自由を望まれた青年と救えぬ神様の平行世界の生徒救出物語 作:茶庵
「まずあなたがキヴォトスに行ってしてもらってして欲しい事は拠点作りね。別世界から連れてきてもその子達は確実に傷ついた子達が多いでしょうから、安静にできる静かな場所が好ましいわ」
そう言う女神様に俺は問うた。
「衣食住は自分で用意しろと?」
そう問うと、女神様は答えた。
「いいえ、あなたの分は多分だけど大丈夫、住を最優先で確保してちょうだい」
そう言う女神様を疑問に思った、なぜ自分の分はは不要とこの女神様は言うのだろうか、俺もれっきとした人間で食べなければ死ぬし、服も汚れるから必要に思うのだが、そう思っていると女神様はその事への答えを事前に分かっていたかのように答えた。
「あなたには私の使徒つまり、神の従者に成ってもらうわ」
「え、そうなのか?……使徒になるのと衣と食が必要ないのと何の関係があるんだ?」
飛鳥は疑問に思った事を呟いた、使徒に成るのも驚いたが使徒に成ると衣、食が要らない事には更に驚かされた。自分の生きていた世界で食事を取らなくいても生きていける生き物など聞いたことも見たこともないからである。
「ええ、そうよ、使徒はお腹が空かなくなるって言う使徒共通の特性があるのよ。その他にもある共通の特性だと神秘を大気から吸引、抽出、これがあるおかげで日常生活をしているだけでも神秘という身体に纏って防御(キヴォトス民が無意識にやっていること)や神秘を武器に流し込んで威力の上昇が出来るようになるの。この力があるからどの時代でも神の使いは恐れられ敬られていたのよ。他には服ね、後に説明するけど、使徒にはどこかに必ずナノマシンっていうものが埋め込まれるんだけどそれをうまく扱うことで増殖させて服を作り出すことができるの。共通なのはこれぐらいね、あとはそれぞれがなにか突出していたりするけどそれはおいおい説明するとして、わかったかしら?」
なんとも現実味のない話だ、神秘ろいうよく分からないような物質の生成が出来る、ナノマシンでの服作り、神秘による防御上昇、さっきほどの事でも現実味が無かったのにもっと無くなってきた、そう思いながら飛鳥は自分の常識が通じない世界に行くんだということを再認識する。
「ある程度は分かった、それじゃあ、俺は住処の確保を最優先で動く、その後に受け入れ態勢が整ったら呼んでいく、それでいいか?」
「ええ」
そう言うと女神様はふぅ~と息を吐きこちらを見つめてくる、見つめられると照れてしまうが今の彼女は先ほどのような少々ふざけているような雰囲気と異なり真剣な眼差しを向けてきた、その顔に何かあると察し、自分も無意識のうちか身体の背筋が伸ばされる。
そして彼女が指をパッチン…と鳴らすと後ろに突然玉座のようなものが現れた。すると彼女は玉座に座る、体格に見合わない巨大な玉座に座す小柄で全てが純白で統一された飾りっ気のない、そうあるからこそ神秘的で見るものを圧倒する雰囲気を少女は漂わせていた。
すると巨大な玉座に座す少女は……
「主従の契約を結びましょう………」
そう言葉を発する彼女の声はガラスのような透き通る声で、水が水面に広がるかように俺の中に染み込んでいきあまりの心地よさから目を瞑り聴き入ってしまう…………
「私の足に口づけをしてくださる?」
なん…だと?
