ぽっと出マスター、二人三脚で人理修復せざるを得なくなりました   作:4j

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前話投稿後に早くもしおりやお気に入り設定くださった方が複数おり、びっくり仰天してます…。
ありがとうございます!
本当はもう少し書き足すつもりだったけど、区切りが良かったので投稿です。
今日は終章!まずはレイドまで駆け抜けましょう!


所在地不明、改め特異点F

 

「………、」

 

 絶句。言葉正しく二の句が継げないでいた。

 ムカついて、心底腹が立って怒声を上げたら爆炎に巻き込まれて。煙が晴れて気が付いたら見覚えのある姿が背中をこちらに向けて立っていて。

 勿論、見覚えがあると言っても実際に【光景】として記憶にあったわけではないので多少の語弊はあるのだが。

 こちらが地面にへたり込んでいる上相手が高身長なもので、首がへし折れるかと思うほど見上げている。正直頭が追い付かない。

 えっ、新手の運命構図?そもそも召喚はしてないし運命など正直烏滸がましい以外の何ものでもないが。

 

「おいおい嬢ちゃん、いつまで腰抜かしてんだ。いい加減シャンと立ちな」

 

 こちらがぽかーーーんと呆けていたのはバレバレだったようで、フードの隙間から視線だけを寄越して彼は告げた。

 さすがにそう言われると我に返るというもので、慌ててよたよたと立ち上がる。大変失礼いたしました。けどこんな事態ですと誰でも腰を抜かしますって、ええ。

 立ち上がってもなお見上げる男の横顔は相変わらずフードの影でよく見えないが、既に視線は外され油断なく前を見据えているように思う。

 

「…何の真似です、キャスター。コレは私の獲物、手を出される謂れはないのですが」

「だから悪いと言ったろ、ライダー。お前さんは久方振りの人間で昂ったんだろうが、無力な人間ながらサーヴァント相手に啖呵を切るコイツが気に入っちまってな」

 

 だから、手を引け。

 

 不服そうに唸りじっとりと睨み付ける姿を気にする様子もなく、男ーーキャスターはケラケラと楽しげに笑った。右手に持つ特徴的な杖をぐるりと回し、ひょいと両肩に掛けるように担ぐ。

 その口から聞こえた言葉に目を白黒していたのに、続けられた言葉は先程の陽気な様子が一変しぞわりと鳥肌が立った。

 瞬時に辺りの空気が張り詰める。自分に向けられているわけではないのに、緊張が走り喉をこくりと鳴らした。

 

「ーーそうですか」

 

 一言、静かな声が返る。

 相対する高身長がゆったりと前傾姿勢へ折り畳まれる。

 

「…あくまで邪魔立てすると。ならばーーお覚悟」

 

 両手に素早く杭のようなものを出現させ、その体は瞬きの間に急接近した。

 

「離れてな!」

 

 直後鈍い音が響き眼前でキャスターとライダーの武器が交差していた。

 方や薙ぎ払い、方や勢いそのまま空中で一回転し手に持つもう片方の杭を投げ放つ。息もつかせぬまま開始した戦闘に慌てて駆け出した。

 ワタワタと駆け出し付かず離れずの距離を保って、近くにあったガードレールの傍にしゃがみ込んだ。

 背後では戦闘音が鳴り止まなかったのでチラチラと背後を伺いながら挙動不審な退避になったのは仕方ない。こっちに飛び火されたらたまらんので。

 

 ライダーの投擲や突貫、体術の応酬は続く。それをキャスターは器用に杖で捌き、時折魔術で焼き払いどちらも引けを取らない。ただでさえ丸焼けなのにさらに燃えて大変なことになってはいるが。

 戦闘の相性では小回りの効くライダーが翻弄しているようにも思える。ただキャスターがそれに苦戦する様子はなくいなしているのでさすが戦士というところなんだろう。思っているサーヴァントと認識相違なければ、杖は使いづらいんだろうけど。

 

「!」

 

 思考を飛ばしていたその時、遠くから強く何かがぶつかるような鈍い衝撃音が聞こえ、反射的に音の方向へと顔を向けた。

 気が付けばライダーもキャスターも動きを止めている。一般人が気付くことだ、英霊たる彼らに分からない道理もないだろう。

 

「…ほう?随分派手にやったらしいな」

「……、」

 

 ニヤリと笑って感想を洩らすキャスターとは対照的に、ライダーは暫く動きを止めたあと緩やかに姿勢を直立に戻した。

 

「…どうやら、ここでやり続けるのは時間の無駄のようです。遊び過ぎたことが、非常に残念でなりませんが」

 

 じとりとした視線を感じる。視線を寄越したライダーと視線が交わり緊張が走る。息を呑んだ直後、その長駆は視界から消え去っていた。

……助かった…?

