「さあ、時を超える想いを魅せてくれ」
「……誘拐、にしては綺麗ね」
燦々と照り付ける太陽。
いや、太陽に見えるけど、電球のようにも見える変な球体を眺めているとアタシはいつの間にか用意されていた雲で出来たソファに腰掛け、目の前に白塗りの変態が五人も座っているのが見えた。
随分と変わった趣味をもっていると思いつつ、手足を縛ったり口を塞ぎもしない彼らを静かに見据えていると「初めまして、人間。私達は君達の言うところの『神』だ」という言葉を直接頭に叩き込まれた。
「……何、アタシって死んだわけ?」
「逆恨みと勘違いの交錯による刺殺だ。君の事を恋人だと思い込んでいた分、裏切った時に受けるダメージは大きく勘違いしてしまった様だ。冷静さを失えば人とは脆く儚い生き物と言える」
「OK。アイツは地獄送りにしといて」
だんだんと思い出してきた。アタシは部下に呼び出されて気付いたら、この場所に存在していた。しかし、なんとも言えない状況になっているわね。アタシ、同性なのに好きになられていたわけ?
「君も難儀な人生を送っている。恋愛関連の出来事は二十件近く有る。その殆んどは勘違いとはもう少しばかり他人に優しく接する事を止めておけば良いものを」
「ハンッ!人様に優しくするのは当たり前の事でしょうが、自己保身に走る暇があるなら助けるのはアタシの生き方よ。この生き様は変えるつもりはないわ」
「流石だ。君を呼んだ理由はシンプルだ。輪廻転生とは別の提案を君に持ちかけるためであり、ある種の可能性を確かめたいと思ったからでもある」
「良いわよ。受けてあげる。ただし、損得抜きに言うなら良い人生を寄越しなさい」
そう告げると神様を自称する男は笑った。
「うん、うん、やっぱり面白い」
私の回答に喜ぶ神様に呆れながら話を聴けば既に三人は転生しているらしく『統一された世界』なんていう馬鹿みたいなモノを願ったヤツもいるらしい。
まあ、その世界には引き込まれないわね。
「その『特典』っていうのにNGは存在するの?」
「NGというわけではないが、原則として他人の人生を貰い受ける事を望んだ場合は【追随体験】と【人生経験】を完遂するまで転生する事は出来ないね」
【追随体験】
その人物の生涯を体験する事。
【人生体験】
その人物の生涯を経験する事。
一度目は映画を眺めるように人生を一緒に辿り、二度目の経験によって完璧に一度目を再現しなければ人生を貰い受けた事にはならず、その人生を二度も三度も何千回とやり直すことになるそうだ。
────要するに、生き地獄を味わう訳だけど。
「さあ、君の望みを聴かせて欲しい」
「……『誰よりも何よりも速く走りたい』かな。アタシの人生を見てるなら分かるでしょ?今度は誰にも負けない速さが欲しいのよ」
「成る程、最速になれる力がほしい。まだ足りないだろう?二つ目の望みを聴かせてくれるかい」
「えー、うーん、そうね。今度は殺されたりしない。私にとって『最高の出会い』をちょうだい」
「承諾。その二つの『特典』を授けよう」
真っ白な身体でお辞儀をする神様にそう簡単に頭を下げても良いのかしら?と考えながらも、今度は楽しくのんびりと過ごせることを期待する。
「Safe travels。幸多き旅を」
「えぇ、そうするわね」
軽く神様に手を振って私はソファに凭れる。