Rauta   作:Ubiquintetous / 五劫偏在

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何気ないあらかじめの1228日目

 そしてとうとう、公爵邸からすべてのプレイヤーが消え去った。

 認め難い事実ではあるが、この間において彼らが何をしていたかは全く掴めないまま。ただただこの世界から消えた……「脱出された可能性がある」という結果だけが残る。

 

 歯噛みするしかないその事象を前に立ち尽くしていた時、一通のメールが届く。

 ケッセウスから。内容は、ロビーにある調査クエストが発生したこと、冒険より持ち帰られた碑文の破片を解読することになった、ということ。

 禍福は糾える縄の如し、というやつか。良い展開だ。プレイヤーが無意識に見下しているNPC。彼らこそがこの世界を紐解く鍵であり、彼らの中にも連綿と紡がれた歴史がある。

 ようやくそこに目が行ったか。

 

「だーめだな。思い切って低次世界も覗いてみたけどいねえ。マジでどこいったんだあいつら」

「こっちもでさ。高次世界にアクセスかけてみたってのに引っかかりもしねえ。それともオレらが見落としているだけで、緊急脱出とログアウト以外にこの世から消える手段でもあるんですかね」

「なんでログアウト除外してんだよ。ログアウトされたって話だろ、今回のは」

「それを考えても仕方がねえから別の可能性を探るって言ってんだよカル」

 

 禍福の禍、こっちは本当に何もわからない。

 ここ一ヶ月近くの金太郎たちの会話ログも洗ってみたのだけど、特に情報らしいことは言っていない。グループが作られていたわけでもない。

 公爵君も金太郎たちも……突然天啓を受けたように動きだし、消えた。

 

 消え方という点ではsinohumiのそれと酷似していたため、彼にも話を伺ってみたのだけど、彼曰く「普通に声は聞こえてたぜ。これは必要な儀式だのその身を捧げよだのいう声が」らしい。ログに残っていないだけで、「はい、よろこんで」の謎は、ただただ会話していただけであると。

 つまり、『Vesi』にはログを残さずに対象と会話するすべがあり、金太郎たちが消え去ったのはその際に使う位相空間なのではないかと予想はしている……のだけど、さてこれをどう扱うか、という話になってきて……。

 

 ──よし。

 

「私ちょっと気分転換行ってくる。二人もなんか別のことしてインスピレーションを湧かせるといいよ」

「うーい。適当にやっとくわ」

「んじゃオレはちぃとファミリーの仕事をしてくるんで」

 

 今考えてもわからないなら、いつかアイデアが湧くまで待つ! 

 これに限る!

 

 

 チェスカの店、【路地裏武器商】。

 オーダーメイド九割でやっている店だから、待合のためのスペースが結構広いのが特徴。

 そこに溶けるように座る。

 

「姫から来てくれたのは嬉しいけどさー。そこお客さんのための席でさー?」

「実際お客さんってどれくらいいるの? そんな冒険メインなプレイヤーあんまいないでしょ」

「割といるよ? そりゃハイエンドを求めてくる人は少ないっていうかほぼいないけど、武器の耐久値切れそうだから、この武器と同じ使用感で新品作ってくれ、とかさ」

「出た使用感。私の一切わからない感覚」

「姫はがっつり戦闘系じゃないからねー」

 

 がっつり戦闘系だとわかるのだろうか。ちなみに運営にいるがっつり戦闘系にそういう話を聞いたことがあるけど、みんな頭にハテナを浮かべていた。

 ……命の危機に瀕したことがないとわからない、とかなのかな。

 

「それでー? 姫はお姉さんに何の用なのかなーって」

「ありていにいうと承認欲求」

「なんて?」

「最近事件を解決していなくて褒められていないから、褒められたくなってきた」

 

 ユークリッド家で起きたことは公になっていない。件の被害者が落ちてきていたアレソレはPVP禁止エリア解除の事件でうやむやになった。びやっこ関連は事件とは呼べないし、吸血鬼、『Vesi』関連のほとんどは私が解決した扱いになっていない。唯一私が関与したとされているのはsinohumiの件。つまり、公表されている最後は八十三日前の事件となる。

 承認欲求が暴れ出すには充分な時間と言えるだろう。

 

