謎の一般通過強者面したい転生者と特異点幼女の勘違い戦線 作:蓋然性生存戦略
本格派タワーディフェンスゲーム、アークナイツ!
周年イベント『墟』、開催中!!
このゲームはいつ始めても遅いからいつ始めてもいいんだぜ!!
なお、当ゲームのストーリーは救いようがないレベルで陰惨ではある。
それでも作者はハッピーエンドが好きです、信じてください。
クロマが口をきいてくれません。
眼も没収されてしまったので、どうして機嫌が悪いのかのヒントも得られません。
何か失敗してしまったのであろうことは分かるのですが、なにに失敗したのかサッパリ見当がつきません。
困りました。
「ということでして」
「《ノクトレス》、お前一応人間だったんだな……」
「随分と失礼な物言いなのは自覚されてらっしゃいますか?私も人間ですし、アセリアに国籍を持つ一人の一般女性ですよ?」
「一般女性はヒーロー諸共ヴィランを殴ったりしねえんだよ」
まあそれはそうですが。
第三者的にはどちらにも敵対しているのが理想的というか。
やはり一般通過強者面は丸ごと焼き払ってこそですし?
「まあともかくとして。相談に乗って欲しいのですが」
「とは言ってもな。ここには仕事人間しかいないから幼い子供の気持ちなんぞ分らん奴しかいないぞ」
「藁にも縋る思いという奴ですが、確かに聞く相手を間違えていましたね」
「《ノクトレス》、お前もまあまあ失礼だぞ」
私は前世も今世も一人っ子ですが、弟妹に嫌われるというのは堪えるものがあります。
口もきいてもらえないのは、流石に傷付くのです。
まあ、多分、原因は私にあるので、私が自ら気付くのが理想なのでしょうが。
生憎と、私は機微に疎いもので。
お手上げというのが現状です。
それに、心理というものは難しいもので、常に流動的ですから。
「まあ、《レプリカンスペィド》関連の報告は済ませたので、これで失礼します」
「ああ。近々、大捕物がある。三日後にまた赴いて欲しい」
「分かりました。覚えておきましょう」
とりあえず、報告は済みました。
あとはクロマのご機嫌を取らなければ。
影の中に沈み、《星夜月》に帰ります。
「戻りました」
「おう、おかえりぃ。どやった?」
「近々大掛かりな強制捜査が入るようですね。恐らく助力を願われるものかと」
「せやろなあ。データ見た感じ、《レプリカンスペィド》とかいうヒーロー、やたら強いねんな」
「流石は現No1と言ったところです。策を練らねば負けてしまいますね」
「策を練れば勝てるんかいな」
「勝てはしませんよ。殺害も視野に入るのなら何とかならないこともないとは思いますが、治安維持組織との共闘ですからね、一応は捕縛の方が良いでしょう?そうなると流石に難しいです」
「嬢ちゃんな、それが異常だってことを自覚したほうがええと思うで」
「失礼な、ちゃんと自覚はしておりますよ。それはそれとして実行しているだけです」
「尚更アカン奴やろそれ。まあ世話になっとる身やし、これ以上とやかくは言わんとくけども」
うーん、エイリアンという割にはかなり良識的なことを言いますね。
いえまあ、高度に発達した文明ならば、良識も似通うのでしょうか。
深層は闇の中ですね。
「で、嬢ちゃん。クロマちゃんと仲直りはできたか?」
「できてると思います?いつもなら出迎えに来てくれてるのに今回は無いんですよ?」
「お互いだーいぶ絆されとるなあ……まあそれはともかくとして、や」
「はい」
「おっちゃんも言うて若いからな、あんま偉そうなこと言えへんけど、ちぃとアドバイスや」
おや。
ジンさん、何かお分かりで?
