Rauta 作:Ubiquintetous / 五劫偏在
実のところ、この存在の示唆というものは随分と前からされていた。
"とある事情"からこの『Rauta』の世界は閉じてしまっている。それをどうにかするための移住計画だったし、それが理由で「世界の半分をゲームナイズする」なんて暴挙がやり遂げられた。
魂に関するアレコレが解放されていた地球から閉じた世界に魂を露出させ、強制的に器を移し替えた、というのが「デスゲーム化」ないしは「集団転移」の真相。
だからこそ、此方の世界で死したプレイヤーの魂は地球にある通常輪廻に乗ることがなくなって、『Rauta』世界に沈殿するはずなのだ。死の確定と同時に肉体は泡となって消え、魂は世界というフラスコに沈殿する。この時肉体と魂を対象個人のものと定めていた精神はこちらの制御を抜け出し、この世界に漂う、もしくは溶けることになる。
この精神をこそ幽霊と呼び、中でも強く記憶を残しているものを
「とはいえ、君たちにできるのは他者の精神を押し込み、肉体を短時間間借りすることくらい。なにもできないの名に恥じることなく物質界への干渉も霊魂そのものへのアクセスも行えない。これまた文字通り間借りする……人格データの封印し、そこに居座ることくらいしかできない。人格データを封印し、中身にアクセスする術を手に入れたプレイヤーではなく、そういうことしかできない亡霊と、それが起こした事象を解析した存在がいた、というところか」
クラッキングに精通した知識があるわけじゃない。なにかできることがないかを模索して、偶然にもできてしまったことを技術的に再現できないか、何が起こっているのかを解析しようとした……その程度に過ぎないのだ。
「さらに誤算があったとすれば、君たちの行う間借りは自らの人格の塗り潰しに同義だったことだろう。亡霊としての記憶や人格を有したままに肉体を操る、ができなかった。どうやったって肉体の元の持ち主の記憶や人格データの方が情報として強いから。君たちは何度も試した。自我を失わずにプレイヤーを乗っ取る方法はないか、と。自覚のない偽物となるのではなく、他者を食い潰している自覚のある化け物になる方法はないか、と。──そして、ある偶然が君たちを次のステップに歩ませる」
既に報告は上がっている。シェフルの発生以前のプレイヤーたちのデータで改竄されたもの、偽装されたもの、そして自らがそうなっていると理解しないままプレイヤーとして振る舞っている者達の数多くを。
可能な者から治療を進めているけれど、この過程でまた一人怪しまれそうだな、とも考えている。余計な手間を増やしてくれるものだ。
「君たちにとっては現地民はNPCでしかなかった。ノンプレイヤーキャラクター。中身のない影法師。プログラムで動いているだけだと思っていた彼らに、なんと魂があることがわかる。そして、NPCの方が間借りするにはやりやすい、ということも知った。こればかりは完全な偶然の発見だろう。どうして試そうと思ったのか、自暴自棄になったのか天啓でも降りたのか、その辺りはまぁどうだっていい。ただ、NPCはNPCだった。弱い。この世界……『Rauta』の世界で生きていくにはあまりに弱い現地民たちに、ついに欲が出た」
NPCならば乗っ取り得る。
ならばプレイヤーをNPCにしてしまえばいいじゃないか、と。
「以前発生した乗っ取り事件は単なる君たちの間借りだが、続く第一から第四までの殺人事件は君たちによるプレイヤーのNPC化実験だ。その全てにおいて失敗したが、最後の事件で成功しかけた。成功しかけた理由はわからなかったから、もっとたくさん検証しようと考えた。そうしていつか、自由になる身体を、強靭で、スキルも使える、プレイヤーの身体を乗っ取って蘇る。それが君達ポルターガイストの目的だ」
とはいえ、と。そこで言葉を切る。
