第五特異点逸聞 北米終末荒野ガーデン・オブ・エデン   作:名詮自性

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第19節:The Caribbean Gambit

いやー、よく寝た。

朝までぐっすりだったので、打撲や骨折も治った。自宅で寝起きした時ほどではないけど、とても調子がいい。

今ならスーパーミュータントが何体出てきても大丈夫!

いざ征かん、D.C.エリア!

 

……と、意気込んでいたのに、見つかるのは死体ばっかり。

それも、レイダーやエンクレイヴの軍勢に掃射された、という感じではなく、個人が正面から戦い殺した、といった様子だ。

味方なら助かるけど、敵だと厄介だぞ。誰であろうと敵ならぶっ殺すけどね。

 

エレナに案内されて辿り着いた場所には、男二人、女二人の計四人が待っていた。

まず服装がすごい。故郷の映像アーカイブで見たなんとかオブカリビアンに出てきた海賊そのもの。

あと、視線がすごい。完全にこっちを物というか、自分の財産としか見てない。

つまり、旅慣れた後の私がレイダーに向ける視線と同じだ。

彼らにとって不幸なのは、私がレイダーよりある意味凶悪な、奪う側だってこと。

同類が出会ったなら、どっちが上か決めないとね。

特に女二人。あんたら、立香を喰おうとしてるな?

横取りは許しませんよ!私だって我慢してるのに!

 

――――――――――――――――――――――――

 

「黒髭に、アンとメアリー……!」

 

立香がマシュの後ろに隠れ、体を震わせながら叫ぶ。何故か先程から寒気が治まらないのだ。

 

「ほぉ、拙者をご存じで。拙者もどこかで会った気がしてますぞ」

(わたくし)達も、会ったことがあるようですわね、カルデアのマスター」

「そうそう、『敵対したら逃がすな』って意思を座からビシバシ感じるよ」

「ヒェッ」

 

立香が更に縮こまり、マシュの背にしがみ付く。

普段ならマシュがかばうなり慰めるなりするのだが、今はそのマシュも困惑の極致にあった。

 

「あの、もう一人の海賊らしき方は初対面のはずなのですが、私を見てませんか?」

「見てるわね、満面の笑みで。欲しかったオモチャを手に入れた子供でもあんな笑顔出来ないわよ」

「上手く説明できませんが、とにかく恐怖を感じます……!一体、どなた様なのでしょうかっ!?」

「海賊……胸ノロザリオニ、アノ容姿。バーソロミュー・ロバーツ、デハナイカナ」

「おや、お見事その通り。賞品として君に似合うメカクレウィッグを差し上げよう。色はどうするかね?」

「リッカ、代ワリニ貰ッテオケ。コスプレニ使エルダロウ」

「じゃあ金髪のロングで。シスターとかナースに合わせよう」

「余裕ね、あなた達……」

 

エレナが呆れの言葉を零す。

特異点で出会った、いわゆるはぐれサーヴァント。

他の英霊なら交渉だけで味方になってくれるかもしれないが、相手は海賊だ。

雰囲気を見ても、こちらに協力的とはとても思えない。

どうしたものかと思っていると、リッカが一同の前に出た。

その右手には、黒光りする大きな拳銃。立香達も初めて見る銃器だ。

 

「ハァイ、海賊さん。スーパーミュータントを殺したのはあなた達?」

「あぁ?そこにいる緑の巨人のことか?数だけは多かったが、拙者達の相手じゃなかったでござるよ」

「武器さえ打ち落としてしまえば、あとは楽でしたわねぇ」

「硬さにばらつきがあって、僕はちょっとめんどくさかったかな」

 

エレナは考える。何故、スーパーミュータントの死体が魔力に還らず、残っているのか?

おそらく、スーパーミュータントはリッカが倒すべきだったのだ。地下鉄跡にいたフェラル・グールのように。

ここに来るまでに軽く周囲を調査したが、やはり頑強で魔力に分解するのは難しい。

最初の集落もそうだったように、本来はその場にいるリッカの世界の生物を倒し、吸収させるのが、リッカを喚んだ何者かの計画だったのではないか?

