Rauta 作:Ubiquintetous / 五劫偏在
異常事態がバグなのか悪意あるものなのか。
そこの見極めは必要だけど、対処するにおいては然程重要なものではないと考えている。
いや、どちらにせよやることは変わらない、というべきか。
三年目のデスゲーム。まーそろそろ不具合が出てくる頃合いだと思っていたし、悪意あるプレイヤー、ないしは裏切り者が出てくる頃合いかとも思っていたけれど……まさか強制NPC化ウイルスとは。
どんな目的があったのやら、だなぁ。
なんて。
ホットミルクを入れてコクコク飲みながら、上がってきた報告書に目を通す。
カルアルンのものに加えて他の運営からも……パッチファイルの使用時と不使用時の検証結果まで。仕組みさえわかれば私以外でも解除は容易だろうし、まぁ騒動の収束はそんなに長く待たなくても良いかな、という印象。
被害に遭ったのも全員が運営というわけではないから運営だけを狙ったテロ、という話でもないみたい。プレイヤーもまばらに被害に遭っていて、結局下手人は何が狙いだったんだろう、というところに結局行き着くというか。こればかりは現地調査を待つしかないから今想像しても仕方がないだろう。
スチームパンク世界に似合わないインテリア:液晶テレビのスイッチを入れる。テレビ放送がされているわけじゃないから映るのはただのゲームUIで、映し出すのは各レポートの全文。
中空ウィンドウよりこっちの方が俯瞰的に見られるから、というだけの理由でレポートを全画面表示している。これで何かが見えてくるというわけじゃないけど、まぁ、気分。
内容に共通して言えることは、シェフルという子供が自由な状態であること、外界から遮断された部屋の中であること、そしてシェフルという子供の意思で何かをしている様子がないこと。
シェフル。あの時見た通り、ハーフエルフの子供であるらしいこと以外は何の情報も上がってきていない。記憶喪失であるとか大人しい子供だとかいう報告はあるけれど、その所以とでもいうべきものが欠片も上がっていないのは些か珍妙だ。
この『Rauta』はゲームだけど、その実半分以上が「そういう異世界」である。だからNPC……現地民において、死による結果的な天涯孤独が作られることはあっても、初めから天涯孤独である、というものは作られ難い。命が自然発生するわけではないからだ。
だというのにこのシェフルには痕跡がない。繋がりもない。まるで「つい先ほど作られたNPC」であるかのような感覚。これが単なるゲームであれば運営、あるいは悪意あるプレイヤーによるNPCの作成も容易だっただろうけど、それが「命を生み出す行為」である以上、この世界じゃ既に難しいものになっている。
ちぐはぐ、なのだ。やっていることのリスクに比べて……準備が少ない。決定打を加えるのなら、もっと纏めてきた方がよかったし。
……いや、だから幼稚、なのか? 洗練されていない……まるで「お試し」で放った、みたいな。
個別通話が入る。
「よう、スノープリンセ、」
「合言葉は?」
「は? え、そんなの決めてたか?」
「いや、決めてない。しばらくは毎回揺さぶりをかけさせてもらうからそのつもりで」
「こえーって……。あ、で、本題入っていいか?」
「うん」
「やっぱパッチ配ったの怪しまれたっぽい。配らせた奴をハブったグループが出来てる。なんか良い感じに行方不明にしておくから、要らんクエストくれ」
……ま、流石にか。
