ぽっと出マスター、二人三脚で人理修復せざるを得なくなりました   作:4j

1 / 7
以前より執筆していたものを投稿記録しておきたくなりました。
FGO終章が始まる前にエイヤッ!という勢いです。

また書きだめたら次話投稿予定。


所在地不明

 

 理解できない。理解したくないというのが正しいかもしれない。

 脳がフル稼働しているのが分かるが、何も考えたくない。

 

 なぜか。全くもって意味のわからない状況に放り込まれているからだ。

 大真面目に罵りたい。無茶苦茶だ。

 なぜ私は半泣きになってこの燃え盛る街を逃げ回っているのか。意味が分からない。あまりに拷問過ぎないか!?

 

 どうしてこんな状況に陥っているのか。それは何時間か前に遡る。

 

 私は自宅でごろごろゲームをしていた。

 据え置き型はどうも苦手で、やりたい!と思ったものでも機体がないという理由から距離を置いていたりするもので、もっぱらソシャゲで遊ぶことが多かった。

 

 やりたくて仕方がないと思ったものには飛びつくものの、それ以外は結局ご無沙汰になってしまうこともしばしばある。

 ソシャゲはイベントが多いので、あらかたやることが終わった土日の楽しみでもある。

 

 そうして趣味に勤しんでいたわけだが、強い眠気に襲われ途中で寝落ちてしまったわけだ。

 ここまでは良かった。まま諸君もあることだろう。横になってると眠くなるよネ。

 そして目が覚めたらーーー

 

 

ーーーー体が縮んでしまっていた。

 

 

 とまあ某高校生探偵のオチは嘘なのだが。

 ごめんごめん思わず聞き覚えのあるフレーズに脳内変換してしまった。

 

 正解はというと、燃え盛る街で倒れていたわけだ。

 何が何やらわけが分からんだろう?私もそうだ。

 思わず冗談を口走りたくなるくらいには混乱する事態が眼前で繰り広げられていたもので、先程の妄言は許して欲しい。

 

 夢か?とも思ったのだが、夢特有の「なんかよくわからんけどその状況が受け入れられる」認知の歪みというか、非現実的な事態への強制理解がされている感覚はなかった。

 ほら、突如全く知らない場所を歩いていて、現実的に全く関わりのない芸能人の親友みたいなポジションで会話してようが違和感が仕事しないアレ。

 あの感覚不思議よね、それが当然と思ってて疑問になんて欠片も思わないんだから。

 

 閑話休題。

 

 そんなわけで明確な根拠は無いけれど、なんとなくこれは夢じゃないっぽいな?という気がしている。

 じゃあここはどこなのよ、そしてここめっちゃ熱いんだけどと混乱しながらも、この場に留まり続けるのはまずいだろうと感じたので、行動を開始したわけだ。

 

 

 靴を履いていたのは実に幸運で(おかしな文脈だがこんなトンチキ表現が今の状況と妙に合う)、また歩く場所を選べば進むこともできた。

 今もなお轟々と燃え盛る方向には進めないので、道幅が広く、かつ燃え広がっていない所を選んだ。

 

 辺りは廃墟と化しており、至る所で火の粉が舞い肌が熱くなるのを感じる。空気も熱されて些か呼吸もしづらい。よって服の襟元を鼻まで引き上げて酸素を確保した。

 目が覚めた場所はなぜ無事だったのだろうか疑問に思うほどにあちこちが火の海で、どこまで広がっているのか分からなかった。

 

 

 人気はない。

 これだけ広域の火災ならば消防車の一つは出動してそうなものだが、その気配もない。鎮火されない炎が街を飲み込み続けている。

 ーー明らかに異常事態。

 

 状況が知りたい。ここは、何処で、今何が起こっているのか。

 

 ガシャン、と今まで聞かなかった音を耳にしてはたりと動きが止まる。 

 音の出処はここから遠くない。サッとその場を離れ、向かう。

 先程聞こえた物音と同じものが断続的に聞こえてくる。次第に近づくそれにドキドキと胸が鳴った。

 

「……ッ、」

 

 視界に入ったソレを見つけ、思わず息を呑み回れ右をする。

 肉を持たぬ兵士。骨だけとなった異形が歩いてるのを目撃してしまったからだ。

 

 既の所で息を殺したため、気付かれずにいるもののアレ一体とは限らない。ずっと隠れていてもいつバレるかわかったもんではない。かと言って不用意に逃亡し居場所が判明してしまえば集中的に狙われるだろう。

 

ーーやばい。どうする。とにかく隠れよう。

 

 周囲を見渡し、目に付いた建物を目指してにじり寄る。背後も確認して最後の瞬間その隙間に滑り込んだ。

 