驚き視線を前へ向け直すと彼女の顔は耳まで赤く色付いていた。そんな彼女にジト目を向けると視線に耐えきれなくなり唸り声を上げてカッと睨んできた。
「仕方ないじゃない!これしないと主従の契約を結べなくてあなたを私の使徒にできないんだから!」
そう言うと彼女は顔を両手で覆ってしまった。そんな彼女を見て飛鳥は……
「え…」
片膝をつき女神の片足を優しくする持ち体を傾けていく、そして……
「ッッ〜!!!!」
声にならない悲鳴と更に赤くなった顔をよそに飛鳥は……
「私、鳥野飛鳥は女神ミゼラブル様に永遠を捧げ尽くす事をここに誓います」
顔を上げた、本来の飛鳥がこの宣言を聞いたら悲鳴をあげて逃走していたであろう。だが今の飛鳥にはそのような事は一切ないそれどころか姉に妹に友に、誇れる自分に少しは近づけたかな、と思うのであった。
「わ、私女神ミゼラブルは鳥野飛鳥を使徒として任命し困難にぶつかったときに助け導くことを誓いましゅッ……」
飛鳥の宣言を聞き、何とか意識を切り替えることに成功した女神は少年を己が使徒にすることを誓った。かんだけど。この誓いは何者にも侵されず汚されず”両者の命尽きるまで永遠に続くだろう”。
「ッ!!」
その誓いの直後飛鳥の体は胸のあたりから輝き始め、やがて光は完全に飛鳥を飲み込んだ。
(何が起きた………なんだか不思議な感じだな…)
飛鳥は光に包まれた直後から何処か不思議な感覚に襲われていた、この場には訪れたことがないのに懐かしく、温かいそのような感覚、そこへ誰かの声が聞こえた。
「起きて、起きて」
「……?」
「あ、起きた……頑張ってね!」
「!…はい!頑張ります!今度は、みんなを守れるように……」
そう答えると懐かしさは何処かへと薄れていった、そこからは段々と意識が浮上していき……
「あ、戻ってきた」
温かな温もりに底から浮上し目を開けると女神様がいた、だが先ほど会ったばかりだが分かるほどの異変があった。おい女神様、何ニヤニヤしてるんですか!
「女神様?」
「ふふ、ご、ごめんなさいね。何だかさっきまでとずいぶんと様変わりしたものだから」
「めーがーみーさーまー?」
「だ、だって貴方さっきと身長が全然違うじゃない」
「………」
そうなのである、さっき誓いを立てる前は180cm程あった身長がなんと160cm程までに縮んでしまったではありませんか。その変わりように女神は笑い、飛鳥は………
「どーしてだよー!!」
叫んだ
「俺の唯一の取り柄がー!身長が高いからこれまであまり突っかかってくる人がいなかったのにー!」
「あっははあぁぁ~!」
「ごめん、取り乱した」
「良いわよ、私も…面白かったし」
「…………」
あれから少しの間、女神は笑い転げ、飛鳥は絶叫する、そんな空間が広がっており、どちらも正気に戻るまで少々時間がかかった。
「それにしても…」
「?」
そう唐突に女神は飛鳥の後ろに回り込みそして正面に戻りまた後ろに回りを何度か繰り返しやがて満足いったのか戻ってきた。
「私にあまり似ていないわね、従者って言うんだから主に似ると思ったのだけれど違うのね」
そう言う女神の言葉に飛鳥は自分の身体を見れる範囲で見た、髪は女神は純白だが飛鳥と言うと黒から金髪へ日焼けして少し茶色なった肌は女神同様白へ、目の色は………
「はい、鏡」
「あ、ありがとう」
目の色は夕焼けのような赤色へと変わっていた。
「すごい変わりようだな……」
「ええ、だけど変わったのはそこだけじゃないわよ、あなたは背中に生えてきたのね」
そう女神様が言うと背中辺りに今までにないしっかりとした重みがそこにあり、改めて確認すると翼型の白を基調とした色に関節部は黒く所々赤い線のような筋が通っている、また赤い筋の広がりの中心には赤い丸が前後に付いている。でかさは翼を広げると両翼入れて3mほどだろうか、と考えていると女神様がポツリと言葉をこぼした。
「翼型なんて珍しいわね、大体が籠手型や仮面型だって本に載っていたのに」
と、言うと隠しきれていないほどに身体が揺れていた、そんなに嬉しいのかと聞こうとすると女神様は翼目掛けて飛び掛ってきた。
ガンッ!
