謎の一般通過強者面したい転生者と特異点幼女の勘違い戦線 作:蓋然性生存戦略
とあるゲームでなんかリーダーボード10位以内に乗っちゃったので頑張ってたら遅れました。
かれこれ5分。
いやはや、肉体を乗り換えていなければ間違いなく負けていたのは私でしたね。
そもそも、あの時しくじらなければこんなことにはなっていない、というのはさておいて。
やはり本体で出向くものではありませんね。
しかし、生身の実感も危うくなっていたので、あれはあれで必要なことでした。
それはそれとして。
「そろそろ認めていただく気にはなってくれましたか?」
『うるさい!!』
何もない空間から、漆黒の杭が伸びてきます。
最早空間は概念ごと黒と定義されたようですね。
ですが、クロマが黒にこだわる以上、私は無効化できます。
私は『黒』と定義された事象や概念、物体にしか干渉できませんが。
逆に言えば『黒』に対する干渉権限だけは私の方が上です。
特化しているのでね。
「効きませんよ」
『っ……!!』
クロマよりも上の黒の干渉権限を持つ存在など、私しかいないでしょうに。
まあ、それだけショックだったということにしておきましょう。
私はロクデナシの類だという自覚はありますが、人でなしになった覚えはありませんし。
『どうして……』
「真に強者たるは、敗北して尚生き延び、強くなって帰って来るものです。最悪の事態に備え、事前に備えていた策のひとつです。尤も、二度は使えない類の、最悪の予防線ですが」
『そんなこと、ひとこともいってなかった!!』
「言えるわけがないでしょう。敵が最も油断する瞬間。それは相手を始末したと確信した時です。万が一、億が一にも、私の生還を悟られるわけにはいきませんでしたから。悪いことをしたとは思っています」
『せいかん?ちがう、おまえはちがう!!だって、だってあのとき……!!』
「……」
『おねーちゃんは、たしかにしんだんだ!!』
クロマの異能。
それは、あらゆる物事の本質を、色で視ることが可能な異能です。
ですが、クロマから借り受け、使ったことがあるので、それだけではないことを知っています。
あの眼は、ただ視るだけではありません。
あれは、色を選ぶことができる。
わかりにくいですか?
ならば言い換えましょう。
そして、染め上げた色を、意のままに操ることができる。
あの子は、気づいていてやらなかったのか、無意識に封じていたのか。
それとも、出力が足りなかったのか。
おそらくは、全て。
そしてあの機械は、異能の力を大幅に増幅させる力があると見ました。
当然のことながら、あれが体にいいとは思えません。
早急に救助する必要があります。
「しかしまあ、醜悪なものですね。機能を追求するあまり美的センスを置き去りにしてしまったようで」
『きえて、きえてよっ!!』
「クロマには似合いません。着替えさせて差し上げます」
『マネをしないで!!』
あの機械は巨体です。
しかも搭乗兵器の機能も持っているらしく、動きますし異能とは別の兵装も使ってきます。
どっかの蒼い空の獣みたいな見た目してますね。
具体的にはフロ〇シス。
「とっくに知っているものと思っていたのですがね」
『なにを!!』
「夜の怪人《ノクトレス》は、不死身であるということをです」
『しなないにんげんはいないんだよ!!』
「それはごもっとも。ですが、私がなぜ怪人を名乗っているか、それは知らないと思うのでお教えしましょう」
それはそれとして。
私は、怪人ですから。
「ひとつ。怪物は言葉を喋ってはならない」
「ふたつ。怪物は正体不明でなければならない」
「みっつ。怪物は不死身でなければならない」
「このうち、私は限定的に二つ、絶対的に一つを満たしています。ゆえに、私は怪物ではありませんが、怪人として己を定義します」
「そう、私は不死身なんですよ、クロマ」
三度洛陽を迎えても、十二の試練に直面しても。
「あなたが望むのならば、いくらでも死の淵から這い出てきましょう」
「幾度約束を破ることになろうとも、私は私が怪人であることだけは決して違えません」
私は私なのです。
「クロマ。それでもあなたは、私を認めてはくれませんか?」
静寂。
ようやく、その目で見てくれましたね。
『前より、深い、深い黒』
『新月の真夜中のような、そんな色』
『絶対に違うのに』
『お姉ちゃんじゃないはずなのに』
『私は、まだ、希望を持っていいの……?』
無論ですとも。
「私は言ったはずですよ。待て、しかして希望せよ、と」
『お姉、ちゃん……!』
ふぅ。
これで、楽にクロマを助け出せr
「ですから、少しおとなしくしてください。すぐにその武骨な機械から……」
『アっ、ぐぅゥゥァアア!?』
「クロマ!?」
突如として、クロマが苦しみ始めました。
一体なにが……!!
