第五特異点逸聞 北米終末荒野ガーデン・オブ・エデン 作:名詮自性
三人で歩きながら、色々と情報交換をした。
私の現状としては、スキル低下に加えて、呼び出せるアイテムが少ないことがわかった。
武器はピストルとバット。防具はジャンプスーツ。消耗品はスティムパックとヘアピン。
まるで故郷のVault101を飛び出した頃に戻ったようだ。
S.P.E.C.I.A.L.とPerksが減ったり無くなったりしていないのは素直に助かった。
これなら普通のエンクレイヴ兵だったら余裕で殴り殺せる。
次は立香とマシュの置かれた状況について。
ここは独立戦争時のアメリカ。二人は2016年からタイムスリップのようなことをして来た。
目的は悪い奴等が乱した歴史を修復し、アメリカ合衆国という存在を守ること。
一度は成功したと思ったものの、聖杯っていうなんか魔術的に凄いモノが暴走して、エンクレイヴが召喚されたらしい。
コミックみたいだなと思うも、二人が嘘を言ってるようにも見えないので、受け入れるしかない。
私がここにいる理由は、立香曰く、女の人の声が喚べというから喚んだら来た、らしい。
じゃあ私もタイムスリップしたの?と聞くと、立香とマシュは怪訝な顔をした。
二人で相談した後、いいですか、落ち着いて聞いてください、とマシュがしてくれた説明曰く。
私、死んだ人間のコピーなんだって。
今の私は、サーヴァントと呼ばれる存在なんだとか。根拠はスキルの低下やアイテムの呼び出し。
で、サーヴァントっていうのは、死んだ偉人達の情報が収められてる座という所から呼び出されるコピー。
私=サーヴァント=死人。お前はもう死んでいる。
へぇー、そうなんだ。
と返事をしたら、立香がおずおずと聞いてくる。ショックじゃないのか、と。
いや、まあ、別に、何も?
いつ死んでもおかしくない生活を送ってきたから、そっかー死んだかー、ぐらいにしか思わない。
死んだら地獄に行くだろうと思っていたので、弱ったとはいえ普段通りに振る舞えるのは、寧ろありがたい。
今の自分がコピーだとしても、やれること、やりたいことが生きている時と一緒なら、私はそれでいい。
敵という敵をひたすらにぶっ殺し、そいつらがいたら酷い目に合っただろう誰かを守れれば、それでいい。
懸念のスキル低下と装備品が少ない点は、サーヴァントとして成長すれば解消される可能性が高い、カルデアと通信ができればなんとかなるかも、とのこと。
流石に私も、この状態でエンクレイヴの団体に突撃するのは避けたい。
スキルはともかく、装備がね……死体から剥ぎ取れたら解決するんだけど……
あと、クアンタムとは言わないから、せめてヌカ・コーラぐらい取り出せないだろうか。
その後は、主に私や、私がいた世界についてを話した。
2280年頃。核戦争から200年が経つも、深刻な汚染と生態系の乱れが続くキャピタル・ウェイストランド。
私が語るそこでの生活を聞くにつれ、立香とマシュの表情は暗くなっていく。
それもそのはず、人理焼却という危機に立ち向かい、世界を救おうと戦っている最中に、結局世界は滅びますと言われて気分がいいはずがない。
気休めにしかならないだろうけど、一応私の所感を伝えておいた。
あなた達の世界と、私のいた世界は、多分繋がっていない。
ほら、コミックであるでしょ、パラレルワールドとかマルチバースとか、そんな感じ。
そう思うぐらいには、とても、とても遠い所に来た実感がある。
カルデアには、二人より魔術や歴史に詳しい人達がいるそうだ。通信が出来たら相談してみよう。
エンクレイヴについても、父の仇であることは伝えておいた。
ただでさえ殺戮や誘拐で迷惑な連中なので、見つけ次第駆除していることも。
二人はエデン大統領の声を聞いたそうだ。
Pip-Boyを確認してみると、エンクレイヴラジオの電波が入っている。絶対聞かないけど。
スリードックの声や、アガサのヴァイオリンが恋しい。
嗚呼、本当に遠い所まで来た。
荒野を歩いていても、大きなハエに狙撃されたり、狂った犬の集団に追い掛け回されたりしない。
ラッドスコルピオンも、ヤオ・グアイも、デスクローもいない。
もちろん、レイダーやタロン社が大声でわめきながら撃ってきたりもしない。
見た目はウェイストランドで、エンクレイヴはいるのに、何故他の連中や生物は見当たらないのか。
私はこの事態を引き起こした聖杯というものにも、魔術にも明るくない。
ただ、エンクレイヴのことはよく知っている。
単純に、「エデン大統領が他の存在を認めなかった」んだろう。
ウィルス使って滅ぼす気満々だったからね。世界を塗り替えたとして、わざわざそこまで再現しないよね。
追い剥ぎで生計を立てていた身として物足りなさはあるけど、二人と歩く分には楽でいい。
マシュはデミ・サーヴァントというなんか特殊な存在らしいけど、立香は本当に、普通の女の子だ。
デスクローどころか、ラッドローチに噛まれただけで死んじゃいそう。
エンクレイヴは仕方ないとして、このまま他の連中に会わずに済むならそれでいい。
安全第一。命懸けで戦うのは、私みたいな普通じゃない奴だけでいいのだ。
色々とおしゃべりして、休憩をはさみながら、歩くこと半日。
やっと集落らしきモノが遠目に見えて喜んでいたのだけど。
近付いてみたら、見慣れたレイダーの巣窟だった。
私の予測は外れた……いや、違う。
私のように、レイダーはエンクレイヴへのカウンターとして召喚されたのでは?
ということはつまり、他の連中もどこかに……?
うーん、これについてはまた今度考えよう。まずは降ってわいたこの幸運に感謝を。
ガラの悪い連中を見て憔悴している二人には悪いんだけど。
レイダーって、武器弾薬や食料を溜め込んでることが多いんだよね。
つまりは狩りの時間だ。人狩り行こうぜ!戦うと元気になるなぁ!!
魔力に還る?奪う前に消える心配するバカがいるかよ!!!
オラオラ、酒とタバコとヌカ・コーラを出せ!!!!!