イナズマイレブンNC -零から壱へ- 作:イナズマペンギン
0.無茶振りのプロローグ
サッカー。
それは黒と白の一つのボールを追いかけて、フィールドを走り回るスポーツ。
元より人気の高いスポーツであったが30年前、当日無名かつ弱小であった雷門中が、フットボールフロンティア──FFへの優勝を果たしたことで人気は過熱。
更に雷門中キャプテン、円堂 守が率いるイナズマジャパンが世界大会、フットボールフロンティア・インターナショナルへの優勝を果たしたことで人気は最高潮に。
もはや何処の学校もサッカー部が設立されるような時代が来ていた。
そこから25年、王者と化した雷門に挑んだのが、当日サッカー部そのものが存在しなかった南雲原中。
実質的な監督にしてチームを纏めるブレイン、笹波 雲明が生み出し率いた南雲原サッカー部が王者雷門を打ち破り優勝へ。
様々な要因が重なった結果、30年経った今もサッカーの人気は衰えるどころか好調に登り進み続けてきた。
そして今、サッカーは新たな到達点へと向かおうとしている。
俺の──俺達の、『
これは俺たちが『頂点』に立つまでの物語だ。
かつては確かに中四国を支配するだけの権力を持っていたが、今はその権力もほとんど効力を失い、通じるのは自身の保有する財閥のみ。
未だに大きい家ではあるが、この大きさもいつまで持つものか、と言ったような状態であった。
そこの長男として生まれた俺、条院
そうしなくてはならなかった。
それが俺の使命だったから。
だから今回も同じ。
いつもと同じように使命を果たすだけ、そう考えていたのだが──
「サッカー……ですか?」
「そうだ、志堂。サッカー始めろ」
今回もまたいきなりだな。
いつも親父は唐突にこのようなことを言い出す。
前回は野球、その前はテニス──とにかくいきなり何か始めろと言い出しては、それを無理やりやらされる。
拒否しようにも拒否権はない。
そもそもアイツは拒否されると
まぁ……やれと言われればやるだけだ。
適当にこなしておけばヤツも満足するだろう。
「……わかりました。チームの所属などは──」
「お前が作れ」
「…………え?」
予想だにしない返答に思わず面食らい声が漏れ出る。
ジロリとこちらを見つめる視線に俺は一つ咳き込んで聞き出す。
「つ、作れというのは、一体どういうことですか」
「お前の学校、
「……確かに、ありませんが」
俺の通う中学校、北條学園。
サッカーが全てを制す、とも言えるようなこの時代にサッカー部がない理由は至極単純だ。
それは近くにサッカー王国とも称される
獅子谷中ならカジュアルなサッカーから、本気でサッカーやるやつまで色んなやつが集まっている。
即ち、サッカーをしたいのならばそっちへ行けばいいため、北條学園にはサッカーをしたい奴が集まらない。
故にサッカー部は存在していない。
「ならば、お前が作れ」
「つ、作れって……」
いつにも増して無茶苦茶だ。
が、サッカー部を作ってやれってだけなら、そう難しい話でもないだろう。
適当に体制を整えて、形だけ作ってしまえばいい。
無茶苦茶ではあるが無理と言える範囲ではない。
だから適当に親父が満足するまでやり続ければいい。
俺は少し渋るような真似をしながらも頷く。
「……わかりました。やってみま──」
「それともう一つ」
突然、俺の言葉を遮る親父に酷く嫌な予感がして硬直する。
その嫌な予感はすぐに現実のものとなった。
「今年中にサッカーの大会であるフットボールフロンティアで優勝を果たせ」
「は──え? ふ、フットボールフロンティア?」
「全国サッカー大会、とでも言えば分かるだろう」
いやそんな事は知っている。
サッカーのことはよく知らなくとも、それは何処でも話題になるような話だ。
俺が聞きたいのは正気か、って話だ。
今年中にサッカー部を設立して、そのサッカー部で全国大会で優勝を果たせ、など意味が不明すぎる。
流石に無茶苦茶にも程がある。
「ぜ、全国大会優勝とは……ほ、本気ですか?」
俺の言葉に睨むようにジロリと視線を動かす。
いつも反抗することすら許さないような奴だが、今回ばかりは事が事だからか顎に少し手を当てる。
「……前例は存在する、不可能というわけでもあるまい」
一年内に結成から全国大会優勝した学校など、本当に存在するのか?
仮にもしその話が本当だとすれば、まともではないだろう。
サッカーをやっていたような奴ならともかく、俺は完全に素人。
学校の授業内で触れたことはあっても、それ以外では関わろうとするしなかったスポーツだ。
それを今から始めて今年中に日本一になれなど。
はっきり言える、無理だ。
……しかし。
無理だとはっきりわかっていても、それを拒否する権利は俺にない。
始めっからそんな選択肢は用意されていない。
つまり、あーだこーだ言ったところで俺はこう答えるしかないのだ。
「──わかりました。やらせていただきます」