「君達は一枚岩ではなかった。今まで死んでいったプレイヤーの亡霊である君達は、当然に意見を割った。生きている人に迷惑をかけてはいけないという亡霊もいたのだろうし、やるにしても悪人の身体だけを乗っ取ろうと言い出したやつや、逆に乗っ取る身体は選びたいなんて我慾を出したやつもいた。一個一個の霊の自我など焼き付いた染み程度のもののはずだが、まぁ、ひとまとまりになれば、人格らしきものも見え隠れするのだろう。その議論の結果、君達はバラバラになった」
つまり。
「君はその中でも"最も悪い奴であれば乗っ取ったって許されるだろう"の理念で動いていた存在だ。最初にNPCを乗っ取った"
ケッセウス。ゲーム時代は転売と相場コントロールで稼ぎを上げて、デスゲーム化してからは
そして、彼を間借りしたことで、彼らポルターガイストはケッセウスの常日頃考えていた可能性を汲み取る。
「即ち、運営の存在の可能性。特に尻尾が掴めていたわけじゃなかったみたいだが、居る可能性が高いと踏んでいた。君はそれを知った時、こう考えた。運営は悪人だ。なんせあの時接続していたプレイヤー一万人を全員殺害してしまったようなものなのだから。これほどの悪人であれば亡霊仲間が乗っ取りを行ったって罪悪感に苛まれることがない。運営ならばそこらのプレイヤーよりも強いだろうし、彼らも納得するだろう、と」
こうして彼は
とはいえ一石二鳥とでも思ったのだろう。プレイヤーのNPC化実験と運営の露呈、そのどちらもが望めるのなら、そんなに嬉しいことはない、と。
さて。
「長々と講釈を垂れたのには理由がある。君達、生き返りたいのだろう?」
……ああ、そうか。
掴んだままだったな。
「ほら、放してやった。これで喋れるだろう」
「……何が目的かを問うても?」
「君が……正確には君の元となったケッセウスの睨んでいた通り、我々は『Rauta』の運営だ。それは即ちこの世界における神にも等しい力を有している存在、ということになる。君達の生死を操る程度は造作もない。──よって、取引と行こう。君が今問うた通り、我々には目的がある。それについては明かせない。だが、その目的に関してこちらから度々の依頼を出す。それに協力してくれるというのなら、君達に"もう一度"を与えてやってもいい、という話だ」
「私があなた方の存在を吐露してしまうとは考えないのですか?」
「無論対策は講じさせてもらう。だが、それをすればどうなるかくらいわかるだろう。君達
「……私達の……生き返った私達の存在を、どうプレイヤーに説明するのですか」
「そんなものはどうとでもなる。現存するプレイヤーのすべてを把握している者がいるとでも? この棺桶は大きいんだ、たかだか三年じゃ活動圏がかすりもしなかったプレイヤーなんてごまんといるだろう」
それでは、改めて。
「選びたまえよ、亡霊。傀儡となりても生にしがみつくか、今ここで死ぬか、だ」
賢い選択を期待するけれどね。
カン、とグラスが鳴る。
「名探偵! 姫!! にぃ~、乾杯! と、亡くなった方々への酒悼!!」
「乾杯!」
事件から二週間ほど。
あれから殺人事件はきっぱり消えた。NPC化も起きていない。
長らく放置になっていた下層との伝達網もチュウチュウファミリーと一団クランとで構築され、三年目にしてようやくプレイヤーの今後在るべき指標みたいなものが固まりつつあるとかなんとか。
これを受け、此度事件を解決に導いた私、チェック、マルハノ刃、井坂チュノスケが表彰され、こうしてまた呼び出されてのパーティになった、と。
ちなみにチュノスケは来なかった。代わりに「若いモンでぇ」と獣族の男女が数人寄越されているので、まぁ色々あるんだろう。単純にタスクが溜まっているだけとも言う。下層にもわんさかいたみたいだからね、NPC化感染者。
「いやぁ、まぁオレ事件に関しちゃマジでなんもしてなくって、こっちのマジレスプリンセスがマジで凄くて!」
「ねー、あの時の臨場感ったら無いよね! お姉さん痺れちゃった……姫、結婚してー!」
「実際チェスカならお金持ってるし一生ヒモるのはアリかも」
「現金過ぎる!?」
