ぽっと出マスター、二人三脚で人理修復せざるを得なくなりました   作:4j

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皆さんこんにちは。閲覧ありがとうございます!
前話投稿後物凄く面白い小説を見つけてしまい、寝るのも忘れてひたすら読み耽っていたら
いつの間にか物凄くお気に入り数が増えていて「なんじゃああ!?」状態になってました。
びっくり。とてもびっくり。
しかし嬉しいです。ありがとうございます!

終章後のイベントが発表されましたね。いやあどうなることやら。
では、続きをどうぞ。



1部1章 邪竜百年戦争~オルレアン~
はじまり


 

 特異点Fを離脱し、全てが白い壁に覆われた部屋で目が覚めた。

 同室にいたのは同じく白い獣。彼は枕元にちょこんと座っていた。そして女性。声を聞いて、姿を見て、記憶の中のある人物と合致する。

 

「初めまして、私はダ・ヴィンチちゃん。ここの協力者ってとこさ」

 

 そう言ってぱちりとウインクした彼女に困惑しながら挨拶を返す。

 確実なのは自分の元いた場所に帰れなかったということ。

 簡単に話を聞けば、特異点Fで消失した後、カルデアの廊下でぶっ倒れているところをフォウ氏に発見されたそう。つまりカルデア組が退去するまで廊下に放り出されたままだったということ。よくフォウくん見つけたな。

 

 詳しいところは場所を変えて、ということで部屋を出て管制室に向かう。

 身体によじ登って肩に乗ってくれたフォウくんにときめきながら、ダ・ヴィンチちゃんの後を追って管制室へ向かう。

 楕円を描く白い廊下を進む。正直実感が持てない。しかし目にする光景はゲームでも見かけた景色。流れ着いた先がカルデアだった、という事実は消滅しなくて良かったねと言うべきなのかどうか。

 

 案内されて開いた扉の先に、見かけたメンバーが揃っていた。

 

「!! 気が付いたかい?」

「え!どうしてここに!?」

 

 マシュ、ロマニの安堵した顔、藤丸の驚いた顔が私を出迎えた。

 

「ドクター、どういうことなの?」

「うん。驚くべきことだが彼女は特異点で姿を消したあと、すぐにここカルデアに転移したことになる。レイシフトの要領でここに来た、ということだね」

 

 何か身に覚えはあるかい、とロマニに尋ねられたものの、首を傾げてさっぱりだと答えるしかなかった。

 事実だ。今まで当然のことながら魔術とか関わりがなかったし、特殊な生まれでもなんでもない。先祖に魔術の徒が…という点も正直皆目見当もつかない。祖先が武家だった…?らしい?ことくらいだ。

 

 

 ひとまずカルデアについて、具体的な現在置かれている状況、カルデアに課せられた使命など様々な説明が為された。

 

 特異点の崩壊に巻き込まれ藤丸、マシュがカルデアに帰還してあれから1日が経過していること。

 オルガマリーはそもそも肉体が生きておらず、その後カルデアスに呑み込まれてここにはいないこと。

 カルデアが置かれている状況。特異点F時点では「特異点F上での目的」止まりだったものが、より深く、内情を踏まえての説明という形である。

 

 

 やはりというか、オルガマリーの救出が叶わなかったことは辛い。

 管制室での爆発に巻き込まれてしまった時点で肉体が死亡していたため元よりカルデアに戻れない身だったということを説明を受けて思い出し、歯痒い気持ちになった。

 何を言っても、あの場で強制転移に巻き込まれなくても、結果は変わらないと言われたようだった。

 

 ゲーム進行に伴いある程度把握していた部分だが、自分事として聞くと改めてとんでもないなカルデア、とんでもないな魔術世界、というのが感想。

 

 この先の未来はありませんって、個人への余命宣告じゃなくて地球規模ってヤバくない?

 地球温暖化で徐々に地球環境が狂ってきているのは既に世界常識だ。

 北極の氷が溶けて海面が上昇しヴェネツィア水没の危機が深刻化してるだの、太平洋も日本海も海水温度が上昇しているおかげで「わたし、日本。今サウナにいるの」状態なので猛暑やら線状降水帯やら大寒波かつ豪雪とか、地球がやべえなのはわかってるけど。

 その規模じゃないんだもんな。徐々にとかじゃなく一斉に「終わり」ということなので。そういえばこのFGO世界の地球もそういう環境問題起きてるのかな。

 

 閑話休題。

 

 私が眠っている間にバイタルチェック、メディカルチェックなどは完了していたようで、身体に特に支障はないそう。

 しかもちゃっかりマスター適性やレイシフト適性も検査したらしい。本当にちゃっかりしている。本来なら許可を取れ許可をと言いたいところだが、まあ、うん。

 

