受肉転生 ~宿儺と一緒に本気出す~   作:てとらとりす

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四十三話

 

夜。

 

焚き火の火が静かに揺れているのをぼんやりと眺めている。

 

夜ご飯も終えて、ブレイズもノコパラも布団の中だ。

アイシャも……多分、眠ってるだろう。

 

俺は見張り当番。

暗闇の向こうへ視線を走らせつつ、気づけば、手元に針と布があった。

 

指先が、わずかに震える。

 

昼間、あれだけ拗れたのに。

アイシャを傷つけてしまったのに。

渡す自信なんて……ひと欠片もないのに。

 

それでも手が止まらなかった。

 

糸を引いて、刺して、縫って。

同じ動きを何度も何度も繰り返すたびに、

胸の奥の痛みが、ちくりちくりと針を持つ指に伝染する。

 

気づけば、財布を縫い終えていた。

 

 

「何やってんだ俺……」

 

 

苦笑が漏れる。

焚き火が揺れ、影が伸び縮みした、その時。

 

 

「お兄ちゃん」

 

 

小さな、だけどはっきりとした声。

振り向かなくても誰か分かる。

 

 

「起きてたんだな」

 

 

そう言いながら振り返ると、

アイシャは少しだけうつむき、

指先をぎゅっと握りしめていた。

 

 

「……あのね、さっきは……ごめんなさい」

 

 

その一言が、胸に刺さる。

言わせてしまった、俺の方から言うべきだったのに。

 

 

「アイシャが謝る必要なんてない。悪いのは俺のほうだ」

 

 

ちゃんと言葉にしないと伝わらない。

そう思って、苦しくても言葉を続けた。

 

 

「アイシャを遠ざけた。頼りにしてなかったみたいに、扱った……本当に、ごめん」

 

 

「私も、お兄ちゃんが私を守ろうとしてるってちゃんとわかってたのに……それなのに、あんなひどいこと言っちゃって……ごめんなさいっ」

 

 

言い終わる前に、涙が落ち、

アイシャが勢いよく俺の胸に飛び込んできた。

小さな身体なのに、その必死さが痛いほど伝わってくる。

 

 

「私のこと……嫌いになってない?」

 

 

「なるわけないだろ」

 

 

そう言った途端、

アイシャが俺の胸に顔をぎゅっと押しつけて、

さらに涙を流してしまった。

 

どうしたらいいかなんて、わかってる。

俺は、アイシャの背中に手を回して、その震えを受け止めた。

 

 

「……隠してた秘密も、ちゃんと話すよ」

 

 

ここまで不安にさせたんだ。

全部話すべきだと思った。

 

けれど――

 

 

「んーん、話さなくていいの」

 

 

アイシャはすぐに首を横に振った。

 

 

「え? でも……俺が隠し事してるからアイシャは……」

 

 

「怖かったよ。お兄ちゃんが教えてくれないのが、すごく怖かった。でもね、ブレイズさんが言ってくれたの」

 

 

「ブレイズが……何を?」

 

 

「『苦しんでまで話さなきゃいけない秘密なんてない』って」

 

 

静かに、だけどはっきりと。

その言葉は、俺の心に深く刺さった。

 

 

「それでも……」

 

 

「……?」

 

 

「それでもアイシャには話すよ。逃げないで、話して、向き合うって決めたんだ。アイシャのことを……大事にしたいからさ」

 

 

「でも……」

 

 

「いいんだ。アイシャのおかげで、ようやく決心がついた。アイシャが勇気を出してくれたんだ。だから……俺にも勇気を出させてくれ」

 

 

「うん、わかった」

 

 

アイシャは、俺の胸から離れて、向かい合う形になる。

赤くなった目を隠そうともせずに、その瞳がまっすぐ俺を見る。

 

 

「お兄ちゃんが話してくれるなら……私、最後までちゃんと聞くね」

 

 

「ありがとう」

 

 

