Rauta 作:Ubiquintetous / 五劫偏在
まず。
まぁ当然だけど、シェフルのやったヤツはダメだ。強制的に全員NPC化する、はね。
ただし、世界が新しく植え付けられた臓器に対して拒絶反応を示すというのなら、やはりプレイヤー側をどうこうするしかない……感じはある。
……人体と同じものであると考えるなら、移植医療の歴史でも辿ろうか。
放射線で免疫を弱らせる、ステロイド免疫抑制剤などを使う、拒絶反応に関わる免疫細胞だけを弱らせる……という初期の「力業」。これはつまり、未来の私が直面したのであろう「世界からの拒絶反応」自体を……ないしは世界自体を弱らせて、無理矢理定着させる、というもの。
論外。神に対して思うことはあれど、世界に対しては無い。
次に抗体医薬や免疫寛容が出てくるけど、これもまぁ上記とあんまり変わらないので除外。
となると、やっぱり「初めから拒絶反応が起きない臓器にする」べきで、そうなってくるとシェフルの手段が一番手っ取り早い、と。
ううん。
「"世界自体からのアレルギー反応ねぇ。考えたこともなかったな"」
「"ですね……。しかしとはいえ、どんな手段があるものか"」
未来やシェフルについての話はまだ運営全体へは報告していない。
シェフルを敵視しているやつが多いのもあるけど、まだ膿が出切ったとは限らないから、色々慎重にね。
なので久しぶりの念話会議だ。
「"机上の空論止まりだった知識ですけど、臓器側の免疫細胞で全身を覆い尽くす、なんてのもありましたね"」
「"移住者の組成で世界を染め上げるってことでしょ。できなくはないかもしれないけど、気乗りはしないよね"」
「"まー、あんまし世界にゃ手を付けたくはないわな"」
こうも世界を変更することを拒むのは、世界が大事だから……ではない。
この世界、弱いのだ。既に一度死にかけているし、霊長が諦めているせいか世界もそういう気質にある。ちょっとやそっとで破滅に向かう。だから触れたくない。
「"あとはまぁ、抗原を隠すとか、むしろ完全人工素材にしちまって馴染むとかいう話を越しちまうか……"」
「"言い換えるとなんだ? 移住者における抗原って……世界が何に反応してるのかわかんねーからわかんねーか"」
「"人工素材も同じですね……何が拒絶されてんのかわかんねー以上は難しい"」
「"んー。多分だけど人間そのものなんだよね。アバターはだってこっちの用意したものじゃん。だから、魂と精神か、言うなれば"」
「"それ隠したり隔離したりしたら意味ねーよな"」
悩ましい。というか……未来の私がやらなかった時点で感はあるっちゃある。
過去にいる今だからできることがあるのか、過去でも無理なものは無理だからシェフルを頼るしかないのか。
「"ああそうだ、今言うことじゃないことかもしんないこと言っていい?"」
「"良いけど本当にどうでもいいことだったら酷いことするよ"」
「"怖。いやさ、sinohumiが龍門に共有した情報の中に、ちょい気になるモンがあってさー。俺も現場見にいったんよ"」
「"へえ"」
「"首謀者とか地盤沈下に使われた道具類は最初に上がってた通りなんだけどさ、あそこに住んでたの、どうにもクルミナが食い殺した三人だけじゃないっぽくてさ"」
……そういうのもわかるのか。流石だなsinohumi。ただのモデラーではないのか君は。
「"で、俺なりにそいつらの足跡を辿ってみたんだけど……ヘンでさ"」
「"変、ってのは、なにがだ、カル"」
「"そいつらって言わばこの世界の元々の住民、棺桶に乗っていない、心を閉ざしていない人間のはずだろ? けどそいつら、一言も喋らねえで蹲っててさー"」
「"クルミナが食い殺した三人を待っている、とかじゃねえのか"」
「"だからって一言も喋らねえってあるか? んで俺それ見て思ったんだよ。念話っぽいなーってさ"」
「"源力なしに彼らがそういう手段を構築している、と?"」
「"それはわからん。が、俺達のこれって魂の共振を使ってやってるだろ。あいつらだって当然魂は持ってんだし、源力自体が失われたことが逆に鋭敏化を促して、同じ技法に辿り着く……ってことがあったっておかしくないと思うんだよな"」
