第五特異点逸聞 北米終末荒野ガーデン・オブ・エデン   作:名詮自性

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第8節:Walking With Mahatma (2)

私がなんで怒ってるかわかる?

 

集落中の物資を掻き集めて帰ってきたら、笑顔の立香がこう言って迎えてくれた。目は笑ってないし額に青筋浮かんでるけど。

無茶ばかりする私にサラ・リオンズがよく言ってくれた言葉だし、いつかサラに会えたなら言ってやりたい言葉でもある。

それはともかく、私には怒られる心当たりがない。

立香が読心術者で、私がマシュであらぬ妄想をしたのがバレているのでなければ。

物資集め中にちょっと息抜き(意味深)するのも我慢したし。

食料も見つけてきましたよ?ほーら、汚染されてないソールズベリーステーキだぞー?

 

部屋の隅で正座するよう言われました。解せぬ。

まぁ正座には慣れてるから罰にはならないけどね。

Mr.カゴに英語を教え、代わりに剣術と禅を学んだのがこんな所で生きるとは。

ありがとうMr.カゴ。故郷の日本に骨を埋めたいと言ってたけど、辿り着けただろうか。

 

立香が怒っているのは、エレナがウォッカをイッキしてぶっ倒れた所為らしい。

目が覚めて降りてきたら、エレナが虫の息だわ私はいないわで大パニックだったとか。

それ私悪くなくない?と言ったら、あんたが水のように飲んで勘違いさせたんだと返された。

 

水ならもっと大事に飲むよ。

 

私としては努めて冷静に発言したつもりだったのだけど、立香の驚いた顔を見るに失敗したらしい。

殺された父の跡を継いで、命懸けで浄水施設を作動させたのはここに来る道中で伝えたけど、私が、いやキャピタル・ウェイストランドに住む人間が水をどれだけ大事にしているかは伝わっていなかったみたい。

 

勢いを失ってしまった立香を見かねたのか、エレナが間を取り成し、今回の説教は終わりとなった。

はーやれやれと、荷物袋から取り出したウォッカを開け、一瓶飲み干す。

エレナとマシュはドン引き。立香は頭痛を堪えるように額に手を当てていた。

 

ちなみに、この家の水道はどういう原理か知らないけど生きている。

そして出てくる水は、なんと!「きれいな水」です!!

二人が二階に上がるまで鋼の精神で我慢したけど、その後興奮のあまり全裸で踊りました。

エレナを起こさないように、無言で。

あ、二人がいる内に踊っておいたら、さっきの言葉も伝わり方が変わったかな?

もちろん夜中にちびちび飲んでました。お酒とは別腹ですので。

それはそれとして、集落中探してもヌカ・コーラがなかった。つらい。

 

――――――――――――――――――――――――

 

「腹ごしらえも済んだし、今後の相談を始めていいかしら?」

 

エレナの提案に、立香がおずおずと手を上げる。

 

「ごめん、先に聞いていいかな。ずっと気になってたんだけど、ニコラ・テスラは?」

「倒されたわ。私をかばい、残りの魔力を全て託してね」

「そっか……うん、邪魔してごめんね」

 

エレナが無事ならもしかして、と思ったが、そこまで甘くはなかった。

エレナは咎めることも、慰めることもなく、咳ばらいをして語り始めた。

 

「さて、ニコラ・テスラが私に全てを託し、私がそれを受けここまで逃げてきた理由を先に話すわね。あなた達を逃がした後、機械鎧の兵士なんて目じゃない、強大な敵が現れたの」

「強大な、ですか……?」

「ええ。あれを何とかしないと、私達の目的は達成できない。全長およそ10メートル、弱っていたとは言えニコラ・テスラを一撃で消滅させるビームを放つ、巨大なロボットよ」

 

エレナの言葉が終わるのを待たず、ゴンッ、という音が響く。

発生方向を目で追うと、リッカがグラスを落として固まっていた。

中身は既になかったようで、グラスがゴロゴロと転がるものの卓上に被害はなかった。

 

「リッカ……?」

 

立香の呼び掛けにも答えず、顔をしわくちゃにするリッカ。

立香とマシュは見覚えがあった。初めて会った時、エンクレイヴ兵が消える様を見て絶望していた時の表情だ。

そう、リッカが絶望している。それだけで二人は嫌な予感が止まらなかった。

 

「慌てて逃げたから、あのロボットについてわかることはさっき言ったことぐらいなの。何か知っているのなら、教えてほしいのだけど」

「うん、そうね。そうだね。ちょっとまってね」

 

エレナの催促に反応したリッカは、手近な酒瓶を開けるとゴクゴクと飲み始めた。

今までのヒャッハーうめー!!な飲み方ではなく、どうみても逃避のための飲酒である。

 

