Rauta 作:Ubiquintetous / 五劫偏在
sinohumiの自供とエリングドの解析により得られた情報から『Vesi』と吸血鬼の交渉内容が知れたこと、そして再度の全体会議を経て、ある方針が定まった。
一度世界全体に対して我々に関する知識への制限を設け、『Vesi』を殲滅することは保留しよう、と。
手のひら返しもいいところなこの方針は、偏に彼らが一陣営一種族として動いていることを受けて出された案だ。
プレイヤーたちも模造死体に関する知識を深め、「誰かが対立を煽ろうとしている」と断定。よってその犯人ないしは犯人グループが見つかるまでは、吸血鬼との決闘を受け入れない宣言をした。冒険クエストでの妨害については、それを続けるのであれば現在ヒト種が経営権を持つ施設に対し、吸血鬼の無期限利用停止を行う、とも。
裏で合わせていたかのように獣族も似たような宣言を出す。下層における獣族経営の店の吸血鬼出入り禁止──吸血鬼の配下であることが確認された場合、獣族でも魔人でも同じ扱いになる、と。
現状公爵サマが対立煽り連中と手を結んでいるというのは我々しか知らない内容だけど、もしそれが割れたら……吸血鬼の中からも音を上げるプレイヤーが出てきそうだ。それくらいヒト種と獣族は店経営率が高いから。
で、こうなってくると、『Vesi』の動きはプレイヤーにとっても吸血鬼にとっても重要になってくる。もしこれを我々が秘密裡に処理してしまうと、居なくなった敵を追いかけ続ける羽目になったり、居なくなった責任をどこか別の誰かが取らされたりしそうだな、と考えた。
既に認知され、大きな存在となった彼らを種として認めない理由が無いのだ、我々には。
そんなこんなで世界全体へのNGワード及びNG思考の処理をかけての、今。
「姫~~っ、良かった、良かったよ~~!! あれからメールもなんにもくれないから死んじゃったかと思った~~っ!!」
「拙者、拙者、自分のせいでこんなによくしてくれた方を死なせてしまったかと思って……びぇぇぇえええっ、良かったですぅぅぅう!」
めっちゃ泣かれている、なう。
まぁ、そう。無事だったよ、というか無事逃げ切れたよ、という連絡をし忘れていた。
あれから三十分後くらいにシハネが一団クランの最高戦力たちを引き連れてあの家に来たらしいんだけど、当然もぬけの殻。場所を記憶違いしているのかと思って捜索に捜索を重ねても私、どころかエリングドもsinohumiも彼の作品も見つからないものだから、自身の虚妄譫妄まで疑ったのだとか。
それでも証人たるチェスカとびやっこがいるものだから、非常にやりきれない思いで帰投した、と。
「本当に心配したんですからね。……ちゃんと泣かれて、反省してください」
「いや、こっちも大変だったんだよ。あの後コレを使って逃げてさ、冒険に出て」
コレ、と言いながらインベントリから取り出すのは片手剣:イベントスティック。早い話がサイリウムだ。ただし中でサイリウムの化学反応が起きているわけじゃなく、ガワだけのもの。いわゆるジョークアイテムというやつ。
「これで、どうやって?」
「弱い光でも光は光。目元に投げつけてやると一定時間残像が視界内に残るでしょ。そんな状態のプレイヤーが冒険……つまり猛吹雪の中に行ったらどうなるでしょう」
「ああ……確かに見失いやすくなりますね。洞窟に入る、なんてことをしたら特に」
「そういうこと。上手く誘導してユスリカ柱に突っ込ませた。生死不明だけど戻ってきたら危険だから指名手配とかかけといて」
泣きじゃくるチェスカとびやっこの頭をポンポンやりながら事情を説明する。
「それでも連絡を返さなかった理由にはなりませんが」
「君達が逃げた後、エリングド? とかいうのが言ってたんだよ。逃げたお仲間も無駄足をうんたら、って。つまり」
「……街のプレイヤーの中に仲間がいる、という匂わせですか。……成程? そいつらを炙り出すにせよ僕たちの安全確保をするにせよ、あなたの合流できる今日までは死んだことにしておいた方が都合に優れた、と」
