ぽっと出マスター、二人三脚で人理修復せざるを得なくなりました 作:4j
こんにちは。
閲覧ありがとうございます。
設定周りの確認をしていたらちょっと時間が経ってしまいました。
今回の話の補足を後書きに付けてますので、気になるかたは見てみてください。
では、続きをどうぞ。
ファーストサーヴァントたるクー・フーリン・オルタに召喚直後に拉致られたあの日から数日が経った。
驚きと困惑とちょっとしたパニックに陥りつつ、彼にぶん回される日々だった。
ランサーやキャスターな彼とは違い積極的な会話はもちろんなく、現実的でシビアで、淡々と仕事人地味たところはゲームで見ていた彼の様子と変わらなかった。
あの日は一通りぐるりとカルデアを回った後に元いた部屋へ戻ったが、ロマニや藤丸には非常に驚かれた。
そりゃ驚く。当人も驚く。
カルデア一周をしている間に藤丸はサーヴァントを召喚していた。それはアーチャークラスのエミヤだった。
冬木でシャドウサーヴァントとしてではあったが敵対したため、そこから縁が生まれたのかもしれない。非常に頼もしいサーヴァントである。
彼なら近接戦闘も遠距離支援もお手の物。見たことのある宝具であれば再現可能なチートっぷり。その特性上宝具についても詳しくマスター経験もあるので、その目線からの助言ももらえそうだ。
さらには料理の腕も抜群だ。ここ数日の間に彼の料理を戴く大変光栄な機会を得たが、あまりの美味しさに既に胃袋をがっしり掴まれてしまった。
さすが公式の料理上手。むり。舌が完全に肥えてしまう。
懸念事項としては、キャスターのクー・フーリンが召喚されなかったこと。
ゲームでは特異点F後に配布サーヴァントとして召喚する間もなく現界してくれていたので、彼に会えなかったのが非常に大きな不安要素として残っている。
知っている展開とズレが生じている。これが後に響かなければいいが。胸糞な展開も数ある物語だが、「知識」として今後の展開がわかっているというのは大きなアドバンテージになるからだ。
あと純粋に彼と再会できるのを楽しみにしていたこともある。オルタに不満があるわけでは全くないのだが、その点は少し寂しく思う。
正直目まぐるしく訓練に明け暮れていた。慣れないことが多く、一日が終わる頃にはヘトヘトでベッドにダイブするのが常だ。
一般人出身の私と藤丸は学ぶことだらけだ。
はじめに魔術礼装の起動方法。マスター組はどちらも魔術回路は存在することはわかっているが、起動の仕方も知らなければ、魔術のマの字すら知らないド素人。そんな二人でも最低限の魔術を行使できるように、と制服に仕込んでくれた。
端的にマスター礼装だ。通常の制服と、戦闘服。この度私もあの制服を着用する運びとなった。袖に腕を通すのはドキドキした。
次にマスターとしての役割やマスターができることなどについて教わった。端末が支給され、そこでは自身が契約したサーヴァントのマテリアルが閲覧可能になっている。
これから命を預けることになるサーヴァントたち。彼らのスキルや宝具の性質など、状況に応じて判断しなければならない。
そして欠かせないのが戦闘訓練。
自身の契約したサーヴァントと共にシュミレーターを通じて連携を図る。これが随分手厳しかった。
エミヤはきっと面倒見が良いだろう、と思っていたので心配していなかったが、問題はオルタのほう。敵を屠りズンズン進んで行ってしまうので待てと静止を掛けたほどだ。
マスターとサーヴァントの連携がマスト事項だが、そもそもマスター自身の訓練でもある。そこが疎かになると私がウッカリで死ぬんだわ、と一喝せざるを得なかった。
そしてその隙間時間を使って鍛錬。走り込みに筋トレに、瞬発力トレーニング。
そりゃあバッテリーが切れたの如くベッドに即ダイブするわけだ。
そんなわけで忙しない日々が続いたのもつかの間、とうとうグランドオーダー最初の特異点攻略の任務が下った。
場所は中世のフランス。
グランドオーダーにあたり、今回の目的が改めて共有される。
特異点の発生には聖杯が関係している可能性が非常に高い。よって最終目的は特異点発生のキーポイントと考えられる事象の解決と聖杯の回収。
現地入りしてすぐの目的はマシュの盾を霊脈に接続しターミナルポイントの構築。召喚サークルは補給物資の転送、そして召喚の要になる。
