ぽっと出マスター、二人三脚で人理修復せざるを得なくなりました   作:4j

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皆さんこんばんは。
明けましておめでとうございます。

終章後、新たなストーリーが追加されましたね。
その展開に思わず「ここで来るかー!?」と驚かされる場面もありました(笑)
はてさて、どうなることやら。

何はともかく、閲覧ありがとうございます!
お気に入り、しおり、評価いただき感謝です。

本年も緩く見守ってくださると嬉しいです。



最初の冒険、その終わり

 

「マスターとサーヴァントだってえ!?」

 

 通信越しの驚嘆の声に苦笑いを浮かべる。

 無事アサシンとランサーを打破し、情報共有のため崩壊の少ないビルの一つに退避した。そして得られた情報は概ね予想通りではあった。

 陣営、状況からFGOの第一部序章時点であること。そして通信先の人物から読み取れたことがある。

 

「声が大きいわロマニ!そんなに叫ばなくても聞こえます」

「そ、そうですけど所長!まさか特異点先でマスター持ちのサーヴァントに遭遇するなんて思わないじゃないですか!」

「それはそうだけど…。あなた、現地の人なのかしら」

「いいえ、私はここの人間ではありません。どうしてこの場にいるのか皆目見当がつかないですが」

「前代未聞だぞ…現地民じゃないってことはレイシフト?けどカルデア以外にそんな技術あるはずないし…どういうことなんだ…?」

 

 ホログラム越しに頭を抱える男、ロマニ・アーキマン。彼の存在を確認したことで、ここがアーケード版の世界ではないことが確定した。

 曰く彼がいるカルデアが本物だと言及されていたから間違いない。今はまさにゲームで言うチュートリアルの段階だ。

 

「我々カルデアの目的はこの特異点の修復。あなたがたの目的と合致している、と見ていいのかな」

「俺はそうだ。マスターはまあちと違うが、この事態を解決したいのは同じだな」

 

 ちら、と視線を寄越したキャスターに首肯する。

 結局のところ、行き着くところは同じだ。自分の行先はわからずとも、為さなければならないものと認識している。

 その意思の確認をして、頭が痛そうにしていたが話し合いの末カルデアと共闘することを約束した。

 最終目標、セイバーの打倒および大聖杯の破壊。大聖杯の在処は、キャスターが把握している。が、そこに辿り着くまでにはバーサーカーとアーチャーの撃破を必須項目となる。

 

 その前にキャスターによる修行タイムが始まった。マシュおよびマスター藤丸立香は、引き寄せられた魔物を限界まで片っ端から狩りまくっている。

 私は一旦「不要」とお払い箱にされたため、オルガマリーとその様子を眺めているのだが。

 …正直気まずい。

 隣に立つオルガマリーを横目でチラリと確認する。彼女は真剣な表情でマシュの戦闘を分析している。声を掛けてみたいが邪魔するのも悪いと気が引ける。

 

 少し離れた地面に目を移す。ちょこんと座る白い獣、フォウはそこで四つん這いの姿勢で同じく目の前の光景を見つめていた。

 先程のシャドウサーヴァント戦時は気付かなかった。上手く身を隠していたのかもしれない。まじまじ見るとやはりよくわからない獣だ。いや、比較の獣だと言うのはわかっているけれど、それにしても奇妙だ。犬でもないし猫でもない。狐でもないしうさぎでもない。

 わかっているのはモッフモフなこと。何アレフワモコすぎる。見るからにフワッフワすぎる。あんなの触ったらひとたまりもない。沼って延々と撫でてそうで怖い。たてがみ的なアレに顔埋めててもおかしくない、気をしっかり保てあれは可愛い身なりをしているがビーストの一種、マシュと主人公の前でしか姿を見せなかったというくらい在り方もとてもデリケートな存在なんだむしろ姿を見せてくれているだけでありがたいと思え。いやしかしマジで可愛いな。

 

「…っと、ちょっと!聞いてるのあなた!!」

「…………あ、すみません。ちょっと考え事してました」

 