「そこまで全部を見通していたとはいわないけどね。ただ、敵……死体を模造して量産もできて、吸血鬼との対立煽りをするくらいには悪意があって、しかもエリングドってやつみたいにプレイヤーとクリーチャーの融合体みたいな……なんていうの? 世界のデータっていうかさ、あー……チート? みたいなことができる連中が敵なわけじゃん。なら万全を期して損はないな、って」
──と、いうことにした。
今のところ我々視点でプレイヤーに紛れ込んだ『Vesi』というのは見つかっていないけれど、あの一瞬でチェスカの頭部のデータがエリングドに抜かれたとは考え難いのも事実。街中に情報提供者がいたと考える方が普通なんだ。
ついでに『Vesi』が単独犯ではなく組織ですよ、というのをプレイヤーに教えるための方便でもある。
「はい。それについては既に話し合いをしています。まだ完全な結論が出たとは言い難いですが、吸血鬼からの宣戦布告に対しては慎重な態度を貫くつもりです」
「その辺の外交……外交? 別に内側か? まぁいいけど、そういう交渉事はさっぱりだからお任せするけどさ。漁夫の利を狙う第三者にみすみす利を与えんのは面白くないもんね」
「ええ、吸血鬼からの要求を呑むつもりはありませんが、まず先に問題を片付けてからでないと本気で臨めませんからね。……はい、スクショなど撮る時間は無かったので人相書きになりますが、あの二人の指名手配はしました。のこのこ帰ってきたらその場で捕縛になるでしょう」
帰ってくることはないけれど。
……で、そろそろ泣き止みましたかお二人さん。
「う~……姫って……姫って強いしかっこいいんだねって……なんか最近姫にトキメイてばっかだ……」
「ヒモにならなるよ」
「え~……結婚しちゃおっかな……」
「というかそうだ、忘れるとこだった。私びやっこに聞きたいことがあってここまで来たんだった」
「ふぇ?」
忘れていたことを問う。
「なんでチェスカにあの怪談のこと"誰かに話さないと呪われる"、なんて言ったの? どうしてそこまで……自分の事を周囲に知らしめたかったの?」
なんでチェーンメールなんて流したのか。いたずらにしては本気で悩んでいる。適当にしてはちゃんと危険だった。
君の目的は、なんなのか。
「あ、あれはその、そそそ、その場のノリといいますか、ますか……」
「朱雀玄武青龍びやっこ。君のプレイヤーネームだけどさ。シハネ、調べたんだよね」
「ええ。ここ一団クランにはゲームのサービス開始時から今日に至るまでのすべての登録採掘者の名前が記録されたデータベースが存在します。そこにあなたの名前はありませんでした」
「や、だからそれは、拙者が幽霊だったからで」
「つまり、あったのだろう生前、その時でさえその名前は登録されていなかった、ということです。となるとあなたはどんな理由で死し、なぜ一団クランに登録していなかったのか」
冒険クエスト以外でプレイヤーが死ぬ方法はいくつかある。空腹値や寒冷値によるdotダメージでの死。マイハウス内での死。毒ダメージでの死。往年のさんのようにゲームにそもそも興味がなく、自分を売るためだけにゲームに入っていて、それがデスゲーム化。そのまま死んだ、という可能性も充分にある。が、保護されてからの彼女にそういう自分を売り込む要素がなにもない。
誰かに話さなければ呪われるという「噂の流布」。作ったようなドモりとオタク口調。『Vesi』との関係性。
「もう一つ開示しよう。エリングドという男はその仲間がいるという示唆のあと、自身の掌の上にチェスカの生首を出現させた」
「へぁ!? あ、あたし!?」
「そう。ただしエリングドが現れた時、チェスカは彼に背を向けていたし、私の号令のあとチェスカ、シハネ、びやっこは一目散に逃げた。データをぶっこ抜くなんてまぁオンゲじゃ茶飯事も良い所だけど、それにしたって早すぎる。キャラメイクデータだけで再現したのだとして、自身が確認してもいない顔が完全に同一だと判断し、私が動揺するだろうと自信満々に出せるものだろうか」
「……なにが、言いたいんですか」
「チェスカとシハネに担がれ、その顔をまじまじとみていた、君。敵の造形物の一体だったと思われる君。──奴らに情報を渡していないだろうね?」
誰かがごくりと唾をのむ。そういうディティールにはこだわったからね。