「疑われるから嫌なんじゃないっけ、依頼受けるの」

「嫌だけど、褒められたさもある」

「うわー面倒臭い人間だ」

「チェスカに言われたくはない」

「それはそうだけど!」

 

 ただ偶然今お酒を飲んでいないだけで、基本はドカ飲みダル絡み人間だからねチェスカ。別ベクトルだけど面倒臭い人間だと思うよ充分に。

 

「事件かー。でもお姉さんそういう暗い話題苦手で情報網全部シャットアウトしちゃってるからなぁ」

「私は面倒でシャットアウトしてる」

「ブン屋とか行ってみたら? なんだっけあそこの正式名称」

「──汎聞(はんぶん)屋、デスネ」

 

 ん。……聞き覚えのある声だ。

 振り返れば、目元を深い帽子とスカーフで隠したカウボーイ風の女性プレイヤーが。

 

「あ、ポロロイドさん。武器出来てるよー」

「流石デスネ、チェスカ。仕事が早い」

「中二日あったしそりゃね。姫、ポロロイドさんのこと覚えてる? ほら、二年目だっけ? 夏イベのロカプレの時のさ」

「お久しぶりデスネ、スノウプリンセス。この帽子を被れば思い出しマスカ?」

 

 喉まで出かかって思い出せないところにいたけれど、彼女が帽子を虹色の羽根飾りのついたそれへと変更したことで、ピンとくる。

 

「ああ! 魅せプの人か!」

「YES。良い覚えられ方デスネ」

 

 思い出した。あれはまだゲームだった頃の話。

 ロカプレ……大蝗害(ローカスト・プレイグ)という夏限定のクリーチャー狩り放題素材手に入れ放題、みたいなイベントがあって、その時にとんでもない魅せプを披露していたプレイヤーだ。

 自分で投擲したアイテムを足場にしたり、飛んでいるクリーチャーを蹴って三次元機動を見せたり。いくらVR機器が普及してきたからといっても地球人じゃ色んな先入観が邪魔してできないだろう、みたいな動きをしまくっていた人。

 攻略組になったわけでもなかったから記憶から消え気味なところにいたけど、いたいたこんな人。

 

「ではチェスカ。これ、代金と、先日話に出していた新しいラム酒デス。酒蔵の一派がぜひチェスカに味見をしてほしいと、試供品をくれマシタ」

「え、マジ!? やったぁ!」

「味の感想や要望は【中層酒造蔵元(サカグラー)】へお願いシマス」

「はーい! あ、で、ポロロイドさん、良かったら姫を汎聞屋まで連れていってあげてくれない? 意訳すると刺激に飢えているらしくってさ」

「意訳し過ぎだけど」

「OH、良いデスネ。人生には刺激が必要。ではスノウプリンセス、お手を。このポロロイドがエスコートいたしマスヨ」

 

 ほう。

 ……姫プの姫じゃない、とは言っているけれど、姫扱いは悪くない。

 特に最近吸血鬼一派のせいで心が荒み気味だったから、遊むのも悪くはないだろう。

 

 差し出された手を掴めば──くるんっ、と。

 

「とわ!」

「YES。良い悲鳴デスネ。それでは参りましょう、スノウプリンセス」

 

 足をかけられて、そのままお姫様抱っこに。

 いやあの、流石にこれは恥ずかしいっていうかさ。ああほら街中にいる運営からまた来たよ「^^」が。うわ「^_^;」まで来た。ぶん殴ってやるいつか。これ絶対拡散されるよあーあ。

 

「スノウプリンセスは、あまり冒険には出ないのデスカ?」

「んー。まぁね。ずっとマイハウスで蒸気人形(スチームマタ)弄ってるよ」

「Right、であるならば刺激が欲しいというのにも納得です。私のような採掘者は日々のバトルだけで充分な刺激ですのデネ」

 

 そんなものか。いやまぁ私だって刺激が欲しくてこれを言っているわけじゃない。……インスピレーションが欲しい、は刺激が欲しい、と同義か?