 可愛いなあと頭の中で愛でていたらあらぬ方向に考えが逸れた気がする。オルガマリーに声を掛けられていることにも気付かずぼうっとしていた。

 考え事がちょっとアレだったことは内緒で。

 

「どうしましたか」

「……別にどうもこうもありません。あなたってただ、私たちカルデアと違いあなたは何の縁もないこの地に巻き込まれた。というのに、あまり動揺していないように見えるわ。…それが、不思議だったの」

 

 腕を前で組んでフン!と鼻を鳴らして顔を背けたオルガマリーを驚きをもって見つめた。

 ぶっきらぼうな言い回し。ただ疑問を呈したような発言に聞こえるけれどその言葉を噛み砕けば、そこに心配が含まれているのがわかった。思わず微笑む。

 

「…優しいんですね、あなたは」

「っは、はあ!?別に優しくなんか」

「気にしてくれたんでしょう、この特異点が消えた後私自身がどうなるかもわからないのに悠長に見えたから」

 

 顔を真っ赤にしわなわなと拳を震わせてこちらを見つめるオルガマリーは反論を口にしなかった。その様子にさらに笑みが溢れる。

 

「動揺はすごくしてますよ。皆の目的と私の最終目的は違う上、確実性はないから。でもやってみるしかない。元いたところに戻れる確証はないけど、このままじゃ何も変わらないし。……覚悟は、決めないといけないかもしれないけど」

 

 必死に蹴散らすマシュ、鼓舞する藤丸、けしかけるキャスターを遠目に眺める。

 カルデアはここから長い旅が始まる。ここを起点に人理修復、そして人理を取り戻す旅へ進むのだろう。では私は?考え出したらキリがない。そしてこの旅が始まる時、オルガマリーも消えることになる。そちらのほうも、どうするのが最善なのかわからない。できることなら助けたい。しかし力のない私に何ができるか。

 

 そもそも原作の軸となる部分を変革できたとして、そのあとは?イレギュラーな事態はどう影響する?

 自分の未来すら不透明な状態で脳内はぐちゃぐちゃだ。考えが纏まらない。

 これは、ひとりで考えないといけない問題だ。けれどもその様子を心配してくれる人がいる、そう思うと心が少し暖かくなる気がする。

 

「…ま、まあ?現状あなたは一般人ではあるものの魔術とマスターの素養があるとわかりました。……うちは万年人手不足なのです、もしこの先運良くまた縁を結べたのならその(えにし)を辿ってくることを許してもよいでしょう」

「──それって」

「わあ、なんて珍しい!あの気難しい所長が会って間もない人にそんなことを口にするなんて!」

「ロ、ロマニ!!いい加減そのうるさい口を閉じなさい!!!」

 

 突如出現したホログラムウィンドウからの声に、彼女はさらに顔を真っ赤にして憤った。その剣幕に慌てて謝罪する光景を前に気が緩む。

 

「…その時は、所長と呼ぶべきなのかな?」

「気が早いですね。もううちの人間になれたつもりだとは」

「いやいや、そうは言うものの満更でもなさそうですよ所長〜」

「〜〜ッ!あなたは!本当に!一言多いわね!」

 

 自分たちの置かれた状況もいいとは言えないだろう。にも関わらず、だ。こちらを心配してくれている。なんならカルデアに来てもいいと言ってくれている。気休めにしかならないかもしれないが、とても嬉しいことだ。

 

「おーいマスター!マスターを入れたサーヴァント戦も一戦交えておきたい。こっち混ざれ!」

「はーい、今行くよ」

 

 キャスターに呼ばれ、口論を繰り広げるカルデア組を尻目にその場を離れる。

 やっぱり、助けられるなら助けたい。頑張ってみようかな。

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 死に物狂いの特訓を経て宝具の擬似展開ができるようになったマシュを伴い、大聖杯のある洞窟へと進む。

 いざ洞窟に足を踏み入れた時点で道を阻んできたアーチャーはマシュの宝具を展開することで射線上の攻撃は防御し、そこで生まれた隙をキャスターが仕留める形で退去させることができた。