「せ……拙者は、皆と一緒に襲われましたぞ?」
「襲われていない。脅かされただけだ。襲われたのは私一人だよ」
「で、ではそれの前にあった拙者の恐慌や動揺も演技だったと!? シハネ殿、雪姫殿にフォロー戴いた時、拙者は実は何にも感じていなかったと!?」
「実際、今、君の喉は枯れていないし、君の頬は涙で濡れていない」
「っ! これは、だから……結局拙者は、人形……だからで」
隣で泣いていたチェスカが一歩、シハネの方へとさがる。シハネもチェスカの前に手を出して、彼女を守るかのように並んだ。
「う……嘘……。チェスカ殿もシハネ殿も……拙者が内通者だと、疑って……?」
「……故意であったかどうかは僕には判断しかねます。ただ、本人の意思があったかどうかに関係なく、敵と繋がっていた、ということはあり得るだろうと考えただけです」
「そんな……そんなの証明しようがないっ! 身の潔白も、意思の有無も……」
「疑われていることを自覚できたのなら次のステップだ。呪いの件もだけど、君の口調、本来はそんな感じじゃないだろう。明らかに作っている。これ以上怪しまれたくなかったら元の口調で喋りなよ」
有無は言わせない。口は挟ませない。
ただ事実のみを言えと、脅す。
「……はは。ああ、はい。そうですよ。ステレオタイプのオタクなんてもう生き残ってるわけないじゃないですか。……僕の喋り方なんて、個性のないこれですよ。良く気付きましたね」
「まぁ、同じく没個性のシハネがすぐ近くにいたからね」
「雪姫様、今シリアスシーンなんで自重してください」
さもありなん。
私から離れたびやっこは、ソファの上で……三角座りをする。膝を抱いて丸くなる。
「でも……それでも嘘は吐いてないです。生い立ちも、覚えていることも……確かにチェスカさんの怖がり方が一級品で、ついつい面白くなってチェーンメールみたいなこと言っちゃいましたけど、他意はありませんでした」
「ええっ、酷い、お姉さんちゃんと怖かったのに……」
「誓えるものがなにかはわかりませんけど、誓って、僕は内通者じゃないです。……ただ、知らず知らずのうちに、ということは……あるのかも、しれないです。それは……どうやっても否定できない」
「どうして口調を偽って、あんなハイテンションでいたの?」
「どうして……でしょうね。……根源的に、そうしないと消えてしまう……忘れられてしまう? そういうなにか……強迫観念のようなものがあったことは覚えていますけど、どうして、という強い理由じゃないです」
ふむ。
ケッセウスにメールを出す。「自身が消えてしまう、いなくなってしまう、忘れられてしまう、というような感情を抱いたことは?」。
ものの数秒で返信が。「ありますよ、それも何回も。同胞も良く言っています。やはり自身の肉体でないことが大きいのでしょうね。自身がここにいてはいけない存在である、という、世界からの拒絶反応に似たものを覚えます」。……ふむ。じゃあこれは亡霊としての当然の反応か。
どうするかな。事情を話してケッセウスに面倒を見てもらうのが一番良さそうだけど、ここでいきなり彼を呼ぶわけにはいかないし。
ああ、内通者疑惑は正直かけていない。そこまで高度な仕込みは少なくともsinohumiにはできなかったっぽいし、普通に他の誰かがキャラメイクデータを抜いて突貫工事で作り上げたのだろう。多少似て居なくとも、あの場ではあんまり問題にならなかっただろうし。
じゃあなんでこんなに追い詰めているのかというと、それでもなお怪しい行動が目立つからだ。「たまたま言い当てた」系の発言がどうしても信じられないッピなのもある。
「その。……自分から言うことじゃない……かもですけど、軟禁とかしてくれませんか」
「え?」
「僕が内通者かもしれなくて……今、あの時の二人みたいな奴らの件で、皆さんが困っている。僕は……みんなを困らせたいとは思っていません。もし僕が普通に過ごすことでここの場所の情報が筒抜けになって、それでみんなが困るのなら……僕はどこか暗い牢の中で過ごしたい。永遠には嫌ですけど、せめて揉め事が終わるまでは……です」
……自ら下手に出て同情を誘う、か? 既にシハネもチェスカも同情モードだ。善人め。
