第五特異点逸聞 北米終末荒野ガーデン・オブ・エデン   作:名詮自性

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第11節:Meet Dogmeat

うっかり全裸をお披露目してしまった。

普段パワーアーマーを使う時は肌着としてジャンプスーツを着ていたから、まさかこんなことになるとは。

私としては、上のミサイルで男を殺し、下のマグナムで女を殺すBlack WidowでLady Killerだと有名になってしまって久しいので、見られたりバレたりは今更全く気にしない。

ただ、立香とマシュがそういうのに慣れていないのは会ってすぐにわかったので、なるべく隠す方向で行こうとは思っていた。

案の定、マグナムを目撃した立香は相当なショックを受けたようで、記憶から消えろー消えねーと悶絶している。

過去の経験から解決策として、何回も見れば慣れるのでは?と提案したら、立香とエレナに左右の脛を同時に蹴られた。

Pip-Boyが視界に映し出す体力ゲージが1つ減った。

次に同じようなことを言ったらマシュの盾で殴られるらしい。脛を。ピンポイントで。

マシュは困惑してるけど、マスターのご命令なら、とやる気は満々である。

足の1本や2本で顔を真っ赤にして狼狽える立香が見れるなら安いもんだなー、と思ったけど口にするのはやめておいた。スティムパックは有限なので。

うん、実は立香をからかうのが少し楽しくなってきたのだ。

私にこんな時期はなかったからとっても新鮮。Vaultは閉鎖空間だからね、色々ないからこそ色々あったのよ……外に出たら出たで大変だったし。

 

アンタは裸を見られて恥ずかしくないのか、と立香に怒鳴られたけど。

着てる服やアーマーがボロボロになるほど攻撃を受けて、丸裸にされることが多々あったので慣れてしまった。

釘つき角材(ネールボード)で袋叩きにあったり、火炎放射器で焼かれたり、爪と牙で肉ごとちぎられたり。

裸だなんだと気にしていられるほど、楽な旅じゃなかった。骨とか内臓が見えてるよりはマシな状態だ。

ウェイストランドでの生活は万事そんな感じだから、死ななきゃ安いよ、と笑ってみせたら、三人ともドン引きだ。もはや見慣れたまである。

 

今の私は、立香にマシュ、エレナの三人を私みたいな目に合わせないためにここにいる。

戦闘は真面目にやるから、酒とか全裸とかはちょっとしたお茶目として許してくれない?

あ、ダメっすか。そっすか。

しょーがない、真面目にPip-Boyの確認するかぁ。ヌカ・コーラあるかな?

 

――――――――――――――――――――――――

 

「で、どんな感じかしら?」

「うん、『Skill』が50まで戻ったね。あと武器や防具が増えてる。例えばこれ」

 

リッカがPip-Boyを操作すると、その手に大きな銃が出現した。

 

「スナイパーライフル。見晴らしがいい場所なら先手を取れる。他にも銃やら刃物やら鈍器やら爆弾やら、使い慣れた武器が揃ってるよ」

「成果があってよかったです!」

「ホントだよ。全裸見せられて終わりだったら流石に怒る所だったよ」

「根に持つなぁ。地元だったら男女問わずおひねり飛んでくるぐらい自慢のボディなんだけど」

「文化が違い過ぎる!」

 

叫ぶ立香を尻目に、Pip-Boyの確認を続けるリッカ。

 

「レイダーアーマーに傭兵服かぁ……防具はあんまりいいのが増えてないね。パワーアーマーはだるいし……コンバットアーマーは次に期待かな。他の道具は……ん?」

「どうされましたか?何か有用な道具でも?」

「道具も増えてるけど……飼ってた犬の名前が書いてある。とりあえずタップしてみるか」

 

リッカがPip-Boyの画面をつつくと、突如足元に光球が出現した。

何事かと他の三人が距離を取り警戒している内に、光球はみるみる大きくなり、徐々に何かの形を取り始める。

次第に色づき始め、そこに現れたのは。

 

「ワン、ワン!」

「ワァオ、ドッグミート!!」

 

黒と灰色の毛並みの、大きな犬だった。リッカが喜色満面で抱き着き撫でまくる。犬も喜んでいるのか、目を細め尻尾をブンブンと振り回している。

 

「……マシュ、今『犬肉』って聞こえたんだけど」

「はい、リッカさんはドッグミートと……日本語に直訳すると『犬肉』ですね。会う方のmeetの可能性もありますが」

「非常食のつもりで飼ってた犬って、あの子?」

「かもしれません……」

 

二人の会話中にもじゃれ合いは続き、リッカは地面に押し倒され、顔中をベロベロと舐められている。されるがままのリッカも、本当に心の底から喜んでいるのがわかる。

 

「あんだけ仲いいのに非常食……?」

「別の犬のことかもしれませんし……」

「そうであって欲しいけど、名前がさぁ……」

 

立香とマシュが困惑していると、エレナがリッカに歩み寄った。

非常食云々の話をした時、エレナはまだ寝てたっけ、と立香は思い出す。

 

「リッカ、この子は?犬種はジャーマンシェパードかしら」

「ドッグミート!優秀な番犬で非常食だよ!」

「そう、非常食……非常食!?」

「お互いにね。私に何かあった時は、この子が私を食べて生き残るの。ね、ドックミート?」

「ワン!」

 

肯定しているような鳴き声。本当に意味がわかっているのだろうか。

 

「それにしてもお前、なんで出てきたの?」

「ワン、ワン!」

「そうかそうか、全くわからん」

「馬に乗っていたライダーの多くが愛馬と共に召喚されるように、自分の一部と呼べるほど長く苦楽を共にした動物が召喚されるケースはあるわね……自分の、一部?」

 