魂の共振。共心のコードという、「魂を有する存在それぞれが持つ、生涯を通して不変である振動数」を用いて行う会話方式。
まぁ……ここには確かに源力が関わってこないし、あり得るといえばあり得るけれど。
「"……それがこの件とどう関係するんだ、カル。今言うことじゃないかもしれないっていうくらいだ、掠りはすると思ってたんだろ?"」
「"いやさ、人間にもこれが使えるんなら、つまり魂ってやつは聖霊だろうが人間だろうが同一ってことだろ? んで移住者が魂と精神だけの存在だっていうんなら、移住者そのものをどうにかするんじゃなく、精神だけをどうにかする方法を考えりゃいいんじゃねえかってさ"」
「"仮に……そいつらが念話をしていたとして、移住者も使えるかも、ってのは……どうなんだ?"」
「"可能性は十二分にあるよ。というより、冥底で剥がした魂が次生に並んで、新しいNPCが命を芽生えさせられるというのなら……そこはもうクリアと考えていい話だ"」
なんせ現地民も移住者も同じ人間なのだから。
……と考えると、そうか。
「"世界が拒絶反応を示しているのは、ずばり精神ということになるね"」
「"その線で行くなら、お姫さん。世界ってのを人体だと考えた話。あれ、実際にそうなんじゃねえかなって思ってて"」
「"というと……つまり、世界とは
「"肉体はどうとでもなる。魂は待機列に回るだけ。そう考えるのがベストでしょうね"」
そうなると、プレイヤーの精神をこの世界の精神に迎合させればいいわけで。
……ん、結局じゃない?
精神……精神ねー。
精神をどうこうする技術で、『Vesi』側のものじゃないのってなんかあったっけな。我々の使う思考誘導や思考制限ともまた違う……。
……。
「"
「"ほぉ。移植医療にもありますよ、免疫細胞を催眠するって手段。机上の空論ですが。……そうか、世界をどうこうするんじゃねえ、害のないもんですよって誤認させるだけでいいわけだから"」
「"待て待て。あれ報告書読んだけど、故意で催眠したわけじゃないんだろ? どーやって世界へ波及させる催眠なんか作るんだよ"」
「"sinohumiに投げたらなんとかならないかな"」
「"依存し過ぎだろ……。まぁ物は試しではあるか。が、あいつも催眠対象が世界なんつーよくわからんものじゃ難しいだろ。投げるだけ投げるはいいけど、先にこっちで世界の精神を捉えておかねえと"」
ふむ。なら、まぁ。
「"こっからの話、運営全体に共有することの如何についてを話そう"」
「"……まぁ、そうですね"」
まず、だ。
「"集合知じゃないけど、数を考えられるのは当然裏方ーズじゃん? ハトムと以下六人は信用できそう?"」
「"ハトムは大丈夫だろうが……"」
「"吸血鬼に与していた裏切りモンは、あー、シュミテットリスズ。
「"つか地球人をハブりゃよくね? こっちの世界出身でやべーやつなんていねーだろ"」
「"
「"……聖典も除外するとか"」
我々の構成は聖霊十二の聖典八の、計二十の超常存在+地球出身者になっている。
ここには明確な上下が存在しない……ものの、聖典はその全員が「人間のためのもの」であるため、我々聖霊より力が弱く、そして情を覚えやすい。絆されやすい。ただし切って離せる者達であるかと問われると……正直うーんだ。
「"……ミヤサケを判断機に使うのはアリだと思う"」
「"
「"聖霊に格上げしたら、どうだ。……できるだろ、ナグティリス"」
「"なん……そんなことができるんですかい、お姫さん"」
聖典を聖霊に上げる。
……。
「"できないことはないけど、やんないかな"」
「"なんでだ。裏切り者がいるかもしれねえって場面で、あいつほど適したやつもいねえだろ。聖霊になりゃ、判別くらいは司りそうだ"」
「"できればもう聖霊は増やしたくないからねー。それこそ沙初魚夜が例外中の例外で、彼自身も聖霊になったわけじゃない。殻霊はこっちの制御下にあるわけだし"」
「"……力の分散が怖いのか?"」
