もしも孫悟空の娘が伝説の超サイヤ人だったら   作:上司はメロニキがいい

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感想が来た嬉しさにより禿げたので初投稿です


少女と魔族の運命

 

 

 ピッコロとソラが修行を始め、1ヶ月程が経過した。

 

 

 あの呑気な孫悟空のことだ、娘なんぞさぞ甘やかして育てたことだろう、とピッコロは踏んでいた。

 

 しかし、今の小娘を「女の子」と呼ぶ者は存在しないだろう。赤いピンとリボンを外し、過酷なトレーニングを自分に課し、師という立場である己ですら戦慄するような気迫で殴りかかってくる。正に「戦士」だ。

 

 

 ピッコロはそのやる気に満ちた態度に驚きつつも、これはやりやすいと内心ほくそ笑んだ。

 しかし1ヶ月という短くはない時間を共にし、そこに違和感も生まれ始めた。

 

 

 あまりにもストイックすぎる。

 

 

 孫悟空に敗れてから約10年、その間に彼ら家族を見かけることがあった。彼らが互いを慈しんでいたのは確かだ。

 

 人間、特に子供は親元を離れると寂寥という感情が大きくなると記憶している。だというのに小娘は一滴の涙も見せはしない。

 狩りが上手いことについて言及したりと、孫悟空との関係性を思い出すようなことを口にすると少し気が乱れることはあったが、その程度だ。

 地球人のことをしっかり理解できているとは限らないが、ピッコロは何とも言えない違和感を覚えていた。

 

 

 

 

 

 

 そんなある日の夜、簡素に食事を採ったソラと水を飲んだピッコロは各々で自主練をすることとなった。

 

 ピッコロは空に浮かび瞑想をしていたが、ふと目を開けて小娘の方を見る。動く気配を感じなかったので奴も瞑想をしているのだろうと思い込んでいたが、ソラは坐禅を組みながらも顔を上げていた。

 

 その視線の先には満天の星が浮かんでいた。闇夜を覆い、時折またたく星々。

 

 きらり、と何かが光った。しかしそれは空の輝きではない。地上で、何かを反射したような光。

 

 

 ピッコロは目を見開いた。小娘が、泣いているのだ。

 

 

 雫が溢れていることに気が付いていないかのように、少女は一心に夜空を見上げていた。瞬きもせず、現実から逃げるかのように。つう、と流れ止まらない涙は頬を伝い、首を伝い、ピッコロが出してやった衣装に染み込んでゆく。

 

 

 はくはくと少女の口が動いた。遠く離れていたピッコロにも、少女が「おとうさん」と呟いたことは明白だった。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 朝日が昇り、身なりを整えたソラがピッコロの下へやってきた。いつもの通りぴっしりと背筋を伸ばし、「おはようございます。今日もよろしくお願いします」と言い、腰を90度折って礼をする。

 

 

 ピッコロは自分自身でも分からぬままその頭に手を伸ばし、ぽん、とそこに手を置いた。

 

 

 死んでも尚、界王のもとで修行してくる、などと天界から溌剌にほざいた憎たらしい男によく似た黒髪は、思ったよりも柔らかかった。

 

 ソラは突然の生温くも温かい手のひらに困惑しながら、頭を上げるわけにもいかずただされるがまま髪をくしゃくしゃと乱された。

 やがておもむろに手が離れゆっくりと顔を上げると、師は自分の緑色の手とソラの顔を交互に見つめ困惑したような顔をしていた。きっと自分も似たような顔をしていただろう。

 

「あの……師匠(せんせい)?どうしたのですか?」

 

「……いや、今日はその、修行は中止だ」

 

「え、何故ですか?」

 

 理解できない。

 サイヤ人たちが襲来するまで、時間がないのだ。父親を殺してしまった、あの忌まわしい力を抜きにして彼らに勝つためには幾ら時間があっても足りない。

 

 

 地球で一番強い父を殺してしまった自分には、サイヤ人たちを倒す義務があるのだ。それを果たすためには、時間が惜しい。

 

 

 ピッコロはう、と唸った。なぜ自分がこのような行動に出て、このようなことを口走ったのか、自分でもよく理解できない。哀れみか、同情か。

 

 自分は大魔王の生まれ変わりなのだ。そしてこの小娘は(かたき)の娘だ。そんな感情を持ち合わせてはならない。

 