私との繋がりのあるカルアルンでやらなかったことは褒められるべきだけど、あそこまで具体的な効果だと誤魔化しが利かなくなるのも当然で。
次やる時はもっと別な形で適用しないと無理か。運営も無限じゃないからね。
「巨大コプテラ討伐のクエストなら発生させられるから、そこで上手い具合にやって。受注人数とかの采配は」
「ああ、こっちでやる。ついでに人数を動員する必要のある調査クエ……可能なら保全クエがいいんだが、そういうのもなんか無いか。あんまりもうクエストを発生させたくねえってのはわかってるが」
「突然クエストが増えたらそれこそ疑われる、ってのも理解してるよね?」
「勿論。だが、木を隠すなら森ってな。要はグループの中で少数側が疑われるからよくねえんだ。拡大しちまえばなんとかなることもある。それでプレイヤー全体が疑心暗鬼になったらやべえから加減はするが」
クエストの発生権限と進行権限をカルアルンに譲渡する。
する……直前で。
「そだ、カルアルン。明日が結婚二年目の記念日だけど、覚えてるよね」
「仮に何らかの罰ゲームでお前と結婚しなきゃになったら俺は颯爽と姿を晦ますだろうな……」
「よし、合格」
相手が洗練されていないAIのようなものと考えた場合、どこまで進んでいるかわからないからね。
大事なことを行う前に、逐一の確認は入れていこう。
「まったく……私達はプレイヤーの健康を慮って善意のもと配布を行ったというのに、疑うなんてひどい話だよね」
「プレイヤーに聞かれたら八つ裂きじゃあ済まされなそうだ」
通話が切れる。
やれやれ、これが中間管理職の悩みってやつかな。
私のカマクラがあるあたりは辺境と呼ばれていて、街列車の外縁部に位置している。
単純に街の機能が使えないために辺境へ住む存在は少ないのだけど、都会の喧騒が嫌いだったり都会じゃできないことをしていることを理由に辺境に住んでいる、という存在もいないわけではない。私がまぁそうだし、馬車を三十分ほど走らせたところに住む「お隣さん」も似た理由だったはずだ。
騒音被害……なんて、蒸気機関の街じゃ喧騒に掻き消えるものに思われるけれど、静まり返る時はしんと静まり返るのがあの街だ。だから常に爆音をかき鳴らすような存在は煙たがられる。
ギャーン、と弦が響いた。
「呼び鈴、あるんだけど」
「おう! 知ってる!」
「……何用?」
ギャギャギャ、ギャーンと弦が叫んだ。
「食料が尽き欠けている! 金も無い! 頼む雪っこ!」
「往年のさん、毎回言ってるけど、ウチは食糧配給所じゃなくって」
「良い音を聞かせてやるから恵んでくれ! オレのギターは金が取れるんだ!」
「それも何回も聞いた。私だって少ない食糧を自給自足でやりくりしてるの。音楽じゃお腹は膨れないの」
「頼む!」
今家の前に来ているのはそのお隣さん。プレイヤーネーム:往年の。
クエストなんか最初から眼中になかったプレイヤーで、デスゲームになる前からストリートライブでの投げ銭機能で過ごしていた人だ。演奏の腕は確かに言うだけはあるって感じだけど、半ば世捨て人をしているこの人にかまけている時間はないというか、リソースが勿体ないというか。
この人の家からは日がなギターの音が鳴り響いていて、だからこういう辺鄙な場所に住むのは適切であったのだけど……そもそもこの人三年間をどうやって生き抜いたのだろう。
お腹が減るたびこうやって食料とお金を無心してきたのかな。それでとうとうお世話係から見捨てられたとか?