「"その程度の些事を私が恐れると、心から考えるのか? カルンアルン=ヒクティティス"」
沈黙。信用と信頼。天秤が傾くのは。
「"……ここであんたと意見を割るつもりはねーよ。……だがどうする。裏切り者が判別できなきゃ情報共有もできねーだろ"」
「"とりあえず信用できるやつらを呼び出して、一人一人共有が丸いかな"」
「"一人一人口止めですかい?"」
「"そうなるね"」
手間だけど、それしかない。
「"あとはそう、プレイヤーIDの話ね。あれ対処しておいたから、ブン屋に情報提供者の形で一人トカゲのしっぽ出しといて"」
「"了解で"」
「"で、ごめんだけどチュノスケ一旦ここで抜けてくれる? カルアルンとだけで少し話したいことあるからさ"」
「"へい。では失礼しやす"」
念話からチュノスケが消える。わざわざ切断までしてくれたらしい。ありがたいね。
「"んだよ"」
「"ミヤサケちゃんを聖霊にしたくないのは、聖典から聖霊になったって前例を作りたくないっていうのが大きい。それと、聖霊化におけるプロセスを、聖典や『Vesi』に悟られたくない、っていうのもある"」
「"念を押さなくてもいいよ。あんたにゃあんたなりの考えがあるってわかってっから"」
「"私と君は、聖霊という力においては対等だ。我慢はしなくていい"」
「"……その聖霊以外の力が対等じゃねーからチュノスケのやつもへこへこ従ってんだと思うけどな"」
笑む。
「"言いっこなし、ってか"」
「"ま、それを言うならチュノスケもそうでしょ。彼だって聖霊以外の力がどうこうだよ"」
「"そりゃそーなんだけど、ベクトルが違うだろうに。……で、とりあえず呼ぶのはハトムでいいのか?"」
「"ああいいよ、その辺は全部私がやるから。それで、君に残ってもらった理由なんだけど"」
「"おう"」
事件をね、起こしてもらいたいんだ。
彼ら『Vesi』と接触する必要がある。
我々運営としてノータッチで行くと決めた後で申し訳ないのだけど、『Vesi』の持つ乗っ取りや融合について、精神の催眠を深掘りするために、改めて見定めておきたいのだ。
元亡霊の『家族』やthouは、技術の部分をあまり覚えていない。sinohumiもそっち方面には明るくない。ウネルマはもういない。
現役『Vesi』で、且つ肉体を有していないもの。それらと接触するにはどうしたらいいか。
「マッチポンプ……ですか」
「そう。これから我々の一人が事件を立て続けに起こす。そのやり口が『Vesi』と似ていたら、彼らも気になって顔を出すんじゃないか、ってね」
「理解できなくはありませんが、どうして私が呼ばれたのでしょう」
ケッセウス。そりゃーもうね。
「当然だけど、『Vesi』は私を警戒する。けど君はどうだろう。ウネルマも君が名乗るまで裏切り者だと気付かなかった……つまり君は裏切り者としての知名度があんまりないわけさ」
「はぁ」
「その上で探偵だ。その手腕は中層を中心に広く知れ渡っている。上層ばっかの私よりもね」
「はぁ」
「こっちで用意した謎を、こっちで用意した君が解く。マッチポンプだろ?」
あくまで探偵役になってくれたらいい。
そう思っての申し出。
「……すみませんが、私は今現地民の方々との交流で忙しいのです。あなた達五劫偏在のお遊びに付き合っている暇は無くてですね」
「君は私からの依頼を断れないはずだけど?」
それは最初の話。最初の契約の話。
私からの依頼を受けること了承したから彼はここにいる。
「ぐ……」
「それと、お遊びとはよく言ってくれたものだよね。すべては君達元亡霊がやり方を覚えていないのが悪いっていうのにさ」
「いえそれは……まぁ……」
「そもそも私、ずーっと仕事詰めでお遊びなんて全然してないんだけど。これだって普通に仕事だよ。遊びなんかじゃない。──まぁ、でも、譲歩もしよう。事件を起こすのは一週間に一回にする。これでどう?」
「……わかり、ました。それで手を打ちましょう。……ただ、あまり多くの情報を共有しないでください。答えのすべてがわかっていながら悩んでいるフリができるほど器用ではありませんので」
