解しました。

普通ではない子ということで納得しましょう。

 

「まあともかく。貴女のお名前は?」

「クロマ」

「クロマちゃんですね。それで『たすけて』と、言っていましたね?なぜ私なのですか?」

「みんな、いやないろ。つめたいか、きれいじゃない」

「要領を得ませんね……」

 

まあ、懐かれたということにしておきましょう。

しかしどうしたものでしょうか。

ヒーローのところからも逃げ出してしまった以上、このまま帰すのも何かおかしいですし……

恐らく匿うしかないのですが、これでも普通の学生の身なのですよね。

仕事三昧でロクに帰ってこない両親のせいで、ほぼ独り暮らしですが。

衣食住問題ないレベルで何とかできますが。

それはそれとして困るのですよ。

主に外出が。

5歳児くらいの子供を一人にするわけにはいきませんし。

 

「クロマちゃん」

「ん」

「イメチェンしましょう」

「いめちぇん?」

「今日から貴女は妹です」

 

そこで私は名案を思いつきました。

髪の毛染めれば似てない姉妹に出来るのでは?と。

幸い、私も碧眼なんですよ。

 

 

 


 

 

 

「脱走しただと?」

「はい……」

 

ニューオート、《ガーディアンズ》本部。

かつてここは、世界を救ったヒーローたちの総本山であったが、100年以上もの長い年月を経て、腐敗が進んでいた。

過去の英雄たちがこの惨状を見れば、即座に血の粛清が行われただろう。

尤も、それができるのはもはや二人しかおらず、その二人も表社会に関与することはなくなった。

腐敗は進み続け、一部の上層部は反社会勢力と繋がっている始末。

未だまともなヒーローは多いが、それでも半々と言ったところだろう。

 

「あの特異点の重要性は分かっていような?」

「無論です」

「ならばなんとしてでも連れ戻せ。我々の計画にはあれが必要なのだ」

 

そんな本部で、二人の男、上司と部下は密会を続ける。

特異点。

それは、ある少女を指す言葉だった。

 

クロマ。

クロマ=サイカ。

 

貧困が深刻な地域から集め、もとい拉致及び売買された、子供のうちの一人。

彼女はある実験の唯一の成功例だった。

しかし、それゆえに常人とは異なる感覚を有し、年齢不相応な知能を持ってしまった。

そのため、クロマという少女はヒーローやカルテルを欺き、唯一信を置けると確信した存在、《ノクトレス》の元へと身を寄せた。

この密会を行っている者達も、《ノクトレス》という第三者が属する組織に身を寄せたのだろうと予測を立て、動き出している。

 

尤も、その《ノクトレス》という存在は、ただ自分が望むロールプレイをしたいだけのボケナスなのだが。

趣味に全力を出すだけの一般通過女子高生なのだが。

その事実は、実際に接触したクロマにしか分からない事であった。

 

また、彼らは夢にも思っていなかった。

まさか、《ノクトレス》もクロマ=サイカも、ニューオートでのほほんと過ごしているなど。

ロープレのために変装の達人と化した《ノクトレス》が、クロマを完璧に仕上げてしまったことなど。

もはや、物理的な手段では見つけることは不可能だなどと。

彼らは、夢にも思っていなかったのである……。




・黒燈ヤヨイ
敵組織に間違われる謎の一般通過強者面がしたいだけの女子高生。
頭の良いバカの美少女。
強靭なメンタルを持つ狂人。
恐らく本作時間軸では最強格。
クロマと出会ってドキがムネムネしている。

・クロマ=サイカ
麻薬カルテル実験被検体成功例な感じの不思議ちゃん。
APPとINTとPOWがカンストしている幼女。
厄ネタ、異能だけで言えば主人公よりヤバイ。
善の子なので純粋に人生をエンジョイしているだけのヤヨイが一番安全だと判断した。
ちなみに混ぜるな危険である。
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