第五特異点逸聞 北米終末荒野ガーデン・オブ・エデン   作:名詮自性

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第18節:Paving the Way

フォークス合流、yeah!

これでエンクレイヴと戦った時の仲間が揃った。

負ける要素はないな!リバティ・プライムさえいなかったらな!

……いやマジでどうすんのコレ。最初にして最大の一手が見つからないんだけど。

こっそり潜入できる所でもないしなぁ。やっぱ私がなんとかするしかないかぁ?

後のことをフォークスに託せるのなら憂いもないんだけど、私との結び付きが強いから私が死んだらフォークスもドッグミートも消えるらしい。ダメじゃん。

地下道を抜けた先に切り札的な何かがなければ、腹を括るしかないか。

 

ま、とりあえず日も暮れたし、朝までゆっくりしようぜ!

私もフォークスとドッグミートに任せて寝るわ。

フォークスめ、遠慮なく殴りやがって。骨何本か折れたぞ。立香達も引いてるでしょ!

え?あれだけ殴られて打撲と骨折で済んだ私の方が怖い?サーヴァントでも普通死ぬ?

そこはほら、鍛えてますから。この程度で死んでたらウェイストランド歩けないし。

フォークスなんか打撲だけだぞぉ?お互い本気出したらこんなもんじゃないけどね。

うーん、今更だけど、人間扱いされるのに戸惑うなぁ。

遠い所まで来たもんだ。なぁ、フォークス?

 

「オ前ハ、人間ダ。ドウシヨウモナイホドニ、ナ」

 

褒めてんのか、けなしてんのかどっちよ。いや笑ってないで答えろよぉ!

 

――――――――――――――――――――――――

 

意識がぼんやりと覚醒していく。

パチパチとドラム缶の中の薪が爆ぜる音が聞こえ、その炎が視界をほのかに照らしている。

カルデア謹製の寝袋に入ったまま顔だけを動かし、地下鉄出入口の鉄柵の方を見やるも、外はまだ暗い。

立香は天井に顔を向け、迫り来る危機への対応策を考える。

 

トイレに行きたい。

 

水を飲み過ぎただろうか。欲求が強過ぎて目を閉じても眠れる気がしない。

トイレはホームのある空間を越えた先にある。寝る前にそうしたように、マシュを起こして一緒に行ってもらうか?

いや、あんなに安らかな寝顔のマシュを起こすのは気が引ける。

エレナはというと、こちらもサーヴァントとは思えないほど深く寝入っているように見える。諸々の心労や今後のことを思うとゆっくり休んで欲しいので、やはり起こしづらい。

敵性存在が出ないとは限らないので、単独行動は禁じられている。

仕方ない、本当に申し訳ないけどマシュを起こそう、と決めて寝袋から上半身を出した所で、近くにドッグミートが立っていることに気付いた。

尻尾を振ってこっちを見ている。何の用だろうか。

 

「付イテイクソウダ。何カアレバ俺モ駆ケ付ケル。安心シテ行ッテコイ」

 

焚火の番をしているフォークスが小声で言う。

一人と一匹の洞察力に少しの恐怖も覚えたが、感謝の心と尿意が勝った。

 

「あ、ありがとう」

「ヘッヘッヘッヘッ」

 

 

ドッグミートを連れ、まだ血の匂いがするホールを抜け、女子トイレへ。

壊された、というよりは風化した、という崩壊具合だが、個室はあるし水も流れるので用を足すのに問題はない。

ドッグミートはどこまで付いてくるんだろうと思っていたが、女子トイレの前で伏せたのでホッとする。

時々、リッカや自分より賢いのではないかと思うぐらい、ドッグミートには驚かされてばかりだ。

速やかに用事を済ませ、寝床としているドラム缶焚火の所まで戻る。

ドッグミートとフォークスに礼を言って寝袋に入ろうとしたところ、フォークスに呼び止められた。

 

「ダンディボーイ・アップルヲ煮タ、リンゴ入リ砂糖湯ダ。身体ノ中カラ温マルゾ。不要ナラ俺ガ飲ム」

「じゃあ、いただきます」

 

目が冴えてしまっていたのでありがたいと思いながら、立香はスプーンの刺さったマグカップを受け取り、フォークスの隣に座る。

フォークスがどういった存在なのかは、寝る前にリッカから聞いた。

ウィルスを投与されたことより変異した元人間、スーパーミュータント。

本来なら破壊衝動に支配され暴虐の限りを尽くすはずだが、何故か知性が残った変異個体。

しかし、破壊衝動がなくなった訳ではない。常に歯を食いしばり、己の中の悪魔に抗い続けている。

その特異性から他のスーパーミュータントに監禁され幾星霜。そこから助け出したリッカに感謝し、付き従っている。

戦闘の時は抑え込んだ衝動を発散させるため、あまり近付いてはいけない。

それ以外は物静かな読書家で常識人。わからないことを聞くと大体答えてくれる、などなど。

フォークスの話をするリッカは楽しそうだった。心から大切な存在だと思っているのだろう。

 

「オ前ハ、俺ヲ、怖ガラナインダナ」

「んー、全く怖くないって言うと嘘になるけどね。話は出来るし、リッカが信用してるし。そもそもの話、サーヴァントにとっては私なんかガラスより脆いからね。敵はともかく、味方にいちいちビビッてらんないよ」

「ナルホド、中々苦労シテキタヨウダナ」

「リッカほどじゃないかな」

 