仲良しこよしをするつもりはないけど、チヤホヤされるのは別に悪い気分じゃない。推理のほとんどは意味のないものだったとはいえ、推理している時気持ちよかったし。
一応運営としての節度……ゲーム内マネーはむやみに増やさないようにしているから、ヒモになれるのならウェルカムだ。料理は料理スキルで作れるし、家事は
「──パーティだというのに随分暗い顔じゃん、ケッセウス」
「え……あ、ええ。いえ……私が……往年のさんをこの街に連れてきてしまったので、そのトリガーを引いたのは私のようなものだな、と」
「そんなこと気にしてたのかよお前。凍死餓死寸前だったあの人を発見して食わせてやったのがお前なんだろ。それは誇ることであって、悔いることじゃないぜ」
「ホントになー。あそーだ、レンタル屋自体はまだ利用したことねーけど、サービス内容からして絶対いつか世話んなるし、フレンド交換してくれよ」
「あ、俺もー」
「ええ……わかりました」
さて、その罪悪感はどこから生ずるものか。自身がケッセウスではないという事実か、往年のさんのことか、それとも亡霊仲間がやったことについてか。
揉みくちゃにされ始めたケッセウスを他所に、テーブル席でスミノフをちびちび飲む。アルコール系の再現にはかなり力を入れたからちゃんと地球と同じ味だ。
そんな私の隣にやってくるはカルアルン……ではなく。
漆黒の全身鎧とかいうこれまたスチームパンク世界に似合わない恰好をしたプレイヤー。
「お初にお目にかかる。中層で警備組織のグループを率いているブラックダリアというプレイヤーだ」
「ああ……じゃあ、アシャドマンとマルハノ刃を斡旋したのが、君?」
「そうだ。そのことについて、深く謝罪を。マルハノ刃はしっかりやってくれたようだが……敵を引き込み、気付かず、剰え護衛につけるなど……何かが違えば、チェスカ殿とあなたの死体がここに追悼されていた可能性とてある。本当にすまないことをした」
まぁNPC化については総合的に
が、プレイヤーマジレスプリンセスとしてはこの謝罪は適当なもの。「うん」と返し、「ま、無事だったからいいよ。貸し一つにはしておくね」で終わらせる。
「かたじけない。……その、だな。……かたじけないところにかたじけないことを重ねる……のは非常に心苦しいのだが」
「ん、なに」
「……中層でも、事件と……そう呼べるものが起きている。もし……よければ、雪殿の知恵を貸していただければな、と」
えー、嘘。そんな報告来てないけど。
次から次へとそんなに事件って起きるものだっけ?
「ちょいちょいちょーい! ブラダリ! めっ!」
「む、チェスカ殿」
「今は仕事の話しない! 姫になんか用あるとしても後! 今はお疲れ様パーティなんだから!」
「そうだそうだー!」
「リーダー辛気臭いっすよ!!」
「つーかあの件は俺たちでなんとかできるって! 名探偵の出番はいらねっすよ!!」
「てか姫なんか度数高いの飲んでね? 対してブラダリ一滴も飲んでなくね?」
「いけ! チキン・バード! さけをのませる、だ!」
「チキンッ、バーッ!」
人波に攫われてブラックダリア。……ま、そうだね。仕事の話は後にしてほしい。
本来の仕事の話を振りたそうにしてるやつらが順番待ちしてるから。
個別通話が開く。
「あーテステス。感度良好オノヨーコー」
「ラジオネームは?」
「夢見るうさぎちゃん。オーバー」
「恋するだから不合格」
「古いんだよ。知るかよ世代じゃねーよ。本題に入っても?」
「今回報告者君だけじゃないから、早くして」
「理不尽だ……。……こないだよ、お前とチェスカと他何人かで冒険行ってたろ? そんときシェフルを見つけた。それは覚えてんな」
「勿論」
「その時わざっとらしく大声上げてみんなを呼び寄せたやつがいただろ。シェフルの発見者。そいつも見事にNPC化に感染してたんだがな、ちょいと妙なんだ」
ログデータが目の前に現れる。私にしか見えないものだから問題はないけど、貼るなら貼ると言え。
