謎の一般通過強者面したい転生者と特異点幼女の勘違い戦線   作:蓋然性生存戦略

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ンィーが広まりつつあるエンドフィールドくんをプレイしています。
しばらくいません。


7:Q・Signal Lost A・404 Not Found

「動くな」

 

さて。

状況を整理しましょう。

クロマと約束した遊園地に一緒に赴いたところ。

なぜか折よくテロが起きました。

しかもただのテロではありませんね。

よく訓練されたテロリストたちです。

約数十名。

数えたところ50は超えていますね。

さらに不味いことが一つ。

私、表向き死んだことになっているので、出てきちゃうと《レプリカンスペィド》の出現率が上がってしまうんですよね。

流石に無策で呼び出したくはないです……。

と言うわけで、テロが発覚した時点で身を隠してるんですが。

 

「おねーちゃん……」

「流石に多勢に無勢と言いますか。猟犬たちを放っても被害が出るでしょうし、安全を考えるのであればコレが一番です」

「ん……」

「しかしここで逃げては一般通過強者としての名が廃ります。頑張りますよ」

 

逃げっぱなしも癪ですからね。

スピーディにやって見せましょう。

タイムリミットは3分。

RTAを始めましょう。

 

「クロマ、台無しになってしまいましたが、一緒に踊りませんか?」

「ん!」

 

それにはクロマが必要ですからね、一緒にパーティと洒落込みましょう。

 

「本邦初公開です……《界起現証(かいきげんしょう)夜々狼襲月翳天(ややろうしゅうげつえいてん)》」

 

《星夜月》を(ひろ)げて、私に圧倒的に有利な領域を作り出します。

この内部では私の攻撃はどこからでも発生し、どこからでも当てることができます。

他にもいろいろできます。

私の黒の眷属たちも蔓延り、油断を許さない状況を作り上げます。

そこ、領◯展開のパクリとか言わないように。

固有◯界のパクリとかも言わないように。

フィールドマジックはどうしたって似てしまうでしょう。

だから仕方ないんです。

それに私、引き摺り込む相手は選びますよ?

 

「なっ?!」

「これは……!」

「推定《ノクトレス》!やはり生きていた!!」

 

おや。

となると私たちを狙った犯行でしょうか。

イゼロの方は違うでしょうし……顔が売れてない警察の汚職部隊、もしくは裏社会のエリート。

ふむふむ、絞り込めそうですね。

 

「私が狙いだと言うのなら私だけを狙えばいいというものです。それすらできないあなた方は二流三流と呼ばざるを得ませんね。無辜の民に危害が及ぶのは私の望むところではありませんので、釣られてあげましたが」

 

全く。

悪役の美学というものはないのでしょうか。

まあ期など待していませんが。

 

「私があなた方に贈るのは蹂躙です。ただ敗し、膝を突き、頭を垂れなさい。それがあなた方にできる、唯一の行動です」

「っ、各員!散開!!」

 

武装は銃。

それもアサルトライフルの類ですね。

サブマシンガンにしては全長が長いですし。

まあ、細かい銃種は分かりませんが、ライフルなら弾速と命中精度、そして貫通力が高いことでしょう。

この世界は異能なんてものがありますが、銃器に余裕で対応できる人間は限られています。

場合によっては、無能力者で構成された部隊で鎮圧されることもしばしば。

 

まあ何が言いたいかというと、この異能溢れる世界でも、銃器というものはちゃんと脅威だということです。

なので、《星夜月》の隔離領域に引きずり込む必要があったんですね。

 

「ひとつ。銃器の使用を禁ず」

「撃て!!」

 

銃声は聞こえません。

発射炎も見えません。

銃口から鉛玉が放たれることもありません。

 

何故ならば、銃というカテゴリのアイテムは、今この瞬間、使えなくなったのですから。

 

「どうした……っ!?トリガーが、動かない!?」

「この夜の中では、私はある程度ルールを課すことができます。まあ尤も、自分も影響を受けてしまうのが難点ですが」

 

今この瞬間、私も銃器を扱えません。

ですが問題は無いでしょう。

道具というのは短所を補うためのものであり、銃器を扱うということは異能も大したことが無いという証明でもあります。

つまり!私の勝利は揺るぎないものとなりました!!

何故ならここには私とクロマだけではないのですから!!

 

「半殺しで良いでしょう。眷属たち、任せましたよ」

『『『Grrrrrr……』』』

 

私の眷属は、負けることはあっても死ぬことも消えることはありません。

某冠位人形師も言っていました。

 

怪物は正体不明でなければならない。

怪物は不死身でなければならない。

怪物は喋ってはならない。

 

つまりはそういうことです。

 

「な、なんだこいつら、殴っても殴っても……!!」

「クソ、異能で殺しても……!!」

 

正体不明の不死身の怪物が大挙して襲ってくるのです。

ひとたまりもないでしょう!!

いやぁ!素晴らしい!!

実戦投入は初めてですが良いですね!!

これを私の必殺技その1としましょう!!

今まで通常技(当社比)で戦ってましたからね、それもまた一般通過強者面として悪くありませんが、やはり圧倒するような必殺技が無いと!!

 

「《ルクスレス》、危険な存在は?」

「みえない。だいじょうぶ」

「では、意識を奪った後は監獄にでも入れて、あとでイゼロの皆さんに引き渡しましょう。全く、せっかくの遊園地だというのに台無しです」

「……ん、そのとおり」

 

 

 

 

なんて。

 

 

 

浮かれていたのがいけなかったのでしょうか。

私はそれに気付けませんでした。

クロマもまた、そのあまりの速さに気付けなかったのでしょう。

 

気が付けば、私は遊園地の建造物の壁に身体を打ち付けられていました。

 

「がッ……ハっ!?」

「おねーちゃん!?」

 

なぜ?