エレナが後ずさる。話を聞いていた立香とマシュにも戦慄が走った。

 

「なーに?皆で怖い顔して。この子は味方に噛みついたりしないよ?あ、ドッグミート、この三人は味方。守ってあげてね」

「ワン!」

「あのさ、リッカ」

「んー?」

「食べたの?その子」

「食べてないよ?そこまで飢えなかったし、この子も死ななかったし」

 

三人同時に深く息を吐いた。

食べた犬に対してこの態度だとしたら、流石にリッカとの付き合い方を考え直す必要があっただろう。

 

「じゃあなんで連れてこれたんだろうね?」

「エンクレイヴとの戦いの頃は、常に一緒にいたからじゃない?凄いよこの子、パワーアーマーごと食い殺すんだから」

「強過ぎない?」

「核爆発に巻き込まれてもピンピンしてるし」

「強過ぎない!?ホントに犬?」

「飼い主の私に似たのかなぁ。お前なんか人間じゃねぇ!ってよく言われたし」

 

リッカ得意の自虐ネタである。本人にネタのつもりはないかもしれないが。

フォローし辛い話題に、三人揃って眉をひそめる。

リッカが人間離れしているのは散々目撃しているが故に。主にウォッカ一気飲みだが。

もうツッコミもフォローも疲れた面倒くせぇ……という態度を隠さないマスターのため、マシュが話題の転換を図る。

 

「えーと、エンクレイヴとの戦いの後も、一緒に過ごされてたんですか?」

「しばらくはね。衝撃の事実が判明してお別れしたけど」

「衝撃の……それは一体?」

「こいつねぇ!私に内緒で嫁も子供もたくさんこさえてたの!時々いなくなるのは気付いてたけど、きまぐれにこっそり後を付けたらもう、いるわいるわ一族が!この節操なしめ、誰に似たんだか!」

「ワオーン!」

 

お前じゃい!

犬語のわからない三人にも、確かにそう聞こえた。

 

「ちょうど遠出の計画を立てている所でね、残って家族を守りなさいって言ったんだけど聞かなくて。最後は怒鳴りつけてお別れ。旅先から帰ってきて住処を見に行ったけど、子犬一匹いなかった」

「それきり、ですか?」

「うん、それっきり。この子なら大丈夫、と言える土地柄でもないからねぇ。どこかで元気でいてほしい、と祈ることしかできなかった」

 

ワシワシとドッグミートの首を撫でながら、柔らかい微笑みを向けるリッカ。

 

「ドッグミート、お前らしく生きられたか?」

「ワン、ワン」

「そうか、私もそうだと思う。それでいいよな、人生なんて」

「ワン!」

「よぉし、ここからは延長戦だ!頼むよ、ドッグミート!」

「ワンワン、ワオーン!」

 

抱き合うリッカとドッグミート。見ているだけで絆の強さが伝わってくる。

 

「何はともあれ、戦力の増強には成功したわね」

「はい、とても頼もしいです」

「私達もよろしくね、ドッグミート」

「ワンッ!」

「任せとけってさ。で、これからどうするの?」

「大西洋に向かって進みましょう。海の近くに一つ、そこまでの中間辺りに一つ、この集落のような場所を探知したわ」

 

エレナの提案に異議などあるはずなく、一同は再び荒野へと歩み出すことを決める。

 

「荷物はまとめてあるから、このまま出発しよっか。リッカ、この銃の入った鞄はどうする?」

「Pip-Boyで出せるようになったから、いらなくなったな……リツカ、使う?」

「銃なんか撃ったことないよ」

「教えてもいいけど……ま、とりあえず持っていこう。あ、お酒無事だー☆ドッグミート、再会祝いに一本いっとく?」

「ワンッ!」

「その意気だ!」

「ちょっと待ってくださいリッカさん!犬にアルコールは厳禁です!分解できず重篤な症状を引き起こします!」

「グルルルル……」

「唸り声!?そんな、私はドッグミートさんのために!」

「好きだもんな、お前。でもマシュが心配するから、今回は水にしとくか」

 

リッカはガサゴソと鞄を探り、別の酒瓶を取り出した。

 

「お酒じゃないですか!」

「違いますー、空いた瓶に水道から出るきれいな水を詰めたやつですー」

「あ、そういえば詰めてましたね……待ってください今パキャって音しました?それ普通に新しい酒瓶ですよね!?」

「水だよな、ドッグミート?」

「ワンッ!」

「よし水だ!飲め飲め!!」

 

酒瓶を哺乳瓶のようにくわえ、前足を補助に頭ごと瓶を上げ、一滴も零さず器用に飲んでいくドッグミート。相当慣れているようだ。

 

「嗚呼、止められませんでした……!」

「違うよマシュ、あれは水、水なんだよ」

「でも……」

「水ったら水!エレナ、水だよね!?」

「命の水ね」

「ほら水だよ」

「それは蒸留酒のことでは!?」

 

三人が騒ぐ内に、一人と一匹はそれぞれ一瓶を飲み干した。

 

「ぶっはぁ!」

「ガフッ、ガフッ、ヘッヘッヘッヘッ」

「喉も潤ったし行くかぁ!付いてこい、ドッグミート!!」

「ワンッ、ワンッ!」

 

リッカとドッグミートが、荒野へと走り出す。

共にウェイストランド中を旅した、あの頃と同じように……

 

 

 

「こらー!リッカ!そっちじゃないわよ!!」

「もうあんなに遠くまで!?リッカさーん!!」

「リッカに同調する問題児が増えただけじゃんか!大丈夫かこれ!?」

 

 

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