「嬢ちゃん、一個失念しとると思うんやけど」
「なんでしょう」
「クロマちゃんがどれだけ賢いと言うてもな、嬢ちゃんの半分も生きとらん幼女なんよ」
「あっ……」
それは、確かに。
失念していたかもしれません。
「なまじ話が通じる分、忘れとったやろ。嬢ちゃんみたいに割り切りができるわけないんよ。そもそも嬢ちゃんはその年頃にしては割り切りが出来過ぎや。同年代でも結構差があって苦労したんとちゃう?」
「うっ……」
どうして私のここ15年の人生の苦味を見通しているんですか。
確かに、同年代の女子とテンション感が異なることでそれなりに苦労していましたけども!!
「それを踏まえたうえで言うで。クロマちゃんに期待しすぎや」
「はい……」
「クロマちゃんの事情も加味したらな、そりゃ嬢ちゃんが悪いわな。あの子からしたらちゃんと信用できる初めての人間やで。それが自分を騙すような形で自分を守ってたらどう感じると思う?」
「うっ……はい……」
「まあクロマちゃんも賢いからそこは理解しとると思うよ。けどそれと感情はまた別やと思わんか?」
うっ、うっ。
言われれば理解できます、できますとも……。
私だって言われて分からないほど愚かではありませんから……。
「あとな、二人きりで出かけるってのにドローンで出てくるのは人としてどうかと思うんよ」
「はい……」
「これ割り切れるんは相当中身が熟成しとらんと無理やで。クロマちゃんにそれ求めるんは酷やろ」
そうですね、はい……。
誠心誠意謝ろうと思います……。
ここは由緒正しき土下座しか……。
「分かったら謝って来ぃ。仲違いはようないからな」
というわけで。
「すみませんでした、私の配慮不足です」
土下座です。
どれだけ正当性があろうと、クロマを傷つけたことには変わりありません。
理由も分かったのなら誠心誠意謝るのみです。
「……」
「信頼を裏切るような真似をしました。私の落ち度ですし、そこに弁解の余地などありません。可能な限りの償いをするつもりです」
「……ん、ゆるす。きょういちにち、おねーちゃんはわたしのいいなり」
「それで良いのであれば」
「ん、だっこ」
「はい」
私が分かってないのが一番のお怒りポイントだったのでしょうね。
案外すぐ許されました。
「ん……すぅ……」
「え、ちょっと待ってくださいクロマ、腕の中で寝るのはちょっと、あ、腕が……」
と、とりあえずベッドまで運びましょうか……。
私の筋力と体力は平均以下なのですが、保つでしょうか……。
目を覚ますと、ベッドの中にいた。
おねーちゃんはベッドに運んでくれたみたいだ。
視線を動かせば、デスクに向かって作業をしているおねーちゃんがいる。
「おや、目覚めましたか。おはようございます」
「……おはよ」
私の身動きの音で気付いたのか、おねーちゃんは振り向いて挨拶してくれる。
たったそれだけの言葉が、とてもうれしい。
本当は分かっている。
おねーちゃんが私を守ろうと最善の手を打っていることくらい。
分かってはいるのだ。
私の理性は年齢不相応に活性化しているから、おねーちゃんの行動が正解だということは理解できるのだ。
けれど、それ以上に感情に振り回されている。
その自覚がある。
おねーちゃんに想定以上に依存している。
その自覚もある。
最初は、一番無害そうだから選んだだけだった。
でも、存外居心地が良くて。
おねーちゃんは私を家族として扱ってくれて。
でも、やっぱり本人が来てくれなかったのは、悲しかった。
悔しかった。
実の母親に売られた時に、色々と諦めたハズなのに。
冷めた心に、また火がついた。
欲しい。
家族が、この暖かさが。
そして、おねーちゃんが欲しい。
私は欲張りだ。
おねーちゃんを私だけのものにしたい。
きっとこれは吊り橋効果と呼ばれるものだとは分かっているけれど。
これが恋と呼ばれるものなのか、今だけの独占欲なのか。
それは分からないけれど。
「どうかしました?」
「ううん。なんでもない」
おねーちゃんは鈍いから、きっとおねーちゃんに聞いても答えは得られないだろう。
これは、私が自分で見つけるべき課題だ。
「おねーちゃん、きょうはオムライスがいい」