肝心のリッカが魔力を操作できなかったり、思い付きで集落を丸ごと吸収したりしたのは、想定外の出来事だったのではないか?

そして、海賊達がスーパーミュータントを駆逐してしまったことも、イレギュラーなのではないか?

エレナがそんな仮説を組み立てている内にも、リッカと海賊達とのやり取りは続く。

 

「中々の腕利き揃いで頼もしいね。一応聞くけど、私達の味方になってくれない?」

 

対する黒髭こと、エドワード・ティーチが鼻で笑う。

 

「ハッ!アンタ、略奪者だろ?視線で分かるさ。俺達の同類だ」

「誠に遺憾ながら、黒髭と同意見ですわ。でしたら、私達のやり方もお分かりではなくて?」

「勝った方が、この特異点攻略の主導権を握る。ついでにカルデアのマスターは僕達のモノ!」

「御婦人の頼みでもあるし、私は協力してもいいんだが……」

「今更良い子ぶってんじゃねぇぞバッソ!てめぇも性根はこっち側だろうが!」

「そこは否定しようもないが……彼女達の実力も見たいし、乗っておくかな」

 

海賊達の宣戦布告を受け、リッカはニヤリと笑う。希望通りの答えに満足するように。

気になる単語も出てきたが、問い質すのは勝ってからでいいだろう。

 

「リツカ、受けていいかい?」

「うん、やろう。避けては通れなさそうだ」

「OK、受けて立つよ。ただ、ちょっと作戦タイムが欲しいな?」

「いいとも、存分に話し合いたまえ」

「おいバッソ勝手に仕切ってんじゃねぇぞ」

 

黒髭は文句を言いつつも、こちらに踏み込んでくる様子はない。

その視線はリッカの手にある拳銃に向いている。

あの武器は、危険だ。急所に当たれば死は免れない。

生存力に自信のある黒髭ですらそう思わされる強烈な存在感。

真っ先に潰すべきはあの女だ。海賊四人は、言葉にせずとも同じ決意を固めていた。

 

「フォークス、ドッグミート、一応見張ってて」

「ワカッタ」

「ワンッ!」

 

一人と一匹を壁にして、その後ろで四人が顔を見合わす。

 

「リツカ、なんか作戦ある?なければマシュとエレナは守りに徹してもらって、オフェンスは私達で適当にやるけど」

「そうしてくれると助かるけど、無茶はしてほしくない。あと、出来れば殺さないでね。戦力はいくらでも欲しいから」

「そこなんだよねぇ……ほとんど殺す戦いしかしたことないからなぁ。サーヴァントは、頭か心臓が潰れたら死ぬんだっけ?」

「そうですね、頑丈ではありますが、そこは普通の人間と同じと思ってもらっていいかと」

「私は脳みそ一部切り取られてる上に謎の物質をインプラントされてるし、心臓が破れてもスティムパック打ったら死なないけど」

「散々未来が怖いって言ってきたけど、これリッカがおかしいだけだな?」

 

立香の身も蓋もない発言にフォークスが笑う。リッカも自覚があるのか、軽く肩をすくめるだけだ。

エレナが咳ばらいをし、話を戻す。

 

「リッカの強化には、霊脈を押さえる必要がある。周囲の建物は難しそうだけど、スーパーミュータントの死体は霊脈を伝って吸収できるはずよ。後ろから撃たれないためにも、海賊達は倒す必要がある」

「アンさんとメアリーさんの宝具は、協力して個人に強力な一撃を叩き込むものでした。黒髭ことエドワード・ティーチの宝具は、呼び出した自分の船の大砲で爆撃するものです。バーソロミュー・ロバーツの宝具も、おそらく似たようなものだと推測されます」

「ふむふむ。マシュ、爆発対策は大丈夫?」

「お任せください、リッカさん。いざとなれば宝具を展開しますので」

「あー、なんか壁が出せるって言ってたっけ。じゃあ問題ないかな」

 

そう言いながら、リッカはPip-Boyを操作していく。

武器を呼び出しては身に付けていく様子を見ながら、立香が疑問を挟んだ。

 