 しかし、昨日の姿が脳裏から消えない。大きな瞳を水の反射で光らせ、自分自身が苦しんでいるというのにまるで気付かず自分を追い込む姿。強大な力を持って生まれた、ただそれだけで愛する者を失った少女。

 

 

 

 力ある者の娘として生まれたが故に、力を振るうことを世界に強要される、幼い少女の運命。

 

 大魔王の子として生まれたが故に、魔族として世界を恨まねばならなかった、自分の運命。

 

 

 

 ──もう、この少女を敵として見ることはできないのかもしれない。

 

「……休むことも修行のうちだ。今日の日が出ている間は鍛えることを禁ずる。瞑想もだ」

 

「瞑想も、ですか。昨日の夜瞑想をしたはずなのにイマイチ実感がなくて、今日もう一度しようと思っていたのに」

 

「…………」

 

 うむむ、と唸るソラ。突然言い渡された休息命令。どうすればいいものか。

 

「……そうだな、お前の話でも聞かせろ。孫悟空についてもな」

 

「え、でも、師匠(せんせい)はお父さんのこと嫌いなんじゃあ」

 

「いいから、聞かせろ」

 

 ソラは、困ったような、それでも喜びを隠しきれない笑みを浮かべた。

 

 お父さんの話、かあ。美味しいきのみを教えてもらった話が良いかな、魚捕りに夢中になって一緒にお母さんに怒られた話が良いかな、それとも、やっぱり修行の話が良いかな。

 

 

 今まで見たこともないような柔らかい笑顔。きっとこれが本来のソラなのだろう。その様子に安堵した自分に困惑しながらも、ピッコロはたどたどしく返事をする。

 

「それから、俺のことはピッコロでいい」

 

「……!はい、ピッコロさん!」

 

 ソラは満面の笑みを浮かべた。修行を始めてから、初めてのことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それからソラとピッコロは、夕食時に談笑するようになった。話せば話すほど、ソラという少女が普段はとても穏やかな気質であると理解できる。

 

 しかし、特に組手をしているとき、ぞっとするほど愉しげにこちらを攻撃してくることがあるのだ。ピッコロが寒気を感じる原因のひとつは、その時の表情があの暴走状態(・・・・・・)を想起させることだ。

 

 感情の昂ぶり。それが暴走のトリガーであると、ピッコロは改めて確信した。

 

「おそらく今までの組手の様子からしても、(はらわた)が煮えくり返るような怒りを感じるようなことがなければ暴走することはないんだろうが……気を落ち着けるようにしろよ」

 

「はい。それと、多分あの力は『悲しみ』も原因の一つだと思う。悲しまないように……っていうのは難しいけど、気をつけないと」

 

「だが、溜め込みすぎるのもよくない。お前は気を張り詰めすぎだ。ガス抜きをしないと、それこそ本番の最中に感情が爆発するぞ」

 

「……うん。ありがとう、ピッコロさん」

 

 こうして話す時間を設けていることに最初は疑問を感じたが、ピッコロさんは自分でも気付いていない私の心の状態に気付いているのだろう、と最近ようやく気が付いた。

 

 ピッコロさんには素直に従ったほうが良いと改めて確信した。

 

 

 

 

 ソラは串焼きにした恐竜の肉を取ろうとして、はっと自分の身に起きた変化を思い出す。

 

「そうだ……尻尾ないんだった。尻尾で取ろうとしちゃった」

 

「あれも暴走するらしいからな」

 

「皆さんが『満月の大猿の化け物』についてお父さんがいないところで話していたのは、お父さんが大猿になったことがあるからなんだというのは気付いていたの。

 私にもそれとなく満月は見ないようにと言われていたから」

 

 ソラはそういって夜空を見上げる。星々が輝いているが、そこに大きな丸い光はない。

 

「でも、尻尾切ったあとに『お月見』しておけばよかったなあ。ちょっともったいないことしちゃった」

 

「尻尾はサイヤ人の特徴だから、襲来するサイヤ人共のパワーアップを防ぐために月ごと粉砕したほうがいいと言ったのはきさまだろうソラ。だが、いい判断だ」

 

「そうだけど……」

 

 ソラは黒い夜空の向こうにきっといる父を見ようと目を凝らした。

 

 父は気さくな人だから、きっと界王様という人とも仲良くやっているのだろう。界王様はどんな人で、お父さんはどんなところで、どんな修行をしてきたのか。父の口から聞きたい。

