ディストピア・サイバーシティに転生した   作:イッツ

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本部 無駄に広い 理由 検索

 

 

 

 市民は車を使うことが許されないのがこのサイバーシティの常識である。勿論パトカーとか救急車とかはあるが、俺らブルーカラー戦闘員はショッカー以下の扱いが普通だ。

 しかし、今回は何故か空飛ぶ車の迎えが来た。自動運転で、特に救急車も来ていないので気楽な旅である。

 非身体改造人間である俺は何だかんだエセ改造人間で通してるが、さっきからズキズキと腹が痛むので、酷く助かった。

 

「いやあ〜^運動したら喉乾いたね! 指揮官くん達どう? ポカリ飲む?」

「ポカリ……?」

「ポカ…何ですドイル」

「"不審なものは受け取れないかな"」

 

 塩対応過ぎない?

 いやまあ、ディストピアの人間にポカリスエットが通用すると思っていなかったけど。今のは口が滑っただけだけども! その反応は悲しい。

 

「オジサンがチャイルドな頃は15で不良でポカリぐびぐび飲んでたのになあ……これがジェネレーションギャップ?」

「"ドイルさん不良だったんだ"」

「うーん、たぶんそう恐らくそう」

「"ドイルさんが自分の話をするなんて珍しいね"」

 

 そうかなーなんて返事をして、ドリンク型鎮痛剤のパウチに刺さるストローを啜った。うん、不味い。銀色のパウチで柄がないのもディストピアSF飯ってふうだ。食欲が減ります評価星1。そんなこと通りで言えば自宅に警察が来るから口には出さないが。

 

「あの、指揮官……さんは、警察の方なんですか?」

「"私達は治安維持特別局S・Y・Sの者です"」

「エスワイエス──って、あの!?」

()()ですか、レイチェル氏」

「あっ、イエ、その……少々物騒っていうかぁ……」

「"蛮族呼びって一般の方にまで広がってるのか……"」

 

 若者達が楽しそうに話しているので、俺は床に転がされた気絶したオッサンを見て黙っていた。

 ニューヨーク……旧ニューヨーク地区から旧ワシントン地区までは約4時間くらい。まあオジサンが若い子達と居るには苦しい時間だが、俺は心は若いので耐えられた。

 

「あの、コナン・ドイルさん」

「はい?」

「す、すみませんでした」

 

 本部が見え始めた頃にレイチェルは突然ペコリと頭を下げて、ブラウンヘアーが垂れてつむじが見えた。ヘリみたいな席だったから、ちょうど正面に女子二人が座っていたのだ。隣は指揮官。

 

「あーいいよいいよ。全然痛くないしね。戦うのもオジサン達の仕事だしよ」

「……でも、絶対お腹……」

「オジサン強いから大丈夫だってヘーキヘーキ」

 

 空飛ぶ車が降下して行って、本部の屋上ヘリポートに着地した。車だって言うなら駐車場に止まって欲しいものである。

 

「"降りようか"」

「イエッサー」

「了解です。レイチェル氏、お手を。エスコートいたします」

「ひゃわわわわわ」

 

 後ろで百合百合してるのを感じてヘリから降りる。俺と若者。軽く着地するだけでも軽やかさが違うのは何故だろう。

 屋上のドアが蹴り開かれて、そこから肩で風を切り、格好だけは堂々と石燕が歩いてきた。

 

「自動検査室に案内します。全員着いてくるように」

 

 滅多に敬語を使わないこいつがこんな丁寧な対応をするだなんて──明日は槍が降るのかもしれない。

 胸を強調するように腕組みをして、大股に歩くのに着いて行く。こいつにここまでの協調性があったなんて本当に知らなかった。

 密やかに、背後で指揮官が話した。

 

「"……石燕先生、怒ってるのかな?"」

「いえ、違うかと……」

 

