第五特異点逸聞 北米終末荒野ガーデン・オブ・エデン   作:名詮自性

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第17節:Not of Our World

スーツ着たらゲイリーしか言えなくなるとかおかしくない?想像したこともなかったわ。

迷惑を掛けたのは事実なので、三人にしっかり謝罪しておく。

でもまぁ、身体を洗いに行く前の湿っぽい空気がどっか行ったので、結果オーライだな!

さて、やりたいことはいっぱいあるけど、まずはエレナにPip-Boyを見てもらう。

やっぱりフェラル・グール達を吸収していたらしく、膨大な魔力が溜まっているとのこと。

レイダーの時と同じように、サクッと私に馴染ませてくれた。

全身が発光するも、姿に変化はなし。Pip-Boyを確認すると、『Skill』が75まで増えていた。死に掛けた甲斐はあったかな。

続けて所持品を武器から順番にチェック。オル・ペインレスにシシケバブなどなど、普段使いしていた武器がいくつか増えてる。元々の戦闘スタイルに大分戻せそうだ。エンクレイヴ相手ならこれだけでもなんとかなるけど、もう一声欲しい所。

次は防具。コンバットアーマー系が増えてるけど、一番お気に入りのがない。これも次に期待かな。

そしてお楽しみの消耗品のページ。ぬっかこーらっ!ぬっかこーらっ!

なかった。いつになったら飲めるのやら……酒や食べ物が出せるようになってるのはありがたいんだけど、これホントに口にしていいやつ?後で試してみよう。

スティムパックの在庫も増えてる。これならかなりの長丁場も大丈夫そう。

他に何か面白い物増えてないかなーとスクロールしていくと……お?おおっ!?マジで!!?

 

――――――――――――――――――――――――

 

「お?おおっ!?マジで!!?」

 

Pip-Boyを確認していたリッカが大声で叫ぶ。

リッカの作ったドラム缶焚火を囲み、各自休憩していた三人と一匹が顔を上げた。

 

「リッカ、何かいいモノでも見つかった?」

「マジなら凄いぞぉ!とりあえず呼び出してみる!」

 

三人からそれなりに距離を取ったリッカを不思議に思うも、ひとまず見守ることにする。

期待を隠さない笑顔でPip-Boyをタップするリッカ。途端、その前方にリッカより大きい光球が現れた。

 

「これは、ドッグミートさんの時と同じ現象でしょうか?」

「大き過ぎないかしら……何が出てくるの?」

 

徐々に光球が緑に色付き始める。

ふと立香がドッグミートを見ると、立ち上がって尻尾を振っている。やはりリッカの仲間が出てくるのは間違いなさそうだ。

そして光球が形を取り、現れたのは。

 

「巨人!?」

 

立香が叫んだ通り、緑色の肌を持つ、巨人としか形容できない怪物だった。

向かい合ったリッカを悠々と見下ろす巨体。

筋骨隆々、という言葉でも足りない分厚い筋肉で覆われた身体。所々にリッカのスーツのような色をした布がまとわりついている。

右手には大きな銃器。背負った機械は動力源だろうか。

左の腰には、これもまた大きな鈍器。先端に機械が付いたハンマーのような物で、人間には振り回すどころか、持ち上げるのも難しそうだ。

歯を剥き出しにした表情からは、知性が感じられない。今にもその口を大きく開け、リッカにかじり付きそうだ。

尋常の存在ではない。立香とマシュの脳裏に、ギリシャの大英雄、ヘラクレスが過る。

いつでも間に飛び込めるよう、マシュが盾を構え身を屈める。エレナも静かに魔導書を開いた。

三人が緊張に支配される中、リッカはというと。

 

「Hi、フォークス。私がわかるかい?」

 

いつもの調子で、ニコニコと笑って巨人に問い掛けた。

 

「ジョークガ下手ナノハ、相変ワラズダナ、リッカ。俺ガ、オ前ヲ、忘レル訳ナイダロウ、相棒」

 

対するフォークスと呼ばれた巨人が、何かを堪えながら絞り出すような声ではあるものの、リッカの名を含めて答える。

まず、リッカとの会話が成立していることに驚きを隠せない三人。

見た目より知性的なようだ、という彼女達の感想は間違ってはいない。

だが、真の驚愕はまだ先にあった。

 

「OK、そっちも変わりないようで何よりだ。さて、現状を説明したいけど、どう話せばいいかな」

「俺ガ俺デ、オ前がオ前ナノハ、ワカル。ダガ、ココニ至ル経緯ガ、一切思イ出セナイ。ココハドコダ?何故、俺達ハ、ココニイル?」

「ざっくり説明すると、私達は死人のコピーで、世界を守るため過去に呼び出されたんだって。あと私の勘だけど、並行世界の過去だと思う。どう、ファンタジーでしょ?」

「少シ待テ、ドコカデ………………思イ出シタゾ。境界記録帯(ゴーストライナー)ダナ」

「へっ?何それ」

「地球ノ記憶カラ呼ビ出サレル、偉人ノ記録ノコトダ。元々ハ、人類悪ニ対抗スルタメノモノダガ、人ノ手デ呼ビ出セルヨウニシタ、魔術儀式ガアッタソウダナ。確カ、聖杯戦争、トイッタカ」

「なっ、何でそこまで詳しいのよ!?」

 

叫んだのはエレナだ。荒廃した世界の住人で魔術のまの字も知らなかったリッカが呼び出した、怪物にしか見えない巨人の口から出る専門用語の嵐。思わず疑問を叫んでしまうのも無理はない。

 