「街行けばいいでしょ。『稼がれない人互助会』とか確かあったと思うし、それ頼りなよ」
「都会は好きな時に弾けんから好かん!」
「んじゃ好きな時に弾ける田舎で餓死も自然の摂理でしょ」
ギャーンと音が鳴る。
「ここで凍死……はないにせよ、空腹のバッドステータスでHP全損の恐怖に耐えるのと、プライド曲げて街行くの。どっちがいい?」
「食料をくれぇ……」
「今なら大サービスでメール飛ばしてやるって言ってんの。で、どうする?」
「食料を……」
じゃあ、この話は終わりだ。
仕方なしで餌を与えてつけあがる野良動物を私はよく知っている。プライドで自刃する意味をよく吟味して死に行くがいいさ。
三日後。偶然にも私の家に用があってきたプレイヤー……レンタル屋のケッセウスに拾われて、往年のさんは回収された。
プレイヤーたちのリソースだって無限じゃない。役に立たない個体は爪弾きにされて然るべきなのに……彼は助かった。
「成程。思ったよりも合理的な方なのですね」
とはケッセウスの去り際の言葉だ。ああ、そう認識してくれていい。
お友達とは仲良くするけど、そうでない人達には壁がある。私というプレイヤーへのパブリックイメージはそういうもので丁度いいのだから。
逆に誰に対しても親身で誰に対しても気さくな、というのはまた別の運営のポジションだ。それこそカルアルンとか、他街に潜伏している連中の。
私とは適度な距離を保ってもらわないと。
さらに三日後──往年のさんの訃報が届いた。メールの形式で、一応お伝えしておきます、とケッセウスから。
訃報──訃報。
彼が死んだことに何か感情を覚えた、ということはない。
ただ……疑問が残る。なぜあんなにも頑なに、なんてどうでもいいことじゃなく。
プレイヤーの死というのはHPバーが全損することでしか起き得ない。
そこまでのリアリティは要らないから、で突っぱねられた栄養失調や失血というバッドステータスが存在しないのだ。
空腹値や寒冷値によるHPの削れはあるから、そこを放置したのなら死は理解できるけれど、彼は回収されたはず。街へ連れられて、組合かなにかに入れられたはずだ。
それともプレイヤーの組合でもなんともならないと放逐された? あるいはそれさえも機能しないほど困窮している? 他……ケッセウスが往年のさんを人体実験に使った、とか。……いくらでも考えられるけど、どれも推測の域を出ないな。
パッチ配りの昨日の今日で、というのは少し思うところがある。ケッセウスも私が例のアクセをつけているかを非常に気にしていたし、私自体を疑っている可能性も十二分にあるといえよう。そこへ……なにか探りを入れるようなことをしてみれば、そのまま浮き彫りになることも考えられる。
私の合理性を確認した上での、というところも気になるし……ここは様子見で行きたい。一応注意喚起は回しておく……ことも考えたけれど、先の件を考えるにもう少し情報の精査と安全事項を考えてからことに当たりたいところ。
同じ轍を踏むのはゴメンだから。
私は何の感傷も覚えなかった。お隣さんの死に、その訃報に。
だから、欠片も反応しないことを怪しまれないように少しは気にしているふりをする、とかではなく。
最初の通り、「ふーん」で終わり。
そう思ってメールボックスを閉じようとして……今。まさに今、一通のメールが届いたのがわかった。
差出人は……チェスカ。
開く。
「姫、知恵を貸してほしい。
最近プレイヤーの殺人事件が相次いでて、外へ出歩くときは必ず三人以上で、って決まりができたんだけど、これってどう対処するのが正解?
棺桶は閉鎖空間だし、ただ待ってるだけじゃなにも解決しないよね? あと姫の方は大丈夫? 襲われたりしてない?」
……というボイスメッセージが。
文面に認めなかった理由はなんだ。……三人以上でいなきゃいけない。その内の二人が容疑者である、とか?
なんにせよ、往年のさんが死んだのは往年のさんだけが死んだのではないっぽい、かな。プレイヤーだけを狙った殺人事件……NPCとプレイヤーの見分け方は無い。少なくとも外見的特徴からだけじゃ見分けは付かないようになっている。不思議な力が使えたらプレイヤー、というのも間違いだ。少ないけどNPCにもスキルを行使できる存在がいる。
……あの免疫パッチアクセを付けていたら、は……有力候補だな。
まぁ
