第五特異点逸聞 北米終末荒野ガーデン・オブ・エデン   作:名詮自性

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第15節:Free Labor

いやー、死ぬかと思った。

ドッグミートがいなかったり、リーヴァーがあと1、2体多かったりしたら死んでたな。

ここまでズタボロになったのはいつ以来だろう。大統領専用メトロ?アダムス空軍基地?

手首から先がなくなった時はちょっと焦ったけど、とにかく生き残ったので私の勝ちだ。しばらくグールは見たくない。

スティムパックも結構使ってしまった。正直、同じ規模の戦いは無理だ。

レイダーの集落を吸収した時みたいに、在庫が増やせるといいんだけど。

あ、タロン社の奴等が光の粒になって、Pip-Boyに吸収された。なんでこいつらまでいたの?

フェラル・グールと戦ってる時は必死で気付かなかったけど、やっぱり吸収してたのかな?

おーいエレナ、ちょっと確認してほしいだけど……って、めっちゃ怯えてる。

スーパーミュータントに捕まってたのを助けた人がこんな顔してたわ。

私ったら罪な女、なんてね。要は慣れっこだ。好かれたいとか、褒められたくて助けた訳じゃないし。

エレナはしばらくそっとしておこう。立香とマシュは無事かー?

……立香がめっちゃ泣いてる。えっ、えっ、なんで?

 

――――――――――――――――――――――――

 

「うぇっ、ひっぐ、うえぇぇぇ」

 

流れ出る涙を拭おうともせず、嗚咽を漏らしながら泣きじゃくる立香。

何事かとマシュが駆け寄ると、立香はマシュの胸に顔をうずめてより激しく泣き始めた。

マシュは困惑しながらも、立香を抱き寄せ、頭を優しく撫でる。

 

「こんな先輩、初めて見ました。ちょっと時間が掛かりそうです」

「どっか怪我してるとかじゃないよね?」

「外傷はありません。心の問題かと」

「そっかそっか、ビックリさせちゃったか」

 

リッカが生きているという安堵。

リッカがああなってもまだ生きているという驚愕と恐怖。

そこまでリッカに頼り切ってしまったという後悔と無力感。

それらが混ざり合った結果がこの号泣だろうとマシュは見ている。

何故なら、マシュも同様の感情を覚えたから。

 

「あの、リッカさん」

「んー?」

「……すいません、なんでもありません」

「えー気になる。言ってごらんよ」

「…………でしたら、お言葉に甘えて。気を悪くされたら申し訳ないのですが」

 

そこまでして、人は生きなければいけませんか?

 

生きることを尊いと思い、生きるために努力することを輝かしいと思うマシュですら、そんな疑問が浮かんでしまう強烈な衝撃だった。

リッカのあの状態を見たら、誰だって思うはずだ。

もう死んでいい。もう楽になっていい。もう許されていい。

それでも生還し笑っているリッカのことを、素直に喜べないほどには、理解できない。

自分にしがみ付く立香の指に力がこもった。やはり言うべきではなかったかと思うマシュに、リッカがいつもの笑顔で答える。

 

「人それぞれじゃない?私が生き汚いだけで、別の誰かはここまで頑張らなくていいと思うよ」

「何か理由が、あるのですか?」

「んー……んふふ、口にするのは恥ずかしいな。でも秘密にするほどでもないしな」

 

全裸を見られても動じない――実際、今も血みどろの全裸である――リッカが、照れくさそうに笑って言う。

 

「死ぬまで誰かを守るために戦うって、惚れた女と約束したの。その子が厳しくてねぇ、あの程度で死んだら許してくれないのよ。単純でしょ?我ながら、馬鹿みたい」

 

少し俯き気味に微笑みながら、リッカの視線は遠いどこかを見ている。

まだまだ人生勉強中のマシュでもわかる。その彼女はおそらく……

 

「さて、とりあえず服着ないとリツカにまた怒られるな。身体を清めたいんだけど……お、ドッグミート」

 

湿った空気を嫌ったのか、明るく笑って話題を変えるリッカの元へ、ドッグミートがやってきた。彼も全身血塗れだが、足取りは元気そうだ。

 

「ドッグミート、お疲れ様。敵はもういなさそう?」

「ワンッ」

「OK。向こう側にトイレあった?」

「ワンッ」

「おお、水出るかな。とりあえず行ってみよう。マシュ、何かあったら大声で呼んで。多分聞こえると思う」

「わかりました、お気をつけて」

 

途中、落ちていた自分の鞄を拾い、近くの壁に張り付いているエレナにひらひらと手を振って、リッカとドッグミートは通路の奥へと消えていった。

 

「先輩、大丈夫ですか?」

「……うん、大分落ち着いた。ごめんねマシュ」

「謝らなくていいです。お役に立ててよかった」

 

立香が顔を上げ、マシュが渡したハンカチで目を押さえる。

 

「バカだよね、リッカ。バカリッカ」

「そうでしょうか?大事な人との約束のために戦うのは、素晴らしいことだと思いますが」

「いーや、バカだね。あれはもう、約束じゃなくて呪いだよ。サーヴァントになっても続けてるなんて、死んでも止まれなかったんじゃん。バカリッカ」

 

徐々に涙声になりながら、バカ、バカと連呼する。

ハンカチを目から離さず、肩を震わせ始めた立香を、マシュは再び優しく抱き寄せるのだった。

 

 




特異点恒例、現地召喚サーヴァントとの交流回でした。
よし、楽しく話せたな(血みどろ全裸相手号泣)
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