穿って見過ぎというのはまぁその通りだけど、私は基本こんなんだ。チェスカのことでさえ信用しきれないんだから。
が……まぁ。
「はぁ。仕方ないな。……私の知り合い……というか知り合いの知り合いに、君と全く同じ言葉を吐いているグループがある。そいつらは自身を元亡霊と称し、昔は違う肉体だったとか、幽霊だった記憶があるとか、今別人になっているとか……少々気をやっているんじゃないかと思うような発言を繰り返している」
「そ……れ……」
「そのグループ自体はそこまで信用してないが、取りまとめているやつは信用している。そいつに君を預ける。そいつらは上層、中層、下層のどの方針にも噛まない……あまり表舞台には出てこない存在だ。だから情報が筒抜けになる心配もない」
顎に手を当てているシハネに目配せ。一瞬ハテナを浮かべた彼だったけど、意図を察してくれたらしい。
「申し訳ありません、びやっこさん。僕たちがあなたに対して取れる措置は、その二択だけになります。あなたの案……どこか外界と遮断された牢に入ってもらって、騒動が片付くまでの間そこに幽閉されるか、雪姫様のお知り合いの集団に混じってもらって、取りまとめている方、というプレイヤーの監視及び管理を受けるか」
「……ありがとうございます。じゃあ……後者を選ばせていただきます」
「わかりました。……その、疑いを晴らすことができないからの……こんな措置になってしまいますが、騒動が落ち着いた後、必ず迎えに行きますので。その時は……今度こそ普通のプレイヤーとして……なんなら初心者として扱いますよ。一団クランの案内や、冒険クエスト、保全クエスト、調査クエストなんかの紹介と共に」
「……ちなみに恋人として扱ってくれたりは」
「しません。僕には心に決めた女性がいるので」
「最後まで容赦がない……」
「っていうかびやっこくん見た目女の子だけど中身男の子でしょ? そういうの気にしないの?」
「見た目が女の子なら良くないですか?」
「ああいや、気にしないならいいんだけどさ」
しんみり嫌いどもめ。
茶化して茶化し返されて、空気を払拭しにかかったか。
「今迎えの人呼んだから、少し待ってて」
「……しかし、元亡霊ですか。知らない方々ですね。知性的な会話が可能なのであれば、少しお話を伺いたいところですが」
「ああ、いいんじゃない? 私もそこまで内情を知っているわけじゃないけど、自分が亡霊だっていう話が集団幻覚レベルで根付いていること以外は割合普通の人達だから、話はできると思うし」
「一人であれば譫妄症状であると診断しましたが、同一の幻覚的常識を複数人が共有している、ということですよね。しかもびやっこさんと同じようなことを言っているとなれば、それは妄想ではなく本当のことの可能性が高まります」
こういう風に、少しプレイヤーへの肩入れが過ぎるかもしれないけれど、現状『Vesi』に関する知識の無すぎ問題へ解決策を講じるのも運営の役目の一つ。
と。
「ちぃーっす。『Rauta』の世界で理想の枕を。手作り枕、オーダーメイドの枕ならここ、鹿印の鹿しか可視化仕方ないに連絡を~」
「……」
「……」
「……?」
「……? じゃなくてね。君だよね、お迎えの人」
「あいそうですよ。オーダー受けてきました。カウンセリング及び常識育成なんのその、我らが家族にお一人ご招待とのことで。ええ」
また……クセの強いのを寄越したなケッセウスめ。
一応プレイヤー名で確認を取る。ああ、合っているらしい。
「場が混乱するから普通にしゃべることはできる?」
「ああはいできますよ。えーと? 元亡霊を名乗る、右も左もわからないプレイヤー一名、でいいんすよね」
「あ……はい。元幽霊……の、自覚があります」
「じゃぁ~ちょっとね、カメラ回してね、ソファに座ってインタビュー受けてもらってね」
「え、い、インタビュー?」
「おっとネタが何にも伝わらない人と見た。ヒュウ、ケス兄もわかってんな。この俺に恥をかかせるとは。ドMとして最高だぜ色々と」
「──おっとやりすぎた。はい、お嬢さんお名前は?」
「朱雀玄武青龍びやっこ、です」
「長いね。朱雀ちゃんでいい?」
