受肉転生 ~宿儺と一緒に本気出す~   作:てとらとりす

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三話

 

この世界に生まれてすぐに直面した課題は、言語だ、0から言語を覚えるのには苦労した、だが俺よりも先に宿儺がこの世界の言語を覚えてしまいそれを教えてもらうことで俺も無事、こっちの世界の言語を覚えることができた。

 

 

言語を覚えて知った俺の名前――カイン・アルネス。

生まれたのは、ブエナ村という、家と田畑ばかりが広がる静かな田舎だ。

 

そして、この場所で俺は今二度目の人生を歩み出している。

 

 

『せいぜい、足をすくわれぬよう気をつけることだな、小僧』

 

 

(……わかってる。俺はもう、流されるだけの人生なんてごめんだ。今度こそ、自分で道を選ぶ生き方をしたい)

 

 

『そうか……なら小僧。二度と立てぬほど崩れ落ちたときは、俺が手を取ってやろう』

 

 

 

 

 

 

父はガラン・アルネス。森で木こりをしており、一家の大黒柱。その腕はたくましく、家族想いで、どこまでも真っ直ぐな人だ。

 

若いころは母と冒険者をしていたらしく、寝る前になると必ずと言っていいほどその時の事を語ってくれる。

 

 

「俺と母さんともう1人で組んでな……あの頃は無茶ばかりしてた。魔物の巣に突っ込んで、帰れたのが奇跡ってことも何度もあった、迷宮ってのは、ロマンがある反面、罠の宝庫でな……一歩間違えれば命がなかった」

 

目を細めて話すその顔は、どこか誇らしげで、楽しげだった。

 

 

(冒険者、魔物、迷宮……)

 

 

この世界はやはり、俺のいた現実とはまるで違う。だがそれを怖いとは思わない。

 

むしろ――胸が高鳴る。

ここでなら、何かを変えられる気がした。

 

 

 

 

 

 

 

母の名前は、セリス

彼女も元冒険者で、父と共に冒険者として世界を回ったという。

けれど今は、木の香りに包まれたこの小さな家で、穏やかな日々を送っている。

 

 

「あの人ったら、今日もお昼ご飯を忘れて森に籠もってるのよ。昔からそう。好きなことになると周りが見えなくなるんだから」

 

 

セリス――母は、そう言って笑う、その声には確かな『愛』があった。

その愛が、俺を包み、支えてくれている。前の人生では得られなかった、家族のぬくもり。今こうして、それを感じられることが、たまらなく嬉しかった。

 

 

『小僧まさか、その程度で満足したとは、言わんだろうな?』

 

 

(わかってるよ宿儺、前世で得られなかったものをかみしめてただけだ。それに、宿儺だって...)

 

 

『何だ?俺も同じように渇望していたとでも言いたいのか?』

 

 

(そうだ、宿儺だって愛されることは悪くないって思ってるんだろ?)

 

 

『フン……そうなのかもしれんな』

 

 

俺は少し笑った。宿儺がそんな素直な言葉を吐くとは思わなかったからだ。

 

 

(これからは、俺たち二人でこの世界を生きていくんだな。)

 

 

 

 

 

 

 

 

★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★

 

 

 

 

 

 

 

 

4年という月日は、飛ぶように過ぎていった。

俺カイン・アルネスは着実に成長していた

 

 

「お母さん!今日も森に行ってくるね!」

 

 

朝の光が差し込むキッチンで、俺は元気よく声をあげた。

巻き集めのため木のカゴを背に、軽くストレッチをしながら外に出る。

 

 

「気をつけていってくるのよ、カイン。暗くなるまでには帰りなさいね~」

 

 

母が窓から顔を出し、手を振ってくれる。

その笑顔を背中に受けながら、俺は家を飛び出した。

 

目指すは村の外れ、深い森の中。木々が生い茂るその場所は、子供が一人で入るには少し危険かもしれない。けれど俺たちにとっては、最高の修行場だった。

 

 

(さて、今日も術式の精度を上げないとな……)

 

 