 息を殺す。殺して、殺して、遠くに行ったのを見届けて深くゆっくりと息を吐いた。

 すぐさま建物の影から周囲を見回す。………いる。同じ骸骨形態のモンスターが。

 今まで遭遇してなかっただけ幸運だったと言える。

 異形の居ないところはあるのだろうか。

 

 第一に安全の確保。第二に情報収集。

 街の切れ目が全くわからないが、街の境界まで行けば何かわかるかもしれない。

 

 

 

* * *

 

 

 

 どうにか接敵せずにたどり着いたのは河川敷だった。

 コンクリートで固められたその様は街中を走る河川らしさを感じられる。

 骸骨兵に遭遇はしつつも隠れてやり過ごすなどを繰り返したため思った以上に時間が掛かったように思う。さすがに喉の乾きを感じ始めた。

 

 ここまで来ると街の炎上も多少はマシなようで、公園らしき建造物や石畳など形が残っているものが多かった。とはいえ街から立ち昇る炎と煙は凄まじく、依然として空は黒々く闇夜を占領した。

 河を挟んだ対岸は炎の帯が線状に広がっていて、何処まで行っても逃れられない気がしてならない。

 今居る場所と対岸は巨大な橋で繋がれている。とにかく大きい。横幅を非常に広く、どっしりとした橋桁から自動車が多く行き交う橋ではないかと推測出来た。

 

 一息がてら橋を見上げていたが、何となくむず痒い予感が過ぎる。

 …何となく覚えがあるような光景だ。デジャヴというやつか。どこかで見たことがある気がする。

 

 橋か?橋なのか?しかし橋を見ただけで頭を過ぎるというのは、自分のなかでそうないように思っている。橋マニアとかそういうのでは無いので、どの橋が「あああそこに掛かってるやつね!」とは記憶と結び付かない。

 では橋以外?いいや、それも可能性は低い。何せ「橋のある光景」が記憶を刺激したからである。

 

 辺りを見回す。

 特にランドマークとなるようなものは他に思い至らない。強いて言うならこの大橋こそがランドマークと言える。

 しかし平素の光景を思い浮かべる程橋に心当たりはない。はて。もしやこの燃え盛る街の光景が影響してピンと来ないのか。

 

 …………、橋。燃えている。街が。

 

 はたりと思考が止まる。

 一つ、思い至るものがあった。

 

 この身に体験したことではないが、聞き覚え及び見覚えがあるものがある。にわかには信じ難いが可能性として考えられなくはないものがある。

 いや可能性としても非常に考えたくない事態ではあるのだが。

 

 

「もしかしてーーーここ、冬木だったりする……?」

 

 

 冬木大橋。

 Fateシリーズの原点となる三部作が描かれたかの型月作品。その舞台となった冬木の街。その街を跨ぐ大きな橋。

 そして、それら含め街全体が燃え盛っているこの状況。

 これまさに、

 

「Zeroの災害後や特異点Fとそっくり……、とか冗談キツくない?」

 

 夢であってくれ。

 いや、夢なら覚めてくれ。

 

 いやしかしそう考えると割と辻褄があって納得がいく。いや納得したくないけど。

 

 どこに行っても燃え続けている異常な街。人っ子1人いない街。

 この際これが夢なのかそうじゃないのか、なぜ非現実的な環境に足を踏み入れているのか、考えるのは一旦後回しにしよう。考えたところで答えが出るとは思えない。

 

 

 仮にここが本当に冬木だとしよう。考えたくないけど。

 

 前者、Zero軸の場合は聖杯の破壊と共に溢れた泥が街を呑み込んだ後だ。街が火の海に呑まれ、意気消沈の衛宮切嗣が唯一拾い上げた命である士郎との出会い。

 

 この軸と合致するならば、アーチャーギルガメッシュと言峰綺礼も実在する。控えめに言って悪夢だ。厄介でしかない。

 街全体が壊滅状態なため、生存者が乏しい。よって完全なる余所者である私が紛れ込んだとしても、記憶喪失を称して誤魔化せる可能性が高い。

 ただし先程見かけた骸骨兵が街を闊歩する状況とは矛盾する。破壊し尽くされてしまった街とはいえ、聖杯戦争は終了したのでモンスターが出現するような状況ではなかったはず。

 

 後者、特異点F軸の場合はFGOプレイヤーなら誰もが通る最初の特異点を指す。冬木の第五次聖杯戦争と近くて遠いサーヴァントが召喚され、堕ちた剣王が待ち構える。

 カルデアによって修復されるも後に何故か特異点Xと呼称されるわ、意味深さ故に白紙化地球時点でも実はこれ解決してないのでは?最後の最後にここに帰って来るのでは?などとまことしやかに囁かれている不穏極まりない地。

