Rauta 作:Ubiquintetous / 五劫偏在
被害の大きかった上層の片付けが八割方済んだあたりで、私は一団クランに呼び出された。
会議室という武骨なネーミングによって名付けられたその大部屋。そこには見知った顔と知らない顔が半々くらいで集まっていて。
「よう、待たせたな。早速だが対策会議を開くぞ」
と、一団クラン総団長フック・タイサンが入室と共にそんな宣言をした。
ので、手を挙げる。
「なんだ、雪ん子」
「私もだけど、結構なプレイヤーが今なんの用件かも知らずに呼び出されてるんだけど、そこについての謝罪」
「ん? なんだ何も言わずにつれてきたのか?」
「いや……団長が人集めろって言って、私達も何の会議か知らされてなくて、とりあえず発言力とか一定以上の知識ある奴とかが欲しいって話だったんで、こういう布陣になったっていうか」
「そうか。伝達エラーってやつだな。貴重な時間を割いてくれてありがとう! そしてすまん! 許してくれ!」
恐らく私と同じ境遇なのだろうプレイヤーたちを見れば、皆肩をすくめて溜息を吐くばかり。
総団長のこういうのには慣れているのかな。かくいう私も……別に慣れているわけじゃないけど、目くじらを立てる程でもない。だから手を降ろす。
「よし。じゃあ改めて。先日上層に『燃え上がる模造死体』というオブジェクトが投下された。この名前は仮の名前だ、実際のアイテム名じゃないが、共通認識だと思って話を進める。件の模造死体は兼ねてより見つかっていたものに酷似していて、当方の見解は概ね"吸血鬼側の妨害工作"ないしは"ヒト種と吸血鬼の対立を煽る第三者の妨害工作"であると見てきた」
「シハネです。補足しますと、投下された『燃え上がる模造死体』は計三十八体。すべてが同型の死体を模していること、燃え上がるといっても熱を持つ炎ではなかったこと、各地の証言からして全く同一のタイミングで投下されたらしきことがわかっています」
運営側でもこれらについては調べに調べている。
チャフの励起から事態収束までの間、我々のネットワークは使い物にならなかった。事態収束が図れたのだって各地にいるプレイヤーや運営が『燃え上がる模造死体』を回収してくれたからできたことだ。シハネは三十八体と述べたけど、実は二体こっそり我々が回収している。もし四十体という数に何か意味があって、それがなければ計算や推理が行き詰まるようなことがあった場合はなんらかの形式でこっそり返還するつもり。
全く同時に投下された、というのは大きなポイントだ。投擲スキルによる投擲では全く同時にというのは難しい。
出現時間と出現座標を設定してのシステム的な投下でなければ同時というのは作れない。そこに手を掛ける力があると見るべきか、それとも何かカラクリがあると見るべきか。
「結果から言って、『燃え上がる模造死体』にはPVP禁止エリアを解除する力があった。このPVP禁止エリアには名前の通りプレイヤー同士のPVPを禁止するほか、プレイヤーからNPC、NPCからプレイヤーへ危害を加える行為を禁止し、またクリーチャーが禁止エリアへ入ってくることも防いでいたらしい。──このことについて一番詳しいのは雪ん子、お前だな」
「私?」
「『燃え上がる模造死体』が炎の柱を立ち上げた際、PVP禁止エリア解除の報せを真っ先に発したと聞いているが、違うのか?」
「ああ、あれは陽気なヤンキーの固め技が雪国壮一へ深く入ったのを受けての発言だよ。PVP禁止エリアにおける"他者の拘束"は結構難しい。だから禁じ手レベルの関節技を仕掛けることで、間接破壊を起こさずに拘束だけの効果を取り出せる……これが警備のプレイヤーが固め技を良く使う理由。だけどあの時、陽気なヤンキーの想定以上のダメージが雪国壮一へ入ったのがわかった」
「そうなのか?」
「確かに。彼は姿勢を変えていないはずでしたのに、雪国壮一からカエルの潰れたような悲鳴が上がりましたね」
ま、失言だったことは認める。それくらい切羽詰まっていた。
けど人命救助のための必要な声だっただろうに、見逃してはくれないものかな。
「PVP禁止エリアがクリーチャーも防いでいた、ってのを頭の中で繋げてたわけじゃないよ。同時にクリーチャーが目の前に来たからそう叫んだだけ」
「あー、団長。受付のコバナですけど、あの場にいたプレイヤーなら誰もがそう思ったと思いますよ。クリーチャーが襲ってくるから戦え、って。けど雪ちゃんがそう叫んでくれたおかげで自分たちも動きだせたんで、マジ感謝ですね」