伸ばした手が、アイシャの頭に触れる。

俺はゆっくりと頭を撫でると、アイシャはくすぐったそうにする。

 

 

「……えへへ」

 

 

その笑顔に少しだけ背中を押されて、

俺は一度だけ深く息を吸った。

心臓が、うるさいくらいに跳ねていた。

 

 

「実は俺――」

 

 

「うん」

 

 

「――生まれる前の人生の記憶があるんだ」

 

 

「……生まれる前?」

 

 

「そう。この世界じゃない、別の世界で、俺は今とは別の名前で、別の姿で、別の人生を生きてたんだ」

 

 

「別の……世界」

 

 

「難しかったか?」

 

 

「いや、何となくわかるよ」

 

 

「分かるのか……」

 

 

「それで、前のお兄ちゃんは、どんなだったの?」

 

 

「……うまく言えないけど、弱かったんだ。逃げてばっかりで、本当は欲しいものがあったのに、傷つくのが怖くて、何も選ぼうとしない……」

 

 

自嘲するように笑って、視線を落とす。

 

 

「……そんな奴だったんだ」

 

 

アイシャは、何も言わずに俺を見つめている。

信じてくれただろうか。

理解できただろうか

 

――失望されただろうか。

 

「そんなわけがない」なんて自分に言い聞かせても、最悪な考えが頭の隅をかすめる。

 

黙って聞いていたアイシャが、

何か納得したように頷く。

 

 

「じゃあ、今のお兄ちゃんは、ちゃんと選べてるんだね!」

 

 

「え……?」

 

 

何の迷いもなく放たれた言葉に、

思わず間抜けな声が出た。

 

アイシャはまっすぐ俺を見つめる。

揺れも、迷いもない瞳で。

 

 

「だって今、お兄ちゃん……ちゃんと私を見て、苦しくてもちゃんと私と向き合って、秘密を話してくれてるでしょ? それって、ちゃんと選べてる証拠じゃない?」

 

 

「ちゃんと……選べてる?」

 

 

「うん」

 

 

アイシャは、当たり前みたいに頷く。

 

 

「前のお兄ちゃんは、何も選べなかったんでしょ? でも今のお兄ちゃんは違うって私は思うよ」

 

 

「……俺、ちゃんと選べてるか?」

 

 

自分でも情けないと思う問いだった。

それでも、聞かずにはいられなかった。

 

 

「選べてるよ。ちゃんと、前に進んでる」

 

 

その言葉を受け止めた瞬間、

胸の奥に押し込めていた何かが、崩れた。

 

気づけば、視界がぼやけていた。

頬を伝う温度が涙だと理解するのに、

少し時間がかかった。

 

その時間が、ひどく惨めだった。

 

 

「っ……なんでっ、今さら……」

 

 

声にならない声が漏れる。

泣かないと決めていたはずなのに。

アイシャの前では、弱い自分を見せるわけにはいかないと、ずっと思っていたのに。

 

 

「……お兄ちゃん」

 

 

そう呼ばれて、顔を上げると

アイシャは少しだけ照れたように頬を染めながら、

小さな両手をそっと広げていた。

 

 

「ん……ぎゅーって、していいよ」

 

 

「いや、アイシャ……それは――」

 

 

拒む言葉は最後まで言わせてもらえなかった。

 

 

「もう! 意地張らなくていいってば!」

 

 

その声と同時に、

アイシャは一歩踏み込んで俺の背中に手を回し、

ぎゅ、と逃がさないように力を込めてくる。

背中に触れた手のひらが、ほんのり温かかった。

 

それだけで、喉の奥に押し込んでいた感情が全部あふれ出しそうになる。

 

 

「アイシャ……」

 

 

名前を呼ぶのが精一杯だった。

 

震える息が漏れる。

俺の顔は、アイシャの胸元へうずまっていた。

小さな鼓動が耳に伝わってくる。

涙が零れそうになるのを必死に堪えた。

 

 