これらはどの特異点にも共通することだろう。
今回出撃するのは藤丸、マシュ、エミヤ、私、オルタの五名。
もっと戦力を有して挑みたかったところだが、まだまだ半人前マスターでは下手に戦力過多でも使いこなせずリソースを使うだけになってしまうのでこのメンバーとなった。
直接レイシフトするのはサーヴァントを除いた三名。最初から同行させるのではなく、適宜必要に応じてサーヴァントを呼び出し行使するスタイルだ。常時現界させておくにはリソースがギリギリかつ、特異点という性質上そもそもサーヴァントを伴ってレイシフトするのは非常に難しいらしい。そうだったっけ?というのが正直な感想。
ブリーフィングもそこそこに、三名はコフィンへと入った。
これより、グランドオーダーが始まる。
* * *
到着した先は緑の生い茂る平原。草の香りが鼻を刺激した。
三名は特に身体の異常もなく無事に転移できたことにまず一安心する。フォウがレイシフトに紛れ込んだのは「そういえば一緒にレイシフトしてたっけ」とかつての記憶を思い出すきっかけになった。
そしてもうひとつ。
「空を見て!」
藤丸の声に空を見上げる。
大きく、大きく空を跨ぐ白い円環。あまりの巨大さにその一部しか見て取れないが、とてつもなく異様な光景だった。
ゲームの知識としてそれの記憶はあったものの、いざ目の前にすると圧巻の一言で、言葉を失った。傍から見れば「綺麗」とも称せるが、その背景を考えると薄ら寒い。
解析はカルデア側に任せ、現地調査へ。
街を目指して草原を進むと鎧と武具を所持した小規模の集団を目撃した。第一村人である。第一と言うには人数が多いが意味は同じだ。
「どうしましょう。接触を試みますか?」
「危なくないかな?」
「見たところヒューマノイドです。話し合えばきっと平和的に解決します」
「……そういえば、ここフランスだよね。フランス語喋れる人いる?」
「…………」
「えっと…挨拶くらいならいけます!」
詰んだ。早くも詰んだ。言語の壁はいつの時代でも甚大である。
藤丸も私も純日本人。マシュは……ちょっとよくわからないがフランス語の履修はしていない。
契約しているサーヴァントを脳裏に浮かべる。クー・フーリンはケルトなので地域はアイルランド。エミヤは日本。アイルランドでフランス語を話すかどうか不明だが、サーヴァントの性質上むしろ風貌などから敵と見られる可能性のほうが高いので除外。エミヤは…どうだろう。衛宮士郎としてなら時計塔に行く遠坂凛の同行者ルートもあるが衛宮とエミヤは辿るルートが異なっていたはずだから…と考えるとよくわからないが正しい。そもそもコミュニケーション取るためだけにサーヴァント喚ぶのも今後のことを考えると頼りすぎだとご破算になった。
そもそもの話だが、南極に位置する(この時点で場所までは共有を受けていないが)カルデアには様々な国籍の人物が在籍している。
今更ながらどうやって言語を介しコミュニケーションしていたんだ?
そんな話をしているとロマニから通信が入る。彼曰く、サーヴァントは聖杯の力によって現代の知識を与えられ、言語能力にも最適化される。マスター組は魔術礼装に音声翻訳の護符が仕込まれ、オートで会話可能になっていると。
科学の力…じゃなくて、魔術の力ってすげー!
言語の壁が障害にならないことがわかったので、先程の小隊へ会話を試みたのだが……、端的に言って失敗した。
突如の戦闘に峰打ちで撃退したが、今後困る事態があった。マシュとエミヤは可能だが、オルタに手加減という文字はない。危うく殺害しそうになった。バーサーカーたる所以で歯止めが効かないのが冷や汗ものだ。
戦闘訓練時はもっぱらエネミーを倒すまでが訓練だったため知る機会がなかった。
これは向き合いかたを考える必要がある。
そしてそうこうしているうちにせっかく出会った兵士たちの逃亡を許してしまった。
何のために手加減してもらったのか。途中「おい」とか「逃げるぞ」とか状況は報告してきたオルタにもツッコミを入れたい。見てないで止めてよ!と言えば「殺しかねないが、いいのか?」とこちらを見てニヤリと笑ってのける。
不敵に笑う姿はレアなので「笑った!」と舞い上がる感情は確かにあるがそれはそれ、これはこれ。わかってて言ったでしょう!意地が悪いな!