 

 私も、父に話したい。わたしは広い荒野で、ピッコロさんと組手して、お父さんに教わった知識で食べ物をとって、ピッコロさんとたくさんお話したんだよって。

 ピッコロさんは、口では世界征服だなんて言ってるけど、きっとずっと一緒に地球のために戦ってくれる、となぜか確信できる。

 

 

 だから、みんなで力を合わせて地球を護ろう。そうすれば、きっと、あの楽しかった生活にピッコロさんを加えて、もっと楽しくやっていけるよ。

 

 

 そうだ、あの黒い空の向こうには、襲来者たちもいるのだ。

 

 ソラは己の頬を叩き、今日のおさらいをしようと立ち上がった。覚悟を決め、真っすぐな目をした、生粋の戦士の姿をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 突然空が暗くなり、神龍の出現を察知したピッコロとソラは荒野へと繰り出した。そこにクリリンが到着する。

 

「ソラ!お前、随分強くなったなあ!それに元気そうでよかった!」

 

「クリリンさん!ピッコロさんに優しく修行をつけてもらったおかげです」

 

「え?ピッコロが、優しく?」

 

「……俺はしっかり厳しくやった。風評被害だ」

 

 ふん、とそっぽを向いたピッコロ。耳が赤いような気がするのは、気のせいだろうか。

 

 クリリンが若干引いているのも束の間、ヤムチャ、天津飯、餃子が到着した。皆強くなっていたが、ソラの成長ぶりを超える者はいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほう……雑魚の集まりではあるが、見所のある奴もいるな」

 

 

 空から降り立ってきたのは、2人の異星人であった。

 

 茶色い尻尾を腰に巻き、余裕を崩さないベジータとナッパは、こちらを睨みつけるナメック星人(ピッコロ)ガキ(ソラ)を見てふん、と鼻を鳴らした。

 ソラは一切表情を崩すことなく、特に気を強く発しているベジータから目を逸らさず、ナッパの気にも注意を払っていた。

 

 

 サイヤ人たちは、目的はドラゴンボールであると告げた。都を平気で破壊し、殺された仲間を「よわむし」呼ばわりするような奴らがドラゴンボールを悪用しないとは思えない。

 

 

 ベジータに命令され、ナッパは何かを地面に埋めた。やがてそこから気味の悪い二足歩行の生物が現れた。栽培マン、というらしい。

 

 ヤムチャが勇んで前に出たことにより、体力を温存しながら悟空を待ったほうが良いと判断したソラとピッコロは傍観を決め込んでいた。

 

 

 

 しかし、ヤムチャが危うく殺されそうになったことでそれを止めた。

 

 ソラは栽培マン全員の体勢を素早く崩し、広範囲に気弾を放った。ピッコロも気弾でダメージを上乗せし、瞬く間に栽培マンは全員消滅した。

 

 

 

 

 

 

 栽培マンがあっさりとやられたことにナッパは啞然とし、ベジータはほう、と感心したような笑みを浮かべる。

 

「中々の身のこなしだ。ラディッツを殺したのはナメック星人とばかり思っていたが……案外、そのガキの方だったりするのか?」

 

「……仇討ちなら、他の人を巻き込まないで」

 

「お優しいことだ。だが、栽培マンに勝っただけでいい気になるなよ?ナッパはともかく、このオレに勝てるとでも?」

 

「勝てるか勝てないか、じゃない。勝たなくちゃいけないの。私はあなたたちに勝って、お父さんたちとこの地球で平和に暮らす!」

 

「父親……カカロットのことか。そういえば、奴はこの場にはいないのか?」

 

 ピッコロはなぜそのことは知らないのか、と訝しんだが、ソラが暴走した際にスカウターとやらが爆発したので対ラディッツとの結末までは知らないのだ、と思い直した。

 

 

 

 クリリンは、初の実戦にもかかわらず的確に敵を攻撃し、自分でも苦戦しそうな栽培マンを倒したソラ、そしてピッコロに希望を見いだしていたが、あのサイヤ人たちは栽培マンの比ではないことも同時に肌で感じ取っていた。

 

 

 

 やはり、悟空を頼るしかないのか。

 

 

 

「悟空は……来る。絶対に来る。来てお前たちを倒してくれる!」

 

「スカウターがなくてもオレたちの存在を感じ取れるはずのカカロットがここにいない……

 まさかとは思うが、カカロットは死んだのか?ということは、ラディッツと相打ちになったということか?」

 

 クリリンとピッコロ、ヤムチャがうぐ、と息を呑む。どうやら当たっているらしい。

 

 そして、ガキの方を見る。相変わらずこちらを睨みつけてはいるが、額には冷や汗が浮かんでいた。

 

 

「フフフフ……あっはっはっは!!きさま自分の父親を殺したのか!良いぞ、気に入った!