「私ね、お兄ちゃんに頼られなくてもいいの」

 

 

俺の頭を、アイシャはそっと包むように撫でた。

指先が、優しく髪に触れる。

 

呼吸が少しだけ楽になる。

 

 

「勝手に役に立つって決めたから」

 

 

小さな声だけど、揺るぎがなかった。

決意を言葉にする人間の強さが、子どもとは思えないほど滲んでいた。

 

 

「だから、ね……泣いてもいいんだよ」

 

 

「……っ」

 

 

泣くなと言われたことは何度もあった。

泣くなと自分に言い聞かせたことは、それこそ数え切れないほどある。

 

でも――泣いていいなんて言われたのは、

初めてだった。

 

アイシャの胸元が濡れてしまう。

 

俺の目から涙が、ボロボロと零れ落ちる。

子どもみたいに、惨めなほどに。

 

アイシャは何も言わなかった。

泣き顔を覗き込むこともない。

息を詰めて聞き役にまわることもない。

ただそっと抱きしめる腕に力を込めて、

俺の頭を優しく撫で続けていた。

 

初めてだった。

自分の弱さを赦されたのは。

 

 

 

―――

 

 

 

どれくらい泣いていたのか分からない。

気づけば呼吸は震えながらも、

少しだけ落ち着いていた。

それでも抱擁は解けないまま、

俺は支えられている。

 

俺は深く息を吸い、震える吐息を整えて、

ゆっくりと顔を上げた。

 

 

「もう……大丈夫だ」

 

 

「ほんとに? お兄ちゃん、すぐ無理するからなー」

 

 

「……本当に大丈夫だ、泣いてばかりじゃいられないからな。まだ話さなきゃいけないこともあるし」

 

 

「お兄ちゃんの力のこと?」

 

 

「ああ」

 

 

言葉を飲み込む。

どこから話せばいいのか。

この世界にない現象をどう伝えたらいいのか悩む。

 

 

「この力は、前の世界のもので……この世界で言うと、魔力に近いものだ」

 

 

「じゃあお兄ちゃんは、昔からそんなに強かったんだ」

 

 

「いや……力自体はこの世界に来る前に、ある人にもらったんだ」

 

 

言ってすぐ、違和感が喉に引っかかった。

“もらった”なんて言葉は、どうにも正しくない気がしたから。

 

 

「ある人?」

 

 

「ああ。その人は、宿儺って言って、前の世界でたくさん悪いことをしてきたやつなんだ」

 

 

「たくさん……悪いこと?」

 

 

「人を殺したり、物を壊したり……自分以外は全部どうでもいいって思ってるような……そんな奴だ」

 

 

アイシャの目が少し見開かれ、小さく息を呑んだ。

 

 

「俺の力は、その宿儺の力なんだ。この世界に来る前に宿儺と出会って、俺があいつと、仲良くなりたいと思って……あいつの気まぐれで俺の中に宿って、一緒にこっちの世界に来て、今まで、一緒に生きてきた」

 

 

「……え? その悪い人って、お兄ちゃんの中にいるの?」

 

 

まずい。

怖がらせたかもしれない。

俺の心臓が強く跳ねる。

不安が喉まで上がってくる、その時。

 

 

「もしもーし、宿儺さんいますかー?」

 

 

……え?

 

アイシャは俺の胸に手を押し当て、

俺の中の誰かに話しかけるみたいに声を出した。

 

そして、耳をぴたっと俺の胸にくっつけて、

返事を待ち始めた。

 

その姿が、あまりに無邪気で、

心配していた俺が馬鹿らしくなった。

 

 

「多分返事は来ないよ、宿儺とは今喧嘩中だからな」

 

 

「喧嘩中なの? お兄ちゃんと宿儺さん」

 

 

「……まあ、色々あってな。俺が宿儺の期待に応えられなくて、失望されちゃったんだ」

 

 

「なんか、勝手だね。その宿儺さんって」

 

 