『おね、ちゃ……こ、れとまら、な……!』
「少しだけの辛抱です!!」
クロマのマニュアル操作からオートに切り替わったようですね。
なぜそうなったかはわかりませんが、無理にでもぶち抜く必要がありそうです。
「運動はあまり得意ではないのですがね……!!」
黒を操り、巨体を作ります。
もはや手荒な真似はしたくないなど言ってられません。
あのフロ〇シスもどきの巨体を無理やり押さえつけ、クロマを機械から救出します。
「《星夜月》!!」
『------!!』
――ガシャァァァン!!
クロマが囚われているのは胸部の格納エリア。
多少力尽くになりますが……!!
「っ、らぁああ!!」
装甲を貫いて、クロマの体を抱きかかえます。
小さく、華奢な体を。
『Errorrrrrrrrrrrrrrrrrrrr!!』
ビープ音がうるさいですね!
《星夜月》、そのまま叩き潰してしまいなさい!!
『---------!?!!?』
「なっ!?」
まさか、《星夜月》が染められている!?
私の影響下にあるというのに!?
そもそもクロマを欠いた今、異能が使えるわけが……!!
『ここで終わるわけにはいかんのだぁ!!!!』
うわ、なんか知らない人の声が聞こえてきました。
なんですか、誰ですかあなた。
『クロマ=サイカの力はもはや不要!!サンプルから再現を行うだけの時間は十二分にあった!!理想の世界のために、すべて白く染まるがいい!!』
とりあえず、黒幕っぽいのはわかりました。
ぶちのめしましょう。
「おねぇ、ちゃ……」
「信じてください。私は負けませんよ」
あんな世界の彩の理解が浅い存在には負けませんとも。
それからさらに10分。
「私の制御下にある黒を、染められるとでも?舐めないでください。これ以上の勝手な振る舞いは許しません」
『悪は滅びない。なぜだかわかるか?』
「人が善を定義する限り悪は消えません。禅問答がしたいのなら哲学者にでもなるべきでしたね。ヒーローは法の守護者。定められた悪が露呈したときに取り締まるべき存在であり、洗脳紛いの行為で独裁を施行する存在ではありません」
『人が思考を持つからだ!!』
「馬鹿じゃないですか?」
なんでしょう、この黒幕。
あほですか?
阿保ですね、阿保で間違いありません。
統一された思考など、思考放棄と何ら変わりませんが?
確かにそれで悪はなくなるでしょう。
同時に人類の歴史も、個人の日記にまで貶められることでしょう。
ああ、相いれない存在です。
私のような第三陣営どころか、善と悪すらもない。
なんと素敵でつまらなくて愚かしい世界でしょう。
「個人的に殺しはしない主義でしたが、あなたは殺します」
『正義は消えない、滅びない!!』
「もしかしなくても暴走していますね?まったく嘆かわしいことです」
しかしまあ、啖呵を切ってはいますが。
なかなか押し切れないというのが現状ですね。
技量は私が上ですが、出力は向こうが上回っているようで。
攻防の均衡は保たれたまま。
このままではジリ貧です。
なにか、なにかこちらに天秤が傾くような要素が、ひとかけらでもあれば、趨勢は決するのですが……。
「ヤヨイ!!」
「うわなんだあれ」
「どう見ても暴走してるぞ、止めよう」
都合よく、向こうから来てくれたようです。
「だっしゃらぁーー!!ボクの作品を壊した奴ァどいつだぁ!!」
知ってるようで知らない人も来ましたが。
とある場所で。
『ちゅーわけでな、あの機械人形壊されとったで』
「ぎぃぃぃにゃああああ!?いつの間にか《レプリカンスペィド》が壊されてるぅ!?」
発狂している一人の少女がいた。
彼女は、アルスガル代理守護兵器《レプリカンスペィド》の制作者であり、英雄の伴侶として知られる合法ロリババア。
長期旅行に出かけるからと、愛する故郷を守るための兵器を置いてきた者だ。
彼女は、遠く離れた故郷で傑作が破壊されたことを知らされ、急いで帰る準備を整えていた。
彼女的に、設計思想通りに作れた、まさに傑作といってもいい《レプリカンスペィド》が破壊されたのは、実に悲しいことだった。
別に壊れたこと自体は良い。
白兵戦に特化した自律兵器だもの、それが億が一であろうとも、壊れることもある。
しかし、端末へブラックボックスから送られたログを確認すれば、出てくる悲しい事実の数々。