移住こそお手伝いしたけれど、その後起こる様々まで面倒を見るつもりはない、が私のスタンスだ。私のアプローチ、と言ってもいい。
だから殺人事件も……下手人が現地民であれプレイヤーであれ、静観するつもりだった。
が、やっているのがバグ、ないしはクラッカーであるというのなら話は変わってくる。
仕込みが幼稚だったから泳がすに終わった乗っ取り事件だったけど、こうも『Rauta』をかき乱すというのなら、いいだろう。乗せられてやる。
その果てに私が運営の一人だと露見し、カルアルンの言うように八つ裂きさえも優しく見える目に遭ったとしても……まぁ、その時は死ねばいいだけだから。
私達がそれをしていない時点で気付いてほしいものだ。
この世界に神様気取りはいらないと、ただそれだけのことくらい。
二日後。いつものふわもこお姫様衣装で街中にいた。誰がって勿論私が。
「あ、姫! 良かった、襲われてない? 大丈夫?」
「大丈夫。それで、メールした内容、頭に入ってる?」
「もち! とと、初めましてだよね? 紹介しておくと、この子は」
「知っていますよ。辺境雪こもり姫。あるいはマジレスプリンセス」
「チェスカ、あんたも結構有名人だけど、こっちはこっちでツゥにはわかる有名さってヤツだな!」
「呼び方はどうでもいいけど、この二人は信用できるんだよね?」
「多分ね~」
「流石、当人たちを前に堂々と疑ってかかる宣言ですか。聞きしに勝るとはまさにこのことですね」
そこへ合流してくる三人。チェスカと、男性プレイヤー二人。二人ともデータ汚染またはデータ破損なし。
……いや。
成程、偽装か。
「私のことは知っているみたいだからいいにして、じゃ、自己紹介してよ」
「ええ。この度【路地裏武器商】のチェスカ・グラッセオさんの身辺警護を与りました、アシャドマンというプレイヤーです」
「オレはマルハノ刃ってモンだ。基本活動圏が中層だからな、顔、見たことねえだろ!」
ここに偽装をかけるということは、やっぱり奴らの仮想敵は私達運営なのだろうか。だってプレイヤーはこんなところ見ないはずだし。
……ああいや、グループ結成時の登録情報相手の偽装か? 加えて一団クランへの登録情報もこれで欺ける、か。
少し……探りも入れてみるか。ああでも私がやるべきじゃないな。適当に誰か呼びつけよう。
「中層ということは、ヒト種じゃないのか。耳とか目とかヒト種っぽいけど」
「おうよ、今は防寒着で隠れてるが、背中に翼と尻尾があんぜ」
「ちなみに僕はヒト種ですよ。まぁ、好きで中層にいる変わり者ですが」
「変わり者ってわざわざ自分で言うことじゃないんじゃないかな~ってお姉さんは」
「チェスカ、そういう名乗りをしたい年頃というのもあるから、そっとしておいてあげた方が良い」
「……」
「ああほら、拗ねちゃった」
「!」
「ん、どうかしたか、アシャ」
「……いえ、視界の端で何かが動いたような気がして」
「またそうやってお姉さんを怖がらせる……」
「んー、それが何にせよ、あんまし道の真ん中で立ち往生ってわけにもいかねえだろ。そろそろ行こうぜ。調査するんだろ、第一の現場」
「ああ、話は通ってるんだ。じゃ、護衛よろしくね」
「……ええ、わかりました」
探られていることに気付いたということは、こいつの自我は哲学的ゾンビではない……のかな。カルアルンと同じ状態なら揺さぶりで動揺することはあっても不正アクセスに動揺することはないだろうから。
つまり、意識的に自らの情報の隠蔽を行っているプレイヤー、と。
相変わらず杜撰さが目立つけれど……それよか、どうやって彼が疑わしいことにチェスカが思い至ったのか、の方が重要かな。
誰かに告げ口されたのか、何か気付くきっかけがあったのか、それとも彼女もクラッカーか。
しばらくは様子見だ。殺人者と彼が同一人物かどうかはわからないわけだしね。
そうしてやってきたのは、上層と中層を繋ぐ連絡路。吐き出される蒸気と排水が「スチームパンクの悪い面」をこれでもかというほどに醸し出す、そんな場所。
その通路の……入って一つ目の十字路を曲がったところにそれはあった。
地面にマーカーで絵を描けるアイテム。その白を使って作り上げられた
血飛沫などは見当たらず、ただ争ったような痕跡……破壊痕が残っている状態だ。
「被害者は松島カナダ。ヒト種・ハイソルジャーで、歳は三十歳。中層にいる昔馴染みと飲んだあと、上層へ戻る途中で襲われた様子です」