領域の内部からなぜ追い出されているのですか?

あまりの痛みに霞む視界の中で、理解が追い付かない事だけが理解できました。

 

「確定:やはり生きていたか」

「ッ……《レプリカンスペィド》……!」

 

偶然にしては来るのが早過ぎますね。

まだ2分も経っていないはず。

であれば、であるのならば……これは、二重の罠……!!

 

「ぅ……テロを餌に、私を釣り出し、クロマを奪う算段でしたか……」

 

迂闊に近づけば気付かれる。

ならば知覚範囲外から一気に近付き、強襲。

なるほど、理に適っています。

 

尤も、それが裏社会の犯罪者を利用した者でなければ、ですが。

 

クロマは敵側の方に。

マズいですね、避難も間に合いませんし、何よりここには本体で来てるんですよね。

ジワジワと死の実感が這い寄って来ます。

ですが。

 

「ゲホッ……かえして、もらいましょうか……」

「回答:もとより貴様の所有物ではない」

「馬鹿を言わないでください……クロマは物じゃありませんし……」

 

私はおねーちゃんです。

おねーちゃんなので。

 

「その子は私の妹ですッ!!!」

 

《星夜月》、全力展開。

私の身体が壊れても構いません、どうせアバラが何本か逝ってます。

恐らく内臓も傷付いてますし、戦闘になってしまった以上、この命はもうじき尽きるでしょう。

ならば最優先はクロマの安全。

《レプリカンスペィド》の撃破。

 

「評価:ヴィラン《ノクトレス》の戦力評価を上方修正。武装レベル制限を解除」

「どうにも機械的な部分が否めませんね。もしかしてですが、人ではありませんね?」

「回答:拒否」

 

なるほど、人間みたいなミスをしないわけです。

そして、出てきましたね。

《レプリカンスペィド》が英雄の後継と称されることもある、その一端。

右手に現れる、黒い剣。

以前は生け捕りの為か使いませんでしたが……今回は殺す気のようですね。

 

「……ふ、あはは」

 

やってやりましょうとも。

 

 

 


 

 

 

それは、誰の目から見ても、勝敗は明らかだった。

普通ならば諦め、膝を突き、息絶える状況だ。

 

右腕は斬り飛ばされ。

肩口から脇腹にかけて大きな切り傷が刻まれ。

心臓を無情にも穿たれ。

今まさに首を断たれようとしている。

 

それでもなお、彼女は立っていた。

姉だからという、理由だけで。

《ノクトレス》は、それでも生にしがみついていた。

 

「……」

「通告:無駄だ」

「か、……ぇ、せ……」

「おねーちゃんっ、おねーちゃんッ!!」

 

もうその眼には何も映っていないだろうに。

その耳には何も届いていないだろうに。

 

彼女は驚異的な精神力だけで、まだ抗っている。

 

「く、ろ……ま……」

「やだ、やだよ、いやだよ!!」

 

クロマには理解できていた。

今、ここにいる少女は、まぎれもない本物であると。

陽動でもなんでもない、本物の命であると。

 

だからこそ。

であるからこそ、クロマという幼い命から、育まれていた希望が消えていく。

親に売られ、非道な実験を施され。

それを理解できる知能を持ってしまったが故に。

 

《ノクトレス》は、黒燈ヤヨイは、もう、助からない。

 

否。

 

不意打ちを受けたその時から、ヤヨイが、その命を棄てるつもりでいることを理解してしまった。

 

どうしてと叫びたい。

なんでと嘆きたい。

 

本当に、本来ならただの少女でしかないはずのヤヨイは。

なぜ、そんなにも軽々しく自らを棄てることができるのか。

クロマには、分からない。

 

ただ一つ分かるのは、唯一大切な存在が、目の前から消え去ることだけ。

泣いても、喚いても、祈っても。

 

ヤヨイが死ぬことには、変わりがなかった。

 

「ま、て……しか、し……て……きぼ、う……せ、よ……」

 

彼女は、それだけ言い残し、息絶えた。

 

 

 

―――――

 

 

 

「どういうことよ!!」

「そのままの意味だ。《レプリカンスペィド》がトートユニヴァーランドにて、《ノクトレス》を今度こそ殺害した。その際、クロマ=サイカも連れ去られている」

「……」

「シスイ、ツキト」

「分かってるわ。私情は挟まないけれど……拳に私情を乗せるくらいは許されるわよね」

「ああ、構わん」

 

黒燈ヤヨイの訃報。

それは、イゼロの面々にとって、大きな打撃だった。

主に、実の親であるツキトと、シスイにとっては。

 

「盛大に人目につくところでやってくれたおかげで、情報操作もしやすい。大義名分はこちらにある。やるぞ」

「「「「了解」」」」

 

だが、それで止まるのならば二人はネグレクトまがいの仕事人間にはならない。

悲しみはすれど、乗り越えて行ってしまう強さがあった。

持ち得てしまっていた。

 

故に振り返らない。

振り返ることが無い。

 

過去に痛みを置き去りにしてしまう。

だから気付けない。

 

クロマ=サイカという少女の、絶望を。

 

「よくやった。これで計画が進められる……!」

「……」

 

発露してしまった知性の、その危険性を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……まあまあアカンことになっとるなあ。このままだとスクランブルせなあかんやん……」

 

そして。

常夜の世界で独り、取り残された傍観者がいた。

 

「せやけど、大丈夫かね」

 

事態を知れど、楽観するエイリアンが。




待て、しかして希望せよ。
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