 

「ポロロイドは命の危険を楽しんでいるの? ヒリつきがたまらない感じ?」

「Beats me、どうでしょうネ。ゲームだった頃はヒリつきや自身の恰好良さを目当てにやっていましタガ、それが日常となり、本当に命のかかっている今でも魅せプをする私は、果たして何を楽しんでいるのヤラ」

「自分でもわかってないんだ?」

「そのようデス」

 

 まぁ……それで三年間生き残ってこれているのだから、天賦の才があった、ということだろう。

 

「一緒に冒険に出るプレイヤーに怒られたりしないの?」

「デスゲーム開始直後は怒られまシタヨ。今は呆れられるばかりデスネ」

「それでも友達やめないでくれる周囲に感謝って感じだね……」

「ええ、本当ニ」

 

 すれ違うプレイヤーすれ違うプレイヤー、すれ違う運営。

 みーんな私を見ているような気分になるけれど、わざわざ目を合わせてきてしかも嘲笑してくるのは運営だけだ。私こういうの忘れないからね。

 

 そうして辿り着くは、【路地裏武器商】と同じ作りの店。

 トロッコアイスというプレイヤーがやっている【汎聞屋】……テキストや画像で新聞記事を作り、オープンチャットなどでそれを公開している店だ。

 ゴシップを扱うこともあるけれど、割と好印象なブン屋だと思う。情報が正確なのと文章が綺麗だからかな。

 

「いらっしゃいませー。クレームはお断りだ。新聞もお断りだよ」

「ハイ、トロッコアイスはいますか? スノウプリンセスが何か刺激が欲しいとの注文でシテ」

「私それかなりヤバい奴に聞こえない?」

「あー、この独特のイントネーションはポロロイドか。んで、雪ん子も一緒と。どんな組み合わせ……あちょい待ち、一枚撮らせて」

「やだ! 降りる!」

「NON、ダメです。乗車賃デスヨ、スノウプリンセス」

 

 ぐあああ悪乗りプレイヤーめ!

 出回るのがプレイヤーだけならまだしも運営にまで見られるって考えてくれ!!

 

「いい仕事するじゃねえかポロロイド。千セリン払っとくぜ」

「YES、素晴らしい金払いの悪さデスネ。それで、何か刺激的なニュース、入っていマセンカ?」

「ほれ、そこのコルクボード風液晶テレビに色々映ってんだろ。好きなの選びな」

「いいからとりあえず降ろしてポロロイド」

「おっと、忘れていましタ。軽いものデネ」

 

 うるさい。

 

 で、えーと?

 

「【驚愕】コーヒーメーカーは豆も出せる【錬金術かよ】、【封鎖区域?】五両目郊外にある倉庫の不思議【悲鳴?】、【架空言語発見】ロビー空間奥の工場【解読班求ム】、【恐怖!?】人食い宝箱発見か【ミミック?】、【何かの信号?】真夜中に明滅する灯り【SOSか】、【やはり超人】総団長、多分四日寝てない【宇宙人だろ】……うーん」

 

 頭が痛くなってきた。

 なんでこのフォーマットを崩さないんだろう、というのもありつつ、確かに気になるけど、みたいなのもありつつ。

 

「一応全部聞きたい。コーヒーメーカーのこれって?」

「いいか、今から俺が言うことは全部オフレコだぞ」

「え、うん」

「……しょーもない話だ。マイハウスのコーヒーメーカーあるだろ。あれ、特に補充しなくてもコーヒーが出るんだよ。だからドリップ中に蓋開けると無かったはずのコーヒー豆があるんで、そいつを取り出せる、っていうライフハックだ」

「うわしょーもな」

 

 しょーもないけど一応それバグだね。この後すぐに修正するとアレだから、いつか自然なタイミングで直そう。

 

「倉庫の不思議っていうのは? そもそも封鎖区域って?」

「そいつは俺もよくわかってないんだが、五両目の後方にある郊外の家周辺にKEEP OUTの画像表示が出る場所があんだよ。が、周辺調べてみても特に何があるわけでもない。が、俺じゃねえ奴の調査時、悲鳴みたいなのが聞こえたらしくてな、今は調査中だ」

 

 ……ワンチャン、『Vesi』だけど……ならノータッチでいくか。

 