 

「逃がしちまったか。まあいい、いずれ方をつけにゃならんからな」

 

 現出していた杖を地面に突き立て、戦闘態勢を解除したキャスターはそう言ってこちらに振り返る。

 そうやって視線を交わした彼は、やはり私の知るキャスターのクー・フーリンなのだと思う。正直言って推しだ。お声も好きだ。改めて面と向かうと色んな意味で心臓がどきどきする。

 

「えっと……お兄さん、危ないところをありがとうございました。」

「なあに、気にすんな。嬢ちゃんも厄介なヤツに気に入られたな」

「アレ気に入られたって言うんすかね……って、もしかして全部見てた!?」

「はは、悪いな。ヤツが何のつもりで追い掛けてたのか気になったんでな」

 

 危機から脱した後に明かされた衝撃の事実に唖然とする。

 私が必死に逃げ回ってる様見てたんすか。え、言っちゃあ悪いが悪趣味過ぎんかね。踊らされとったやん間違いなく。

 まじかよとげんなりげっそり見つめれば、ケラケラ笑いながら背中をバシバシ叩かれる。痛い。あーた加減してください、腕力とんでもないんですって。

 

「まあおかげでお前さんが胆力のある人間だと知れたしな。いいねえ、命の危機に啖呵切る度胸があるやつは俺は好きだね」

 

 いやいやまさか。そんな喧嘩腰、無力な自分がなれるほど大層な度胸ないですって。

 ただただなんか無性に腹立っただけで。思わずがなっただけで。

 そう返しても「力もねえのにあの状況で怒りに変換出来る人間はそういねえもんだ」とまたケラケラ笑いながら私の頭をガッシガッシと撫でてくれるのだった。

 うーん、何故か好感度が高い。アニキは基本好青年だが、初期値弄ってない?してない、あそう…。

 

「さて、自己紹介でもしとくかね。俺はキャスター。ま、好きに呼んでくれや」

「あ、はい。粕谷悠月(かすがや ゆづき)といいます。よろしくお願いします…?」

 

 ひょんなことから命を救われた私、とりあえず安心出来そうな人に出会えました。

 …助けてくれたから、殺されたりしないよね?多分。

 

 

 

* * *

 

 

 

 とりあえず移動するか、と言うことでキャスターが進む方向に同行させてもらう形で街を歩く。

 命は助かったな、後は好きにしな!で放ったらかしにされなかったのはありがたかった。こんなところで突き放されてもいずれ死にそうだったから。

 道中ここまでの経緯を聞かれたので、まずは話せるところだけを話した。気が付いたらここにいて、何が何やら分からぬうちにライダーと遭遇してしまったと。

 ふうん、と相槌を打ちながらキャスターは目を細めてこちらを見ていたため、観察と吟味をされていたように思う。怪しかったかもしれないが間違ったことは言っていない。言ってないのは「元いた場所は次元が異なる」ということくらいだ。

 怪しいから殺しとこ、されると困る。…ならないよね?

 

 全く何にも分かってない一般ピープルであることは伝わったのか、キャスターはある程度のことは話してくれた。

 ここではとある戦争が起きていて、ある日を境にぱったりと人間が消えてしまって、今このような事態になっていること。

 そして自分や先程の女はサーヴァント、と呼ばれる存在であること。…そこまで話してくれるんだ。

 淡々と言葉を受け止めた私を意外に思ったのか、彼はこう尋ねてきた。

 

「目の前にいるやつが人間じゃねえって言ったのに、随分冷静だな?」

 

 それに対しての答えはこうだ。「有り得ない速度で回り込まれて、何も無いところから火を飛ばしている時点で、人間だと言われる方が驚く。とんでも人間ビックリショーもいいとこだ」と。

 その言葉を聞いたキャスターは珍しくキョトンと惚けた顔を見せて、豪快に笑いながら再度背中をバシバシ叩いて来たのだった。だから痛いて。

 

「いいねえ、嬢ちゃんおもしれえな!見たところ魔術回路も通っていてマスター適正もあるみてえだし、仮契約だがアンタのサーヴァントになってやってもいいぜ?」

「は、い?いやそんなまさか。魔術回路?私魔法とか魔術とか使えませんけど!?ていうか、私でいいんですかそれ。大事なことじゃ……」

「一般人でも持ってるやつは持ってたりするもんだ。第一ここまでのところでお前さんを随分気に入っちまったからなあ。これも縁、てやつだ」

 

 夢みたいだ。こっちが抗議していようと暖簾に腕押し、問答無用であれよあれよという間に右手を取られ、そこを起点に全身を熱が襲う。突然体内からの発熱に目眩がする。熱い。熱い。全身が燃えるようだ。目がチカチカする。

 短くも長いその時間が終わった時、バランスを崩してふらりと倒れ込んだ。

 頬を硬いものにぶつけ、痛みにさらにクラクラする。顔を上げた先にはキャスターの顔があった。

 

「ちょいと荒療治だったがまあ許せ。改めてキャスター、クー・フーリン。少しの間だがよろしく頼まあ、マスター」

「あなた、全然話聞かないじゃん……。もういいや。短い間かもだけど、よろしく、クー・フーリン」

 

 にっかりと笑うキャスター、もといクー・フーリンに呆れつつも緩く笑った。

 とんだ惨事にとんだ展開、目まぐるしくて仕方がないが、本当に頼れる人を味方に出来て安心している。

 何はともあれ、やっていけそうだ。この死に溢れた特異点でも。

 

 

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