「あ、び、びやっこで」
「はいビヤちゃんね。末っ子ね。これからみんなのとこ連れてくけど、他のみんなは俺ほど関わりづらくないから。俺が一級品なだけだから。ということで連れていきますけど、御三方よろしいんすよね?」
「丁重に扱ってほしい。それと、君達のリーダーとも話がしたい。もし時間があったら一団クランのシハネに取り次いでくれ、と伝えてほしい」
「んなこと──」
一瞬こちらを見る鹿しかに再度笑う。
冷や汗をツーと垂らして口を噤む彼。
「了解。伝えておくぜぃ。あ、じゃあ、お別れの挨拶しときな。しばらく会えない……こともないけど、ほら形式的に」
「あ、は、はい。……その、別れ際は……ちょっとシリアスになっちゃって、その……ごめんなさい。嘘の口調とか、あと……徒にチェスカさんを怖がらせたこと、本当にごめんなさいでした。……でもその、ちょっと不謹慎かもですけど……あの家に辿り着くまでの探検フェーズ。あれ、僕めっちゃ楽しかったんで……その」
「ええ、またいつか行きましょう。ブラックマーケットも見つかっていませんからね」
「……はい! また!」
「またね、びやっこくん」
「じゃ」
んじゃ、と。鹿しかが紳士的に手を差し伸べる。
その鹿の被り物がなければ紳士だったよ。
「……ホントに色々ありがとうございました! 問題とか、やなこととか、全部上手く行くことを願ってます!」
言いながら、鹿しかに連れられ……びやっこは、去っていった。
……さて、監視の目を一つ飛ばしておきますかね。
彼女の居なくなった部屋はしんと静まり返っている。
と思ったら。
「実際、どれくらい疑っているんですか、雪姫様は」
「二割」
「……僕も同じくらいです。彼女の動揺や反応に嘘偽りがあったとは思えない。けれど、先程も言った通り、知らず知らずのうちに、という線は拭い去れない」
「割と立て続けだからね。暴走馬車事件もさ、バグだって処理されたけど……チート的なことができる奴がプレイヤーの中にいるってなると」
「そうですね。……ここのところ殺人を含む事件と呼べるものが頻発していて……それが誰かの手によるもの……誰かの掌で転がされたものだと思うと……やるせない気分です」
確かに一連の事件は大体裏に『Vesi』がいるけれど、『Vesi』が一枚岩かといったらそんなことはないし、トップと呼べるものもいないようだから掌で転がされている、というのは違うと思うけど。それでも第三者の関与がある、というだけで……不快だよね。
「この先どーなんのかな。今回の吸血鬼のこともだけどさ。吸血鬼を追い出して良し、って前例ができたら……今後争いが起こった時、最悪追い出せばいいになっちゃうのは……なんか違う気がして」
「難しい話ですよ。地球の歴史や創作物を顧みれば、追い出された側が力を付けて侵略に戻ってくる、なんてパターンもあれば、追い出した側が選民思想を得て内部崩壊する場合もある。後世に残る歴史の立会人になっている、というのは……恐ろしい感覚です」
どうだろうね。
現地民の吸血鬼もこの棺桶に乗っているくらいには、外というのは住むに適さない。
少なくとも力を付けて帰ってくることはない。だから、選民思想が生まれる、というのはありそうだ。チェスカの懸念通り、争いが起きたら捨てればいいになってしまう危惧も充分。
「ほとんど友達みたいな関係の子疑うのしんどい……。姫、言葉とげとげしすぎぃ」
「お互いのためだったでしょ。これでもっと重要な情報抜かれて私達が窮地に陥ったとかになったらびやっこは自分を責めまくるだろうし」
「ですね。……ただああいうシーンで弄り入れてくるのやめてください。空気が弛緩しかけました」
「ごみんごみん」
なんにせよ、だ。
「吸血鬼とか種族とか第三者とか、ゴタゴタしそうなの目に見えてるから、私しばらく街へは近付かないことにする」
「うぇ~」
「それがいいでしょうね。それと、暴言や暴動の報道など……自身に向けられたものではないのに自身が傷ついてしまうような心の防御が甘い方は……雪姫様のように一旦自衛モードに入った方が良い。ここから長引くでしょうから」
地獄作りとアカレコ作り、しばらく引き籠って完成させちゃおう。
頑張るぞー。