「架空言語は話題になってるやつでしょ。鳥井たちが見つけたやつ」

「おうよ。今みんなこぞって解読祭りだ。雪ん子もなんか知ってたり思いついたりしたら総団長に一報くれてやってくれ。あ、俺でもいいぞ」

「なんか思いついたらねー。で、ミミックっていうのは?」

「これは購読者投稿でな。あるマイハウスに置いてある、『時代錯誤シリーズ:海賊の宝箱』って家具にプレイヤーが食われちまったんだと。どうだ、面白そうだろ」

「……食われた後は?」

「死んでたらもっと大騒ぎしてるだろうし、なぁ」

「……。……真夜中に明滅する灯りは」

「これも購読者投稿だ。真夜中に外に出て、煙突の方を見上げたら、チッカチカチッカチカ、なんかの信号と思しき光があったんだと。内容はそれだけだが、少し前に人間が落ちてくる、みたいな事件があっただろ。一応記事に挙げておくべきだなって考えたのさ」

 

 良い判断だ。

 それは……もしかしたら、再度似たようなことをしようとしている合図かもしれない。PVP禁止エリアの解除に似たことを。

 

「最後のは、まぁ総団長だし」

「カーッ、その反応がブン屋は一番傷つくんだよ!」

「一応このミミックの話が気になったから、紹介してくれない? 実物見たい」

「傍若無人がよぉ……。……どうする、紹介料をセリンにするか、今度なんか面白そうな事件があったら真っ先に俺へ連絡してくれる件で手を打つか」

「普通にお金払うよ」

「雪ん子お前ほんっと……夢が無ぇよなぁ……」

 

 私の遭遇する事件はほとんど報道できないものだからね。

 

 

 それで。

 

「ついてくるんだ。いや別にどっかいけってわけじゃないんだけどさ」

「YES、暇でしたから」

 

 あんまり口を挟まないものだからもうどっかに行ったのだと思っていたポロロイド。彼女同伴で件の購読者の家に行くことになった。

 彼女は運営でもなんでもないけれど、魅せププレイヤーとして多分ほとんどのプレイヤーが知らないような、ともすれば運営すら知らないようなシステムの重箱の隅、みたいな話も知っているだろう。案外役に立つのかもしれない。

 

「あった、ここだ」

「外観も『時代錯誤シリーズ』の家デスネ」

「カリブ海の豪邸Aとかだった気がする」

「ワオ、詳しい」

 

 ヨーロピアンでエルルルェガントなおうち。三軒分くらいは潰しているし、かなりのお金持ちかもしれない。

 ベルを鳴らす。表札にハートで囲まれた「パックルPan」と「猫chang」の名前があった。うわぁ。

 

『はーい?』

「こんにちは。トロッコアイスの紹介できました」

『ああ、噂の探偵姫さん! 上がって上がって!」

 

 ……探偵姫さん、とは。隣を見れば、肩を竦めているポロロイド。

 あのブン屋、どんな紹介をしているんだ。

 

 扉が開く。

 

 中から出てきたのは淡い緑のワンピースを着たヒト種の女性。この冬景色にワンピースはあまりに寒そうだけど、多分マイハウスの中判定だから温かいんだろうな。

 

「そちらは?」

「失礼、ワタシ、探偵助手のポロロイドという者です。ワトソン、みたいな役割デスヨ」

「まぁ! 形から入るタイプなのね!」

「YES、良い理解デスネ」

 

 いや、まぁ。

 うん……。とても強かなタイプの女性なんだな、というのは伝わりました。どちらも。

 

「さ、上がって上がって。探偵さんなら解けるかもしれないものね。──プレッシャーをかけるわけじゃないけれど、あなたの手腕に一人の命がかかっていることを忘れないで!」

「……どういう」

()()()()()()()()()()()()()()()()()()。腕によりをかけてもらわなくちゃ!」

 

 個別通話が開く。

 

「SUPER PSYCHOPATH案件……デスカ?」

「かもね」

 

 閉じる。

 まさかとは思うけど、ちゃんと事件だったりする?