「だから詳しさについて聞かれてもみんなが知っている以上のことは話せないかな。多分地上とかを基準に何百メートルかのところまでがPVP禁止エリアで、そっから先はクリーチャーが入れないようになっている可能性が高いよね、くらいしか言えない」
「それについても補足です。あの後一団クランの検証班が調べましたが、地上五百メートルまでがPVP禁止エリアで、それ以降は外のフィールドと変わらない扱いのようでした」
「え、すご。どやってしらべたの?」
「
「……それを五百体? うひゃあ」
相変わらず検証班は気の遠くなる作業をしているなぁ。
あと
「少し話が脱線しているな! 話を戻すぞ。とにかく推定『敵』にはこの『Rauta』のゲームシステムに手を掛ける力があり、且つ非常に悪意的で危険思想の持ち主である可能性が高い。これを受けて一団クランは『敵』の姿を明確にするほか、非戦闘員とされるプレイヤーの強化を行うことにした」
「非戦闘員……って私も言いはしたけど、実際いるの? みんなクラフトやってても実は普通に戦える、とかばっかじゃない?」
「まー普通に生活していたら出会わんな。が、結構いるぞ」
「そうなんだ」
……あとはまぁ、今回のことがトラウマになって、のパターンはあるか。
デスゲーム化したといっても長らく街は安全だった。その安全性が脅かされたとなれば。
「今日ここに呼び集めた者達には、各プレイヤーへの教師役、そして一団クランへの知識の付与を行ってもらいたい。正直一団クランはあくまでシステム……俺も含めてゲームシステムに乗っ取った役割でしかないと認識していたが、吸血鬼との交渉や今回の避難指示なんかの件を受け、人類を引っ張る役割も担わなければならないのだと再認識した。あ、ちなみに俺が私がリーダーやりたいって人いたら言ってくれな! 全然代わる!」
シーン。……ま、わざわざ責任を負いたがるのはそれこそあの公爵君くらいだろう。
そういう意味ではリーダーシップがあったのかな、彼。
「吸血鬼といえば、今回の事件は吸血鬼がヒト種をどうこうするための陽動とか言ってなかったっけ」
「ん~、それっぽい通報を受けたんであの後急いで向かったんだがなぁ、どうも要領を得ないというか、口を開けば開くほど怪しいというか……なんでまぁ、通報者を檻に入れてある。及び、吸血鬼筆頭……ヴラデスト・ヘルカイザー公爵は行方不明だ。下層の屋敷はもぬけの殻、中層で下層より上層へ向かう無数の蝙蝠を見たとの目撃情報はあるが、上層と中層の門を守る警備兵曰くらしき人物は見ていないとのこと。一団クランは彼が中層のどこかに隠れているものとして捜査を進めている」
それは……厄介かもしれないな。
「もし公爵君が『敵』と密接に繋がっていて、局所的にPVP禁止エリアを解除する、なんてことが可能ならば。懸念点はこれだよね」
「ああ、そうだ。明確にヒト種に対して敵対宣言をし、一対一の決闘が蹴られている状態の、何が目的かわからない吸血鬼。それが中層から上層にかけてのどこかにいる」
ざわめきだす会議室。そりゃそうだ。指名手配の殺人犯が必ず近くにいますよ、だなんて動揺しないはずがない。
「ついては一団クラン、及びここにいる諸君で監視の目を強めてもらいたい。公表するとパニックがおきかねないし、騒げば騒ぐほど思うつぼだ。また、模造死体が出てくることも考えられる。『燃え上がる模造死体』ではなく、首筋に噛み痕のついた模造死体だ。仮にヘルカイザー公爵の話を公表し、そこでその模造死体が見つかってみろ。周辺地域からプレイヤーがいなくなるぞ」
「ちょい質問いいですか」
「ああ、いいぞ」
「あ、おれはシアトルマネーってプレイヤーです。で、仮称『敵』について、死体投下事件の犯人だったっていうヤツからなんか聞き出せなかったんですか?」
「少しは聞き出せた。『敵』は複数人であること、この世界に変革を的なカルト宗教染みた言葉を吐く幹部がいたこと、あとはべしべし言ってたけどよくわからなかったな!」
わからんのかい。
……この助け舟は……あー、いや。大事を取って私以外から出させるか。
「ぅぅ……あ、ぁにょ……一個良いですか、総団長」
「お、見つめて兎。喋ってくれるならなんでも構わないぞ」
「いえ、あの……そのぉ……。……べしべし、じゃなくて……『Vesi』だと思います。『Rauta』がフィンランド語で鉄で、『Vesi』が水なので……そうじゃないかなって……」
「ほう! 博識だな!」
「やめて、オタクって言わないで……うぅ……」
「いや、言ってないぞ!」
よし。ま、疑われてもあの子が切られるだけなので、ヨシ!