 

 この軸と合致するならば、特異点修復前後で大きな違いが出る。修復前の場合はカルデアの到着まで耐えなければならないし、修復後も存在している噂が事実なら3年はここで生き続ける必要が出る。かつここが完全に修復されたとて、その後この身がどうなるのか全くわからない。こちらの方がなお詰んでいる。

 

 そしてどちらにも共通することだが、元いた場所に帰れる手段が致命的なまでに見つからない。

 まず、どうやってここに来たか皆目見当もつかない。

 そもそも「現実」と「作品」という次元が違う。所謂第四の壁(フォース・ウォール)を隔てた関係だ。交わること自体普通ありえない。

 その実、夢と言われる方がまだ容易だ。夢を見るという行為は日中の記憶や経験を整理し定着する場とも言われる通り、二次元三次元的な出来事も簡単に現れる。

 

 だからこそ夢なら覚めてくれ。こんなヤバい場所から一目散に退散できるのに。

 

「……あーーーーッ!どうなってんのよこれもォ〜〜〜〜ッ!」

 

 頭を抱えて蹲るのは仕方ないよね。あらゆる点でプラス要素が見当たらない。世界の中心でならぬ街の片隅で絶望を叫んじゃうよォ!?ネタが古い!?知ってるゥーーー!!!

 

「……どうする…?生き残ってる民家に忍び込んで細かく情報収集する……?けど生活基盤整える用意したほうがいいよね…食糧とか水とか……汚染されてない?え、飲食して無事なものがあるかも不明よね?え?問題ないかとかどう判断するの?何もわかりませんけど?やっぱ詰んでる?そうね!?」

 

 未来の展望が見えない。何回も言うが真面目に詰んでる。

 我唯野一般成人女性也。異常耐性皆無故此如何に?

 

 ……………、ここで立ち止まってても仕方ない。

 どこであれ、なんであれ、見通しが立たない状況であれ、できることをすべきだ。

 街だったら自販機とかあるかもしれないし。スーパーで食糧確保できるかもしれないし。途中敵がいたら終わるけど。

 

「……ッうし!とりあえず目的地食糧と水ありそうなスーパー!道中はどうにかする!うん!どうにかなれ!」

「……なるほど、何やら奇声を上げるだけかと思いきやなかなか面白い思考をする人間ですね」

「〜〜ッ!?」

 

 突如聞こえた自分以外の声に身震いする。

 反射的に声と反対側に飛び退り向き合う。考えるのに夢中で周囲のことを確認できていなかった。

 街自体暗くはあるが、火元があちこちにあるため姿の確認は早かった。

 闇に溶けるように姿は霞んでいるが、特徴は捉えられる。

 黒をベースにした衣服で包んだスラリとした体躯。地面まで付く長いピンクの髪。目元を覆うバイザー。

 

「……ッな、ラ、」

 

 ライダー。

 口から思わず飛び出そうとしていたそれを、バシリと手のひらで口を塞いで押し止める。

そこにいたのは推定ライダーのサーヴァント、メドゥーサ。よく見た姿だから恐らく間違いは無い。

 

 ソレを口にするのは非常にまずかった。

 魔術師でもない、無知な一般人であるはずの人間がサーヴァントを、しかもひと目でクラスまで言い当てるのはまずい。説明できる理由がないからだ。

 咄嗟に出たのが真名でなくて良かったと心から思う。恐らく即殺されるか情報絞られて即殺されるかだ。どちらにせよ死ぬ。

 

 今いるここが、型月世界しかもFate側だと確定してしまって少なからず絶望しているのは確かだ。

 しかも相手はサーヴァント。ただの人間では到底及ばないトンデモビックリポテンシャルユーザー。倫理観が善なら邂逅ぐらいで命の危険はないが、特定が間違いなければ反英雄で倫理観特にない部類の英霊。

 第一のリアクションから警戒を見せてしまったが大丈夫だろうか。今のところは一応生きている。

 

「…随分驚かせてしまったようですね。そんなに警戒しなくてもいいのですよ」

「…や、やだなあ。1人で悶々としてる時に突然綺麗なお姉さんに真横で話しかけられたら、誰だってびっくりしますよ」

 

 投げられた問いにはははと無理矢理笑ってそれらしい言葉を繕う。実際そうだ。知り合いにいきなり話しかけられてもびっくりするのに、それが赤の他人ならなおのこと。頭がうまいこと回ってちょっぴり安心する。

 