 サイヤ人はな、親を殺して一人前なのだ。たとえ殺した相手が下級戦士のクズでも、お前はれっきとしたサイヤ人だよ。

 

 いいだろう、一人前のお前はサイヤ人の王子であるベジータさまが直接遊んでやろう。光栄に思え」

 

「お父さんを……お父さんを馬鹿にしないで!」

 

「よせソラ!感情的になるな!」

 

 

 はっ、とピッコロの方を振り向くソラ。ピッコロは冷や汗を浮かべながらもにやりと笑って見せた。

 

 ピッコロさんは、私を信じてくれている。この俺様の弟子なのだからな、というピッコロの言葉を思い出して気合を入れなおし、ベジータを睨めつける。

 

「ふん、やる気になったか。おいナッパ、お前は他のやつと遊んでやれ。ただしそこのナメック星人は殺すな。ドラゴンボールのことを聞き出す必要がある」

 

「了解だ、ベジータ」

 

「くっ、みんな……!」

 

「余所見をする暇はないぞ、カカロットのガキ」

 

「ソラ!こっちはなんとかする!目の前の敵に集中しろ!」

 

 

 

 

 容赦なく蹴りが飛んでくる。ソラは間一髪身を翻したが避けきれず、頬に一筋の線がぴっ、と入った。

 ベジータは腕を組んだままだ。お前には拳を出す価値もない、と言わんばかりに。明らかな手抜きに不満を覚えないでもない……が、皆の命が掛かっている状態ではむしろ有り難いと思わないと、と理性を働かせる。

 

 

 肉弾戦ではどう足掻いても勝ち目はなさそうだと判断し、とにかく受けるダメージを少なくし、距離をとって気弾を命中させようと決めた。ソラは動き回っては気弾を放つ。小さな気弾をいくつもばら撒き、ダメージを稼ごうと藻掻く。

 

 

 ……当たらない、か。

 

 

 その上、必死に距離を取り続けるがベジータの速さには敵わず、すぐに距離を詰められてしまう。

 

「小賢しいが、ザコのお前にとっては最適な判断だろう。褒めてやる。だが」

 

「がっ……」

 

「そううまく行くと思うなよ?」

 

 鳩尾に強烈な一発を食らってしまった。

 息が、詰まる。視界が振れる。それでも……!

 

「何?!」

 

 ベジータはきっと目の前で嘲笑っている。それに賭けてソラは密かに溜め込んでいた左手の一撃を発射した。

 

 ろくに構えず、腹筋に力を込められずに放った強力な一撃に耐えきれずソラの身体も吹っ飛んだが、同時にベジータも吹き飛ばすことができたようだ。

 

 

 このまま叩き込まなければ。身体が悲鳴を上げ、血液はあり得ないスピードで回っている。それでも成さなければならない。少なくとも父が来てくれるまで、必ず守り抜かなければならないのだ。

 

 

 

「魔・閃・光!!!」

 

 

 

 ドオン!と破裂音のような音を出して最大火力の気功がベジータに直撃した。

 

 このまま、意識を飛ばしてしまいたい。ベジータは、どうなったのだろう。ダメージは入っただろうか。父は来てくれるだろうか。みんなは、ピッコロさんは、大丈夫だろうか。ああ、おとうさん。はやく、はやく。

 

 

 

 

 

 

 ガシッ、と頭を掴まれた感覚がした。身体中の気を集めて放った気弾の影響で感覚が麻痺してしまい痛みは感じなかったが、身体が宙に浮いているのはわかる。

 

「はあ、はあ……ちっ、クソガキが。

 サイヤ人の王子であるこの俺の衣装を破損し、あまつさえ血を流させるとは……

 下級戦士の系譜のくせに、いい度胸していやがる」

 

「あ……」

 