火傷に気を付け、マグカップの中身を慎重にすする。リンゴの香りと砂糖の甘みが染み渡り、自然にホッと息を吐いた。

ふと壁の方に目をやると、リッカが眠っているのが見えた。

どこからか拾ってきたよれよれの段ボールを敷き、酒の詰まった鞄を枕に、ライフル銃を抱いて仰向けで寝ている。

余っている寝袋を勧めたが、手足が拘束されると落ち着かないとあのような寝姿になっている。

その横では、ドッグミートが丸まっていた。

 

「朝マデ起キナイカラ、愚痴ヲ言イタケレバ今ダゾ」

「そんなに深く眠ってるんだ」

「Pip-Boyノ機能ダ。安全ナ場所ニ限リ、セットシタ時間マデ、強制的ニ眠ラセ、体力回復ニ専念サセル。外デハ普段使ワナイガ、俺ガ勧メタンダ。スパーリングデ、怪我ヲサセタ詫ビダヨ」

「やり過ぎちゃったの?」

「イヤ、イツモ通リダ。戦イノ中、リッカガ原因デ傷ヲ負ッタコトモ、沢山アル。オ互イ様ダナ」

「えぇ……」

 

困惑の声を上げ固まる立香を横目に、フォークスが手に持った鍋をすする。中身は自分のもらった分の残りだろう。

リッカが集落で回収していた大きめの手鍋なのだが、フォークスが持つとちょっと大きいカップにしか見えない。

 

「コレガ、俺達ナリノ、遠慮ノナイ付キ合イ方ナンダヨ」

「怪我したりさせたりで、怖くないの?」

「ナイトモ。俺モ、リッカモ、ソノ程度デハ死ナナイ。オ互イニ、ソウ信ジテイル」

「うーん、ちょっと理解できない。マシュに大怪我させたら一生悔やむ気がする」

「ソレデイイ。理解ヲ求メテイル訳デモナイ。人ソレゾレ、トイウヤツダ」

 

人それぞれ。リッカも口にした言葉だ。

リッカも、フォークスも、自分達が常識の外にいることを自覚している。

それでいて、常識の中で生きる人達を守るため、その身を削ってきたのだろう。

人類最後のマスターとなってしまった自分は、そこまで出来るだろうか。

まだ答えの出せない問いを飲み込むように、カップの中のリンゴをかじると、甘い香りが口いっぱいに広がる。少し気分が落ち着いた気がした。

 

「フォークス、料理上手だね」

「マサカ。コレヲ料理ト呼ブノハ、人類史ヘノ冒涜ダ。リッカガ生肉ト、酒トコーラデ済マセルノヲ、見テラレナクテナ。焼ク、煮ルグライハ、俺デモ出来ルトイウダケダ」

「リッカ、文明を知らない野生児みたいだね」

「少シ目ヲ離スト、裸ニナルシナ」

 

二人で笑い合う。

その後もフォークスからリッカのトンデモ話を聞きながらマグカップをすすり、リンゴを食べる。

結局、フォークスの愚痴を聞く形となったが、カップが空になる頃には、立香は眠気由来の倦怠感に包まれていた。

 

「ふわぁ……」

「横ニナルトイイ。良イ夢ヲ」

「ありがとう、フォークス。見張り、任せてごめんね」

「気ニスルナ。静カニ考エ事ヲスルノハ、嫌イデハナイヨ」

 

寝袋に入って間もなく、立香は眠りについた。

朝食の用意が出来たと、マシュが遠慮がちに起こしてくれるまで、何か良い夢を見ていた気がした。

 

 

逆側の出入口を抜けると、今までの荒野とは全く違う景色が広がっていた。

並び立つビル。正確には、ビルだったもの。

程度の差はあれ、どれもこれも破壊されていて、間を縫う道路上にも瓦礫があちこちに転がっている。

ビルの中に入るのは止めた方がいいだろう。今にも崩れ落ちそうなものばかりだ。

 

「現在地がおかしいわね。地下を通った距離の何十倍も東に移動して、最後のポイントのすぐそばに着いたわ。この環境を作った何者かの仕業かしら」

「距離が短くなったのはありがたいですが、少し気味が悪いですね」

 

エレナの指示に従い、霊脈の集まる場所を目指してビルの間を進んでいく。

遮蔽物が多く、どこから敵が現れるかわからないので、フォークスとドッグミートが先に進み、少し離れて他の四人が付いていく。

全方位を警戒しながら進むこと、しばし。

 

「あれは……フォ、じゃなくて、えーと」

「スーパーミュータントだね。死んでるけど」

 

瓦礫に背を預け、事切れているスーパーミュータントがいた。

立香をリッカがフォローする間に、フォークスが死体を調査する。

 

「銃デ頭ヲ撃タレテイル。イイ腕ダナ」

「へぇ、レイダーかエンクレイヴかな?」

 

より警戒を強めながら一同が進むと、またスーパーミュータントの死体があった。それも2体。

 

「片方ハ銃、モウ一方ハ刃物デ、ヤラレテイル」

「刃物……なんか私の思い描いてる連中とは違う気がしてきたな?」

 

その後も、道路や周囲の瓦礫に数多くのスーパーミュータントの死体が転がっていた。

襲われることはないが、決して安心できる状況でもない。

不気味な沈黙が続く中、ビルの間を歩み続け、遂に最後のポイントに辿り着く。

そこで一同を待っていたのは。

 

「へっ、ようやくお出ましか。待ちくた」

「新鮮なメカクレだああぁぁぁ!!」

「うるせぇぞバッソ!まだ拙者が話してるでしょうが!!」

「ねぇアン、あの背の低い方の茶髪の子、処女かな?」

「きっとそうですわ。どんな声で鳴くのか楽しみですわね、メアリー」

 

歴史に名立たる、四人の海賊達だった。

 




トイレにラッドローチを配置しない程度の良心が、まだ作者の中にもあった―――
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