 

 

 まさかだった。

 

「確認するけど、消えたのは君の夫。プレイヤーネームパックルPan。一昨日の夕方頃この宝箱のある部屋に逃げ込み、さらに宝箱の中に入って……それきり出てこなくなった。おかしいと感じた君が三十分後くらいに宝箱をあけたら、その中には誰もいなかった」

「ええ、そう! びっくりよね!」

「失礼、逃げ込む、というノハ? まさかとはおもいマスガ、かくれんぼや鬼ごっこをしていたのデ?」

「ブッブー。正解は隠れ鬼よ! マイハウスを丸ごと使った隠れ鬼。広い家ならでは、よね!」

「Oh……YES、そういうこともあるのデショウ」

 

 無いよ。

 

「そして、これが件の宝箱、か。……開けてみていい?」

「勿論!」

 

 開ける。同時にスタッシュがUIとして表示される。……だよな。

 それらを非表示にすれば、金銀財宝の詰まった宝箱が視界に。ただしこれはそういう背景というか、アイテムとして詰まっているものじゃない。今私が入ろうとしても……無理だな。

 というか、ここに入ろうと思う方も思う方だけど、三十分放置する方も放置する方だ。待っていれば音を上げるとでも思ったのか?

 

 裏で変質オブジェクトなどの可能性も調べているけれど、どうやらそれもないっぽい。

 一昨日の十一時三分頃に隠れ鬼を開始し、五分ほどでパックルPanがこの部屋に来ている。その一分後に彼女……猫changが来て、わざとらしく「どこかしら」とか「見つからないわぁ」とか言っているな。

 

「失礼、どうして三十分後に開けたのデスカ? それくらいは待つつもりだった、トカ?」

「ええ、その通り。十一時から十一時半までの予定だったのよ。あの人ったら隠れるのが上手いんだから、なんて考えていたわぁ」

「その間宝箱を開かなかったノハ、そんなところにいるはずがないと思ったからデスカ? それとも見つけることができないアナタに痺れを切らしたパックルPanさんが自ら出てくることを望んだためデスカ?」

「そうねぇ。どこにもあの人がいなくて、途方に暮れている私を、優しく後ろから抱擁してもらうため……とか。きゃぁ!」

 

 その結果が行方不明じゃ世話ないけど。

 

「このスタッシュ、当時はなんか入ってたの?」

「主にはあの人の装備類かしら……。私も色々入れていたけれど」

「全部出しちゃったんだ? 探すために」

「いいえ? 今でも中には色々入っていると思うわ。ああほら、私の装備品とか入っているし」

 

 ……ん。ああこれ専用スタッシュなのか。

 彼女らは夫婦として共用スタッシュにしていた、と。

 

 これ……もしかするともしかする、か?

 

「パックルPanにメールって出せる? オフラインにはなってないんでしょ?」

「めーる? ……ああ、そんな機能もあったわね!」

「えぇ……うそ、忘れることある?」

「NON、結構ありますよ、システムを忘れること。できるだけ使わないようにしているプレイヤーのコミュニティにいると、忘れます」

「そうなのよ、遠くの人とはもう話さないで、ご近所さんとは会って話すから……あ、メールできたわ。……あら、返ってきた。出せなかったのかしら?」

「開封してみて。なんか書いてある?」

「……助けて、って。あら……もしかして、どこかに隠れているわけじゃない、の?」

 

 何をいまさら……と思ったけど、これ。

 

「奥さん。アナタはもしや、宝箱の中に隠れたパックルPanさんがなんらかの手段で脱出をし、今なお以てあなたから隠れている……かくれんぼを続けていると、そう考えていたのデスカ?」

「え、ええ。探偵さんまで呼び寄せるなんて大がかりだって……あら……あら、大変、これは……」

 

 サイコパスなのかド天然なのかわからないけど、ようやく危機感は持ってくれたらしい。

 そして、その理屈であるのなら。

 

「すぐに緊急脱出を使うよう言って。二日なら空腹値は大丈夫だと思うけど、万が一もあり得るから」

「緊急脱出……というのは、ええと……なん……だったかしら」

「メニュー>設定>ゲームプレイ>スクロールして一番下の緊急脱出、でできマスヨ」

「ああ、これ」

 

 緊急脱出のワープゲートが開く。ああ馬鹿、押したな。

 

「あ、あらやだ、なにか……えと」

「いいから、開いちゃったら行くしかない。同じことをやっててパックルPanに言って。それで同じところに出てくるはずだから」

「わ、わか──」

 

 なんで喋ってる途中に移動するかな。

 ……あと家主がどっか行っちゃうと私達出られないんだよねマイハウスから。

 

 ポロロイドを見る。

 

「サモアリナン──こここそが使い時デスヨ」

「アイリスアウトしそう」

 

 懲り懲りだー、のヤツね。

 

 でもこれ……つまり、そういうことだよね。

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