「時間帯は?」
「深夜回る前くらいでしょうね。昔馴染みのプレイヤーの方たちと別れたのがそのすぐ前くらいだそうなので」
「発見は? 翌日?」
「いえ、そのお仲間が次の飲み会の予定をメールで送り、その返信があまりにも無いことを受けて調査を初めての発見であるため、七日前だという飲み会の日から発見の三日前に至るまで、具体的にいつ殺されたのかは定かではありません。血液から死亡推定時刻を割り出す、みたいなことは僕らにはできませんし」
正直
飲み込んだ上で。
「……多分殺害現場はここじゃないし、殺害されたのはもっと前だよ、これ」
「え、なんでそう思うの?」
「その人ハイソルジャーだったんでしょ? ハイソならパッシブで不屈系は取ってておかしくないし、逆境とか激高とか低HPで攻撃力上がるスキルも取ってるはず。なのにここの破壊痕の少なさはなに。ぜったいこれ後で付けたでしょ」
「どっかで襲われて、命からがら逃げてきてここで力尽きた、って線は?」
「無い。プレイヤーはHPの全損でしか死なない。究極首を斬り落とされたってHPバー残ってりゃ死なないのがプレイヤーなの。それをどうやって命からがら逃げる、なんてところまで追い詰めるの? 相手はハイソで生き汚さでいえば『Rauta』で一、二を争うくらいなのに」
「確かに……プレイヤーって弱るってことが無いもんね。最悪緊急脱出だって使えるわけで」
そうだ。だからここまで破壊痕を付けさせずに……つまり無抵抗のままのハイソルジャーを殺すには、「意識を奪っておく」か「逃げられない・暴れられない状態を作っておく」しかない。
前者は案外難しい。プレイヤーに起きるスタンは麻痺や睡眠など様々あるけれど、それらはあくまで身体が動かなくなるだけのこと。意識まで持っていけるわけじゃないから、その状態にあっても緊急脱出は使える。プレイヤーの意識が亡くなる時は、死んだ時か、自ら眠った時だけであるといえるだろう。
後者はまぁ、簡単だ。脅せばいい。お前の大切なものがどうなってもいいのか、って。他、いくらでもやり方はあるだろうけど……そうだとすれば今度は従順じゃな過ぎる。加害者側が脅しの手段を出し渋ったとかでない限り、もっとスマートにやれたはずだ。彼を殺したいだけならもっと……それこそ己のマイハウスの中にまで連れ込んで殺す、くらいはできていい。
ここで殺すにはあまりにリスクが釣り合っていない。それが狙いである、というようなことまで考えだすとキリがないから、まぁ、とにかくここで死んだにしてはおかしすぎるという話で。
「一番怪しいのはその飲み仲間の誰かだよね。酒を飲ませて酩酊させて、殺して、偽装工作して、適当なタイミングでこんなにもメールが返ってこないのはおかしいと仲間内に伝える。あるいは誰かじゃなく全員かも」
「それは僕たちも考えましたよ。けど、飲み仲間の方々にはアリバイがあったんです。飲み屋で別れてからそれぞれの家につくまでのアリバイが」
「その人達で完結したアリバイでなく?」
「ええ、第三者のいるアリバイです」
……それもどこまで信じられたものか、って感じだけど。
「ちなみに死因ってわかってるの?」
「いえ、死体は発見と同時に消えてしまいましたから、わかりません。このラインはアウトラインを取ったというより思い出せる限りの形を出力したものです」
「まるで見てきたかのように言うね」
「僕も第一発見者の一人ですからね。まさに件の方々から調査依頼を受け、調査を行っていた調査員が僕なんです」
「ふーん。……あ、じゃあさ、倒れてたなんとかカナダの人の手って開いてた? 閉じてた?」
「手、ですか? ……さぁ、このチョーク・アウトラインの通り、こちらに背を向ける形で倒れていたので見ていなかったですね」
「ああそう? じゃあ犯人わかったかな」
え、という素っ頓狂な声が周囲二人から漏れる。
聞きたいことは聞けたから。あ、手の開き具合なんてどうでもいいからね。
「次の現場行こう。そこの犯人と同一犯だったらこれは連続殺人事件になるし、そうじゃなかったらただ偶然が重なっただけで終わる。そうでしょ」
「え……ええ。じゃあ、案内しますよ」
呆気に取られている二人に対し、手首を人差し指と中指で打ち付けるジェスチャーを一瞬だけ見せたあと、前を歩き始めたアシャドマンに続く。
あとはタイミングかなー。