あえてセキュリティを甘く作っていたところを《ガーディアンズ》の腐敗によって不正に利用され、あまつさえさらに制御権を奪われた挙句に破壊され、自分の傑作がもう関係ないところで最終決戦が始まろうとしている。
彼女は悲しかった。
《ガーディアンズ》の腐敗も、誰も是正してくれなかったことも、自分の傑作がかませ犬にされたことも。
黒幕の計画の全容が、幼い子供を犠牲に、果たされようとしていたことも。
『ま、ウチから知らせることはこれだけや。どないするかはあんたらが決めてもろて』
「どうする?」
「もち、ボクたちの仕事だ、向かうよ」
「了解だ」
『そういうと思っとったで。座標は送っとくからあとよろしゅう』
英雄とその伴侶が、過ちを正すために、戻ってこようとしていた。
「《
知っているようで知らない顔。
英雄の伴侶、空想描く無二のヒーロー。
神様代理と名乗った存在と瓜二つの少女が、イゼロの方々と共にこの場に現れたことで、趨勢は決しました。
「さぁさぁ!!これでもう染まる心配はない、洗脳紛いの染色をされることもない!!存分に殴りたまえ!!ジン君に緊急連絡網で知らされた手前、ボクも遠慮しないよ~~!!」
どうやら、ジンさんが万が一のために手をまわしてくれたようです。
連絡がつかないと言っていたような気がしますが、緊急連絡網は繋がったようですね。
まあ、確かに緊急といっても差し支えなかったのは認めますが。
「しっかしなんだこいつ!!フロネ〇スみたいな見た目しやがって!!きっしょ!!これに幼女を繋げてたの?正気か?」
騒がしいですね、この人。
っと、大規模な攻撃が来ますね。
「皆さん、回避か防御を!!」
「サポートはまかせんしゃい!!《
騒がしいですがとんでもなく強いですね。
盾を掲げたら全員を守り切りましたよ。
「はーっはっはっは!!さて、そこの夜の塊みたいな子!」
「私ですか?」
「そう!キミ!アレ、格下だけど概念に手が及んでいるだけあってしぶといね!お膳立てはボクとイゼロでしてあげるから、一撃で吹き飛ばして!!」
「そんな無茶な」
「できるでしょ」
「……まあできますが、時間は稼いでもらわないと困りますよ」
「モチのロン!というわけでイゼロのみんな、キビキビ働け~~!!おら、ケラウノス!!」
あの人、どう考えても地球由来の武器を使っていますが。
もしかしなくても転生者でしょうか。
神様代理とどういうつながりがあるのか知りたいですが……今は放っておきましょう。
「クロマ」
「ん……」
「眼を、貸してください」
「いいよ」
実のところ。
クロマの異能出力自体は、そこまで大きなものではありません。
機械に繋がれていた時のように、大それたことはできませんし、理論上は可能であっても、出力が足りなくて不可能だったことは多いでしょう。
ですが。
逆に言えば、です。
出力さえ足りていれば、彼女は現代の神たり得た。
足りないのは、力の大きさだけだった。
ゆえに。
彼女が真価を発揮するのは、その力を補う存在。
私のような、色を扱う、親和性の高い、規格外の異能の持ち主。
「言葉が足りず、申し訳ありませんでした」
「ううん。わたしも、もっとしんじられればよかった」
「もう少しだけ、耐えてください」
「だいじょうぶ、おわりはみえた」
10秒。
たったそれだけの時間が欲しかった。
たったそれだけあれば、戦いは終わる。
「「《
月なき夜にも、星は輝く。
そんな想いを込めた、渾身の一撃をもって、あの奇々怪々な装置を破壊する。
「うっひょ~、こりゃ百年前の■■■■にも負けないな?あとは相性の問題か」
ただ、テンション高めの少女だけが、巻き込まれるであろう全員を守りながら、当然のように佇んでいた。
「さて、事後処理しよっか!!」
・英雄と英雄の伴侶
アルスガルの守護を半分以上現代の人間に任せ、いろんな世界を旅している。
もしもの時だけ戻ってくる。
今回は裡油ジンが緊急連絡網で「《レプリカンスペィド》破壊されたで、ええのん?」と連絡が来たから戻ってきた。
腐敗が進んだ《ガーディアンズ》は〆る予定。
・フロ〇シスもどき
クロマが繋がれた機械。
黒幕くんの執念が宿っており、クロマの異能を再現したうえで増幅して、世界平和(主観)を為そうとした。
思想が強めの天才的なバカ。
幼女を犠牲にするという、英雄の伴侶の地雷をぶち抜いたのでハピエンのための踏み台にされた。
子供には優しくしないといけない。