Rauta   作:Ubiquintetous / 五劫偏在

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喉越しが良くうやうやしい1183日目

 吸血鬼からの宣戦布告があってから一週間ほどが過ぎたある日の朝。

 チェスカからメールで「今日姫んち行っていい?」とあって、折角だしちょっとお迎えっぽいことしておくか、と一工程(シングル)以上の工程が要求される料理スキルにより、パーティ料理を用意。……ティアランからの薫陶を受けてスキル無しでやろうとしたんだけど、時間がかかり過ぎるので料理スキル頼みになった。

 

 仕事……地獄のフレームは既に完全に出来上がっていて、あとは中身を整えるだけ、の段階。マップデザイナー一門、クリーチャーデザイナー一門も流石のシゴデキで作業を終えていて、遅れているのは地獄のシステムや獄卒のAIを組む部門だけ。ただまぁそこをせっつくつもりはない。大変なの知ってるし。

 ちなみにカルマ値の導入は見送りになった。地獄のシステムは審判を配置しての審判形式を取り、善悪問わず死した精神はそこへ送られる次第。その間魂をスタックしておくのは勿体ないので転生待ちの魂……善行や徳を積んだと審判された精神に優先的に宛がう形での転生にコミットする方向で決着。

 亡霊をコンテンツ化する案は無しになった。だって今こんだけ苦労してるし。

 また、仏教における地獄の天文学的年数を「テスターがいなかったせいである」と判断し、それを何分の一かにした上で、我々に反抗的だった元亡霊諸君を投獄。開発環境地獄の時間設定を早め、拘束期間はどれくらいが妥当であるかをテストする次第となった。

 

 それと並行して蒸気鋼鉄護式……集積層記録装置(アカシックレコード)作りも順調。

 世界全体の、ではなく棺桶単位で守護霊を実装するようなものなので、それが五体。プレイヤー一人一人に憑いている守護精霊と違って記録と相互参照の機能しかないけれど、容量は十澗年分くらいはある。足りなくなったら新しい守護霊を作ってソイツが古い守護霊の中身を検索できるようにすればいいだけ。いつか世界が守護霊で満ちてしまうことも考えられるけど、その頃には流石に世界も開けていると信じたい。

 こっちは誰の助けも無い完全私一人での構築なので、オブジェクト変質対策も実装日も私の頑張り次第で早まるというスーパー強迫観念状況。まぁそこまで頑張るつもりはない。そういうところ、責任感バリバリの性格じゃないからなぁ。

 

 ちなみにこの一週間、それはもう事件という事件が起きまくっている。ただそれは名探偵の出番な事件ではなく、つまり模造死体による対立構造の深刻化だ。

 どうやら『Vesi』は狙って吸血鬼の死体を創り出せるわけではないようで、獣族もヒト種も関係なく死体が溢れかえる地獄絵図が出来上がっている。最初の頃はそれについて猛々しく言い争っていたプレイヤーたちも、最近の頃は何かがおかしいことに気付き始めた様子。

 吸血鬼もそれ以外も「なぜか消えない、誰も知らない死体」を敵方ではなく対立を煽りたい第三者の仕業……つまり運営の仕業にしつつある。とばっちりも良い所だ。

 

 ただし、カルアルンの見つけた「首に穴が開いていて全身の血が抜かれているらしい模造死体」については話が別。

 この手の込んだ模造死体は数が用意できるわけではないようで、出てくるのは一日に一度が限度。ただし四日目のそれが運営側で捜索しきれなくてプレイヤーに見つかってしまった時は……まぁ、罵詈雑言が轟き合っていた。今すぐ吸血鬼を棺桶から排斥しよう、というプレイヤーも出てくる始末。

 この模造死体だけは悪意のベクトルが違う。明らかに現状を理解してこれを作っている。よってこれの製作者を見つけ、捕縛、ないしは粉砕することが最重要課題となった。

 なって……の、一週間。つまり七日目が過ぎて、今日。我々はソイツの尻尾すら掴めていない。

 