「分かりました、仰せのままに、お姫様」
「ん、よきにはからえ」
「どこでそんな言葉を覚えたのですか……」
けど、今は、今だけは。
自分の内に燻る種火から、目を逸らす。
「おねーちゃん」
「?」
「だいすき」
「……?私もですよ」
答えを出すのは、今でなくたっていいのだから。
「エドモン。都合できた戦力は?」
「総勢100名。内半数は外部からの干渉の妨害に使います」
「実質50か。奴がいる以上は苦しいな……」
異能情報局第零課。
その本部では、局長を筆頭として、幹部等が勢揃いしていた。
《ガーディアンズ》上層部の腐敗を強制捜査するための、最終作戦会議の場ゆえ、当然と言えば当然なのだが。
「かの英雄を除き、最強とされる武闘派ヒーロー、《レプリカンスペィド》。その実態を知ると滑稽ですが……実力は笑えませんね」
「近付ければ私が相手するけど?」
「シスイさんの腕は知っていますが……」
「アクセル。《ノクトレス》への協力要請はどうなってる」
「待て、外部の人間を頼るつもりか?」
「いやいやツキトさん無理ですよ。使える戦力ケチってどうにかなる相手じゃないっすよ?」
「強制捜査の話は通してあります。もうじき来るかと」
「おや、随分と人が多いですね。それに……ふふ、奇妙なものですね?」
今日その場には、一人の外部協力者が現れる。
「遅刻でしょうか?」
「いいや、今始まったところだ。そこの男には事後報告で色々聞いている。今は協力関係だとも」
「独断先行だったんですか?思い切ったことをしましたね。《ノクトレス》と申します、皆様お見知りおきを」
仮面を外した状態の、《ノクトレス》が。
「何をやっとるんだヤヨイ~~~~~~!!!」
「なんでそっちからこっちに来ちゃうのよ!!」
「職場の所属を明かさなかったのはお二人でしょうに!!」
などとひと悶着あったりした。
それはともかく。
「ゴホン。期せずして正体不明の存在の身元が判明したわけだが」
「まあそんな気はしていたので敢えて被らなかったのですが。現状決まっていることを教えてもらえますか?」
「人員100名。内半数は外部干渉を妨害する役目であるため、50名と君で内部に突入することになる」
「ふむ」
「現状確認できている相手方の戦力は《レプリカンスペィド》をはじめとして、裏社会のならず者も複数確認されている。真っ当なヒーローはリストアップしており、口が堅く信用できるものには既に通達してある」
「その信用は確実ですか?」
「無論だ。何せこちらから出向している人員だからな」
「それはなにより」
「それで、私のポジションはどこになりますか?」
「残る50名の内、約2割、つまるところ10名ほどが《レプリカンスペィド》の対応に追われるだろう。君はそこに加わってもらいたい」
「大役ですね。かの者にはお世話になりましたから、お礼をと思っていたところです。渡りに船、というものでしょう」
「好戦的だな、存外」
「ふふ、そうでなければ私の今までの行動は成り立たないでしょう?」
「ところで、あの方の対応にはどなたが?」
「シスイとツキト、それから二人の直属の部下になる」
「……絶妙にやり辛いですね。一応プロファイルを貰っても?」
「何を懸念しているか分かるから言っておくが、全員君の見知った顔だ」
「これ逆に問題になりませんか?とくにそこの二人」
「公私は分ける。それができなければこんな仕事務まらん」
「そうよ。見くびらないで頂戴」
「ほぼネグレクトの二人が言うと説得力が違いますね」
「「うぐっ……」」
「まあ、それができる人材の集まりということで納得しておきましょう。ねえ、原因の職場の皆様?」
「「「「「(目逸らし)」」」」」
「それでですが、決行の日はいつになりますか?」
「すでに準備は進んでいる。明日にでもと言ったところだ」
「そうですか。日程は任せますが、明日は勘弁してもらいたいですね」
「何故だ?」
「妹を遊園地に連れてく約束があるので」
「暢気だなぁ!?」
時は、刻一刻と、進んでいる。
それは何も、ヤヨイたちだけではなかった。
作者はハッピーエンドが好きですが。
最終的にハッピーエンドならいくらでも曇らせて良いとは思っています。