「最初に持ってたでっかいピストルは?仕舞っちゃったの?」

「あー、ブラックホークね。威力が高すぎて殺しちゃうから。さっきは脅しで出しただけだよ。弾も余裕はあるとはいえ有限だし、今回のメインウェポンはこれよ、これ」

 

自身の背中を指差すリッカ。

そこに背負われているのは、柄の長い斧だ。

 

「めっちゃ物騒!ある意味、銃より怖い!」

「私としては加減が利く方なんだよ。銃だと頭を狙う癖が付いちゃってるから。相手の頑丈さもまだわかんないし」

「それで頭を割ったら流石に死ぬと思うわよ、どんなサーヴァントも」

「大丈夫、基本は手足、最悪胴体を狙うようにするから」

 

立香やエレナの苦言を聞き流しつつ、スティムパックも含めて準備が完了したリッカは、いつものように酒瓶を空にした。

 

「ぶっはぁ!!さて、やるか。皆も流れ弾に気を付けてね。フォークス、私がどう動くか言った方がいい?」

「不要ダ、見当ハ付イテル」

「さっすが、じゃあよろしくね。あと、殺しちゃったら私も一緒に謝るから、あんたは難しく考えず好きにやりなさい」

「ワカッタ」

「ドッグミート、あんたはフォークスのフォローをお願い」

「ワンッ!」

 

作戦の相談とは思えない簡単な会話をした後、並び立つ二人と一匹。

向かい合うは、いずれもカリブに名を馳せた大海賊達。

 

「お待たせー。じゃ、やりますか」

「おう、やろうぜ……って、なんだぁ?拙者には嬢ちゃんと怪物と犬だけで相手してやるぜ勝ったなガハハ風呂入ってくる、な陣形に見えるんですが」

「風呂がどうこうはよくわかんないけど、実際そのつもりだよ」

「おいおい、舐められたもんだなぁ!あんたらはともかく、カルデアのマスターは俺達の怖さを」

 

黒髭は最後まで語らせてもらえなかった。

リッカが自分達に向けて、何かをいくつか、高く放り投げたからだ。

バーソロミューが銃を空に向けながら叫ぶ。

 

「爆薬かッ!?」

「まぁまぁ、せっかちさんですわねぇ」

「最後までしゃべらせてほしかったでござる!」

 

アンと黒髭も銃を空へ構える。彼等の技量であれば、空中にあるグレネードを撃つことなど容易い。

一度は空に目を向けるも、三人いれば足りるでしょ、とメアリーが戦う相手に視線を戻すと。

 

「まずい、挟撃だ!アン!!」

「任されましてよ!」

 

リッカが肩に大きな筒……ミサイルランチャーを担ぎ、既に発射していた。

爆発物による一人時間差攻撃。並の相手ならこれで粉微塵になる所だが、流石に海賊達には通じない。

アンが自慢のマスケット銃――だったが英霊になり弾込め不要でビームも撃てるようになったトンデモ兵器――でミサイルを狙撃する。

ほぼ同時に、黒髭とバーソロミューが上空に向けて発砲。

当然の帰結として爆音が響き、爆炎が辺りを包み、瓦礫や砂埃を巻き上げた。

 

「お二人とも、ご無事ですか?」

「うん、大丈夫!ありがとね」

 

マシュの後ろで爆発にまつわる諸々から守られた立香とエレナが顔を出すと、辺りは煙や埃で覆われており、海賊どころかリッカ達の姿さえ見えなくなっている。

 

「爆発対策って、あんたが爆発させるんかーい」

 

立香のツッコミが空しく響く。

視界が良くなるまでこのまま待つしかないのか、と思ったその時、突然の風切り音。そして、マシュが身構えるほどの強風。

フォークスを中心に竜巻のような風が発生し、辺りを漂っていた全てを吹き飛ばしたのだ。

その右手には、現れた時から身に付けていた巨大なハンマーらしきものが。

 

「あぁん?」

「おや?」

 

視界が晴れ、現状を把握した黒髭とバーソロミューが怪訝な顔で声を漏らす。

 

「あれ?」

「えっ?」

「ちょっと、どういうこと?」

 

そしてそれは、立香、マシュ、エレナも同じ。

確かにそこにいたはずのリッカと、アン、メアリーが忽然と姿を消していた。

 

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