「彼女達ハ?」

「今叫んだのはエレナ、私達と同じサーヴァント、クラスはキャスター。後ろにいる、私に似た子がリツカで、その前に立ってあんたを警戒してるのがマシュ。二人は2016年から、歴史の改変を防ぐためにアメリカ独立戦争の時代にやってきたんだって」

「キャスター、エレナ……エレナ・ブラヴァツキー、カ?19世紀ノ神智学者ダト記憶シテイル」

「私のことまで!?」

「読書ガ趣味デナ。ウェイストランドデハ不要ナ知識ダッタガ、死ンダ後ニ、役ニ立ツトハ。人生トハ面白イナ」

 

グハハ、と獰猛な表情で笑うフォークス。

一般人の立香はそうなんだ、で済ますが、魔術を知るマシュとエレナが納得できる内容ではない。

 

「私達の世界では、魔術は秘匿されるものです。流通する本を読むだけでは、そこまでの知識は得られないはずです」

「そうよそうよ!一体あなた達の世界はどうなってるの!?」

 

エレナさんは生前、大っぴらに奇跡と称して魔術を見せていたはずでは、とマシュは思うも口にはしなかった。

 

「確カニ、東海岸……キャピタル・ウェイストランドデハ、ソノ手ノ情報ハ見ナカッタ。ダガ、西海岸寄リノネバダ州ノ辺リデハ、魔術ニツイテノ書籍ハ、珍シイナリニ見カケタゾ。集メテイルノハ俺グライダッタガ」

「何があったのよネバダ州……」

「私が『運び屋(Courier)』の姉ちゃんと遊び回ってた頃、熱心に読んでた本かぁ。キャスやベロニカも懐かしいなぁ」

「この一瞬で推定女性の名前が3人分……」

 

エレナは未来のネバダ州の惨状に、立香はリッカの女性遍歴に頭を抱える。

話ガ逸レタナ、とフォークスはリッカに向き直った。

 

「現状ハ概ネ把握シタ。リッカ、オ前ハ今、何ヲ望ム?」

「突然現れたエデン大統領とエンクレイヴの所為で、リツカとマシュが帰れない。連中全員ぶち殺して、二人を無事に元の時代に帰す。手伝ってよ、フォークス」

「エンクレイヴ、カ。オ前ガ喚バレタ理由モ、ヨクワカッタ。過去ダノ、別次元ダノ、俺ニハ関係ガナイ。オ前ガイテ、オ前ヲ助ケラレルノナラ、俺ハソレデイイ。任セテオケ、リッカ」

 

リッカとフォークスが拳を軽く打ち付け、笑い合う。

そんな二人に駆け寄るものが。

 

「ワンッ、ワンッ!」

「オオ、ドッグミート。リッカノオ(モリ)ハ、大変ダッタロウ。後ハ任セテオケ」

「ワフッ!」

「えー、真面目にやってるけどなぁ?」

「リッカハコウ言ッテイルガ、実際ドウダネ?オ嬢サン方」

 

フォークスが立香達三人に歩み寄る。床を踏み砕きそうな重量感に思わずマシュが盾を構えそうになるが、立香がマシュの手を抑えて遮る。

そのまま前へ出て、フォークスと相対する立香。歯を剥き出しにした凶暴そうな顔を見上げ、答える。

 

「めっちゃ大変でした。手綱を握ってもらえると助かります」

「リツカ!?」

「ハッハッハ!随分苦労ヲ、掛ケタヨウダ。リッカノ分モ、詫ビテオコウ」

「ううん、それ以上に助けられたし、頼りにしてるから、謝罪はいらないよ。それはそれとして、無茶はあんまりしてほしくない。こっちの心臓が持たないから」

「了解シタ。戦イニ傷ハ付キ物ダガ、心ニ止メテオコウ、優シイ少女ヨ」

「ありがとう、よろしくね、フォークス。私は藤丸立香。マシュ、いつまでも構えてないで、挨拶しなよ」

「は、はい、マスター。マシュ・キリエライトです。よろしくお願いします、フォークスさん」

「今更感あるけど、エレナ・ブラヴァツキーよ。よろしく」

「フォークスダ。リッカノ味方ハ、俺ノ味方ダ。役ニ立ッテミセルサ」

 

推定笑顔の強面で三人を見回すフォークス。

何かに気付いたのか、推定渋い顔をして、リッカの方に振り向いて疑問を口にする。

 

「リッカ、マサカ()()()ナイヨナ?」

「人聞きが悪過ぎる!ちょっと(つら)貸せぶん殴ってやる!!」

「フム、身体ノ状態ヲ確カメルニハ、チョウドイイカ。ヨシ、相手ニナロウ」

「スパーリングじゃなくてお仕置きだっての!」

「オ前ノ日頃ノ行イカラ、推測シタマデダ」

「そこまで無差別な女好きじゃないですぅー!女の子の肌の温もりが人よりちょっと好きなだけですぅー!」

 

そして始まる、超人VS巨人の殴り合い。肉のぶつかる音とは思えない重く、鈍い音が地下道に響く。

頼りのドッグミートを見ると、大きなあくびをしていた。おそらく、これは彼女達の日常なのだろう。

飽きるまでやらしとくしかないか、と思う立香の横で、マシュが神妙な顔付きで呟く。

 

「リッカさんは、レイダーのように人肉を食べるのでしょうか……?」

「えーと……いきなり噛み付いてくることはないかな……多分……」

 

助けて、ダ・ヴィンチちゃん。

フォークスのお蔭でかなりマシにはなりそうだが、立香の心労はまだまだ続くのであった。

 

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