というように、実はこの会合結構な人数の我々が呼ばれていてちょっとヒヤっとしていたり。総団長は馬鹿と天才は紙一重を地で行く人、という印象なので、あんまり目立った行動はしたくない。
「で、だ。一団クランは現時点で特にこれといった実績を上げているわけでもないからな。いきなり人類のリーダー面してあれをやれこれをやれってのもなんか違う。なんでとりあえずはお願いしますの立場だ。当然セリンは払うしその他の融通も利かせるから、お前らの特技を少しで良い、他のプレイヤーにもわけてやってくれ」
「賃金でんならいいっすよ俺は」
「うちもー」
「オレんとこはなんなら一年前から道場やってんよ。弟子今二人しかいないけど」
「カネはいいから人脈をくれー」
……概ね好評の流れ、だけど。
うーん。
「私はパスで。戦闘技能なんか一般プレイヤー並だし、
「お前さんは教師役じゃなくて一団クランへの指南役で呼んだんだが、それでもダメか?」
「ならまず今までの功績に対する報酬が欲しい。今んとこ私から一団クランへの印象はただ働きさせる割に疑ってくる三流企業なので」
「シハネ?」
「……誠に申し訳ありません。雪姫様には……依頼するばかりで報酬を考えていませんでした。直ちにお支払いいたします」
「まー友達だからいいにしてたのは私だけどさ。これからもなんかさせるなら今までの分って話ね。させないなら良い想いで止まりでいいよ」
「いや、払わせてもらう。雪ん子は"口は悪いが優秀"、"ぶっきらぼうだけど多分優しい人"、"無愛想オブ無愛想だが周りをよく見ている"と評判だからな」
なんだその恥ずかしい評価は。ほーらそんなこと言うから今この場にいる運営から「^^」だけ送られてきたよ。基本みんな煽りカスなんだから余計な材料与えないでよ。
んー……しかし、だとしても、だな。
「少人数が私の家に来る形なら良いよ。この前シハネとケッセウスでやったみたいな。ああいや、それはそれで邪魔だな……。……うーん。あんまり拘束されたくないって気持ちが大きいんだよね」
「ぁ……ぁの、わらひも……大人数の前で喋るのは……」
「ボクも長時間拘束は勘弁。別に忙しいってことはないけど、拘束されるのがダルすぎる」
だよね。賛同者いるよね。一人は運営だから考えないにしても。
「勿論できるだけストレスがかからんようにする。が、そっちの意見も尤もだ。なんで、こっちが適当に授業やセミナーを組むから、興味が出たら参加、程度で構わない」
「……わかった。興味が出たらね」
「ああ、助かる。他の奴らもそういう系式でいいか?」
まばらに頷くプレイヤーたち。協調性の無さを突っ込まれても困る。私が運営でなくとも、私というプレイヤーはこういう性格だ。
「それじゃこんなところで解散としよう。やってほしいことについては追って連絡するほか、吸血公爵の人相書きという名のスクショもメールで送る。っぽいな、ってやつを見かけたらすぐ通報してくれ。いいか、戦おうとはするなよ。んでもって騒ぎ立てるなよ」
メールが来る。「それと雪ん子。面倒かもしれないが、一度帰るふりをしたあと、もう一度一団クランへ来てほしい」と……総団長から。
なんだなんだ。誰かを警戒しているのか?