 件の模造死体の特徴は二つ。

 一つは先述した通り、首筋に噛み痕のような穴があって、全身の血が抜かれていること。

 もう一つは女性であること。これまたどこの誰とも合致しないIDの持ち主だけど、今まで上がった模造死体は全て女性。何かこだわりでもあるのか、それとも女性しか作れないのかは定かではない。

 

 ……これだけなのだ。

 プレイヤーに鹵獲された四体目も含めて七体ものサンプルがあって、これだけしか特徴と呼べるものが掴めていない。

 街中に配置された運営が血眼になって今日の分……八体目を探しているだろうけど、置き場所にも法則性がないので割と賭け。

 あくまで自然に探さなければならない、というのも効いている。死体探しに夢中になって、他プレイヤーが見つける前に死体を見つけ、隠している……なんて、誰かに知られた日にはもう、だ。

 

 そして、そっちの対処を他の運営に任せきりになるくらいには、もう一つの件も私の頭を悩ませている。

 NPCシェフル。あの時全体会議に上げなかった報告。

 クエストIDから割り出した法則性とシェフルというNPCが持つIDからして、あれなるは「未来で我々が作ったNPCの可能性がある」とのこと。

 我々は未だ自分たちが絡む時間移動には手を出せていない。自分たちの存在の無い部分での時間遡航や時間跳躍はできるのだけど、我々の手ずから作ったものをどうこう、我々自身をどうこう、というのは難しい。

 しかし、その可能性があり、その可能性がある理由も見事に提示された今、そうなのかもしれないと思いながら動くしかない。

 シェフル。『Vesi』の手先でしかないと思っていたあのNPCに、何か、未来の我々が過去の我々……つまり今の我々に託さなければならないような何かを持っているのかもしれない、と。

 

「ぴんぽんぴんぽんぴんぽーん。姫ー。お姉さんが来たよー。寒いから開けてー」

「ん。……アイコトバを言えー」

「えー。……隣の柿はよく客食う柿だ!!」

「こわ」

 

 既にその場スキャンを手癖レベルでできるようになった私に合言葉なんて必要ないのだけど、まぁこれはお遊び。

 ちゃんと本人であることが確認されたチェスカを中にいれる。

 

 チェスカ。チェスカ・グラッセオ。ダークエルフのクラフター。

 ……そういえば彼女以外のダークエルフを長いこと見ていないけれど、どこへ行ったのだろう。中層の奥底とかにいるのかな。

 

 ひし、と。……抱き着かれる。バックハグだ。

 

「ひゃあ……姫ぬくい……」

「ずっと室内にいたからね」

「そして何か良い匂いがする……」

「今日来るってメール見て、ちょっとしたパーティ料理を用意してみた」

「え~……え~ん。もしかして姫偽物~? 姫がこんな甲斐性見せるわけないよ~」

「失敬な」

 

 まぁ確かに珍しくはあったけども。

 

「わーいやった食べるー。ちなみにお酒は」

「あるよ」

「ひゃほー!」

 

 お酒は流石に造ったものではなく現地民から買ったものだけど。

 ちなみに酒造に関する法律はこの『Rauta』には無いので、多分どっか……それこそ中層にはお酒造りに勤しんでいるプレイヤーがいるんじゃないかな。

 現地民の売る料理や飲み物も美味しいのに、愛が無いだの温かみが無いだの言ってプレイヤーが作る、ってパターン結構見るけど、どうなんだろうね。料理スキル噛むなら変わんないだろうし、現地民にも魂はあるからそれの有無では変わんないだろうし。

 ま、ただのプラシーボ効果なんじゃないかなー。

 

「いただきまーす」

「食べるのはいいけど、っていうか食べながらでいいから今日来た目的話してよ? チェスカ、お腹いっぱいになってお酒回ってくるといつも寝ちゃうんだから」

「えー。……まぁするけどー。先に食べまーす」

「はいはい」

 

 漫画みたいな勢いでバクバク食べ始めたチェスカに溜息を一つ入れる。

 まぁ、いいけどさ。そのために用意したんだし。

 

 

 しばらく爆食いが進んで。

 

「ふぅー。身体もあったまってきたし……しょうがない、そろそろ話すかー」

「おお、覚えてた」

「なによー、お姉さんの記憶力はそこまで悪くなーい!」

「ああごめん遮って。悪かった悪かった。で、なに?」

 

 ぷんすかしたチェスカは──口の中のものをごくんと呑み込んで、お酒をグイと飲んで、そうして話し出す。今のお酒挟む必要あった?