 どちらも支障ないレベルということが判明したら、後は想像が付いた。

 ──マスターとして、人理修復に力を貸してくれないか、と打診されることを。

 

「……こんなこと言いたくはないのだけど、今のカルデアは未曾有の人員不足に陥っている。世界を救うためには7つの特異点を修復しなければならないのに、スタッフも少ない。そして、マスターも一人しかいない。……何を言いたいか、わかるかい」

 

 わかっている。わかっているとも。

 

 Fate Grand Orderの前提。主人公は人類最後のマスターだ。Aチームを含む47人のマスター候補はコフィンの中で瀕死状態。力を借りることはできない。

 猫の手でも借りたい、とはこのことだろう。

 

「藤丸くん自身、魔術と関わることのなかったマスターだ。それでも、未来を取り戻すために立ち上がると決めてくれた。…強制に近いと理解しているが聞かせて欲しい。君はどうだ、粕谷悠月。7つの特異点で人理を狂わせる脅威と戦わなければならない。この状況で、君にカルデアの、人類の未来を背負う覚悟はあるか?」

 

 へらへらとして、周りに翻弄されるような優男の姿は消えた。優しげなグリーンアイはなりを潜め、真剣な眼差しで真っ直ぐこちらを射抜いている。

 拒否権はないに等しい。

 ここで「嫌です、覚悟なんてありません」と言ったらどうなるんだろうなと考える思考は片隅に追いやって、その瞳を見つめ返して口を開く。

 

「……、二点確認させてください」

「いいとも」

「一つ。私は現在出自不明、身の保証もできない人間です。身の証も立てられない人間に、その一端を担わせてよいのですか?」

 

 必要な確認だ。

 そもそも突然特異点Fで遭遇した人間が、理由不明のままカルデアに転がり込んだ状態。そしてこの人理修復の旅は、カルデアにある重要機材および魔術礼装をふんだんに活用していく。つまりセキュリティの問題だ。門外不出だろうそれらを部外者に開示してええんか?ということ。

 

「二つ。マスターというのは目的達成に必要不可欠な存在のはず。マスターと言うからにはサーヴァントの召喚は絶対でしょう。こちらはどう考えているのですか。藤丸くんのみサーヴァントを行使するのか、あるいは私自身も契約をする想定なのか。後者の場合身の潔白が不確かな人間に戦力を与えることになりますが、それは差し支えないのですか?」

 

 傍らの獣がこちらを見つめるのを感じながら、言い切った。

 要は履歴書も持たず本人確認もできない人間を雇って良いのかいそちらさん、ということである。

 仮にサーヴァントを召喚できたとして、人間では到底敵わない英霊を有した部外者が敵対行動を取った時、一般的な人間および魔術師には抵抗ができない。

 もちろん能力のある魔術師、特殊な生い立ちの人間とかは拮抗ないし撃退可能かもしれないが普通は瞬殺されるのがオチだ。非力なサーヴァントなら事と次第によるが。

 

 ふむ、という様子で視線が外れる。確かにそうだ、と相槌を打つ。

 

「まずは前者だね。カルデアには色んな人材が集っている。魔術師はもちろん、一般職としての技術者とかね。実はマスターの中にも国籍も本名も不明なフリーの魔術師がいたりする。かく言う僕も元フリーの医者だ。前例もあるし問題にはならないよ。後者については……そうだね」

 

 斜め上を見つめながら思い出すようにつらつらと流れてきた言葉が止まる。

 空を横切った視線が交差し、瞳が緩やかに細まり笑みを作った。

 

 

「自分に不利な条件を最初に確認してくる君の誠実さを、僕は信じたいと思うよ」

 

 

 人畜無害そうな笑みだった。へらり、と弛緩したその笑顔をを見つめ返す。

 気が抜けた。どう返してくるだろうと少し意地悪な質問を投げたが、結局のところこちらの杞憂だったらしい。さいですか、と息を吐き出す。

 

 最初から拒絶したくてこの問答をしたわけではない。というか、拒否したとしても外界と隔絶されたカルデアから一歩出れば存在の消滅は必至。私の場合はもともとこの世界の住人じゃないから、恐らく即刻デッドエンドだ。

 カルデアにいるしかない以上選択肢はないのである。結論対価として仕事しろよということ。ま、そうなるよねと諦めと納得と色んな感情がある。

 

 しょうがない、生き残るために人理修復するしかないか。

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 しばらくカルデアで過ごすことになるが生憎急な訪問だったので準備ができていない、となり医務室で厄介になることになった。最初に目が覚めたあの部屋は医務室だったらしい。

 まずはカルデアに慣れることから、というので施設内のツアーを組んでもらい、一通りの紹介を受けた。

 背景やアニメで一部知るだけの施設なので、こういう構造だったのかと感慨深い。

 全ては身体を休めてから、とそのままベッドに潜り、翌朝。体感ではカルデア2日目。

 簡単な朝食もそこそこに管制室へお呼び出しだ。

 