ちょっと遠回りして一団クランに戻ってくると、奥へ奥へと押し込まれた。
「また面倒事だったら流石にセリンもらうからね」
「すみません、本当に……」
「あと私総団長とフレンドじゃないんだけど」
「それも僕が教えてしまいました。……不都合でしたか」
「別に良いけど、びっくりするから事前に断り入れてほしい」
「本当にすみません……」
……ここまで言って思ったけど、シハネには珍しく全部後手だな。
「もしかして疲れてる?」
「……いえ」
「……誰か亡くなった? 仲のいい人」
「……。……そうですね。戦闘に……出ないプレイヤーでしたので、別れが来ることを……覚悟していませんでした」
「え、まさか……前々から言ってた、心に決めた人、ってプレイヤー?」
「はい。……クリーチャーに連れていかれて……フレンド欄で、オフライン表記に」
「そ……っか。それは……あー。……休んだら? 総団長だって鬼じゃないんだし」
「こういう境遇の方は沢山いますし、僕だけが、というのはできませんよ」
普段ならこんなに溜めないんだけど、今回は私の失態みたいな側面あるからなぁ。
うーんいたたまれない。謝るのは違うと思うけど、ごめんね。
「……総団長が来ました。なんでも内密の相談との話でしたので、僕はこれで」
「ああ、うん。……つらいならちゃんと泣きなよ。強がるとあとでつらいから」
「はい。ありがとうございます」
俯いた彼が退室する。それと入れ替わるようにしてフック・タイサンが現れた。
「──先に言っておくと、俺はあいつに休めと言ったぞ。会議なんか出なくてもいいから、と」
「別に疑ってないよ。で、なに?」
「んー。……とりあえず、だ。この部屋は外界に音が漏れない仕組みになっている。施設内に組み込まれたマイハウスみたいなものと考えてくれていい」
「はあ」
「だから誰も盗み聞きはしていない。──その上で、単刀直入に行く。雪ん子。お前運営だろう」
「はあ?」
何も驚かず。何も動揺せず。
怪訝な声で、聞き返す。
「言ったはずだ。誰も盗み聞きはしていない、と」
「だからなにさ。だから魔女裁判を受け入れろって?」
「PVP禁止エリアの解除の報せ。あれは正直無理があっただろう。他のプレイヤーも疑いを持った様子だった。が、嘘を見抜くことには定評のある俺が特に何も言わなかったから引き下がった、というやつも多くいた。それと、お前が無害っぽいから、という理由でな」
「私が運営なの前提で話進めるのやめてよ。つか、頭クるんだけど。前もそうだったけど、なんでみんなのためになることしたことで疑われないといけないわけ?」
「まぁ、確かに、だ。全体の益となる行動によってその行動を取ったやつが不利益を被るのは納得が行かない……それは正しい反応だ。だが、それ以前の罪が大きすぎる場合もある。それがのべ一万人の殺害者たる運営だと俺は思っている」
「だから──」
困ったな。完全に確信を持たれている。
これを覆すのは骨……というか、無理そー。
「まぁ最後まで聞け。盗聴のできない部屋を選んだのは、このことを俺が秘密にしておくつもりだからだ」
「秘密にっていうか、だからそもそも」
「俺はお前が人類に対して好意的であると踏んでいる。いや、人類に対してというより、自らのフレンドや見込みのある人間に対して、かな。そうでない相手に対しても好意的で嗜虐性が感じられない。等身大の人間として生きようとしている。そう感じる」
「……話を聞かずに進めれば私が頷くとでも思ってるの?」
「──残念ながら。お前より俺の方が発言力に措いて大きいと言える。俺がお前を運営の一人だと断定すれば、庇う者はいるだろうが、ほとんどのプレイヤーがお前を運営認定するだろう」
「なに、脅し?」
「ああ、脅しだ。俺を嘘吐き呼ばわりして数人の友達を連れて引き籠ることを続けるか、俺の嘘の共犯をしてプレイヤーとして生き、運営としての知識を共有するか。選べ、雪ん子」
……。
……はぁ。
「──たわけ」
解放する。途端、無数の個別通話が開いて制止の声がかかるけれど、全て無視する。
たらり、と。
冷や汗を垂らし……それが自身の腕に落ちてから、自らの緊張に気が付く総団長。