 

「あるところに、お母さんといたずらっ子の娘がいました」

「ん、なになに突然」

「いいから。あるところに、お母さんといたずらっ子の娘がいて、ある時娘がいつものようにいたずらをしてお母さんに怒られます。怒られるのを恐れた娘がベランダに逃げ、ひっそりと息を潜めていると、なんとお母さんはベランダの鍵を閉めてしまいました。」

 

 昔話の語り口で始まった、よくわからないどこかの家庭事情。

 まー話してくれる気になったんなら、と大人しく聞く。度数の高い酒を呷って脳を刺激しながら。

 

「娘がそれに気付いて声を上げても、お母さんは"ウチには娘なんていませんからね"と言って開けてくれません。そろそろ冬になろうかという季節で、部屋着のままだった娘はガクガクと震えて泣き叫び、窓を叩いて懇願しました」

「はぁ。もうオチわかったけど」

「それでも開けてもらえず、お母さんは"まぁ恐ろしい。きっと悪霊が入ってこようとしているんだわ。ほら、あなた、ぼーっとしていないで全ての窓を閉めてきて"と言いました。やがてすべての窓がお母さんによって閉められると、ようやく娘は自分が相手にされていないことに気付き、その場を去ったのでした」

 

 そこで締めたチェスカは。

 

「では問題です。この家の家族構成はどんなものであると想像できますか?」

「お母さん一人。父娘死んでていたずらっ子の娘は幽霊。お母さんは気をやっちゃってるヤツ」

「……せーかい。ぶー、姫、欠片も悩まないじゃん」

「導線しっかりしてたからね。それで、この意味怖みたいな話はなに?」

「実際遭った話なんだよね、これ」

「……どこで?」

「ここ。『Rauta』で」

「プレイヤーの話? それともNPC? そういうクエストでもあった?」

「プレイヤーの話。──自分は元々幽霊だったんです、ってさ。配役は違うけど、こういうことがあって、ようやく自分が幽霊であると気付けて、その後……生き返った、って。そういうプレイヤーが来たんだよ、昨日、一団クランに」

 

 ……ついに現れたか、プレイヤーへ接触する亡霊。

 むしろ遅いくらいだけど……さて、何を喋った?

 

「それを……私へ報告しにきたの?」

「だって怖くない? 幽霊だよ? 自分は元幽霊で、しかも生き返りましたよ、とか……」

「そういうことがあったよ、って。わざわざ口頭で、私に伝えに来たのは……なんで?」

「聞いてほしかったからだけど……」

 

 ……。

 ……私が悪いのか。私がおかしいのか。

 その行動は、だって、どう聞いても……何かを知ってしまったがゆえの、「そうではないと信じたいから」ゆえの行動にしか見えないよ。

 

「……わかった。……本当の事、言うね」

「うん」

 

 ちぇ。私もここまでか。

 あとは他の運営に任せて適当にドロップアウトかなー。

 

「──誰かに話さないと呪われますよ、って言われて」

「チェーンメールかよ」

「だって怖くて! 幽霊だとかその自分が幽霊だって気付いた話とか妙にリアリティあって! でも……呪いとか、うつってもヘーキな顔して握りつぶしてくれそうなの姫しかいなくてー!!」

「……まぁ確かに怖くないけどさ」

 

 ……あと、ごめん。

 信用しきれないから調べるね。

 

 ──酩酊を付与し、眠らせる。会話ログや行動ログを洗う。

 

 して……完全に杞憂だった。チェスカの中に私を疑ったようなログも無ければ、件の元亡霊からなにかを聞いた、というログも上がらなかった。

 自身に起きた酩酊を酒に依るものだと考え、素直にくうくう眠ってくれたチェスカ。調べ終えた彼女に一応毛布をかけて、元亡霊を名乗ったプレイヤーに運営を接触させるよう連絡を入れる。

 