「いったーーい!!」
「何やってるんだよ」
「だって、だって、大きい翼があるんだったら一回はやってみたいじゃない!」
そうなのかと言うと女神様はそうなんですー、と返してきた。そうなのかと頷くと…
「それじゃあ、お次に神秘の扱い方について説明していくわよ」
どうやら神秘の使い方について教えていくようだ。
「あなたは使徒になって身体能力は前の身体より格段に上がってはいるけれど、神秘が扱えなかったら意味がないわ。何故なら後で説明するけど使徒の特性には神秘が必要だからよ」
「ふむふむ」
「まず目を瞑りなさい、そうして心臓あたりに神経を集中してみなさい、そうすれば温かい感覚が伝わってくるでしょう、それが神秘よ。」
確かに、何だか心臓あたりになんかほわほわする感じが……
「あなたは使徒で説明していないけれど、ヘイローて言うのがあるのだけれど、他の人達と違って使徒のヘイローは補助装置のようなものだから感じ取ったら自在に扱えるはずよ」
女神の言われるがままに心臓あたりにあるほわほわしたものがこうしたいと言う思考に従って動いてくれた。それを身体の全体に生き渡らせるように広げる、それが終わり目を開けた、目を閉じる前と後で身体に感じる感覚が違ってくるのが分かった、温かい………
「どう?」
「あぁ、神秘、俺にも感じる事ができたよ…」
そう言うと女神は少し微笑み、すぐに笑みを引っ込めて次のステップに取り掛かった。
「次は、使徒化には成功したし特性チェックしましょうか」
…と言ってくる、そういえば使徒には特性があるのか、と先ほどの会話を思いだし女神様を見る。
「それじゃあ、目を瞑ってちょうだい」
そう言われ言われるがままにまた目を瞑った、すると女神様はあれがこうして、だとかそれがこうで、だとか言っている、その言葉を聞きながら心臓あたりから身体全体に行き渡った温かさを感じながら待っていると……
「あれ?なんか本になかった項目が………へぇ~そうなんだ〜」
「………」
これはあれだ、この声の上がり様、絶対に何か面白いものを見つけた声だ、と思い心臓の鼓動は速いがそれはワクワクから嫌な予感がする時の感覚にジョブチェンジした。
「あなたの他の使徒にはない特性が分かったわ」
「…どのような、ものでしょうか?」
恐る恐る聞くあまり、丁寧な口調になってしまった。
「急かすわね、まあいいわ。あなたの特性”七伝装束”よ」
「?」
聞き慣れない単語に顔を傾ける、そんな俺に女神様は少し口角を上げながら言う。
「簡単に言うと七体の古にいた怪異や現象とかの伝承に出てくる力や特性、そのあり方や見られ方を模倣あるいは顕現できるっていう特性ね」
曰く女神様が言うには…
一に:角を持つ二面性の蛇
二に:美しき災いと不吉の象徴
三に:人々を守る妖の式
四に:三本足の行方を導く神の使い
五に:すべてを飲み込む砂の蟲
六に:雷と共に生きる獣
七に:水を司る九首の龍神
これを扱い、平行世界から連れ出した子達を守るのが俺の使命のようだ。
「それじゃあ、あらかた説明が終わったから行ってもらうとしましょうか」
「!……分かった、それで、どのように行くんだ?」
「それは……こんな感じにッねッ!!」
「グォォ!?」
女神にどのように行くのかと問うたところ、急に後ろの空間が空き夜空が見えた。その光景に気を取られ空間を覗こうとした瞬間後ろから突然の衝撃。不意打ちということもありうんばりも効かずその空間へ落ちる刹那、俺を突き落とした張本人が短くこう言った。
「私はそっちへは行けないからあなたが現地で頑張りなさい!支援はしてあげるから。また少しあとで会いましょう」
そう言うと言葉を返す間もなく空間は閉じてしまった。そして空間と空間の狭間そこを漂い、ある一筋の光を見つけたそこへ手を伸ばし、つかんだ瞬間世界が変わる。
暗き狭間の世界から、暗くも星明かりに照らされた雲の上へと。
?
