亡国でSFの力を振るって腐った世界を変える   作:宵月颯

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プロローグ

砂漠化した大地に広がる炎。

 

崩れる民家と王宮。

 

国に住む者達は自分達を除いて殺された。

 

 

「父上、此方です。」

「す、すまぬ。」

 

 

土埃で汚れた姿で父親を支える少女。

 

彼女の名はマキナ。

 

ナクモ王国の王女である。

 

重傷を負った父親であるナクモ王を支えながら、彼の指示する場所へと向かった。

 

崩落した城は既に崩れており、城に隠された地下へと進んでいる。

 

途中で部屋ごと動く箱に乗って最下層まで降りてきたばかりだった。

 

彼らは国を襲った他国の兵士から逃げ延びてきたばかり…

 

既に臣下と民は皆殺しにされ、国の生き残りは彼女達だけである。

 

 

「父上、目的の場所までもう少しです。」

「マキナ、済まない…」

「何をおっしゃいます!父上のせいでは!?」

 

 

かつてのナクモ王国は緑溢れる大地だった。

 

だが、いつしか森と水源が涸れ果て…

 

砂漠化が進む不毛の大地と化した。

 

水も無く、作物が育たなければ国は廃れるのみ。

 

多くの飢餓と国を捨てる者で別れて、国は衰退。

 

残った僅かな人々が暮らす小さな国へと成り下がっていた。

 

貧相でも幸せに生きていた国だったのに…

 

それを一夜にして奪われたのだ。

 

 

 

「マキナ、そこが禁忌の間だ。」

「この広間が?」

「入りなさい。」

「はい。」

 

 

マキナはナクモ王に言われたまま室内に入る。

 

中に入ると室内の中央に小さな繭が安置されているだけで何もない空間だった。

 

 

「マキナ、私を、あの繭の所まで…」

「は、はい!」

 

 

ナクモ王の傷は深く、治療をしたとしても助からない状況だった。

 

だが…

 

僅か八歳のマキナには、早く治療しなければ命は助からないと認識されていた。

 

 

「マキナ、繭の奥にあるものを…取ってくれ。」

「はい、父上。」

 

 

マキナが繭の中へ身を乗り出した瞬間。

 

ナクモ王は最後の力でマキナを繭の中へと押し込んだ。

 

 

「父上、何を!?」

 

 

ナクモ王はマキナを繭へ入れた後、外側のレリーフに触れて扉を閉じた。

 

 

「マキナ、お前は…生きなさい。」

「父上!父上!?」

 

 

ナクモ王はマキナの安全を確認した後、息を引き取った。

 

血まみれの手が繭の外壁を滑る様にずり落ちて行く。

 

 

「どうして…ちちうぇえええええ!!」

 

 

開かない繭の内側から両手を内壁へと振り下ろす。

 

今すぐ行けば父上を助けられる。

 

そう思っても繭の扉は堅く閉ざされ開く事はない。

 

 

「ひとりに、しないで…」

 

 

いつしか抵抗する意力も無く、崩れ落ちる様に座り込んだ。

 

流し続けていた大粒の涙は涸れ果て、目元が腫れている。

 

内壁を叩いた両手は赤くなり、今にも皮膚が裂けそうな状態。

 

 

「どうして…」

 

 

ただ質素に平和に暮らしていたのに。

 

これ以上、私から何を奪うの?

 

砂ばかりだけど、小さな国。

 

不作に悩んでも前向きに畑を耕す民達。

 

国に残って勉強を教えてくれた宰相。

 

優しい笑顔の父上。

 

 

「何で、どうして…」

 

 

奪って、奪って、奪って。

 

まだ、足りないの?

 

何処まで奪えば気が済むの?

 

私が女の子だったから?

 

男の子だったら父上を守れた?

 

皆を守れた?

 

 

「皆、許さない…私から奪った全部を返して。」

 

 

少女は怨嗟の声で答えた。

 

 

ーユルサナイー

 

 

その言葉と同時に室内に明かりが灯った。

 

周囲の壁に刻まれたレリーフが点灯。

 

同時に謎の声が響いた。

 

 

『血族の認証完了』

 

 

「え?」

 

 

謎の声は続けてマキナに問う。

 

 

『貴方の呼称』

 

 

「呼称って名前?」

 

 

『貴方の呼称』

 

 

「マキナ。」

 

 

『マキナ…認証完了』

 

 

「一体何が?」

 

 

『これより緊急プログラムを作動。』

 

 

声は何かの認証を終えるとマキナの入った繭の装置を作動。

 

足下より浸出する謎の液体。

 

衣服は溶け、マキナだけの状態となる。

 

 

「!?」

 

 

液体に満たされると息が出来ないと思われたが…

 

肺に液体が入ると呼吸が安定しマキナは息が出来ると分かった。

 

 

(あれ?息が出来る。)

 

 

声に出せないが、何となく安全であると認識する。

 

落ち着いてくると次に来るのは睡魔。

 

 

『続けて、認証者マキナの再調整を開始』

 

 

睡魔に襲われるマキナの足下より無数のコードが出現。

 

手足、胴体、首元、頭部へと絡みつく。

 

 

『認証者の願望と再調整に合わせて肉体の再構築を開始』

 

 

眠りに襲われるマキナの望んだ姿へと肉体の構築を行われる。

 

必要な知識と肉体、彼女を守る為の力を…

 

 

(ちちうぇ…)

 

 

伸ばした手の先で事切れた父親の遺体は吸い込まれる様に広間に取り込まれた。

 

眠りについたマキナは気づいていなかった。

 

この禁忌の間には、ナクモ王国を守護してきた英雄の遺骸も納められている。

 

広間はその遺骸も取り込み、マキナを守護する存在へと作り替えていく。

 

 

『認証者の再構築完了まで10年。』

 

 

=続=

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