今回は未来への伏線の回。ちょっと無理あるかなぁ・・・
「蓬莱山家に女子誕生、ねえ」
「はい、それで月夜見様に祝いの言葉を賜りたいとのことで、それを月夜見様は受諾。つきましては閣下に月夜見様の付き添い兼護衛として蓬莱山家に向かってほしいとのことです」
「まあ、蓬莱山家は綿月家に並ぶ名家。月夜見も無下にできなかったんだろうな・・・」
ある日の職務室。
いつもどうり書類と退屈極まる格闘戦を繰り広げているとき、火織が報告書を片手に入室してきた。
どうも長らく子宝に恵まれないでいた蓬莱山家にようやく待望の赤子が生まれたらしい。
それはめでたいことなのだが・・・
「ずいぶんと思い切ったことをしたなあ。月夜見は曲がりなりにも月のトップ。そんなやつに祝言を賜るなんて、周りのお貴族様にずいぶんなお言葉を頂きそうなものだけど?」
「どうも、原因は閣下と妹様にあるようですよ」
「うん?」
それはどういう・・・・・・ああ、なるほど。
「ようは私たちが綿月家をひいきしてるように思ったんだな?それを羨んだ蓬莱山家は月夜見から祝言を賜って対抗しようってか。小さいねえ」
「仕方がありませんよ。貴族になればいろいろとメンツやしがらみなんかがいろいろ出てくるものなんですから」
「ああ、火織の家も貴族入りしたんだっけ?」
「はい、今までの功績が月夜見様に認められてまして」
「うんうん、あいつも見る目がある。火織は勤務態度もばっちりだし、淑女やっててもおかしくないぐらい礼儀も物腰もいいからね」
「ありがとうございます。そう言っていただけると嬉しいのですが・・・」
「?」
「どうやら、私の家もひいきしていると思われているようで・・・」
「・・・やっぱりめんどくさいなあ」
「そうですね・・・・・」
・・・よし。
「とりあえず今回の仕事で、折を見て誤解を解くなりなんなりしておこう。変に腹の内を探られてほうっておくほど、私は寛容じゃあない」
これが3時間ほど前の会話。
仕事自体は何事もなく無事に終わり、今は食事の席となっていたのだが・・・・
「でよお、そこで娘がパパだーい好きって言ってくれたんだけどよお」
「ふむ、微笑ましいですなあ!」
「・・・そのあと、でも獅音さんはパパよりもーーーーっと大好きっ!て、言ったんだ・・・・・・」
「・・・・・・ドンマイですな」
「娘よおオオおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおお!!!」
・・・・・・なんだこれ。
いや、原因はわかってるんだ。大方月夜見のやつが持ち出した古酒『月落とし』のせいで酔っぱらってるんだろう。あいつ素になってるし。でも周りも酔ってるからまるで問題はないんだが・・・心臓に悪い。
あと私は生まれてこの方、一度も酔い潰れたことがない。
いや、酔うには酔うのだが、普通は前後不覚になるまで酔っぱらうであろう量を飲んでも顔が赤くなる程度なのである。
つまりザルというやつなのである。
そんなこんなでこの状況をどう終息をつけるか考えていると・・・・・。
「もし」
「うん?」
「このたびは私の無理に付き合わせてしまって・・・」
「いえ、こちらもお話を伺いたかったんです。奥方」
私は今、蓬莱山家の屋敷、その奥の間へと通されていた。
眼前に座るのは蓬莱山婦人、ようするに、蓬莱山殿の奥さんである。
「・・・その口ぶりからして、こちらの考えにはすでにお気付きのようですね」
「わからいでか。そもそも考えとか、もくろみとか言う言葉で表現するには簡単すぎる。いや、思いつき、というべきか」
そもそも火織から聞いた話を聞いて、蓬莱山殿は俺に対して敵対心ないしやっかみを持っているんじゃないかと思っていた。
だから顔を合わせた時、嫌みの一つでも受けるんじゃないかと考えていたのだ。
ところがいざ顔を合わせてみれば、いっそ拍子抜けするほどに対応は礼儀正しく、こちらには作り物ではない本物の笑みを見せてきた。
一瞬何かたくらんでるんじゃないかとも考えたが、長年信頼してきた勘と、つちかってきた観察眼が、その考えを否定する。
「あなた方は別に私を、私たちをねたんでなどいない。私が聞いたのは、ただ、私をここに来させるために流した偽りの噂だったのですね」
よくよく考えてみれば、私たちをねたんだところで何も起きないし、蓬莱山殿はそんな無意味なことをする人物にも見えなかった。
ならばなぜ、私が来るように仕向けたのか。それだけはわからなかったが・・・
「ああ、それはあなた様に名前を付けてやってほしいのですよ」
と。なんだかとんでもないことを言われた気がする。
「ほわい?」
「名をつけてあげてほしいのです。私たちの子の」
「な、なぜに?」
「あなたに名をつけてもらえれば、まわりに「この子は八意様が懇意にしてますよ、だから変なちょっかい出すんじゃねえぞ?」と思わせられるかも、と、夫が」
「あの人は・・・」
あきれた。ようするに自分の子供に唾をつけられたくないんだな、あの人は。
蓬莱山といい綿月といい、子煩悩が多いなぁ。
つーか自分でつけなくていいのかなあ・・・。
「ですが、私はいいのですか?私は別にかまいませんが、そんな言い方だと私のお手付きだと勘違いさせるような印象を与えそうなものですが」
「あの方ならおかしなことはしないだろう。したら・・・な?と、夫が」
「・・・・・・・・」
・・・・こえー。
しかし、名、かぁ。
そんな経験は生まれてこの方一度もないな・・・。
どんな名にしたものか。
ふむ・・・・・
――――ふと、なんとなく、窓の外、宇宙空間を見た。
「・・・・・・」
基本的に月の都の空は術によって作られた偽りの空だ。
だが、夜だけは違う。
夜だけは術を切り、宇宙空間をダイレクトに見ることができるようになるのだ。
「・・・そうだ」
この名に決めた。
パッと思いついた名ではあるが、いい名だと思う。
――――星たちの輝く夜。
美しい星の中で、最も光り輝いていられるように。
どんな暗闇の中でも歩いてゆけるようにと込めて。
輝く夜、『輝夜』と・・・。
こんな感じになりました。
次回、急展開。