「ははっ、勝手な奴なのは否定しないけど……あれは俺が悪かったんだ」

 

 

目をつぶって、あの時のことを思い出す。

 

 

「宿儺の前で大見得張ったくせに、いざその時になったら……みっともなく自分の言葉から逃げようとした。それだけじゃない……」

 

 

そこで言葉が詰まる。

吐き出すのが、怖かった。

 

 

「……アイシャからも逃げようとしてた」

 

 

「私からも?」

 

 

「アイシャも見てただろ? アトーフェとの戦いのとき……俺は最初、戦うことを諦めて……死のうとしてた」

 

 

吐き捨てるみたいに言った。

自分でも思い出すのが情けなくて、悔しかった。

 

 

「でも……アイシャの声が聞こえて。アイシャの目を見て。それで……また立ち上がれたんだ、アイシャがいなかったら、俺はきっとあそこで終わってた」

 

 

「そう……だったんだ……」

 

 

「だからさ、アイシャ。俺を救ってくれて、ありがとう」

 

 

「それは、助けてもらった私のセリフじゃない?」

 

 

「じゃあ、お互い様だな」

 

 

「だね!」

 

 

少し間が空いて、

アイシャは、真剣な目で俺を見つめた。

 

 

「一つ聞いてもいい?」

 

 

「なんだ?」

 

 

「お兄ちゃんはなんで、宿儺さんと仲良くなりたいって思ったの? 悪い人なんでしょ?」

 

 

「それはな……あいつが、俺に期待してくれたからだ」

 

 

他にも、理由があった気もするが、

今は言語化出来ている方を話した。

 

 

「初めて会った時あいつは言ってた。『自分で選ばなかった生き方の先を見たい』って。全部奪って、全部壊して……それでも心のどっかで、別の道があったんじゃないかって、ずっと思ってたみたいなんだ」

 

 

語りながら、自分でも不思議だった。

宿儺のことを、こんな風に説明する日が来るなんて思ってもいなかったから。

アイシャは口を挟まず、ただ静かに聞いてくれている。

 

 

「宿儺の力を持った俺がどう生きるのか、あいつはそれを見たいんだと思う。だから俺は……宿儺が俺に期待してくれたなら、その期待に応えたい……そう思った」

 

 

そこで息が詰まり、喉が乾く。

 

 

「まあ結局……失望されちゃったんだけどな……」

 

 

「うーん。宿儺さんはさ……失望なんてしてないんじゃないかな?」

 

 

「え?」

 

 

「宿儺さんは、まだお兄ちゃんの中に居るんでしょ? 期待してなかったら、とっくにいなくなってるよ」

 

 

「そう……だな。うん、そうだ」

 

 

言われてみると、確かにしっくり来た。

宿儺なら、興味がなくなった相手のところにわざわざ居続けたりしない。

あの宿儺が、そんな面倒くさいことをするはずがない。

 

まあ、単に出られないだけかもしれないが。

 

 

「ありがとな、アイシャ」

 

 

「うん、どういたしまして!」

 

 

にぱっと笑うその顔が、焚き火の光に照らされて

いつも以上に眩しく見えた。

 

 

「……最後に一つだけ秘密があるんだがいいか」

 

 

するとアイシャは、ぴんと背筋を伸ばして構えた。

 

 

「サプライズでな……もうすぐアイシャの誕生日だから、その……財布を作ってた。誕生日に渡そうと思ってたんだが、昼間のことで……」

 

 

そう言って、

ついさっき縫い終えたばかりの財布を差し出す。

 

焚き火の灯りに照らされたのは、

いろんな動物や花の刺繍が並んだ財布だ。

 

 

「こういうの……アイシャが好きだろうと思って」

 

 

アイシャの目が丸くなる。

 

 

「そういうのは! 隠してほしかった!!」

 

 

「ええ!? ダメなのか!?」

 

 

「そりゃそうでしょ! サプライズで渡されるからうれしいのにー!」

 

 