 アーチャーの正体を知っているこちらとしては二人がかりで申し訳ないところもありつつ、あの汎用性高すぎる性能を前にしてはそうも言ってられないよなと言い訳じみて納得させる自分もいる。

 

 何せ主人公。抑止の守護者であり、原典を見たことがある宝具かつ剣であれば際限なく再現可能なとんでも才能マン。ダメージは食らいつつも熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)を耐えてみせる逸材だ。

 末恐ろしいにも程があるだろ、あれで元現代人とかほんとかよって話。多少性能として落ちていたとしても、極力当たりたくない。

 

 残すシャドウサーヴァントはバーサーカー一騎だが、こちらから領域を侵さなければ敵対して来ないというので、残すところはセイバーのみとなる。

 確かバーサーカーはヘラクレスだったはず。十二回も殺してられないのでスルーできるものはスルーする。アーチャーで何回か殺害に成功してるんだっけ。回数まで覚えてないが、こちらの命がいくつあっても足りない。触らぬ神に祟りなしってやつだ。神性持ちだしあながち間違ってもいない。

 

 そうして決戦を前に最後の休息を取ることになった。

 藤丸と私のマスター勢の顔色が悪い、というのがもっぱらの理由。確かにどちらも今回が初のサーヴァント契約だったし、知らず知らずストレスやら疲労やらが蓄積していたんだろう。互いの顔を見合わせて「確かに顔が青いな」と双方確認しちょっと笑いあったくらいだ。

 

 キャスターが火を起こし(ルーン魔術が有能すぎる)マシュがお湯を沸かして茶を作り(慣れてきた頃盾に格納していた記憶があるがまさか当初からだったとは)、オルガマリーが隠し持っていたドライフルーツを拝借し(ナイスすぎる)栄養補給。

 そういえば何かを口にするのは随分久しぶりだ。一時喉の渇きも覚えていたのに怒涛の展開で忘れ去っていた。自覚すると途端に欲しくなるものだ。

 

 

 そうして束の間のティータイムが始まった。

 キャスターから語られるセイバーの正体、ちょっとした世間話。シリアスから日常的な話題まで様々なものを。

 ここに来てわかったのはキャスターが見事にセクハラをやらかしてくれていたこと。腕に座らせてもらっていた時のことを掘り起こして、お尻の感覚を思い出しながら安産型だとかどうとか。

 オイコラキャスター!お前そんなキャラだっけ!?ランサー時点より歳重ねてるから落ち着いて大人になったんじゃなかったっけ!?なーにをどさくさに紛れて言っとんじゃーー!!手をさわさわすな!!!!確かめに来ようとすな!!!

 思わぬ暴露に喚いて反射的にパンチを繰り出したがケラケラ笑いながら拳を受け止められて激しく遺憾である。ケルトの戦士を前に肉弾戦に効果がないのはわかりきっていたが、激しく遺憾である。大人しく殴らせろや。

 その様子を半笑いで見る一行と「仲がいいんだねえ君たち…」と感想を述べるロマニ。仲がいいのは大変光栄ですがそれとこれとは話が違うからね????

 

 藤丸とは日本人かという話題で盛り上がった。出身が既知ということで彼の食いつきようは凄まじかった。

 マシュも交えての雑談は和気藹々としていたと思う。

 火に当たってぬくぬくと温まるフォウくんに差し支えなければ触ってもいいかと下手に出まくってお伺いを立てたところ、「フォゥ……?」と怪訝そうなまじで?みたいな反応をされた後にお許しが出た。フワッフワだった。とんでもなかった。語彙力が消えた。

 

 程よく体が温まり、小腹も満たしたところでお開きとなった。

 各々片付けをしていれば、ふらりと近づくキャスターに気が付いた。

 

「程よく緊張が解れたんじゃねえか?」

「──、」

 

 耳打ちされた言葉に閉口する。その言葉を聞いて合点がいった。

 先程の会話は茶番で、わざとけしかけられたのだと。

 見上げれば口角を上げ、こちらを見下ろす紅い瞳と目が合った。

 