「誰かに話さなきゃ、で……呪われても大丈夫そう、って。軽んじていると見ることもできるけど、ま、信頼だよね……」

 

 別に悪い気はしない。これでログを調べなかったら私も「絆された」になっていたんだろうなぁ、って。ま、充分に、な気もするけど。

 思えば先日のボイスメールの時もそうだったか。なんとなく嫌な予感があったというチェスカ。でもマルハノ刃かアシャドマンかどっちが悪者かはわからなかったから、とりあえず私を呼んでなんとかしてもらうよう頼んだ、と。

 良い嗅覚だ。自身の能力を超えることへの対処が上手い。

 

「けど、そいつはなんのためにこんなことを……」

 

 と、報告が来た。

 さて君は、どんな目的があってこんなことを──は?

 

 報告書。簡潔に書かれた一文。

 ──変質の痕跡なし。一般プレイヤーと思われる。様子見を続行。

 

 ……ただのプレイヤーが偶然亡霊と同じことを吐いて、ただの悪戯で呪われるとか言ったってこと?

 し……信じられないッピ……。

 

 

「ということで」

「にゃにがー?」

「チェーンメールばら撒きマンに会いにきたわけだよ。ほらチェスカ、案内して」

「お姉さん今酔っぱらってて眠くてぇ……あうあう振らないで吐く吐く……『Rauta』は吐けないからつらいのが残ったままでキツいんだよぉ」

「じゃあこれ、はい」

「んにぃー? ──ちべたっ!?」

蒸気造形(スチームクラフト)氷霧(フリーズドライ)だよ。PVP禁止エリアでも温度変化は伝わるんだよね。軽減されてるけど」

 

 だからスキルで凍死させるとか蒸し焼きにするとかはできない。感じるとしても今のチェスカのように自販機の「つめた~い」と「あつ~い」くらいの温度までだ。まぁ自販機によっては「あつ~い」は火傷するレベルで熱かったりするけど、その辺は考慮しないものとして。

 

「むぅ……酔いがさめてしまった」

「実際酩酊値は残ってるはずだから完全には飛んでないけどね。はい、案内案内。一団クランの中とか私滅多に入らないから迷うよー」

 

 まぁ迷うことはホントはないんだけど。でも入り組んでいるのも本当だ。この街は蒸気機関に沿ってつくられている。街に沿って配管されているのではなく、配管を邪魔しないように街が作られているため、傍からみたらとんでもなく非効率でとんでもなく遠回りな道がいくつもある。それは大きな施設になればなるほど顕著になるので、上層で一番大きな施設である一団クランの建物はそれはもう入り組みまくっているのだ。

 

「じゃあ案内がてらいこっかー。はい、右手に見えるのが一団クランの受付でーす。クエストを発行できるほか、ジョブごとのコミュニティなんかの案内もしてるよー」

「そんなのやってたっけ」

「んー、確かデスゲ化してからできたんだっけな? ゲーム時代は無かった気がする」

 

 一瞬目配せを……しない。あちらもしない。

 カウンターにいる受付プレイヤー。その中に混じった運営に、なんて。

 

「それを流して左手の通路に入っていくと、でん、と構えている応接室~。最近は当然いないんだけど、一団クランの加入者とか、あと大物取引なんかはここでやってたっけ?」

「一回も入ったことないなー」

「あたしもー」

 

 まぁ入らない。ゲーム時代もここへ入ったのは一団クランの幹部くらいなんじゃないかな。それくらい加入手続きも形骸化してたし。

 

「でー、しばらく団員用の部屋が続いてー、十字路。右に曲がると初心者用のトレーニングルーム、左に曲がると保全クエストのできる心臓部屋」

 

 心臓部屋。蒸気機関の心臓部屋である。心臓が垂れ下がっている部屋、ではない。

 一応ここを爆破すれば棺桶が止まる、なんて言われているほどに心臓だ。爆破した程度じゃ壊れない設計にしてあるけどね。

 