「やっぱり悠月さんってクー・フーリン族と仲がいいんだなあ」
「アレは仲がいいというのかね…?私の知る彼とは到底似つかぬ様相だが…」
「そうなのですか?…確かにキャスターなクー・フーリンさんは快活で、色んなことを教えてくださいました」
「そうそう!実戦あるのみって感じで厳しくはあったけど、すごくいい経験になったよ」
「誉めそやすようで癪だが、奴は戦闘時以外は寛容かつ柔軟だ。忠義も強い、味方であれば心強いだろう。…まったく、この腐れ縁はいつ切れるのか…」
「? エミヤとクー・フーリンも仲がいいってこと?」
「マスター。軽々とそのようなことを口にしないでくれたまえ、…身の毛がよだつ」
* * *
早々にしっぽを巻いて逃げてしまったフランス兵を追った先には、砦が築かれていた。
外壁は形を成しているがひとたび内部に脚を踏み入れれば悲惨なものだった。内壁は崩れ、磨耗し、原型を留めていない。
折れた武器が散乱する中で兵士たちは座り込み、倒れ伏し、気力というものがまるで感じられない。疲弊しきっている。
「負傷兵ばっかりだ」
「そうですね。戦争中ではないはずなのに──」
本来の歴史では、この時期に大規模な戦争は起こりえない。
1431年のフランス。イングランドとフランスの百年戦争の真っ只中。オルレアンの乙女と名高き聖女、ジャンヌ・ダルクが次々と勝利を収め占拠された多くの都市をフランスに取り戻した。当のジャンヌは同年5月に火刑に処され19年という生涯を閉じている。
前年の1430年にはイングランドとフランス間で休戦協定が結ばれたが数ヶ月の後に失効され、援軍として向かったコンピエーニュで苦戦を強いられ、殿を買って出たジャンヌはそのまま捕虜になってしまう。
ジャンヌはシャルル七世戴冠の一助を担っていた。
当時は捕虜の身内が身代金を支払って身柄を要求するのが通例のところ、シャルル七世はこの引き渡しに介入しなかったため、結果的に母国フランスから見捨てられたも同然の立場に立たされたという。
そういった経緯でジャンヌは殉教したが、火刑に処された1431年12月にイングランドとフランス間で改めて休戦条約が結ばれている。
休戦条約が破られた年代でもあったが、大きな戦争は起きていない。よってここまで疲弊した兵と瓦礫の山と化した砦は状況が合致しない。
こちらを見て震えるフランス兵を落ち着かせ、聞き出した話に藤丸とマシュは絶句する。
「シャルル七世は休戦条約を結ばなかったのですか?」
「シャルル王?知らんのか、アンタ。王なら死んだよ。魔女の炎に焼かれてな」
「……死んだ…?」
「ジャンヌ・ダルクだ。あの方は【竜の魔女】となって蘇ったんだ」
話の大筋を把握していた身としてはジャンヌ・オルタのことだとすぐ察するが、とはいえ改めて話を聞くと覚えていないものだなと認識を改める。
混乱する間もなく砦を骸骨兵が来襲する。
「エミヤ!」
「呼んだかね」
「うん!掃討戦だ!」
「オルタ!今回は加減なしで!」
「……了解」
傍らに姿を現した二人のサーヴァントは眼前の敵を見据える。
それぞれの獲物を手に骸骨兵の群れに吶喊する。戦力差は見るまでもなくあれよという間に蹴散らされ地に倒れて消滅していく。
「待ってくれ!周囲に大型の生体反応だ!しかも早い!」
「…ワイバーンだな」
「なんで十五世紀のフランスに!?」
「さてな。…フ、少しは手応えのある相手だ」
「抜かせ、肩慣らしにもなりゃしねえ」
「おっと。では私もキリキリ射掛けるとしよう」
上空にて目視した複数の飛行物体。
フランス兵たちは戦わねば食われるとヨロヨロと立ち上がった。
エミヤは手に弓を現出し矢を番える。オルタは自らの槍を肩に掲げ投擲の姿勢を取る。
「兵たちよ、水を被りなさい!彼らの炎を一瞬ですが防げます!」
高らかな声が鳴り響く。聞き覚えのある声に振り向けば、そこには何処からともなく姿を現した金髪の少女が手にした旗を掲げた。
サーヴァントの気配。ロマニはその弱い反応に首を傾げたが、その姿を一目見れば誰なのかという疑問抱く余地もなかった。
──ジャンヌ・ダルク。
──「竜の魔女」という風評を浴びる、この特異点でのキーパーソンである。
■FGO世界の言語能力について
ゲームの使用上どんな人種でも通じる共通言語について、記載を迷っていました。
実際オルレアンではマシュが英語で話し掛けたり、ロマニから「フランス語で話さなきゃ」と助言することからもマシュはある程度の言語を習得していると思われます。
主人公の藤丸についても日本人ながら英霊や現地人と会話できています。
「なんで喋れるんだよ…ゲームだからか…」とメタ的な発想になるのも致し方なし。
明確な設定は見つけられなかったんですが、そのコミュ力から「国連絡みのバイトしてるんじゃ?」なんて言われる始末。
そのため本作では「礼装や魔術が何とかしてくれる!」と力技で進めることにしました。
実際第二部で音声翻訳の護符が機能している様子を見てますしね。
なので主人公組は日本語で喋っても相手には母国語で聞こえる
、という魔術チートを発動します!
ゲーム全体から情報拾ってくるのホント大変。
ではでは、後書きまでありがとうございました!
次回でお会いしましょう!