「さあ、憧れの世界へ導こう」
その存在を知覚したのは、今だった。
純白の浮き雲のようなソファに腰掛け、目の前に見えるのは白昼夢のごとく見える蜃気楼の造形。人と言える白い影。然れど人ではない五つの何かが、ハッキリと私の目の前に座っている。
「初めまして、人間。私達は君達の言語的に称すると最も近しく最も最適な言葉は『神』だ」
「ふむ、安直な言葉だ。神は自分自身を神と名乗ることは無いだろう。おそらく君達は『神』足り得る存在であり、まだ『神の座』に辿り着いていない。───差詰、君達は『天使』なのだろう」
無機質且つ無感情の言葉に対して、そう告げると五人の内の一人は肯定を示した。実に興味深く、そしてシンプルすぎる造形美を誇っている存在だ。
「先ずは貴殿方の目的を聞いておこう」
「我々の目的は一つ。ある種の可能性を見てみたい。君達の住まう世界の老若男女は我欲を満たすため、様々な空想の世界を構築し、産み出している。其処へ君の事を送り込み、その人生を観測していたい」
「ふむ、要するに自分達の産み出した劇場の中に私という人間をスパイスとして加え、どの様に変化をもたらす。あるいは、来すのかを確かめたいわけだな」
五つの白い影は頷いた。
「その世界はどの様に変わる?」
「お前の思うままだ」
「そういうことを望むのなら、私の記憶を覗き、より効果的な方法を探ってみると良いだろう」
「理解した。チート能力というモノを与えていけば人間は動き、『物語の世界』に踏み込める。ユニークな提案を思い浮かべる。幾つ渡せば満足する」
「最低一つ、多くて二つだろうね。他人の人生を奪う『成り代わり』や『憑依』というモノは止めておけ。その人物の精神を見るには、本人の精神を感じやすくしておかなければいけない」
「では、お前のチート能力を聞きたい」
「決まっているさ。『統一された世界』だ。私の頭脳をフル活用できる『知性』も付け加えておこう。私の頭の中を読めるのだ。簡単に理解できるだろう」
そう告げると私と会話していた白い影は納得し、私の身体に向かって妖しい光を授ける。成る程、瞬時に物事の全てを理解できる能力だ。
「私は、何番目に呼んだのかを聞いておこう」
「お前は一人目だ。転生の権利を得るのは『器』足り得る高潔さを必要とする。お前の魂は合格だ」
そう言うと神を自称する天使の一人が右手を差し出してきた。私の記憶を読んだのだろう。
「Enjoy your trip。気を付けて向かえ」
私は、にこやかに笑みを浮かべた。