「おっと……竜の逆鱗を踏み割ったか、俺は」
「選べ、とは。この私に傲岸不遜な言葉を吐くものだ。確かに私は運営と呼ばれる存在の一人だ。認めてやる。だが、脅しとは大きく出たものよな。今ここで君を殺し、別のモノに成り代わらるようなこともできるというのに」
「あー、そうか、そういう可能性は考えてなかったな……。んじゃ脅しというのは取り下げで、お願いになるか……」
「今更取り下げられるとでも?」
「いやすまん! 俺の頭はいくらでも下げられる軽いものでしかないが、それで取り下げが適うのならいくらでも頭を下げよう。正直な話、俺達にはお前ら運営がどういう存在なのかわかってないんだ。この『Rauta』とは、俺達と同じただの人間が企てた大量殺人計画なのか。それとも神や悪魔なんかの超常の存在が組み立てた『人類の移住計画』なのか」
「──……」
正直。
何を言われても意に介さず、脅し返して終わりにしようと思っていた。
だけど……この人間は。
「今の君の見解は?」
「ん! さっきまでは前者だったが、今は後者だな。超常の存在による『人類の移住計画』。俺は各所からの色々な報告を聞く立場にあるんだが、どうにもこの世界の現地民……NPCっていうのは、過去に牙を抜かれた人間である臭い、というのが俺の考察なんだ。昔は彼らも普通の人間だった。意見を述べ合い、争い、勝者だけが生き残る……そんな人間とそんな世界だった。だが、何かがあって、人間たちは自らの意見を捨てた。彼らは『競争によって前に進むこと』よりも『毎日を同じにすることで現状を維持すること』に重きをおくようになった。これがNPCと呼ばれる存在であり所以」
「……続けろ」
「だから、この世界の超常存在らは、その蓋を破るような……あるいは導くような存在を別の世界から引っ張ってくることにした。それが俺達移住者、プレイヤーだ。もし昨今の事件という事件が運営の仕業ではないのなら、三年目に入ったあの日から今日に至るまでの間、何が起きていた可能性が高いか、を思い浮かべた。その答えは先日あった通りだ。先日あるプレイヤーがうっかり調査クエストを進めてしまい、プレイヤー全体へ波及するコンテンツが動いた。まーあれ自体はお前らの手によるもの臭いなとは思っているんだが、つまり"うっかり"でも"暇だったから"でもいい、調査クエストが進められて、伴って世界が動く……そういうことが起きていた違いない」
そうだ。そういうことが起きてほしかった。殺人事件や窃盗事件なんてどうでもいいんだ。
「調査クエストのストーリーは結構王道だ。今まで判明しているストーリーから大体の概要を取ると、人類の進化や歩みに蓋をする者がいるから、それを倒してすべてを導くリーダーになれ! って感じのやつ。つまり、なってほしいんだろう。出てきてほしいんだろう。人類……プレイヤーも現地民もひったくたにして導き、戦闘の篝火を掲げるような、そんなプレイヤーに。……というのが俺の考察だな!」
……しまう。
「っと……重圧が消えたな。お眼鏡に適ったか?」
「調子に乗らないことだ。我々は君達へ知識制限や思考制限をかけることもできる。脅しているなどと、二度と口にするな、人類」
「ああ、言葉選びを間違えた。すまなかった。あくまでお願いだ。PVP禁止エリアの仕様や瀕死状態のアイコンに関する仕様なんかの、プレイヤーが忘れている、検証不足である事柄についての知識。それを、可能なだけでいい、俺たちに共有してくれ。疑いに関してはかからないよう俺が動くし、余程のことであれば一度疑惑として検証班に投げて、それが返ってきてからの知識ということにしてもいい」
「……露骨なやつはそういう遠回りをするべきだろうね。……ま、いいよ。我々の目的に掠らない程度なら、君の慧眼に免じて開示してあげる。──それと、都合が良いからケッセウスも呼ぶべきだね。彼も私の正体を知っているから」
「ほう、それは知らなかったな。四か月くらい前から何か人が変わったような感覚はしていたが、そこまで突っ込んでいたとは」
怖い感覚だ。それで全て当ててしまうのだから。
……そして私も、迂闊な行動は避けるように、ということだ。あくまで普遍を謳うのであれば、ね。