 アントワネットが小声で否定して、それはレイチェルには届いていないようだ。あからさまに気もそぞろ。本部のあちこちを目新しそうに見回しているらしい。

 馬鹿みたいに広い廊下。馬鹿みたいに真っ白な壁。馬鹿みたいにデカい寸胴ロボット。自動検査室の設備である彼、配膳とかしそうな見事な寸胴のメタリックなロボは、ウィーンと内蔵アームを伸ばして挨拶した。

 本部(ここ)はこんなんばっかりなのだ。そりゃ一般市民からしたら目新しいだろう。

 

「ハロー、セキエン先生。そちらの方はお客様ですか?」

「やあ、モラン。彼女はレイチェル嬢だ。データは送っただろう」

「……ハイ、確カニ確認デキマシタ」

 

 ぬるやかに動き出した"モラン"に避けて道を譲ると、モランは液晶にニッコリとした模様を表示させて、アームに着いた人工の手をレイチェルに突き出した。

 

「初メマシテ、ワタシハモラント申シマス。ヨロシクネレイチェルチャン」

「あっ、ど、どうも……?」

 

 マネキンのような白い手をおずおずと取って、レイチェルとモランは緩く握手をした。

 

「ワタシハ医療用人工知能ノ搭載サレタ多機能、有能、スーパーウルトラロボット・ドクターデス。アナタノ悪イトコロヲ見ツケテミセマス」

「ええ……なにこれは……」

 

 いきなり不信感を抱かれたらしいモランの頭頂部……頭頂部?を撫でて、俺は助け舟を出した。

 

「悪いね、自信過剰なロボなんて驚いたろう? こいつはモラン。確かに──やや意識高めなところは玉に瑕だが、医術の腕はそこらのスーパードクター(名医)より上だよ」

「へ、へえ、ロボットに自信過剰とかあるんだ」

「ワタシハスーパーウルトラファンタスティックロボット・ドクターモラン。安心シテクダサイ。オ注射ハ今回ハ無イデスカラネ」

「……まあちょっと刺激的でファンタスティックな性格だけど、本当に医療の腕はピカイチだから……」

「怖いよー怖いよー」

 

 レイチェルは完全に怯えてアントワネットの後ろに隠れてしまった。モランを小突くと、画面に舌を出した顔が表示された。やっちまったぜと後頭部をアームが触るのも小賢しい。お前がやってもただの挙動不審なメカなんだよ。

 

「レイチェル氏。モランに任せれば安心です。抵抗は無意味ですよ」

「嫌だーっこの感情豊かすぎるロボット意味わかんなくて怖いよぉー!」

「"気持ちは分からなくもない"」

「指揮者さん助けてーーっ!」

 

 ガシッと新たに伸びた捕獲用アームに掴まれて、バタバタ足掻きながらレイチェルは検査台に引っ張られて行った。あの剛力をビクともしねえモラン凄え……どんな腕力してるんだろうか。

 

「……よし!」

「よしじゃないだろ石燕」

「うるさい。知らん。この後は各自検査が終わるまで自室で待機しろ。」

「へいへい」

 

 言われた通り各自解散しようとすると、「おい待て」と俺だけ呼び止められた。

 

「お前も診て貰うんだぞ」

「……へいへい」

 

 バレていたらしい。オジサン(社会人)お得意の技空元気は、無駄に目敏い石燕には通用しなかったようだ。

 腹をさすって、あーあとため息を吐く。

 ──なんで気付くかなあ。こいつ。






 エージェント・ブック

コードネーム:コナン
かのシャーロック・ホームズの生みの親、サー・アーサー・コナン・ドイルのコードネームを持つ男。自称普通のオジサン。巧みな戦闘技能と百発百中の狙撃スキルで、どこに行っても大体仕事ができる有能。性格にも瑕疵のない男である。しかし彼には謎が多く、時折わけのわからない無意味な発言をしたりするので、その際は指揮官は情報の取捨選択を正しく行うべきだろう。
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