「……ところでお姉さん、何かありましたか?特にご用がないようなら所用があるのでこれにてお暇しようと思うのですが」

 

 今すぐ逃げ出したい脚を抑えて踏ん張る。まだ平和的に会話できてるうちに平和的にこの場を離脱したい。

 サーヴァントに目を付けられる理由がわからない。首を傾げて微笑んで、人畜無害のように振る舞う。ちょっと困ったように笑うのがミソだ。自然な形でここを離脱させてくれ。

 私の言葉にフ、とお姉さんが笑ったように思う。うーんやはり美人、怖いくらい綺麗である。

 

「そうなのですか?貴女のような姿がとても珍しく思って声をかけたのですよ? ええーーーーとうに生身の人間は消え去ったはずでしたので」

 

 その言葉にぶわりと寒気がする。

 ずっと柔和な微笑みを浮かべていた彼女から、とてつもないプレッシャーを感じ体が震えた。今まで感じたことの無い強い圧迫感と、底冷えするような空気に晒され冷や汗すら出ている。

 これが殺気というものなのだろうか。いや、まるで、舌なめずりをしてこちらを睨め付ける肉食動物のような。

 

 ここにいたら死ぬ。

 

 本能的にそう思わされ即座に踵を返して走り出した。

 

「フフ、まるで生きのいいウサギのようですね。逃げなくてもいいのに」

「いや逃げるでしょ!明らか不審者の挙動だからねそれ!?」

 

 後ろから笑い声が聞こえるという恐怖体験。首だけで振り向くが彼女、もといライダーはゆったりこちらに歩いてきている。

 

「少し遊んであげましょう」

 

 その声がしたのは逆側。勢いよく首を戻した先にライダーが立っていた。その事実に怖気が走る。慌てて逆サイドに走り出した。

 所詮人間とサーヴァント。あらゆるところで格が違う。さらに魔術の魔の字も齧らぬど素人一般人が、適うわけがない。言葉の通り「お遊び」だ。

 開けた場所は遮るものが無い。直線距離などたった一度の跳躍で追い付かれるだろう。なら、障害物のある市街地側へ!チェイスは入り組んだ場所の方が撒きやすいものね!同様であってくれ。

 そうして瓦礫の街に紛れ込んだ。

 

 

 そして、冒頭に至る。

 

 

 正直に言おう、本当に「遊ばれて」いる。

 必死に走って、建物に潜んで誤魔化して逃走しても、その目からは逃れられない。

 撒いたと思ったら反対側から現れたり、隠れ蓑にしていた建物を破壊されたり。いい加減涙目である。

 そんなに甚振って楽しいすか。私はそろそろメンタルと体力がもたん。こんなに弄ばれるなんて。

 

「…っはぁ、…はあっ、っ、」

「おや…もう終わりですか?存外長く続いたものですね」

 

 流石に脚が限界で縺れてしまい、地面に転がった。ベタだ。ピンチの時こそ転ぶ。しかし今ならその理由がわかる。恐怖、疲労、焦燥、あらゆるものが平静を奪い脚を縺れさせるのだと。

 首だけで背後を振り返ると、優雅に近づく影。散々見てきたその姿に喉が引き攣る。動悸と吐き気がする。自然と涙が溢れる。どうにか体を起こして仰向けになるも脚が付いてこない。

 

ーーああ、死ぬ

 

 悟る。理由を経緯も目的も分からぬまま、眼前に立つ敵に殺されるだろう。

 足掻いても逃れられぬ死。理不尽な死。ただただ見上げるしかないどうしようもない現実。嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ。ふつふつと沸き立つ怒りが恐怖を上回る。

ーー冗談じゃない!

 

「こんなわけわからんうちに死ねるかあ!!!!!」

 

 

 

 

 

「よく言った、嬢ちゃん」

 

 

 

 

 

 突如上空から火球が降り注ぐ。それの勢いに思わず悲鳴をあげる。爆発音と共に巻き起こった粉塵に巻き込まれ視界を奪われた。

 予期せぬ事態にゲホゲホと咳き込む。

 煙が目に染みる。煙が晴れて視界が開けてそこでようやく、人影が近くに立っていることがわかった。

 

 特徴的な杖を片手に薄水色の衣を身に纏う。同じ薄水色の衣で頭まですっぽり被るこの人物。

 見えているのは背面だけとはいえ、今置かれているこの状況、そして眼前の姿という条件下は非常に既視感がある。

 キャスター霊基のクー・フーリンの姿と。

 

 

「随分楽しそうなところ悪いがライダー、邪魔するぜ」

 

 

 つまりはここ、特異点F炎上都市冬木だったってことですか!!?

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。