宿儺は、俺に呪術の基礎を教え始めた。まだ幼い俺にはできることは限られていたが、宿儺は決して手を抜かなかった。

 

 

『体内の呪力を操り、肉体を強化しろ。呪力が尽きても、俺の方から供給してやる』

 

 

その言葉通り、呪力は枯渇しない。宿儺自身が俺の中に呪力を供給し、無限に近い力を流すことができる。だが、俺の呪力操作はまだまだ稚拙で宿儺の呪力をすべて供給されても使いこなすことができない、なので供給される呪力は少ない。

呪術の修行は厳しくも的確で、俺のミスや弱点を宿儺が即座に指摘し、効率的に強くなれるよう導いてくれた。

 

1歳になるころには「術式」が俺の中に刻まれていた。

 

 

『術式とは、その人間だけが持つ生まれ持った才能のようなものだ』

 

 

(それが刻まれたってことは、俺も宿儺の術式を使えるってことか?)

 

 

『そうだ、小僧に刻まれたのは、俺の「御廚子」と伏黒恵に受肉し刻まれた「十種影法術」だ』

 

 

宿儺が言うには、この二つの術式はとても強いものらしく――

 

 

『「御廚子」は、不可視の斬撃を放つ術式だ。斬撃以外にもあるが小僧には、まだ早いだろう』

 

 

(不可視? それって見えないってこと?……テレビで見た時に呪術師たちが急に切られたような傷が出来てたり建物が真っ二つになってたのってそういうことだったのか。でも今の俺ができるのは触れてる物体を切断するだけで、宿儺みたいに斬撃を飛ばしたりは出来ないぞ?)

 

 

『当然だ、呪術師どもは知らんだろうが俺の放てる斬撃は本来対象に触れなければ発動できん「捌」だけだ』

 

 

(そうなのか?……じゃあ、呪術師たちとの戦いで、触ってもいないのに相手や建物を切ってたのは何だったんだ?)

 

 

『あれは「捌」の拡張術式――「解」だ』

 

 

「拡張術式……?」

 

 

『そうだ、本来術式は効果が定められているものだが、術式の解釈を広げ別の効果を持たせるもの、それが拡張術式だ』

 

 

(……なんか難しいな)

 

 

宿儺は愉快そうに言葉を続ける。

 

 

『俺の術式で言えば、俺の「捌」は、触れたものを切断する力だ。建物であれ人間であれ、対象に触れて初めて斬撃を放てる、だがそれでは不便だろう?だから常時触れている媒介を用いた。空気だ』

 

 

(……なるほどな)

 

 

『ここまで言えば分かったか、常時触れている空間に「捌」を放つことで触れていない対象へと斬撃を延長させた。それが「解」――飛ぶ斬撃だ。本来は触れていなければ成立しない斬撃を、空間という媒体を通じて遠隔に及ぼしたのだ』

 

 

「じゃあ「解」は「捌」ほどの精密さはないんだな?」

 

 

『そうだ。「解」は「捌」ほど精密ではない。捌が相手の構造に適した斬撃を放つのに対し、解は単純な断ち割る事に特化させている。精緻さを削ぎ落とし、汎用性を高めた――それが「捌」の拡張術式である「解」だ』

 

 

今の自分の斬撃は、精密さを求める余裕すらない。力を一点に集中させることすらままならないのに、遠隔で飛ばすなど夢のまた夢だ。

 

そう、今の俺にできるのは、せいぜいちょっとした木の棒を斬る程度。

十種影法術にしても影の中から式神を出そうとしするが、影は崩れ地面の染みになり消えてしまう。

俺は歯がゆさを感じながらも、日々修行を続けていた。

 

 

(もどかしいが今はこれを続けるしかない)

 

 

『根性はあるようだな』

 

 

(そりゃあ宿儺が俺に期待して熱心に指導してくれるからな)

 

 

『間違うたびに正してやっているだけだ。俺がいなければ、小僧は呪力の流し方すらままならんからな』

 

 

たしかに、宿儺がいなければ、俺は今ほど効率よく自分の体と力を理解できていなかったと思う。

宿儺は、かつてこの術式を使いこなした本人だ。テレビで見た宿儺の戦いは今も脳裏に焼き付いている。そして、その知識と経験は俺にとって何よりの財産だ。

 