「召喚、ですか」

「うん。君と英霊召喚の相性も確かめたいし、藤丸くんと並行して訓練も必要になるしね」

 

 ということで早々に召喚ルームへ移動。昨日の今日で早くない?というツッコミはなしだ。何せ時間がないからね。

 初のサーヴァント召喚は、盾を所持するマシュ、所長代理のロマニはもちろん、興味津々な藤丸とダ・ヴィンチちゃんという豪華なメンバーの目の前で実施することとなった。

 藤丸もまだ召喚していないらしい。なんでだ。

 

 

 いざ召喚サークルを前にすると、色んな思いが錯綜する。

 これから口にするのは、一度は言ってみたいと思えるような詠唱。出自や状況によって継ぎ足される項目もあるが、今回は代表的な詠唱、ベーシックなものである。

 当然のことながら、初めてのことだ。運良く契約したキャスターは既に現界していたし、そういう意味でも初めてだ。

 触媒はない。あるのはマシュの円卓の盾を介したシステムフェイト、そして自分自身。緊張しないわけがない。

 

 ふうっと息を吐き出して、目を閉じる。そして、右手を前に掲げる。

 覚悟は決めた。

 

「素に銀と鉄、礎に石と契約の大公。降り立つ風には壁を。

四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ。

閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)

繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する」

 

 サークルが輝く。召喚陣が青白く光り浮き上がる。

 

「──告げる。

汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。

誓いを此処に。

我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者。

汝三大の言霊を纏う七天、

抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ──!」

 

 閃光が渦を描くように走り、召喚陣の中心へ収束する。強い光が弾け、思わず左手で顔を庇い目を細めた。

 部屋一面を覆った光が引いていく。

 陣の中央に、一騎の英霊が立っていた。

 

 

 

 

 

「──クー・フーリン。召喚に応じ参上した。…何を殺して何を壊すか。お前の敵を指し示せ」

「……へ?」

 

 

 

 

 頭がショートする。思ってもみないサーヴァントで間抜けな声を出さずにはいられなかった。

 外野でわーきゃーしているのが聞こえるが、内容は耳に入ってこない。待て。どういうこと?こういうことありえるの?

 

 そこにいたのは禍々しい赤と黒の鎧を纏った戦士。知識と間違っていなければ彼は狂戦士のクラス、そして第五特異点で敵として遭遇する「聖杯への願望によって生み出された」オルタナティブのクー・フーリンだった。

 

 混乱する。

 第一に、ゲームの召喚で言うと星5が1連で出たということだ。何その豪運。

 第二に、彼は成り立ち上、5章のウナム後にスト限入りする存在だ。姿も観測してないのに出るとかある?イベントとかのピックアップ中、あるいは特別召喚だったりする??それか未来に出会う因果を逆から辿った??

 第三に、性質。クー・フーリン自体は特異点Fで縁ができたから理解できる。ただ縁があったのはキャスターだ。バーサーカーではないし、繰り返すがイフの存在でもない。

 第四に、彼はプレイヤー時代に一度もプッシュから外したことがないサーヴァントだ。つまり、わかりやすく言うと最推しだ。なんだこの暴力的な衝撃は。

 

「おい」

「…ッいたあー!?」

 

 スパンと頭を叩かれて色気のない声が出た。

 頭を抑え、なんだなんだと前を向けばすぐそこにクー・フーリンが立っていた。心做しか呆れられている気がする。

 顔を合わせて数分程度で呆れられるマスターてやばいな??ごめんて!!!

 しかしバーサーカー戦士のド突きいたい。

 

「やれやれ、とんだ呑気なマスターだ」

「…な、なにも叩かなくても…。あ、どうも、私がマスターです」

「んなこた知ってる。…カルデアつったな、案内しろ」

「え?私も昨日来たばっかりなんですけどぅおあ!?」

 

 はあ、と溜息をつかれ声を掛けられたと思えば、首根っこをヒョイと引っ掴まれ視点が高くなる。猫か。展開の早さに状況を理解する間もなくぐえっとお腹に圧迫感を感じ、脱力と共に頭に血が昇り始める。

 目の前にあるのは刺々しい赤黒い鎧。人にはない明らかな尻尾。近い天井。いや床だ。

 冷静に考えて、私はクー・フーリンの肩に担がれ言わばベランダに干された布団になっていた。

 

「なんで!?」

「つべこべ言うな、行くぞ」

「この格好で!?」

 

 カルデアの人たちも驚いたように名前を呼ぶが、私の身体を担ぐサーヴァントの脚は止まらない。ジタバタしてみても全く体幹が振れない。

 また後で、とせめて大声を上げてこの場を後にする以外なかった。

 

 

 

 

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