「…やることがセクハラオヤジのそれでしかなかったのは正直どうかと思うけど………」

「ハハッ、そう言うなって」

 

 こちらを慮っての会話だったと今ではわかるけど、多少なりとも抗議したい部分ではある。

 しかしこのキャスターは、この場限りでしかないはずのこのサーヴァントは、こちらのメンタルを見抜き、配慮してくれていた。気恥ずかしいやら何やらである。

 ケラケラと笑うキャスターを他所に、キャスターに寄りかかるように体重を預けた。笑い声が止む。

 

「──ありがとう、クー・フーリン。あなたに出会って、あなたに助けてもらって、あなたに契約してもらってなければ、今私はこの場に生きていなかった。……ありがとう」

 

 沈黙が返る。反応がない。

 なんだか気まずくなって寄せていた肩をそっと元に戻した。

 直後ボスン、と頭に衝撃があり、さらにワシワシと髪を掻き乱された。

 

「の、わッ」

「カ〜〜〜ッ!随分しおらしく可愛げがあるじゃねえの。…気にすんな、俺がしたくてそうした、それだけだ」

「…でも、」

「ったく、律儀なやつだなあ」

 

 さらに髪を掻き乱されてボッサボサになった自覚がある。横髪が視界を覆って見えづらい。せめて前が見えるように、と指で掻き分けた先に見えた顔はニッカリと笑っていた。

 

「短い時間ではあるが、いいマスターに巡り会えたと言える。俺の見立ては間違ってなかったってことだな。…心配すんな悠月。俺の勘じゃ、悪いようにはならねえよ」

「……うん」

 

 その一言がとても心強く思える。

 クー・フーリンという人物の人柄が見えた気がした。

 敵には容赦なく冷徹な姿勢を見せる怖さもあるが、気さくかつさっぱりとした性格と兄貴肌、義理深いところにファンも多かった。ただでさえ推していたのにこんなん間近で食らったら惚れるって。いい意味で怖っ。

 

「………こりゃモテるわけだわ」

「あ?なんだって?」

「なんでもなーい!」

 

 そそくさと駆けて誤魔化した。恥ずかしいので内緒である。

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 洞窟の奥は暗く、酷く重苦しい空気が漂っていた。

 息が詰まるような圧迫感。泥に塗れた聖杯から醸すものだろうか、はたまたセイバーからのプレッシャーだろうか。

 姿を現したセイバーを目視し、その威容に喉を鳴らした。

 

「…面白い、その宝具は面白い。構えるがいい、名も知れぬ娘。その守りが真実のものか、この剣で確かめてやろう」

 

 高台にいたセイバーは落下するような速度でこちらへ接近し、おもむろに剣を振り下ろした。

 その剣を、マシュの盾が受け止める。鈍く大きな音がしたのも束の間、その剣は何度も盾に叩き付けられ連撃が襲う。

 

「マシュ!」

 

 藤丸が叫ぶ。身の危険を感じ咄嗟に距離を取った。

 キャスターが空中でぐるりと杖を回し、地面を突く。途端に地面から出現した枝がセイバーに襲い掛かる。バックステップで後退したセイバーに杖を槍のように構えたキャスターが追撃する。

 剣で杖を弾き数度剣戟を交わす。大きく下がったセイバーにキャスターが突貫するも、下から振り上げた剣から放たれた赤く明滅する剣圧が襲い回避行動を取った。

 

 セイバーとキャスターが激しく戦闘を繰り広げる中、体勢を立て直したマシュが盾を手に突撃する。叩き付けられた剣が盾に激突し反動で両者が下がり一定の距離を保つ睨み合いとなった。

 

 剣が下方に構えられる。赤黒い光が剣を包むように凝縮していく。

 

「膨大な魔力反応!宝具だ、あれはまずいぞ!」

「嬢ちゃん、宝具を解放してあれを防げ。俺も最大火力で宝具を展開する」

「……っ、了解しました!マスター、お願いします!」

 