何故、雲が見えるんだ?
何故、俺は……雲の上にいるんだ、それも落下しながら……
「はぁ〜」
分かっていたさ、あの女神様が少し抜けていることぐらい。
だけど、だけど………
「なんでさぁぁぁぁぁ!!?」
耳に風を切る音を響かせながら、神の使徒鳥野 飛鳥はキヴォトスへと舞い降りた。
◇◇◇◇◇◇◆◇◇◇◇◇◇
「ごめんね、ホシノちゃん、こんな時間まで付き合わせちゃって」
「いいですよ、私も先輩の行動を止めずにお宝探しに付き合っていたんですから」
これは夜も夜、よいこの学生であればすでに帰宅している時間、そんな時間であるため街灯がちらほらついている、だがそれだけだ、周りを見渡しても家に明かりなんてひとつもついていない、だからか寂しく感じてしまう。
それでも寂しくないのは隣にいる人のおかげだろう、この人はアビドス生徒会長なのにいつもいつも失敗ばかり、なのにいつも笑顔で楽観的で……
それでもそんな底なしの明るさと優しさでどんな事でも最終的には笑顔で終わらせる、そんな人。
私にはそんな事出来ない、明るくいる事なんて、ずっと優しくいる事なんて……だからこそこの人を失いたくない
この日常がずっと続けばいいのに、と思っていると先輩が空を見上げ大きな声で私を呼んだ、なんだなんだと見上げると………
「見て見てホシノちゃん!彗星だよ!今日は彗星があるなんて予報無かったに!キレイだね!」
星は何度も見たことがある、先輩には言ってこなかったが夜にはよくパトロールをしていたから、だけどいつも見る星とは違って青や緑が混じる長く尾を引くそれは幻想的で……
と、無意識のうちにこぼすのであった。
「またもや暁のホルスに提案を受けてもらえませんでしたか」
夜、とあるオフィスに明かりもつけず壁一面から月や星明かりにのみ照らされる場所から夜景を眺め契約にこぎつけず悩む黒いスーツを着た一人の異形の姿があった。その大人の体は影の様に暗い無機質の体に人で言う右目にあたる箇所は発光し、その部分から顔全体にかけ亀裂が走り顔の部位などを形成している、また頭部の亀裂からは黒いモヤのようなものが溢れその者の怪しさを引き立たせている。
「次の機会にはどのようなアプローチを試みましょうか…クックックッ、おや?あれは……」
その異形の目には一つの不思議な現象が映し出されていた。
「先ほどまであのような彗星などなかったはず、それに彗星が来るのはもっと先のはず……」
そのような言葉をブツブツと言っていると途端に今あったはずの彗星は消え元々そこには何もなかったような、いつもの暗く月と星で彩られた空が映し出された。
「ッ!、これはこれは、とても面白そうな事象が目の前で起こりましたね。暁のホルスへのアプローチ同時に、あの不可思議な彗星を調べるといたしましょう」
「だぁぁ!!危なかった!来て早々死ぬかと思った……女神様!聞こえてますか!七伝装束の二番、彗星を使ったんで無事に着陸できそうなので、通信できるか飛ばしたんですが聞こえてますか?」
飛鳥はキヴォトス到着早々にこのような事態を招いたポンコツ女神に通信を飛ばしていた、なぜ通信ができるかと言うと、それは女神との話ができる使徒の特性の一つである。
「あ………あー、あー、聞こえる?聞こえてたら返事ちょうだい」
「聞こえてるよ、それにしてもどうして空の上なんかにゲートを開いたんだ…おかげで着いて早々死ぬところだったんだけど」
「それはごめんなさいね、まさか私もゲートを開いた先が雲の上だなんて予想もつかなかったんだから」
まじか、と心のなかで思いながら飛鳥はこのあと着陸しだい何をするのかを聞いた。
「まずはそうね、ブラックマーケットに行ってちょうだい、あそこなら学籍なんか持ってないあなたでも高くつくけれど拠点を持てるわ」
そう女神が言いキヴォトス最初の目的が決まった。