「了解~」
よーし探偵役GET。
あとはカルアルンの悪役ロールプレイの精度上げだな~。
TIPS 抜粋登場人物表
| 名前 | 正体/あだ名 | 種族 | 生死状態 |
| 運営 | |||
| スタラランナ=ナグティリス | 選択を司る聖霊 | No data | |
| カルアルン | カルンアルン=ヒクティティス | 存続を司る聖霊 | No data |
| 井坂チュノスケ | レルグ=アンハルヴ=フレバス | 未遂を司る聖霊 | No data |
| クルミナ | クート=ルルン=ミドラシカ=ナヴァラ | 保存を司る聖霊 | No data |
| ハトム | ハーターマーヴァ=セルディリオン | 構築を司る聖霊 | No data |
| 龍門 | リズヘッド=ツァルニク | 構造を司る聖霊 | No data |
| 未接続 | 未先姫 | "届かないこと"に纏ろう聖典 | 生 |
| 未弥栄 | 宮避姫 | "不幸の回避"に纏ろう聖典 | 生 |
| 咋・明白 | あか、アカラ | ヒト種 | 生 |
| アシャドマン | アシャ | ヒト種 | 死? |
| upup0218 | あっぷあっぷ | 吸血鬼 | 生 |
| アンドゥーロ・ノルマニタス | アンドゥーロ | 狼男 | 死? |
| 犬養ネコメンド | ネコメ | 変質犬の獣主 | 生 |
| エリングド | No data | ERROR | 死 |
| 往年の | 往年 | ヒト種 | 死 |
| オールトエンド・ダンスダンス | オールト | 変質吸血鬼 | 生 |
| お遍路だろ | オヘンロ | エルフ | 生 |
| ケッセウス | ケス、ケス兄 | 変質ヒト種 | 生 |
| クリーチャーの血とか飲めんて | ヴラデスト・ヘルカイザー | 吸血鬼 | 死? |
| シハネ | シハネ | ヒト種 | 生 |
| sinohumi | ノフミ | 変質ヒト種 | No data |
| シュミテッドリスズ | 石芒周斗 | 吸血鬼 | 死 |
| JOY福 | 徐福 | 変質ヒト種 | 死? |
| ジョトキル | ジョット | 狼男 | 生 |
| 朱雀玄武青龍びやっこ | びやっこ | 変質ヒト種 | 生 |
| ストラウス・フェリン | ストラウス | 吸血鬼 | 生 |
| チキン鳥井 | チキン、バード | ヒト種 | 生 |
| チェスカ・グラッセオ | チェスカ、姐さん | ダークエルフ種 | 生 |
| ティアラン | ティア | 吸血鬼 | 生 |
| ニーフレィデン | マスター | 変質エルフ | 生? |
| ハナミは桜でSHOW | ハナミ | ヒト種 | 生 |
| バルサ巫女ッス | バルサ、ミコス | 吸血鬼 | 生 |
| ヒストリー芳岡 | 芳岡さん、所長 | ドワーフ | 生 |
| ヒュー太 | ヒュの字 | 変質ヒト種 | 生 |
| フック・タイサン | 総団長 | ヒト種 | 生 |
| ブラックダリア | ブラダリ、ダリア | ヒト種 | 生 |
| ポロロイド | ロイドロン | エルフ | 生 |
| 鐇泊克井田金太郎 | 金太郎 | 変質魔人 | 死? |
| マルギッテ・マグレダッテ | ギッテ | 変質犬の獣族 | 生 |
| マルハノ刃 | マル | ヒト種 | 生 |
| 三日点火 | ミカ | 変質ヒト種 | 生 |
| 陽気なヤンキー | ようやん | ヒト種 | 生 |
| ユークリッド | リッド | 魔人 | 生 |
| 吉若尊三度 | 吉若さん | 狐男 | 生 |
| 詳細不明 | |||
| シェフル | No data | 岐路を司る聖霊 | 生 |
| thou | ザウ | 変質ヒト種 | 生 |
| 山中ゆう | No data | No data | 生? |
| エドワード・クリーキング・ハース | No data | sNPC | 死 |