「ふん、口も利けんか。カカロットがくるまで痛めつけようかと思ったが……やめだ。ここで殺す。組まれても厄介だ」

 

「う……」

 

「なんだ、今更命乞いか?」

 

「ち……がう。あなたたちなんか……自分勝手で乱暴なあなたなんて……おとうさんが……!」

 

「もう黙れ」

 

 殴りつけられた小さな身体はいともたやすく飛んでいった。ベジータは光線を構える。

 

「せめてもの慈悲に、このギャリック砲で止めを刺してやろう。光栄に思え」

 

「ソラ!!!」

 

 目の前が、まっしろになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ソラの身体は五体満足、無事であった。

 

 

 いや、そんなはずはない。あのエネルギー量が直撃して、無事でいられるはずがない。 

 

 

 目の前に、気を感じる。とても良く知っている気。でも、とても弱まっている気。閃いた最悪のシナリオに怖気が走る。

 それでもソラは目を開けた。すると。

 

 

 ああ、やっぱり。ねえ、どうして。

 

「ぴ、っころ、さん?」

 

「無事だったか……全く俺ともあろうものが、情けないぜ」

 

「なんで、どうして、わたしを庇ったりなんか……」

 

 ピッコロは、傷だらけの、それでもまろい肌を撫でた。涙も拭ってやる。そうか、お前は俺のためにも泣いてくれるのか。

 

「ソラ。いいか、悲しむなとは言わない。だが、俺はお前を信じている。そしてお前は父親を……悟空を信じろ。

 奴は必ず来る。そういう奴だ」

 

「う、うん……」

 

「お前は前だけ見ていればいい。振り向くな。

 お前との日々……悪く、なかった」

 

 ピッコロは、動かなくなった。

 

 激情が、脳を支配していく感覚がする。

 

 それでも、ソラはそれを理性で押しとどめ、自分の意志で前を向いた。ピッコロさんの死を無駄にしない。私は、必ず地球を守る。そのために戦うのだ。たとえ相手がどれほど強かろうとも。

 

 

 

 クリリンが横に並び立つ。嘲笑うサイヤ人を前に、合図もなしに2人同時に構えた。

 

 

 

 

 

 

 

 そこに、彼はやってきた。

 

 

 

 

 

 

 彼は肉薄してきたナッパを殴り飛ばし、クリリンとソラを抱えて飛んだ。

 山吹色の道着。特徴的な黒髪。以前よりも遥かに強烈な、しかし懐かしい気。間違いない。

 

「お父さん……!!」

 

 こちらに向けられた表情は柔らかかった。しかし、その目の奥には見たこともない怒りを湛えていた。

 それでもなぜだか、ソラはその瞳に安心した。

 

「悟空……!!」

 

「2人とも、待たせちまったな。おそくなってすまねえ。

 ソラ……強くなったんだな」

 

「おとう、さん……!おとうさん!!ピッコロさんが、ピッコロさんがぁ……!」

 

「ソラ……」

 

 目がじわりと温まって、せき止めていた感情が目から溢れ出た。悟空は一瞬狼狽えたが、止まらない涙を少し強引にぐいぐいと拭い、小さな頭をきつく抱きしめた。

 

「大丈夫、大丈夫だ。ソラ、おめえはほんとうによく頑張った。さすがはオラの娘だ。

 あとはオラに任せておけ。ピッコロの仇は、オラが取る!」

 

 ああ、この顔は。かっこよくて、なんでもできちゃうときの、お父さんの顔だ。

 

 

 頭を優しく撫でられて、額に優しく口づけられて。ソラは意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前がカカロットか……」

 

「オラのソラを痛めつけたな……許さねえぞ、おめえたち」

 

「お前の娘なら、現に命拾いしただろう?」

 

「いや、命拾いしたのはおめえたちの方さ」

 

「なに?」

 

 悟空は、ソラを抱えたクリリンが去っていった方向を見やる。

 

「ソラが感情のまま暴走したら、おめえたちなんか一瞬で死んでいたさ。だが、そうはならなかった。ピッコロとソラ自身のおかげだな」

 

「はっ、戯言を」

 

「そう思うなら、それでいいさ。さあ、今はオラとやろうぜ」

 

 悟空は姿勢を低くし、構えた。ナッパが我先にと前に出る。

 

 

 襲来者たちとの最終決戦が始まろうとしていた。

 

 





おベジに高笑いさせたかった。
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