 マスター同士で目が合う。互いに頷きあって右手の拳を胸の前に掲げる。

 

「宝具を防ぎきって!マシュ!」

「セイバーぶっ倒しちゃえ!キャスター!」

 

 マスター二人の令呪が輝く。掻き消えた一角分の魔力がそれぞれのサーヴァントに付与された。

 魔力が充填される。迸る力を受けてマシュの瞳に光が灯る。

 

約束された勝利の剣(エクスカリバー・モルガン)!!」

「宝具、展開します!!!!はぁあああー!!」

 

 撃ち放たれた極光を盾が受け止める。激しい衝撃と魔力が盾を伝って地面へと流される。盾を支える足元が沈む。

 それでも、その意志を持ったその瞳は前を見る。

 

「焼き尽くせ、木々の巨人。焔の檻となりて───灼き尽くす炎の檻(ウィッカーマン)!!」

 

 極光が収束する。巻き上がった埃が晴れた先でマシュの盾が現れる。ほぼ同時に展開されたキャスターの宝具がセイバーに立ち向かった。

 巨人の足がセイバーに振り落とされ、赤々と燃え上がり焔の柱が立ち上がる。

 それが、決着だった。

 

 

「結局、どう運命が変わろうと、私一人では同じ末路を迎えるということか」

「あ?どういう意味だそりゃ。てめえ、何を知ってやがる」

「いずれ貴方も知る、アイルランドの光の御子よ。グランドオーダー──聖杯を巡る戦いは、まだ始まったばかりだと言うことをな。そして──この稀有な出会い自体も」

 

 キャスターの詰問に意味深な返答を残し、消えるように消滅して行った。

 間を置かず、キャスターにも消滅の兆しが見える。そして、

 

「っえ、わ、私も!!?」

 

 自分の身体が透けていく。光の粒子が身体から溢れていく。心の準備もできぬまま訪れた別れの気配に慄く。

 

「チッ、強制帰還かよ!納得いかねえがしょうがねえ!マスター!お前さんも同じクチだ、ここで消えるこたあねえだろうよ!」

 

 時間が無い。それだけはわかった。光の向こうが既に遠く感じる。

 キャスターの言葉に頷き、カルデアの人々に振り返る。

 

「ここまでありがとう!どうか、気をつけて、えっと、──最後まで油断しちゃダメだからね!!!」

 

 そうして掻き消えるように何も見えなくなった。

 暗い闇。光一つない闇。そこを落ちていく。重力に従い、落ちていく。

 身体の感覚がない。何の音もしない。

 ただ魔力を持っていかれた時の疲労感と眠気に襲われる。

 今にも飛びそうな意識の中、考えるのはこれからのこと。

 キャスターは大丈夫だろうか。この後すぐ妖精國に飛ばされるのだっけ。

 カルデアの皆は大丈夫だろうか。頭が回らなくてアドバイスにもならないようなことしか言えなかった。

 これから、どうなるのだろうか。わからない。ただ、ひたすらに眠い。

 再び目を開けた時。元いたところに戻れているだろうか。

 

 そうして、意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──声がする。

──どこからともなく、声が聞こえる。

──こちらに呼びかけるような、そんな声が。

 

──微睡みの淵から頬を叩かれるように。

 

 

「────、」

 

 光が差し込む。眼前が開けた。

 そこにはこちらを覗き込むような物体がある。

 瞬きをすると視界のピントが少し合う。だからこそ、そこにあるものが何かを理解した。

 

 白い獣。クリクリとした瞳でこちらを見下ろす獣の姿。

 

「フォウ!」

 

 てしり、とその肉球で叩かれる。状況を理解して、覚醒した。

 がばりと身を起こす。一面白い壁。白い天井。

 

 白い獣を再度まじまじ見詰める。

 

「──ここって、」

「お目覚めかな?」

 

 女性の声に振り向く。そこには赤と紺を基調とした派手な格好の女性が脚を組んでいる。その姿には見覚えがあった。

 

「こう言うべきかな?────ようこそ、人理継続保障機関フィニス・カルデアへ」

 

 

 

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