「じゃ、じゃあ仕切り直した方がいいか?」

 

 

「いい! 今ちょうだい!」

 

 

「は、はい……アイシャ、誕生日おめでとう」

 

 

差し出した財布を、アイシャは両手でそっと受け取ると、ぎゅうっと胸に抱きしめた。

 

 

「ありがとう、お兄ちゃん……ずっと大事にするね」

 

 

「これで、隠し事はもうないと思う。多分……」

 

 

「じゃあ、私から!」

 

 

「なんだ?」

 

 

「お兄ちゃんが前にいたとこについて教えて!」

 

 

その言葉はあまりにも純粋で、

俺は少しだけ笑ってしまう。

 

 

「いいぞ。じゃあまずは、料理からだな――」

 

 

言った瞬間、アイシャは、俺の膝の上にちょこんと座った。

小さくて温かい体重が乗る。

 

俺はゆっくりと話し始めた。

この世界にはない、料理のこと。

アイシャは目を輝かせ、時々小首を傾げて、

聞いたこともない食べ物を一つひとつ想像しようとしていた。

 

話は徐々に広がっていく。

前の世界の景色。

空を飛ぶ鉄の塊。

夜の街を照らす無数の光。

信じられないような話でも、

アイシャは疑うことなく、素直に受け止めようとしていた。

 

俺がどう生きてきたかも自然と口にしていた。

諦める理由ばかり探していた日々。

人を信じられなくて、誰にも期待されなくて。

逃げることで、自分を守っているつもりだったあの頃。

 

思い出すたびに胸が痛む過去なのに、

今こうして言葉にしていくと、

不思議と苦しくなかった。

 

言葉にするたび、胸の中にこびりついていた重たい何かが薄れていく。

 

語っているうちに、笑っている自分の声に気づく。

あれほど嫌だった過去も、誰かに語ることでようやく、ちゃんとした過去として形を変えていく。

 

過去を振り返るためには、今を大事にできていなければいけないのだと実感した。

 

 

 

―――

 

 

 

「――ってことがあったんだよ」

 

 

気づけば、俺は前の世界でのくだらない失敗談を話していた。

炊飯器のスイッチを入れ忘れて夕飯がなくなったこととか、カップ焼きそばの湯切り口をミスって麺を全部シンクに流したこととか。

 

全然自慢できない話なのに、アイシャは肩を揺らして笑っていた。

 

 

「お兄ちゃんってさ……なんかすごいのか、すごくないのか、わかんない人だね」

 

 

「……どっちかと言うと、すごくないほうだと思うけどな」

 

 

「あーあ、その頃のお兄ちゃんにも会ってみたかったなー。きっと、今よりもっと心配しなきゃって思うんだろうけど」

 

 

「アイシャ……ありがとな、俺の話を聞いてくれて」

 

 

「ううん、聞かせてくれてありがとね」

 

 

俺は息を整えながら、ゆっくりと口を開く。

 

 

「これからは……嘘も、隠し事もしない。ちゃんと話す。ちゃんと頼る。もう、ひとりで全部抱え込んだりしない」

 

 

真っ直ぐにそう言ったつもりだったけど、

声はわずかに震えた。

アイシャはそんな俺を見て、くすっと笑った。

 

 

「いいよ。嘘ついても」 

 

 

「……ダメじゃないのか?」

 

 

「だってお兄ちゃん、嘘つくとすぐわかるもん。目とか、声とか、いろいろ全部バレバレだよ」

 

 

「俺ってそんなにわかりやすいか?」

 

 

「うん! すっごくわかりやすい!」

 

 

肩を落とす俺を見て、アイシャは小さく笑った。

けれど、次の言葉で少しだけ真面目な顔に戻った。

 

 

「でもね。苦しかったら、自分から言ってね。我慢して隠すくらいなら、私に言うこと……分かった?」

 

 

「ああ、分かった」

 

 

「うんっ。じゃあ決まり!」

 

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