下から上へとスクロールしていくデータ。それがある一行を赤くハイライトして止まる。シェフル発見の……一日前の日時だな。
「シェフル発見より前に感染していた。つまりシェフルの発見は予定調和であり、彼の感染にシェフルは関わっていない、と」
「ああ。でもよ、じゃあシェフルってなんなんだ、って話にならねえ? 狭所でほぼ確定でプレイヤーにNPC化ウイルスを入れられる、ってとこまではいいよ。かなりの脅威だ。だけど、なんつーのかな、回りくどい……というより、意味がない。シェフルは何のためにあそこで埋まっていたんだ。誰かが緊急脱出を使うと踏んでいて、それで棺桶まで跳んで、その時点で棺桶の全プレイヤーを乗っ取れる、くらいのリターンがないと、ここまで手の込んだことをやる意味がないっつーかさ」
「……クエストIDから最終クエスト派生のNPCであることはわかっていた。が、じゃあどの派生なのか、どのクエストのNPCなのかは結局わからずじまい……だったな」
「解析回したけどそうだったな」
「今回の事件。やり方がクラッキングだったから、私達は最初悪意あるプレイヤーか突然変異したNPCか、という線を追っていた。が、真相はそれしか方法を知らんやつとそれを解析したやつ、という組み合わせで成り立つものだった。……これも同じなのではないだろうか」
「つーと……回りくどい、意味のないやり方は、技術的観点から見ているから意味がなく見えるだけで、それしかできなかったからそうしただけ。その後の被害はあとからついてまわるもの。そういう解釈でいいか」
「正しい。良い理解だ」
「おう、あんがとよ。んで元の口調出てきてんぞスノープリンセス」
──まぁ、偽ケッセウスの時もほとんど出ていたし。
地球人歴をそれなりに積み上げたから、もう消えたと思っていたのだけど、流石にこっちの方が長いか。
「んじゃまぁしばらくはシェフルの監視継続か。免疫パッチ
「了解。それでも監視は続けてね」
「おうよ。んじゃ切るぜ」
個別通話が切れる。そして直後、開く。
まだまだ報告を入れたい奴はいっぱいだ。中間管理職はこれだから。
「おう姫ー! 飲んでるかー!」
「もうボトル開くけど」
「思ったより飲んでた!?」
こっちでの反応もしつつ、ね。
アルコールは漏れなく寒冷値低下アイテムになっている。その値がゼロの状態で更に更にと飲むと、身体が火照ったり酩酊になったり、バッドステータスではあるんだけど心地いい、みたいなものが付与される。
今そんな感じで、パーティ会場の二階のテラスで雪空を眺めているところ。
「パーティの主役が灰空とデートですか」
「祝賀も追悼も理由のこじつけでしかないからね。彼らは何かと理由をつけて飲みたいだけだよ」
「違いないですが、身も蓋もありませんね」
ケッセウス。いや、偽ケッセウスと呼ぶべきか。ま、面倒だからケッセウスでいいや。
彼もまたパーティの熱気を冷ますようにしてテラスへ避難してきたようだった。
個別通話の申請が来たので、許可。
「万一を考えてウィスパーで」
「良いね、慎重だ。アシャドマンとは随分と違う」
「果たしてこれが生来のものであるのか、ケッセウスという青年の持っていたものであるのかは定かではありませんがね」
ああそう、そうだ。今更ではあるけれど。
「君は成功例なわけだけど、どうして他の騒霊たちは君を参考にしなかったのだろうか。君は確かにケッセウスに塗り潰され返している状態にあるけれど、亡霊としての記憶や知識も引き継いでいる。言うなればケッセウスに同化した、とでもいうべき状態だ。それでは納得できなかったのかな」
「どうでしょうね。彼らからみれば、私はやはり同化したのではなくケッセウスという自我に負けた……人格データの強度比べで負けた哀れな個体でしかなかったのではないでしょうか。記憶や知識が引き継げていても、個が消える、というのは耐えがたい苦痛でしたでしょうから」