「……ぶはぁ!■■■■(ピー)■■■■(ピーー)!!■■■■(ピーーー)!!!」

 

カルデア謹製の翻訳術式が、リッカの叫びをエラー発生時のような音に規制して伝えてきた。

立香とマシュはなんかヤベーこと言ってんな、で済んだが、直接聞いたエレナは渋い顔をしている。

 

「若い子の前でそういった言葉を使うものではないわ。叫びたくなるほどの一大事だというのは伝わってくるけれど」

「ごめんごめん、ちょっと落ち着いた。さて、何から説明しようかなぁ」

 

苦い表情で天井を見上げるリッカ。焦点はもっと先にあるように見える。遠い過去を思い出すかのように。

 

「そのロボットは多分、私達がリバティ・プライムと呼んでいたものだと思う。大きくて頑丈な体、何もかもを叩き潰す腕、全てを焼き払うレーザー兵器、そして大量に格納された投擲用小型核爆弾。あれが歩いた跡には、死体と瓦礫しか残らない」

 

聞くだけで絶望的な相手だ。三人の顔も強張っていく。

 

「リッカさんは、そのロボットとの交戦経験があるんですか?」

「まさか。味方だったんだよ」

「えっ!?」

「エンクレイヴ打倒で協力した組織の戦力だった。道中は後ろを付いていくだけでよかったから楽だったなー。パワーアーマーも、ベルチバードも、バリアも全部片付けてくれた。砦の壁に穴を開けて侵入ルートを作ってくれたりもした。その後ぶっ壊されたけど」

 

聞き捨てならない言葉が出てきた。立ち上がったエレナが興奮気味に問い掛ける。

 

「破壊されたことがあるのね!?似た方法が取れれば勝機もあるわ!どうやってやられたの?」

「人工衛星からのピンポイント爆撃」

「……そう」

 

消沈したエレナが再び腰掛ける。重い沈黙が場を支配する。

立香の脳裏に、カルナとアルジュナの姿が過る。

絶大な威力の宝具を放てる彼らがいれば或いは、とは思うが、既に彼らは役目を終え去った。再召喚は望み薄だろう。

 

「あの、リッカさん。エンクレイヴに破壊された兵器を、何故エンクレイヴが使用しているのでしょうか?そのまま奪われたのですか?」

「いや、回収して修理したよ。私も部品集めを手伝ったし。元々が戦争で外国相手に使う予定の物だったから、『アメリカに住んでいる人達の物』と拡大解釈も出来なくはないんだけど……正直、理由はわかんない。推測はあるけど、話がずれるからまた今度にしよう」

「リッカ、一応、一応聞くけどさ。例えばサーヴァントとして成長して生前と同じ能力に戻ったとして……勝てる?」

「生前と一緒だったら、ねぇ……」

 

腕を組んで目を閉じるリッカ。何をシミュレートしているのか、三人にはわからない。

立香とマシュには今でも十分な戦闘力に見えるし、エレナにとってスティムパックは退去寸前のサーヴァントの魔力を回復できるとんでもない霊薬だ。

これで弱った状態だと言われても、正直言って完成形の想像が出来ない。

本人は能力の低下よりも、使用できる道具が少ないことに不満を持っていた。

果たして、使いたい道具を十全に使えたとして、勝率は如何に。

目を開いたリッカは、薄い笑みを浮かべて告げた。

 

「ま、私もあれからあちこち旅して成長したからね。なんとかなるんじゃない?」

 

やった、と手を取り笑う合う立香とマシュ。笑顔で頷くエレナ。

 

「よし、やることがはっきりしたわね。今後の目標は、リッカの霊基の強化ということで」

「エレナさん、カルデアと連絡が取れれば解決するかもしれないんです。霊脈の集まる場所を探しているんですが、お心当たりはありませんか?

「あら、あなた達は知らずにこの場所へ来たの?」

「えっ?」

 

事態を飲み込めないマシュに、エレナが地面を指さして告げる。

 

「この集落の中心がそうよ。私は回復したくて来たんだけど、物騒な連中がいたから空で隙を狙っていたの。耐えきれず堕ちちゃったけど、あなた達が来てくれて助かったわ」

「間一髪でしたね……」

「早速行こうよ!ドクター達を安心させてあげたいし!ほら、リッカも!」

「ほいほい」

 

立香とマシュが元気いっぱいに駆けていく。

場所わかってんのかな、とリッカが追い掛けようとすると、近寄ってきたエレナが言葉を掛けてくる。

 

「ありがとう」

「なんのことかなー?」

「ふふ、それでよくってよ。可能性の話なのだから。さ、私達も行きましょう」

「はいよー」

 

案の定、中心ってどこ!?と戻ってきた立香達と合流し、目的地を目指すのだった。

 

 

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