 

(……まだうまくいかないけど、絶対に形にしてみせる。お前の力を、絶対に俺の力にしてやる)

 

 

『フン……手が止まっているぞ小僧、ほら、頑張れ頑張れ』

 

 

宿儺の声が背中を押す。俺は気合いを入れ直し、再び呪力を指先に集中させる。

 

 

 

━━━

 

 

 

そんな日々の中、雨などで外に出れないときに

筋トレの一環として俺は、木剣での素振りをしていた。

 

 

(剣術、どうにかして学べないかな……)

 

 

『今の小僧では、相手に触れ「捌」を放つ以外でまともな攻撃手段がないからな』

 

 

(そうだよなぁ、この世界魔術なんかもあるらしいけどそういうのは術式だけで十分だし「解」を使えるようになるまでは、まだまだ時間がかかりそうだからな、せっかくファンタジーな世界に生まれたんだから剣とか使ってみたいな、宿儺が剣術を教えたりできない?)

 

 

『無理だな、武器を使ってはいたが剣としては使っていなかったからな、そもそも剣を使わずとも大抵の相手は「解」だけで事足りていたからな』

 

 

(なんじゃそりゃ…)

 

 

「剣術学びたいな~」

 

 

「なんだ?カイン剣を習ってみたかったのか?よし、じゃあお前に剣術を教えてくれる奴を紹介してやる!」

 

 

「え…?」

 

 

宿儺との会話の最後に漏れた、はたから見るとただの独り言を、たまたま通りかかった父さんが聞いていたらしい。

数日後父さんが連れて行ってくれたのは、村の中心にある立派な家。

家の周りには塀もあり、中には大きな庭がある。そこにいたのが――

 

 

「久しぶりだなガラン、でそこの坊主がガランの言っていたカインだな。俺はパウロ。こいつに言われて剣術を教えて欲しいと頼まれた」

 

 

茶髪に軽い口調、どこかチャラついた雰囲気。

 

 

『ほう……なかなかの死線を乗り越えてきているようだな、あの男』

 

 

(チャラそうな見た目だけど?)

 

 

『見た目の方は否定せんが、あれは戦いの基礎が完全に身についている人間の体だ。剣を学ぶ相手としてはまあ、悪くない』

 

 

「おーい、ルディ昨日話してた子がきたぞ!」

 

 

そう呼ばれて現れたのは、俺より少し小さなパウロ似の茶髪の少年。

 

 

「ルディ。こいつはガラン、俺の冒険者時代の知り合いだ、そんで隣にいるのは今日からこの家で剣術の稽古をする子だ。たしかルディより一つ年上だったよな?」

 

 

ルーデウスは一瞬目を丸くし、こちらを見ると少しおびえた目で、しかし次の瞬間には両足を揃えてぺこりと頭を下げた。

 

 

「ル、ルーデウス・グレイラットです。よろしくお願いします、カインさん」

 

 

(さん付け……? ていうか敬語?)

 

 

『餓鬼にしては妙に分を弁えているな。小僧より年下とは思えん礼儀だ』

 

 

心の中で宿儺の声に共感しつつ、俺はルーデウスに手を差し出した。

俺の手は少し震えていた。

前世での人間不信がまだ残っているのだ。

落ち着け、相手はただの子供だ、普通にしていればいい。

そう自分に言い聞かせる。

 

 

「俺の名前はカイン・アルネス。よろしく、俺のことはカインでいいよ」

 

 

ルーデウスは少し戸惑いの表情を見せると、こちらの手をぎゅっと握り返した。

 

 

「よろしくお願いします、カインさん」

 

 

「じゃ、俺は帰るから息子を頼んだぞ、パウロ」

 

 

そういいながら父は、俺たちに背を向けて帰っていく。

こうして俺は、剣術を教えてもらうことになった。

 




アルネスとありますが父親が元貴族です。
ですがガランが子供の頃に権力争いに負け、ガランだけ逃がされています。
名前に深い意味はありません。
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