「……そういうところ、不思議に思うよ。フルダイブのVRゲームをする時、君達は肉体を眠らせる。そうして電気信号だけの塊となって、その号令に適合する映像出力に乗り移る。キャラクターアバターのことだ。君達はそれを死とは捉えない。眠りとすら捉えない。確実に君達の肉体はその接続先を失い、その魂は全く別の器を己だと思い込んだというのに」
「記憶が地続きだからでは?」
「フルダイブ型は必ず暗転を挟むだろう。あそこで一度殺されている、という可能性を考えもしない。その後蘇生されているだけ、人格は投射されただけ。世界五分前説に似た話だ。夜眠った時に死して、朝起きた時にペーストされただけの人格。それが己のものであるかの定義法を君達は有していないのに、地続きであると思い込むことができる」
「はあ、成程。だというのに同化を恐れる彼らが不思議である、と。些か超人的……超越的な思考ですが、理解はできる。つまり、目覚めた時の人格が苦しみを覚えていないのなら、目覚める前の人格がどれほど苦しもうと関係がない……五億年ボタンのパラドックス、人格の同一性。しかし、やはり客体的ですね。とてもヒトの発想とは思えない」
「無論、ヒトではないと言ったら?」
天使が通る。
「……今は否定する材料を持ち得ませんね。単なるゲーム会社の実行員……運営が神様気取りとは、などとあの契約当初は考えていましたが、事実プレイヤーをデスゲームに隔離し、世界を創造し、そして一度死した私達に新たな生を与えてしまった。ここがまだゲームの中であると言われたのなら理解もできますが、死した時と、死してからのあの空恐ろしい感覚が……死の気配がゲーム体験であったとは到底思えないのです。自らの存在、自らの死こそがこの世界を
「ま、否定も肯定もしないでおくよ。私から投げかけておいて、だけどね」
「酷い話です。……しかし、心地よくもある。これがケッセウス氏のものなのか私自身のものなのかはわかりませんが、どうやら私は謎や未知に対して非常に意欲的……好ましいものと見る性質があったらしい。いつか解明してみせますよ、あなたたちのこと。残念ながら推理を披露する相手には恵まれなそうですがね」
ふん、それはいい心がけだ、人間。
この世界は困窮に肩が入ってしまった。人間は土塊を眺め、日々を必死に生きるばかりで、上を見ようとはしない。しなくなってしまった。
だが、おまえたちならば。プレイヤーならば、移住民ならば──いつか我々の正体とやらを暴き得るやもしれん。
それはなんとも甘美な可能性だとも。
「ああ、そうでした。忘れるところでした。この話も興味深いですが、一応、用があってきたのです」
「ん」
ケッセウスは……インベントリから、お酒のボトルを取り出す。
なんだ、それから逃げてきたんじゃなかったのか。
グラスを置けば、そこに注がれるは──薄い青色をした液体。
これは。
「ケッセウス氏が行っていた悪事。その中で手に入れた秘蔵の品。残念ながらこれを作り上げたプレイヤーは亡くなってしまったようなのですが──霊酒:ハルホボロン、と」
「ああ、知っている。が、成程。そうか、そこまで辿り着いていたプレイヤーがいたのか。……ああ、これは開示になるのかな。プレイヤー諸君が辿り着いているスキル。冒険スキルも保全スキルも製作スキルも調査スキルも……君達が見つけているのは、全体の一パーセントにも満たない微量だ。現実の再現なんてできて当たり前なんだよ。ゲーム内要素の組み合わせなんてできて当然なんだよ。私達がこの世界の叡知を紐解き、スキルという形で付与した可能性ならば、君達の時代には作り得なかったものにすら手が届いていいんだ」
青い酒。地球上のどの酒類にも括られない製法・成分のその酒は、かつて我々が愛飲していたものの一つ。
まさかまた飲める日が来るとは。そして……辿り着いていたものがいたとは。
「乾杯だ、ケッセウス。素晴らしく生き足掻いてほしい。この鋼鉄の世界を」
「ええ、言われずとも。そしていつかこじ開けて見せますよ、この棺桶を」
「楽しみにしている」
チン、とグラスを鳴らして。
灰色の空に、乾杯。