「まっすぐ行って、また十字路があって、右に折れると更に十字路が連続してて、その先は知らない。お前じゃ迷うから絶対行くな、って言われてるー」

「魔窟だ」

「左に曲がると工房街に直通するドアのとこにいけるねー。それ以外の機能は知らないや。一番商店街直通のドアもあるらしいんだけど、見たことない」

「工房街って……そんなのあったっけ上層に」

「こっちもデスゲ化してからかな? 主に色んな職人のとこのお弟子さんが開いてて、結構面白いよ。お姉さんにもいつか弟子ができたらここでお店をやらせようかとおもってる」

「弟子取る気あるの?」

「今は無いかなー」

 

 実際チェスカの作る武器はオンリーワンだ。オーダーメイドであるというのもあるけど、そうではない武器の一つを取ってもクエストの報酬にできるくらい出来が良い。

 吸血鬼でさえチェスカの武器を使っているくらいだ。それくらい愛されている。私にはわからないけど、使用感が抜群だ、という話も。

 

「で、まっすぐ行くと、幹部の部屋と、マイハウス持ってないプレイヤーの宿屋があって、そこに幽霊クンはいます」

「どの部屋にいるかは」

「わかんないから総当たり!」

「──馬鹿なことを言っていないで、普通に受付で聞いてくださいよチェスカさん」

 

 お。懐かしい声が。

 振り向けば……眼鏡をかけた几帳面そうな顔立ちの男性エルフが。

 シハネ・読人鈴(ドクトリン)。わざわざ几帳面そうな顔立ちにキャラメイクをしただけで、案外融通の利くエルフのお兄さんだ。

 

「……おや、雪姫様じゃないですか。お久しぶりです。あなたが一団クランに来るなんて……明日はトリニトロトルエンの雨でも降りますか?」

「振っても火山弾くらいだから大丈夫」

「なにも大丈夫ではありませんが。……というかこの世界って火山あるんですかね」

「流石にあるんじゃない? 無かったら地上の至る所から色んなものが噴き出していそうだし」

 

 あるよ。そういうとこはそこまで地球と変わんないよ。火山灰の色は結構違うけど。……あと温泉の成分もかなり違う。

 

「シハネ、丁度良かった。今幽霊くんっている? あ、びやっこくん」

「外出報告は出ていませんし、いるんじゃないですか? 逃げだしていなければ」

「部屋番は?」

「404ですね。そこが良いと頑なで」

 

 ……うん?

 もしや……ただのオカルトマニア、ってことはないだろうな。凄まじい豪運……ある意味悪運? の持ち主なだけで。

 

「ありがとー、じゃ、いこっか姫」

「待ってください。お邪魔でなければ僕も同行させていただきたい」

「え、いいけど……なに、お姉さんと姫に囲まれてウハウハしたいって話?」

「違いますよ、監視です。雪姫様だけなら僕もそのまま通しましたが、チェスカさんがいるとなると話は別だ。知らないところでおかしなことを起こされるより、せめて目の前で起こされた方が幾分か留飲も下がります」

「おかしなことが起きるのは止められないんだ」

「チェスカさんと雪姫様が揃ってたらそりゃ止められませんよ。アカラ様と雪姫様でも止まりません」

「人を起爆剤のように言うね」

「事実です」

 

 さもありなん。

 ま、別に会いに行くだけだ。特に困りはしない。困ることが起きたら取れる手段もあるし。

 

「というかシハネってなんか役職ついてるの? そういうの咎める立場だっけ」

「あれ、姫知らないんだっけ? シハネは一団クランの会計総長だよ。結構お偉いさん」

「へえ……。今度お金くれない?」

「馬鹿なんですか?」

 

 凄いな。

 現地民が定価で安定したクオリティのものを出してしまえるせいで、この経済が回っているんだか回っていないんだかプレイヤー側からはほとんどわからない街で、会計。

 一応しっかりとした仕組みはあるけど、よく……。

 

「なんでしょう。雪姫様からの視線が生温かくなったような」

「ほらー、ごちゃごちゃ言ってないでいくよー。日が暮れちゃうんだから」

「はーい」

「……一緒にされるのは癪ですが」

 

 今度何かのタイミングで現地民側のお金を回している人を紹介してあげようかな。多分見つけられていないだろうし。

 なんて話はどっかに措いて擱いて。

 

 さて、幽霊クンとご対面──。

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