「物書きお姉さん」の登場人物紹介   作:SUN'S

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────神々は君を見て、こう言うだろう。

「さあ、選択肢を選ぶ権利を与えよう」





■ 糸の章

ふと、いつの頃だったか。

 

雲の上に立ってみたいとか雲の上に寝転んで穏やかに一日を過ごしてみたいと考えていた小さな頃の自分の事を思い出しながら、私は真っ白な雲を固めて作ったソファに腰掛け、五人ののっぺらぼうと向かい合っている。

 

見た目は『鋼の錬金術師』に登場する真理に近しいけれど。私は錬金術師という訳でも無ければ真理を探求する学者という訳でもない。

 

至って普通のOLだ。

 

「初めまして、人間。私達は君達の言語的に称すると最も近しく最も最適な言葉は『神』あるいは『天使』あるいは『堕天使』あるいは『有』あるいは『全』あるいは『空』あるいは『根源』とも言える存在だ」

 

「……流行り物を読んだんですか?」

 

「いいや、君の記憶を見ているだけだ」

 

プライバシー侵害で神様を訴えることは可能なのだろうか?と疑問を抱きつつ、私は男神か女神かも分からない五人の存在を半信半疑に見据える。

 

「先ず、君の状況を説明すると過労死だ。愛憎入り雑じった環境下、よく事件に発展しなかったものだと私達は感心している。君、とんでもない(ヤンデレを惹き付ける)才能あるよ」

 

「褒めてもらえるのは嬉しいですけど。この場所はどういう場所で、どういう理由で、死んだ私を呼んだのかを教えてほしいんですが……」

 

そもそも死んだという情報も俄に信じがたくて、私は目の前に見える彼らを怪しんでしまう。心を読める相手に不用心と分かっているけれど。

 

そうなるのも仕方ないことです。

 

「君を呼んだ理由はシンプルだ。輪廻転生とは別の提案を君に持ちかけるためであり、ある種の可能性を確かめたいと思ったからだ」

 

「ある種の可能性?」

 

「そう。この世の生誕と終焉を見届けるのは『神』としての務めだと思っているけれど。何分、見ているだけでは分からないことも多い」

 

「そこで私達は試行錯誤の末、極めて高い『異種』の存在を『物語の世界』に送り込み、その人生を観察して今後の参考にしようと思うんだ」

 

「───要するに実験動物、モルモットですか」

 

予想外の展開に冷静さを失いそうではある。が、アニメや漫画、ライトノベル、洋画邦画、雑学本、ゲーム、参考書にもこう言った上位存在の指示を受け取り、転生・転移を行う作品は知っている。

 

しかし、私は身体を鍛えたアスリートや戦場や僻地を往く屈強な戦士でもない普通のOLであり、異世界に行ったところで死ぬのは目に見えています。

 

「安心して欲しい。そう危惧する者は何名もいたが、お前達の行く末を見守るために加護を授ける事を話せば簡単に了承してくれた」

 

「二名ほど変わった加護を願った者はいたな」

 

「あれだろう。『統一された世界』と『ラスボスになりたい』と願っていた二人だったな」

 

何ですか、その恐ろしい願い事。

 

────けれど。彼らの言う加護というのは、いわゆる『異世界転生』系列のライトノベルやアニメ、漫画に度々登場する「チート能力」の事でしょう。

 

「そう、それだ。チート能力というものだ」

 

「他人に生まれ変わる事を望んだ者もいたぞ。確かお前の前に居た者は『ギルガメッシュ王』という人間に成りたいと言うので、その『ギルガメッシュ王』とやらに転生させ、その人間の人生を完璧に歩ませている」

 

「完璧、というのは?」

 

「そのまま言葉の意味だ」

 

「他人に生まれ変わるという事は他人の人生を代わりに歩むという事を意味する。その『ギルガメッシュ王』の歩むべき歴史は変える事は理に反し、完璧に演じて完全に模して完成に代わりきっていなければ『ギルガメッシュ王』には成れないだろう?」

 

……ああ、流石は神様ですね。

 

人間の欲望を良く知っている。

 

『ギルガメッシュ王』を選んだ人は今も尚、終わることの無い『ギルガメッシュ王』という役を演じて、次に進むために一切の差異を行わず、一切の欲を持たずに演じなければいけない。

 

「……その人は何周目ですか?」

 

「2万と724、いや、ちょうど725回目だ」

 

「しかし、あれは直ぐに間違える人間だ。何度も同じ過ちを繰り返している」

 

そう言って神様の一人は私に映像を見せてくれた。『ギルガメッシュ王』は、私の想像していた通りに『Fete』シリーズに登場する英雄王であるものの、その姿は傲岸不遜な態度ではなく常に何かに怯えている。

 

「ああ、またやり直しだな」

 

「やはり、この者は学ばぬなあ」

 

五人の内の二人がそう告げた瞬間、英雄王ギルガメッシュは赤ちゃんの姿に戻り、まるで狂ったように泣き叫び、乳母達を困らせている。

 

これは、永遠に終わることの無い地獄だ。

 

「まあ、他人の事はどうでも良いだろう。今はお前の行くべき物語を手助けする加護を考えて、私達に話してみると良いだろう」

 

「最低限の加護として二つまで与えるぞ」

 

きっと、この言葉に拒否権は無いのだろう。

 

無垢すぎる故の悪意無き善行であり、彼らは自分の行動は正しく人間と世界の行く末を見守るために、こうして行動を行っているのだ。

 

「……では、私は記憶を失いたくないので『前世(わたし)の記憶の保持』と、美味しいものが作れるように『料理のスキル』の二つをお願いいたします」

 

「ふむ、前世の記憶の保持というのは前世の記憶(この世の全て)で相違無いな?」

 

「はい。間違いないです」

 

「お前の言う料理のスキルというのは、私達の見ているお前の記憶の中にある料理(かがく)に関する全能(スキル)で問題ないのだろう」

 

「そうです」

 

「ふむ、他の者に比べると地味だな。もっと俺を強くしろ、お前達の神の力を寄越せ、ハーレムを築くためにモテるようにしろとは言わないのか?」

 

「言いませんよ、そんなこと!?」

 

思わず、そう突っ込んでしまった。

 

「やはりお前は他の者に比べると性善すぎるな。しかし、その優しさを私達は信じてみたい。故に、私達はお前を見守っているぞ」

 

そう言うと彼らは私の両の手を握り締めて(・・・・・・・・・・・)、真っ白な人の形のまま笑った……様な気がする。

 

「Bon Voyage。良い旅を」

 

「……フフ、ありがとうございます」

 

私は五人の神様に頭を下げ、ゆっくりと消える身体に一抹の不安を抱きながら、どの世界に生まれ変わるのだろうと更に不安を募らせる。

 

 

 

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